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白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
4章 獣人領域
132/306

122話 続聖地

 よし、絵 (自分ではそこそこ真面目見れると思う)が描けた。戻ろう。



「あ、習君。首尾はどうです?」


 上々だよ。……とは言えない。折角こっそりトリラットヤを貰ったのに、それを言っちゃ意味がなくなる。だから、その嬉しさを抑えながら、



「だいたいこんな感じだよ」


 と未だに石筍だけを見ている子供たちに見えないように絵を四季にだけ見せる。



「なかなかいいのではないでしょうか?」

「だよね。我ながらまともに…」

「…どんなの?」

「「うへっ!?」」

「…そこまで驚かなくても」


 いきなりだったし…。というよりも、さっきまで全くこっち見てなかったのにいつ気づいたのさ。



「…わたしが二人の気配を読み違えるとでも?」


 …思わない。



「というよりもですね、さっき習君がここから離れる時も、アイリちゃん気づいていましたよ」

「…ん。…こっそり何かしたそうだったからついて行かなかったけど」


 俺ら専用の高感度センサーか何かでもアイリは搭載しているのだろうか? それよりも…、



「アイリ。何で俺と四季の間にスルッと割り込めたの?」

「…元近衛だから」


 アイリは無表情に見える顔に、得意さを浮かべて言い切った。



「ええっと、四季。近衛って暗殺者とか、そういう暗部を司る部署だった?」

「えー、私の認識とは違います。それに習君もですよね。ですが…、」


 チラリと目をアイリに向け、言葉を切った。



 わかるよ四季。エヘンと胸を張るアイリの手前、違うなんて言えないよね…。まぁ、ひょっとするとこっちの世界では近衛が暗部を兼ねているのかもしれない…。



 「そんなわけないですよ!?」とかいう幻聴が聞こえてきたら楽なんだけれど。残念ながら確かめるすべは今、ない。



 だって、カレンは俺らと同程度の知識しかないはずだし、レイコもガロウも箱入りだから…。



「あ、ですが…、アイリを溺愛していたルキィ様ならば…」

「あー。確かにあり得るかも」


 もしこっちでも近衛が暗部を担うことが常識ではなかったとしても、ルキィ様ならそんなこの世界の常識すら無視して、アイリに経験を積ませて成長させようとすることは十分考えられる。だって、アイリを俺らに任せてしまうという実績? がある。



「…ところで、絵は?」

「ん?ああ。そうだった。皆、石筍の説明をするからおいで」


 てってこ寄ってくる子供たち。皆が立ち止まってこちらに視線が集中したところでさっきの絵を見せる。四季に見せた限りそんなに悪くはないはずだけど…、どうだ!?



「「「「……………」」」」

「黙らないでくれない?」

「「「「……」」」」


 あ。ダメなやつだ。改めて俺の (ついでに四季も)絵の才能が壊滅していることが明らかになった。…うぅ、フォローされても逆につらいけど、これはこれでキツイ。



 しかも、露骨に目が「ナニコレ」ってなってるし…、「自分の方がマシ」と思っているような複雑な表情をしている。流石に口に出して言ってくるような子はいないけれど。どんな反応したら正解なんてわかんないよね、ごめんよ…。



 ? あ。この肩の感触は四季か。慰めてくれるのね…、ありがとう。やっぱり今回もダメだったよ…。



「あ!えーと!何で俺らを呼んだの!?」

「え!?あーっと、そうですね。折角ですし、習君が書いてくれたこれを使って説明しましょう。石筍とは何か」


 強引に死んだ空気を蘇らせようとしてくれているなぁ…。よし、俺も…。



「この辺りが洞窟の入り口」

「この辺りにあるのが石筍で…、」

「何かの生きm「…カレン」あいー」


 アイリに睨みつけられてカレンが黙る。…うん、やっぱり絵を描くのはやめておこう。



 アイリも止めてくれたけど、微妙な顔してるし、たぶんなんかの生き物の口にしか見えてないと思う。



 よし、開き直って文字を書き込んでしまえ。入り口っと…。ついでに後で必要になりそうなやつも全部。



「魔m「ガロウ」…」


 レイコがガロウの口を押えて黙らせた。今度は魔物か…。これ、鍾乳洞のつもりで描いたんだけど。



 でも、魔物と言われてから見てみると…、入り口付近の石筍 (鍾乳石)は歯に見える。地下水の流れは鱗か何かに見えないこともないし、雨も…、毛とかに見えないこともない。



