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白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
4章 獣人領域
137/306

127話 聖地の後片付け

「さて、アイリとカレンは二人の護衛を頼む」

「おとーさんとおかーさんは何をするのー?」

「穴を見てきます。さすがに放置はちょっとアレなので」

「…行ってらっしゃい」

「いってらっしゃーい!」


 無駄に元気よく手を振るカレンと、一抹の寂しさを含みながらも手を振るアイリに見送られ戻る。



「見た限り…、特に変化はないかな?」

「おそらく。というよりですね習君。折角コア破壊したのに、何かあるとかそんなの私嫌ですよ!?」

「違いない」


 軽口をたたいていても何も起きない。ふむ、なら大丈夫か。でも、念には念を入れよう。



「四季」


 声をかけて毎度のように彼女と手をつなぐ。四季の手は柔らかくて温かい。ずっとこうしていたいけど、不審な目で見られるのは目に見えてるから…、



「「『『明かり』』」」


 残念だけど呪文を唱える。戦場跡を紙から出現した光源が優しく照らす。……ん?



「泥の水位が上がった?」

「単にファヴが倒れたことで、ファヴの体を構成していた部分が沈み込んで体積が増えた。もしくは、その一部が元の泥に戻った。だけなのでは?」

「かな?」

「どのみち調べようがありませんよ」


 それもそうだ。一応警戒はしてよう。



「ですが、コアを破壊したせいでしょうか、先ほどは見られたいつものあれ(汚い白黒)は見当たりませんね」


 辺りを見渡してみても……、うん、確かに特に変わったことはないっぽい。相変わらず謎の感情は感じるが…、それ以外は特になにも。



「呪いも無くなっていませんか?」

「本に封印されていたとか言うやつ?」

「はい。それです」

「やっぱりコアを破壊したから?」

「おそらく。となると、本とシャリミネ。回収したいですねぇ……」

「だねぇ…」


 どうやってこの泥の海の中からその二つ回収しよう。本は元の2mクラスに戻っていてくれればまだ回収しやすいけど、シャリミネはな…、サイズなんて変わらないだろうから……。



「何か方法あります?」

「考え中」

「ですよねぇ…」


 魔法でサッとやりたいけど、やり方がわからない。



 実にシンプルな問題だ。解決方法が見当たらないけど。「1+1=2の証明」か、「フェルマーの最終定理の証明」かな? どっちも問は理解できるけど解けない。



「全部浚ってみます?」

「良い案だけど、深さがわからないよ?」

「ですよねぇ…」


 深さがわからないから、浚ったと思っていても、実は浚えていない! なんてことが起こりそう。



 自動でそういうのもやってくれたらいいけど、今回は何となくダメな気がする。というかそもそも具体的なイメージが出来ない。



「いっそ、火魔法で全部燃やしちゃう?」

「底も見えないのにですか?」


 珍しく露骨に嫌だなぁ、やりたくないなぁ。という顔。そこまで嫌か。……嫌だわ。俺だって嫌だ。何が楽しくてこの量を燃やさなくちゃならないのか。



「あ゛」

「どうしたの四季?」

「帰還魔法探すならば、底も見ておく必要があるのでは…?」

「あ゛」


 俺達はどんな形で帰還魔法が置いてあるか知らない。まぁ、そもそも帰還魔法があるのかって点があるけど、この際全無視。だから、底にある可能性があるならば、結局全ての泥をどけないといけない。



「よし、ここには帰還魔法がないという事で」

「ダメに決まってるでしょう」


 わざとらしく帰ろうとしたら、襟を掴まれて思いっきり首が締まる。



「ぐぇっ」

「ごめんなさい。習君!ちょっと強かったですね」

「だね。でも特に怪我はないし大丈夫」


 ふざけなのはわかってるからか、四季はそれ以上何も言わない。さて、真面目にどうしよう。魔物の死体を処理する魔道具でなんとかならないかな?



