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白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
4章 獣人領域
142/306

132話 特訓

ガロウ視点で少し時系列が戻ります。

 父ちゃんと母ちゃんがセンと一緒に出て行った。



 二人の姿はほとんど見えないけれど、わずかに見える手の先がいつもと違ってちょっと赤い。恥ずかしいんだろう。ならやめときゃいいのにと思わないでもないけど、なんかいい。初々しさみたいなのを感じる。



 とはいっても、俺とレイコの関係よりは進展しているけど。ちゃんと恋人らしいし。そもそも初々しいなんて、親に言う言葉じゃねぇ気がする。



「あの、特訓とはまず何をするのですか?」

「…まず、自分の力を把握して」


 となると、俺の場合は『輸護爪 ガディル』の、レイコは魔法? (もしくは能力)の把握になるか。



 それはだいたいできてる。……たぶん。



 いきなり目の前で父ちゃん達が俺の『護爪』とかの大きさをスッと下げたことには驚いたけど、ある程度は出来てるはず。何で俺より滑らかなんだと思わないこともないけどな!



「で、その後は?」

「使うー」


 お…、おう。雑すぎる。どう使えばいいんだよ…。



「…ガロウ。そんな顔されてもそれだけだよ。…使って慣れること、これが大事。…レイコもだよ」


 なるほど、慣れればいいのか。



「となると、目標は無詠唱?」

「…出来るに越したことはない。…慣れてくればすぐに出来るよ」

「今は無理だろうけどねー」


 ひでぇ。



「…とりあえず、能力の把握から。…慣れていると思ってもまだ何かあるかもしれないから」

「でも、ある程度でいーよ!」


 「なるほど」って思った瞬間にカレン姉ちゃんがブッコンできたぁ!? …俺はどうしたらいいんだ? 聞くか。



「姉ちゃん。俺はある程度できていると思うんだが、どうすりゃいいと思う?」

「…その辺りは任せる。…正直、他人のシャイツァーのことなんてわからない」

「えぇ…」


 真顔でそう言われても困るんだが。アイリ姉ちゃんの言う通り、まだ何かあるかもしれないなら調べておくべきだ。だが、カレン姉ちゃんの言う通りなら訓練でもいいような…。悩むぞ!? あ。そういえばアイリ姉ちゃん以外に頼れる…、頼れる? いや、頼れるはずだ。うん。



「どうしました、ガロウ様?」

「ウェフッ!?」


 いきなり目の前にリンパス様が…!?



「先ほど私に対して変な事考えていませんでしたか?」


 なぜばれる。言えねぇ。絶対に言えねぇ…。特に面と向かって!



「あの、リンパス様。俺はどうすればいいでしょう?」

「…どうとは?」

「訓練内容です」

「ああ。なるほど…」


 話題変えられた。俺が聞きたかったことを聞けるから最高じゃないか!? この変え方! …いや、もとはと言えば俺が変なこと考えたからまずかったのか。じゃあ、最高ではないか。



「とりあえず、『名前付き』のシャイツァーであるのならば、まだ探しておかれた方が良いかと」

「…『名前付き』?」

「え゛。アイリ姉ちゃん知らないの!?ずっとシャイツァー持ってたはずだよな!?」

「…生まれつきあったし…、というよりそもそも興味がなかった」


 ああもう! そんな悲しそうな顔で、声で、言わないでくれ! 俺もレイコもリンパス様も何も言えねぇよ!



「…ところで、ガロウとレイコは何で知ってるの?」

「英雄譚に出ているからですよ。憧れたりしませんでしたか?」

「…シャイツァーだよ?…今ならともかく……ね」


 要するに「興味がない」と。姉ちゃんの闇が深すぎる。どんどんと深みに入っていきそうでヤバい。



「…ええと、『名前付き』は、名前のあるシャイツァーということです。そのまんまですね!」


 リンパス様が空気を変えようと努力してる…?



「…へぇ。それで?」


 何とかなったらしい。姉ちゃんが目で「早く早く」と訴えている。



「なんでも、カチリと願いが固定されたとき、もしくはシャイツァーの成長限界に達した時に、名が与えられるそうですよ」


 となると…、俺の場合、願いが固定されたから名前があるのか?