 そもそも持ってきてないけど。持ってきていたところで、ちゃんとこの泥を全て燃やしてくれるかどうかは微妙なところではある。



 泥がファヴの体の一部認定されているかどうかわからないからな…。



 ファヴの体認定されているのは、コアだけかもしれない。それに、泥も燃えるとしても、「何か特別な作用を受けた泥」だけかもしれない。



 じゃあ、やっぱ自力で燃やすか? …うん、やっぱり却下。どう考えてもない。自力とか正気の沙汰じゃない。泥の総量がわからないのがほんと困る。



 ……強度もわからない敵に触媒魔法で魔力全部込めてぶん殴ったことが、あるような気がしないでもないけど、あれは例外だ。やらないと最悪死ぬからやらない選択肢がない。



 総量がわからない=魔力消費もわからない。魔力回復をここで待つなんていうのは、出来ない。『トリラットヤ』を隠す必要があるもの。それ以前にご飯をそんなに持ち込んでいないんだけど。



 火魔法使うのに無視できないのは空気が死ぬこと。温度的な意味でも、酸素濃度的な意味でも。



 自分の魔法で、「肺が上手に焼けましたー!」だとか、「赤血球がニートです!」とか需要ないから。『換気』すればいいのは確かだ、だが…、こっちも相変わらず何回いるかわからない。



「どうしたの、四季?」


 さっきからずっといじけてるけど…、立ち直る気配もなさそうなので声をかけてみる。



「…首を絞めてしまったので自己嫌悪中です」

「気にしなくていいよ?今はまだ幸い喧嘩したことないけど、喧嘩すれば殴り合いとか普通にあると思うよ?」


 喧嘩したところで、四季のことを殴るつもり蹴るつもりも、暴言を吐くつもりもないけど。



「ですが、それは一般論ですよね?私は喧嘩をしたとしても、習君に暴力を振るうつもりも、悪口を言うつもりもないです。…だから問題なのですよ。ひゃっ」


 「ひゃっ」だって。そんな声四季が出すとは思わなかったけど…。そんな声を出させたのは俺だが。後ろからそっと四季に近づいて、彼女に抱き着いたから。



「…どうしたのです、習君?」

「ちょっとね。一般論で誤魔化そうとしたのに、誤魔化されてくれないばかりか、俺と同じ気持ちだったから嬉しかっただけ」


 不安そうにこちらを見ていた四季の顔に朱が差す。そんな綺麗な顔で、目で、俺を見ないで欲しい。言った時から恥ずかしかったのに、もっと恥ずかしくなってしまう。



 それに…、もっと好きになってしまう。







_____


「あー。まーたやってるー」


 !? 慌てて四季から離れ、警戒態勢を取った…、が意味なかったね。どう考えてもカレンだ。



「…間に合わなかった」


 アイリ、そんな不覚を取った! みたいな顔をしないで欲しい。余計に恥ずかしくなる。



「悪いことした―?」

「…した」


 俺らよりも先にアイリが答えた? …嫌な予感がする。これ以上喋らせてはいけない気がする。だけど、止める前にアイリが口を開いた。



「…もっと見ていたかったのに。…仲のいい二人を」

「おねーちゃん。トドメ刺したー」

「?…わたしは思ったことを言ってるだけ」


 相も変わらず我らの娘さん(アイリ)は天然であらせられる。やっぱり止めるべきだった。こんなこと言われて羞恥を掻き立てられるのはわかってたのに!



 ん? あれ? 何かがおかしい。あ。



「あの、習君。二人がいるのはいいのですけど、レイコちゃんとガロウ君は?」

「だよね。二人とも、弟妹達は?」

「戻るー」


 …放置!?



「アイリ…」

「…先に止められなかったこと謝るべきだった。ごめん」

「無事だよー!」


 アイリの謝罪と同時に声が響く。



「無事らしいのでいいです。ですが、ごめんなさい。アイリちゃん。長女であるあなたにばかり負担をかけていますね」

「…だね。お父さんとお母さんもいるしね」


 ふふっと笑うアイリ。



 言外に、俺と四季も手がかかると言われている。そんなことは……、あるな。思いっきり。こっちの常識がないから基本、アイリに頼ってる。そのアイリも元孤児、近衛だからか、たまに変だけど。



 でも、今ならガロウもいけるかな。獣人の常識で基本レイコといたからズレているのは否めないが。



 だけど、他の家族は…微妙、カレンは本能でエルフ関連は聞けるかもしれないけど。基本赤ん坊のようなものだし、論外。レイコはカレンに比べればマシだけど、箱入りだから結局ダメ。



「ごめん。これからも基本苦労させると思う」

「主に常識関係ですね」

「…ん。任せて。…というより、頼られるほうが嬉しいから。頼って」

「適宜ね」


 頼りすぎるのも問題だ。



「…ところで、やることは終わった?」

「泥をどうにかしないことには進まないね」

「…そっか。じゃあ、今できることで残ってることはないの?」

「ないと思いますが…、習君はどう思います?」

「俺も同じ」

「…魔法痕とかは?」


 完全に忘れてた…。



「…まだみたいだね」


 『マリッジ・エクロア―』とかいう名前が悪い。特に、「マリッジ」



 主原因は初めてこの魔法を知ったのが、四季のウエディングドレス姿を祭りで見た後、だったせいだろうけど!



 そのせいで意識の外に追いやられることが多い。紙はあるのに、使われない。この魔法も被害者なのかもしれない。



「とりあえずやりますか」

「だね」

「「『マリッジ・エクロアー』」」


 さて、結果は…?



「うわぁ」

「出ませんね…」

「…わたしの鎌と同じ?」

「かもね。■■とかなってるし。魔法を知らないからか?それとも他に何かあるのか?」


 うーん、わからない。



「…わからないならどうするの?」

「目さめたよー!」

「都合がいい。サンプルに泥をちょっと確保しておいてリンヴィ様と一緒に来よう」

「それも、出来るだけ早くですね。アンデッドが発生する可能性もあります」

「…低そうだけど?」

「そうだけど、やるほうがいい。本とシャリミネの回収は後でいいよね?どうせ燃えないだろうし」

「はい、問題ないと思われます。では、泥を回収して帰りましょう。紙を渡すので適当に瓶を作って詰めておいてください」


 紙にサッと字を書いて瓶を作り、泥を回収する。回収法は、瓶を泥に着けて蓋をするだけ。簡単だ。瓶の外壁についた泥は魔法で払い落としておく。



 そして3人と合流。一路出口を目指す。







_____



「帰ったか」


穴から顔を出したら、リンヴィ様がいた。待ってくれていたのだろうか?



「ただいまです」

「何があった?」

「帰り道は特に何もなかったのですが…。これを」


とりあえず、リンヴィ様に泥を押し付ける。視線で問いかけてくるので簡潔に答えよう。



「穴の底で戦った敵の亡骸?ですね。俺らで、『マリッジ・エクロア―』を使って見ましたがわからずじまいです」

「処理は?」

「まだです。なのでついてきてくださいな」


四季が頼むと、殊更真剣な顔で頷く。



「だが、行くのは明日だ。疲れておるだろう?」

「わかりました。ありがたく休息を取らせていただきます。ですが、その前に…、」

「ファヴの情報を伝えさせてください」


リンヴィ様は「まじめだな」と苦笑いしながらも、「夕食で聞こう」と言ってくれた。



夕飯をいただきながら喋って、昨日の宿に戻る。センに魔力をちょっとあげて、ガロウが寝て、女性陣が楽しく風呂に入っている間にトリラットヤを隠す。



トリラットヤを収納していた紙は、取り出すと役目を終えたように霧散した。取らせてくれてありがと、トリラットヤ。それと、紙も。



 さて、風呂から皆が上がってきたみたいだし、寝るか。







______



 翌朝。朝食を取り、「さて、行こう」と思ったら、リンヴィ様をはじめ、群長全員に「ちゃんと次からは、処分します!」と綺麗な土下座をかまされた。そして、何故かその体勢のまま、何かの情報を渡してくれた。



 …その情報、全く頭に入ってこなかったけどね! 居心地が悪すぎる…。群長たち全員が話終わってから、「何一つ理解できませんでした」と伝えると、さらに頭を下げられた。



 もうやめてほしかった。だのに、こちらの心情は伝わらず、ついには「切腹」と言い出した。



 「切腹なんて見たくないし、されても困る」とひたすら窘めると、今度は貸しが云々の話になった。俺も四季もリンヴィ様に触媒魔法をぶっ放して、「お相子」にしてもらったから遠慮したが、折れてくれなかった。確かに今回のは「お相子」ではなかったかもしれないけど…。仕方ないのでこちらが折れた。