「後、生まれつき名前付きのシャイツァーを持つ人もいるそうですが…、理由は不明です。その場合は過去に存在する名前付きシャイツァーになるそうですよ。一説には、魂の形がー。とか、前世がー。とか、血縁がー。だとか言われていますけれど、定かではありません」

「ボクはー?」

「…カレン。それだけじゃわからないよ」

「何でー?」


 こてっとカレン姉ちゃんは首を傾げた。もしかしなくても、出自忘れてんじゃねぇの…?



「…この子、ハイエルフで、生まれつきシャイツァー持ち。…でも名前ない」

「あー。ハイエルフって言わなきゃダメかー」


 さすがに覚えてはいたっぽい。



「答えはもうアイリ様がおっしゃっておらませんか?ハイエルフだからでは?」

「そっかー」

「…じゃあ、わたしは?わたしは生まれつきこれだけど、名前なかった。…今はあるけど、一部ボケててわからない」


 アイリ姉ちゃんのは…、何だったっけ? …まぁ、まだ漢字をちゃんと習ってないから読めなかったんだが。平仮名片仮名と魔法に使う漢字は習ったんだけど!



 だからアイリ姉ちゃんに名前を紙に書いてもらって見せてもらったが、絵にしか見えなかった。



 アイリ姉ちゃんが母ちゃんから預かっている紙に名前を書いたが…、リンパス様も読めないし、そもそも伏せ字になっている例を知らないらしい。というか誰も知らないかも? らしい。



 つまり、例外。だけど、そんな説明でのアイリ姉ちゃんは納得したようだ。姉ちゃん曰く、「…これを寄越した神を、わたしはかつて恨んだ、そして今は脅している。だからそう言う事もあるでしょ」らしい。マジで闇が深い。達観だとかそんなちゃちなレベルはとうに過ぎてる。



 うぅ…、過去のことを聞く気がどんどんそげる…。



 なんかさ、もう。聞いたら最後、こっちが「もうやめて!こっちの聞く気力はもう尽きた!」ってなってんのに、そんなの知ったこっちゃないとばかりに、ほんの少しだけ、姉ちゃんのよく観察しないと無表情にしか見えない顔を暗くしながら延々と重い話をされそうだから。



「…脅す?…あのアイリ様。先ほど、脅すと聞こえたのですけど?」


 思考停止していたリンパス様が再起動した。それはいい。それはいいけど、姉ちゃんに今ぶつける質問としては致命的によくない気がする!



「…文字通りだよ?…お父さんとお母さんが危機に陥った時に助けられる力をくれないならわたしは死ぬ」

「私以上じゃないですか…」


 ボソッとドン引きしながらリンパスさんが呟いた。マジかよ。自覚あるのかよ。この人。自分が狂ってる自覚。



「自覚あるのねー」

「…みたいだね。リンヴィ様狂いの」


 とか言ってる姉ちゃん二人ものーんびりした声だしてるけど、どう考えても人の事言えないぜ…。



 ん? あれ? アイリ姉ちゃんのほうがヤバくね? 姉ちゃんも自覚あったよな…、しかも、リンパス様よりも狂ってる自覚が。



 うげぇ…。マジか。もう、推測だけでゴールしてもいいよね…?