 どうでもいいことで貸しを無くしておかねば。全くうれしくない「貸し」とともに、再度情報をくれた。ついでに昼になっていたのでご飯を食べた。



 あれ? 俺、何やってたんだろう…。おかしい。俺の予定ではもう穴の中に入っている予定だったのに…。過ぎたことは仕方ないか。切り替えよう。



  ただ、切腹を伝えた勇者は許さない。無駄に正しく伝えやがって…!「死に装束」だとか、「介錯」だとか。



 俺としては、「命を無くす」方法を正しく伝えるならば、「命を育む可能性のある」モノ。「結婚」を正しく伝えろよ! と声を大にして言いたい。



 まぁ、言おうものなら、アイリあたりから「じゃあ、して?」と言われて、変に俺も四季も意識しすぎて、二人仲良く死にそうになる光景しか見えない。だから言わない。



 何より、結婚はじっくりと進めたい。こういう関係(家族)になっておいて、今更何言ってんだこいつ? 状態なのは自覚しているし、それに、四季に「いつか言う」と待ってもらっている奴がいう事じゃないけど。チキンにしか見えないし、実際俺も若干そう思ってるけど、それでも(・・・・)だ。



「習君?」

「えっ、何?」

「得た情報を整理しておきませんか?ガロウ君やレイコちゃんを置いてきたので、ちょっと心配なので気を紛らわせたいのです」

「心配しすぎじゃない?」

「ですが…。まだ少しだけ辛そうでしたよね?」

「…大丈夫。…ニッズュンのところに行ったときほどではないって」

「言ってたよー」


 四季が確認を取るように言うと、カレンがそう言った。



「そうですか…」

「一応、確認しておく?」

「お願いします」

「了解。簡単に言えば、俺らが獣人領域に来る前に聖地に捨てた犬獣人の死体が、チヌカっぽかったというだね」

「…フラグ既に立ってた?」

「立ってたねぇ…。知らないところで」

「私達が、帰還魔法を調べるために穴に行くことは確定でしたからね…」


 気づかなければフラグ回収にはならなかったのに。はぁ……。喋りながらもさらに穴を降りる。



「特に何もなく底に着いたな」

「リンヴィ様。あるほうが困るのですよ?それに、お言葉ですが、昨日も底に来るまでは何もいませんでしたよ」

「精々、チヌリトリカに関係のある汚い白黒を見たぐらいです」

「瘴気ではないか…。世間一般では、それを何かがあったというのだ」

「「そうなのですか?」」


 アイリが頷いた。そうだったのか…。



「ひとまず泥を見る。我が調べても、預かった泥に何もなかったが…」


 しゃがみこみ作業するリンヴィ様。ごそごそと何かをしながら、



「ああ、こちらもなさそうだ」


 と割とすぐに声をあげた。



「ということはただの泥ですか?」

「おそらく」

「俺らがファヴを倒したからでしょうか?」

「そうであろう。…コアの部分は、我が焼き尽くせなかったあのチヌカモドキだろうな…」


 哀愁に溢れた目で、穴の壁面を見るリンヴィ様。見ているだけで悲しみが伝わってくる。だから、やめて欲しい。



「あの…、リンヴィ様、気になさらないでください。本当に」

「そうです。私達は無事なのですし…」

「…ん」

「だよー」

「だが…」


 やっぱりこの人、ダメだわ。さっきも思ったけど。相手からやられたら寛大に許すのに、自分が失敗すると申し訳なさで死にそうになるタイプの人だ。というか、文字通り死のうとしてたな…。よし、話題を変えよう。



「リンヴィ様。この泥を吹き飛ばしませんか?」

「んあ?ああ。だな。では、我とともに吹き飛ばそう」


 ちょっと元気になったような気がする。



 少し離れたところで、リンヴィ様の体からまばゆい光が……、まばゆいか? ダメな気がする。でも、体の形は変化してるからいけるかな…?



 心配だったが杞憂だった。大きさはいつもと変わらないし、ファヴと違って綺麗な鱗……、ではないな。光沢が足りてない。



「大丈夫なのですか?」

「大丈夫だ。問題などあるはずがなかろう」


 余計に問題な気が。ああ、もういいや。問題ないそうだし。ただ、「一番いい(状況的な意味で)のを頼む」とだけは言わないでくださいよ?



「やりましょう。習君」

「ああ」

「…あ。諦めた」

「ねー」


 どうしようもないから…。



「合わせよ」


 リンヴィ様が羽を広げる。リンヴィ様の広げた羽に空気中からエネルギーが集まっていく。本気だな。リンヴィ様。ならば、こちらも本気だ。



 四季から魔力の籠った紙を貰い、それに可能な限りの魔力を込めて字を書く。『換気』できる分の魔力は残しつつ……、リンヴィ様のやりたいこと──エネルギー体を発射し、指向性を持った爆発をさせる事──に合わせる!