「最悪、お父様、お母様から聞きますか…」

「その方が良いかもしれない」


 どのみち、本人から聞いてと言われたら詰むけど。その時は父ちゃん達と一緒に聞こう。それならましそうだ。



「…ガロウ。レイコ。早くやろ。時間勿体ない」


 お…おう。変わり身はええな。なんか釈然としねぇ。こういう流れになったのは半分ぐらい姉ちゃんのせいなんだけどなぁ…。ま、黙ってやるか。







_____


 やっぱりこれ以上はない…か? うんうん唸って把握に努めてみたが、どう考えても『がディル』の本分は『守護』と『輸送』。これを逸脱することはなさそう。



「で、把握したらどうすりゃいいの?」

「…慣れるまで使う。…とりあえず爪で満足に戦えるように」

「あいよー」

「お姉さま。(わたくし)は…?」

「…レイコも同じ。慣れて。…レイコなら当てることに慣れればいいと思う」

「わかりました。ありがとうございます!やってみます!」

「何故二人ともー、ボクに聞かないのー?」


 そりゃカレン姉ちゃんの説明が雑だからだ。



 理解するためにアイリ姉ちゃんの助けを介在させる必要があるならば、始めからアイリ姉ちゃんを頼る方が良い。



「…あ。いい案を思いついた。…ガロウは『護爪』を動かして。レイコはそれ狙ってみて」


 いきなり実践的だ。



「制御の練習とかはいいの?普通の魔法使いはまずそれするって聞いたことあるけど?」

「……ああ。でも…、ま、なんとかなるでしょ」


 何とかならねぇ気がするなぁ…。姉ちゃんが一体何を緒も出していたのかは定かじゃねぇけど、目が泳ぎまくってたぜ…。あ、父ちゃん達の失敗談でも思い出してたのか?



「穴の中で―、使えてたからー、大丈夫じゃなーい?」

「…それもそうだね。リンパスいるし」

「えっ。私ですか?」

「だねー。全力でやるわけじゃないしー、止められるよねー」

「…ん。…それに万が一の時はわたし達でも止められる」

「要するに、私、肉壁…?」

「そーだね!」

「うへぇ…。」


 リンパス様が心の底からそう思ってます! と一目でわかるほど、酷くげんなりした顔をしている。



「…大丈夫。これで楽な仕事をしていたとは言われない」

「あ。なるほど!確かにそうですね!それならやります!って、なりませんからね!?私はそこまで愚かではありませんよ!?」

「…だよね。…ちぇっ。クリアナなら丸め込めたのに」


 黒い。姉ちゃん黒すぎるぜ…。綺麗な顔してなんて恐ろしいこと言ってんだこの人…。



「リンヴィーに頑張ってくれたって伝えるよー?」

「え!?あ。え。あ…。はい!わかりました!私にお任せください!全身全霊でお勤めいたします!」


 お勤め(肉壁)ってさっき言ってたけどな! 結局丸め込まれるのかよ!



「…早く準備」


 いきなりだな。とりあえずある程度の距離を取ってレイコと相対する。深呼吸して…。よし。



「レイコ。始めるぜ?」

「はい。お願い致します」


 的は一個。何個も作っても集中できないから一個だけ。『護爪』で動きはそんなに早くねぇが…、外れて俺に直撃! とか全力でごめん被りたい、だから、リンパス様の方へつつっと動かす。



「では、参ります。威力を抑えて…、わたくし、霊孤|《礼子》の名の下に、わたくしの力よ、わたくしの命ずるままに命を奪いなさい。『ガルミ―ア=アディシュ』!」


 唱え終わると、レイコの前でもやもやした綺麗な輝きが表れる。何故か一瞬もたついて、怒涛の勢いで何かが飛んできて、それはそのまま俺の『護爪』へと飛んでくる。



 何とかギリギリで『護爪』を避けさせると、鋭くとがった針状になっていたレイコの魔法が、真後ろにあったぷかぷかと浮く白黒の巨体──リンパス様──を貫いた。



 えっ!? 何で? 穴では成功していたのに…、何で失敗したんだ?



「レイコ様。大丈夫です。これくらい私にはどうってことありませんよ」

「いえ、ですが、貫通していましたよね…?」

「それでも大丈夫です。私はこれくらいの傷すぐに回復いたしますので!」


 ドヤァ。と決め顔をするリンパス様。やわやわの肌を見てみてください。と差し出してくる。



 嘘だろ…。確かに、リンパス様のサイズと比べるとレイコの魔法は小さかった。だけどさ…、何で魔法が貫通して、さらにその傷跡は焼かれていたはずなのに、修復されてんだ!? しかも完璧に!



「私はこの姿の時に限り、受けた傷は魔力がある限り回復するのです」

「…魔法?」

「じゃないですかね?魔力尽きるとまずいことになりますが」

「どのようなサイズでも治るのですか?」

「試したことがないので何とも言えません。試す気もないですが」


 そりゃそうだ。



「ですが、即死以外は何とかなると思います」

「具体的には?」

「一瞬で首を切断されれば死ぬと思いますが…、遅いと回復するので死なないはずです」

「じゃあ何でさっきあそこまで怒ったのー?」

「治っても痛いです」

「そっかー」

「それに、生憎、私は殴られて喜ぶような趣味は持ち合わせていないので…」


 だろうな。人の趣味にとやかく言う気はないが…、もしそうならちょっと引く。



「…リンヴィ様なら?」

「え?あ…、うーん」


 明確に否定できない時点で色々お察しだぜ?リンパス様ェ…。



「…今度からお仕置きにリンパスの首を鋸で切ってもらうのはどうかと思ったけど…、…逆効果みたいだね」


 なんか姉ちゃんがえげつないこと言ってる。…迷っててよかったなリンパス様。迷ってなかったら実行されてた可能性があるぜ。



「とりあえず、続きどうぞ!」


 殴られて喜ぶ変態 (リンヴィ様に限る)という事を否定したいのか、ちょっと必死だ。



 …認めてしまったほうがアイリ姉ちゃんの言ってたの実行されないはずだから、認めてしまえばいいのに…。



「皆さま、何故固まっているのです?続きをどうぞ。なさってください」

「リンパス様。本当にやってしまっても構わないのですか?何か必死なようにお見受けいたしますが…」

「やっちゃってください!別にここら一体を吹き飛ばしてしまっても構いません!」

「…絶対ダメだと思う」

「二重の意味でー」


 「吹き飛ばしたらダメ」というのと、「またリンパス様が怪我しそう」という意味だな。俺もそう思うぜ…。



「では、おっしゃってくださる通り、おねがいいたします。ガロウ」

「あ、ああ。わかったぜ」


 拒否権はない。あっても使わねぇけど。



 とりあえず何が何でも姉ちゃんたちには当てないようにしないと…。リンパス様はいいか。右へ左へ『護爪』を避けさせて…、って、またか!



「ファブワァ!」


 こうなるよなー。知ってた。むしろこうなるのが必然な気すらしてくるぜ…。



 プスプスとわき腹の辺りから黒煙が上がっているが、再生して無傷。まじで再生力たけぇな…。父ちゃん達の『回復』並みに回復がはえぇ。



「やはり(わたくし)の魔法が暴発する原因を究明しないことにはどうしようもなさそうです…」

「…それに『身体強化』もしてなかったみたいだよ」

「あ゛」


 阿保である。



「で、原因は何なのかわかってるの?」

「…さぁ?わたしはほとんどシャイツァーか、紙でしか魔法を使わないから」

「同じくー」

「それは俺も」


 詰みじゃね? これ…。



「まぁ、シャイツァーは関係する魔法の補助をしてくれる…というだけですから、なくてもちょっと難度が上がるだけです」

「では、原因は何なのですか?」

「おそらくですが…、威力を下げようと魔力を絞りすぎて動作が不安定に。それに慌てたレイコ様が魔力を足して「ドーン」そんな感じだと思われます」

「となると…、(わたくし)が扱いに不慣れなことが原因ということですね。となると…、最初から絞らなければよいのですか?」

「おそらくですが。とりあえず、変に絞らずに適度にやってみてください。威力を下げるのはそれからです」


 じゃあ、さっきの訓練法は前提から無理があったのか。あれ? となると…、



「適当に別々で訓練したほうが良さげ?」

「…かも。…二手に別れようか。わたしとガロウ。レイコとカレンとリンパスで」

「了解です。ですが私はお二人の方も見ていますよ。…何かあると親が怖いので」


 俺らが心配。とじゃなくて、父ちゃん達への恐怖が先に来るのかよ! …まぁいいや。頑張ろう。



「…わたしもガロウのを見ているついでに、普通に魔法使えるように頑張ってみようかな?」

「あれ?姉ちゃん、使えないの?」

「…ずっと鎌あったしね。…調べたこともないよ」


 シャイツァーって確か、勇者じゃなければ消せないはずだったな。現に俺の『ガディル』も消せねぇし。父ちゃん達みたいに出来れば楽なんだが…、全く世知辛いぜ。あ。うわぁ…。



 そっか消せねぇのか。どうあがいても消せねぇのか…。なら魔法は使わねぇか…、鬱陶しい鎌を敵にぶつけて損傷? させれば多少は鬱憤晴れそう。過去の話、マジで重そうで聞きたくねぇな…。でも、姉ちゃんのことが知りたい。