 リンヴィ様の口をよく見て、エネルギーが収束発射されるタイミングを測る。リンヴィ様が目をフッと閉じた。今だ。



「『雷霆神の一撃リヴィ・チャ・ティーラ』」

「「『『フレイムカノン』』」」


 出現した2つの白い球は、互いに絡みあいながら泥に向かって突っ込んでゆく。そして、底に着弾する・その瞬間、真下に向かって猛烈な爆発を引き起こした。



「「『『換気』』」」


 間髪入れずに発動。先の爆発で生じた高温の空気が去り、綺麗な空気と入れ替わる。疲れた…。しんどい。



「む、大事ないか?」

「大丈夫です。ちょっと横になってれば治ります」

「完全に使い切ったわけではないので」

「左様か」


 リンヴィ様は平気そうだな…。頑張って穴の底ぐらいは覗こう。ごろごろと転がって…。



「…落ちないでね?」

「落ちないよ」


 失礼な。さて、泥はどうなってるかなっと。見えない。四季も来てくれているし…。



「「『『明かり』』」」


 これで見えr、うわぁ…。明らかにオーバーキル。絶対元々の穴、ここまで深くなかったはず。だって、途中から壁の色変わってるもの。それに、穴の形がどう考えても不自然だし。今まで滑らかな円錐だったのに、突然、急な二次関数みたいになってる。



「やはり脆いな」

「ファヴの加護?が無くなったからですか?」

「言い得て妙だな。そうだろうな。むしろ、そうでなくては、我と勇者の一撃とはいえここまではなるまい」


 『明かり』があってようやく底がうっすらと見えるかどうかですしね…。



「後、夫妻のタイミング、魔法が良かったのもあるだろう」


 ぶっつけ本番だったけど、褒められるとやはり嬉しい。



「…ねぇ」

ですか?」

「…シャリミネと本は?」

「「「あ゛」」」


 探したら底の方にあった。アイリに『死神の鎌』で回収してもらう。カレンが底に降りて、射出して戻ってくる方法もないこともなかったが、却下した。



『マリッジ・エクロア―』をしてみたが、やはり特に何もなし。



「それにしても、何故ここにこれほどの泥が…?」

「ニッズュンから流れ込む泥が集積していたのであろう。仮に探索していたものがいたとしても、ただの泥など捨て置く。それに…」


 リンヴィ様が言葉を切った。やべっ。



 二人で慌ててカレンの口を塞ぐ。よし、セーフ! 可愛い目で不満を訴えてきても、絶対にこの手は離さない。「|聖地ゴミ箱にしてたー。《要らないこと》」と言う気満々だったよね?



「…帰還魔法は?」

「あ。探さないと」

「ですね。探しましょう」


 ナイスアイリ。微妙な空気を壊してくれた。



 帰還魔法が、勇者がいないと反応しない可能性を考え、二手に分かれて隅々まで探したが……、予想通り、帰還魔法はなかった。戻ればそのまま夕食。美味しかったことは美味しかった。でも、



「…大丈夫?」

「ああ。うん。大丈夫」

「期待してなかったとはいえ、「ない」のが少し辛かったのです」


 だけど、子供たちに心配をかけているようではだめだな…。



「あれ?だが、シュガーの時はそんなことなかったろ?」

「ガロウ君。あれは例外ですよ。倒せたかどうか定かではありませんし、まず、調べきれていません」

「それに、あんなのと戦った後だからな…。忘れてた」


 ……「何言ってんだこいつ」みたいな目は止めて。



「あの…、調べきれていないとおっしゃいますが、再度侵入を試みてもダメだったのですよね?」

「あってるよ。だから諦めてる」

「次行くのー?」

「やることやったらね」

「もう一度行ってはみますけどね」


 たぶん開かないだろう。ちょっと鬱だ。あ。そうだ。あれ作ろう。



「ちょっと先に帰ってて?」

「…どうしたの?」

「内緒。後で教える。四季、やろう」

「やりましょうか」


 立ち上がって、必要なものを貰いに行く。アイリたちは、俺らの姿を見て「どうせすぐに教えてくれる」と思ったのか戻ってくれた。



 アイスを作ろう。

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