「…ガロウ。何ぼさっとしてるの?」

「ああ。ごめん。何だっけ?」

「…わたしは使えるかどうかわからないけど、魔法の練習してみる。そう言った。…ガロウはどうするの?…というか、普通の魔法。使える?」

「俺は普通の魔法は使えないぜ。誤爆してレイコに当てたら大変だからとかいう理由。そもそも使えるかどうかすらわかんねぇ。レイコも同じ」

「…へぇ。…ちなみにカレンは…」

「知ってるぜ。使えねぇだろ?」

「…ん。…何で分かった?」

「あの二人なら生まれて間もない子に無茶させることはないはずだから。戦いに駆り出すことはあっても、それは姉ちゃんの意思。…で、今はシャイツァーに集中して欲しい。とか?」

「…たぶんそう」


 多分? 何で? 不思議そうな顔で察してくれたらしく、姉ちゃんが口を開く。



「…二人なら知らない。というのもありえそう」


 ありそう。



「だけど、知っててもたぶん同じだぜ」

「…だね」


 ゴトッっと『護爪』が落ちた。チッ…。制御失敗した!



「…大丈夫?辛い?」

「いや、大丈夫」

「…本当に?」

「ああ。大丈夫だ。少し辛いけど、ヤバかったら休む」

「…そう」


 まるで興味を失ったかのように姉ちゃんは自分の作業に戻った。



 あんな綺麗な笑顔、姉ちゃんできんだな…。レイコという心に決めた娘がいる俺でさえくらっとしてしまった。これは…、バレてないよな? うん。一応誤魔化しておく。



「姉ちゃん。やっぱちょい辛い。よくあの時父ちゃんも母ちゃんもあんなにすいすい動かしてたよな…」

「…あの時?」

「穴の中と、ついさっき」


 姉ちゃんは目をパチパチと瞬かさせると合点がいったように頷いた。



「…そこは仕方ない。あの二人、勇者だから魔力はある。…それに異世界の知識もある。…だから、ガロウよりもやりやすい下地がある」

「すげぇな…」

「…ん。実際すごい。あの二人そこまでシャイツァーの扱いで苦労していたような記憶はないしね。…「実験するときに魔力多すぎて失敗した!」とかばっかり」

「燃えたりしなかった?」

「…基本安全なやつ。水とか光とか。…両方強すぎるとまずいのは否定しないけど。…まぁその辺の加減はしっかりしてるよ」


 だろうな。そこまであの二人はポンコツじゃない。



「…そのせいでちょくちょく変な事になってるけど。…濡れたり、深夜に敵と会敵することになったり」


 そういうのをポンコツと言うんじゃ…。



「…ま、最近は細々した作業の調整もうまくなってるみたい」

「そうなの?」

「…ん。細々した魔法を使うときちょっと魔力オーバーですんでる」


 上手いとはいったい何なんだ? やはりポンコツじゃないの? 二人とも。



「…多くなっても、シャイツァーがうまくやってるのか外に影響出てないしね」

「そのあたりはイメージの関係?」

「…ん。おそらく。…わたし達に渡すときは自由に使えるようにそこまでイメージは固めてないらしいよ。…数枚除いて」

「何かあったらとりあえずこれを相手に向けて目いっぱい魔力込めてね!と言われたアレ?」

「…そう。アレ」


 アレは護身用らしいが…。言葉通り、割と使えば何とかなりそうな頭のおかしい威力はある。人には打ちたくない。絶対塵すら残らないぜ、あれ。想定は崖から岩降ってきたとかそう言うレベル。



 父ちゃん達と共闘しているときは撃とうとすら思わねぇ。というか思えるか! あんなもん絶対巻き込むわ! ばーか!



「…ガロウもレイコも満足な武器なかったしね…」


 あぁ。だからか。となるとこれ以上に強力にはならない…? あ。



「そういえば、あの二人のシャイツァーの名前は?」

「…そういえば聞いたことないね。…まだ名無しかも?…あの二人ならそう言うのは教えてくれるはず」

「確かに。じゃあ、適当にやるよ」

「…ん。頑張れ」


 とりあえず頑張ろう。今日中には父ちゃん達返って来るはずだし…、リンヴィ様も、ひょっとするとレディック様も返って来るかもしれない。



 …そういえば、何で3日も必要なんだ? 上から見る限り、休み休みでも全力で走れば一日で到着できる距離のはずだ。

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