 …そんな風に意識すると、うん。どっからどう見ても魔物だね! 何が悪いって多分全部。構図に始まり線の太さ等々…、複雑に絡み合って魔物に見えてる。



 まぁいいや。よくはないけどいいや。書き直したら悪化する。次はたぶん、傷だらけの毛むくじゃらの化け物とかになりそうだ。



「とりあえず、一般的な石筍、まぁようは鍾乳石…は石灰洞に出来ることが多いってことを前提にして欲しい」

「雨や地下水に含まれる二酸化炭素が石灰を溶かして炭酸水素カルシウム水溶液になります」

「それが天井から垂れるとき、もしくは、天井から垂れて底に着いたときに元に戻ることがある。それが積み重なるとこういう風に伸びる」

「最終的に天井と床でつながることもあります。その場合は確か石柱になったはずです」


 反応を見る限り、何となくわかってくれているような気がする。けど微妙。



「まぁ、物質名とかどうでもいいけどね」

「…ぶっちゃけるね」

「本当にあちらと同じ物質かどうかなんて私達にはわかりませんしね…」


 違ってても今まで何もなかったから、きっと大丈夫。



「あ、でも触っちゃダメなのはたぶん同じですよ。皮脂が成長を阻害したり、色合いを変えてしまったりする可能性もあるので…」

「だから触らないでね」

「わかっていますよ。綺麗だからこそ触らないようにしております」


 そっか。それならいい。…俺のは貰っていいって言われてたし、自分から折れてくれたからセーフ。



「…ねぇ、あっちで行ったことあるの?」

「ん?鍾乳洞のこと?」


 唐突だったから聞き返してみたら頷いた。よかった。合ってた。



「あるよ。修学旅行…、あ、学校で一緒にどこかに行く行事だとおもってくれたらいいよ。それでね。テレビで見た秋吉台ほど大きくはなかったけどね」

「私も習君と同じく修学旅行で行きましたよ。やはり小さかったですけれど…。あ、ですが鎧がありましたよ」

「鎧?本当に?」

「はい。鎧ですよ。偶然そこで見つかったらしいですが」

「俺の見たところにも同じ来歴のモノがあったんだけど」

「そうなのですか?では、同じところに行ったのではないのでしょうか?」

「かもしれない」


 …そういえば、確かうちの住んでいる町では、中学校の修学旅行は基本的に同じところに行くっていう法則があったような…。いい機会だし、出身聞いてみよう。



「なぁ、四季。俺、常華じょうか東中学出身なんだけど…」

「え゛。私常華西中学なのですけど…」


 間違いなく同じ町だ。確か、俺らの街には常華中学だとか、常華中央中学だとか、そういう中学はなかったはず。あったのは、東西南北の常華中学。…あれ? なんか嫌な予感がする。



「四季、俺の家、常華川の東沿い、河東常華かとうじょうか公園の北にあるんだけど…」

「ふぇっ!?習君!私の家も近所ですよ!というかうちの家から見えます!私の家、常華川西沿いの、河西常華かせいじょうかの北にあります!」


 あー、嫌な予感的中している。俺と四季の家は近所だった。しかも川向。なのに高校3年生の始業式まで会ったことがなかった。何で?



 ええっと、他に確認すること…、その前に位置関係を整理したほうがいいかな?



 常華川はそこまで大きい川ではなかった、一応、川に橋を架けるのには面倒だろうなぁ…、と思える程度の川幅はあったけど。そのせいか、土地があったからか理由はわからないけれど、双子のように東西に河〇常華公園があった。



 公園で遊ぶときは東で遊んでたから四季と会わなくても不思議じゃない…のか? 公立の幼稚園、小中学校の校区の境はこの常華川だったしね…。



 あれ? でも、俺らが通っている常華高校はこの川の上流、要は北、より詳しく言えば、常華高校は常華川が蛇行したところの西沿いにあったはず。あ、そうだ。



「四季の通学方法は?」

「高校ですか?」


 ん? 何で確認取られるの…? ああ。そっか気持ちだけ急いて前後の文脈が全くなかったから…。



「ごめん、そうだよ。高校でお願い」

「川の西沿いを北上するだけですね。最短ルートです」

「俺とほぼ同じだ…。俺は川の東沿いを行って、高校に一番近い桜橋を渡って到着」


 四季は黙り込んだ。考えているのは間違いなく同じ。つまり「何で今まで会わなかった?」この一点。幼いころは兎も角、何で高校生になってから顔を会わせたこともなかったんだ?



「ねー。二人何を考えてるのー?」

「…住んでいるところが近いのに今まで会ったことがないこと?」

「ん?川あるなら不思議じゃないんじゃ?」

「…川だけど小さいんじゃない?…それこそ10 mぐらいとか」

「「「あー」」」


 いまいち理解できていなかったのは川幅がわからなかったからみたい? アイリの言う10 mも日本でそんなに頻繁に見るものではないけれど…。



「あ。そうだ。四季は川渡ったことある?」

「そりゃあ勿論。駅があるんですから」

「だよねー。言うまでもないだろうけど、俺も渡ったことあるよ、友達に会うために」


 「わかってますよ」と言うようにクスクスと笑う四季、それにつられて俺も笑う。って、何で四季と会ったことがないんだ…?



「偶然…ですかね?」

「…今、二人何歳?」

「今年で二人とも18歳の予定」

「ひょっとしたら既に誕生日が過ぎていて18歳になっているかもしれませんけれど」

「年の運行の差があるかもしれないしねぇ…」


 ま、年なんて大人認定を受ける年を越えてしまえば割とどうでもよくなるけれど。



「母ちゃんと父ちゃん、まだ17歳だったの!?」

「そうだよ?」

「うへっ。もっt」


 何故かガロウが黙り込んで目線が俺らの顔から下へズレた。?



「ガーローウ?もし貴方がお二人に対して、」

「「かなり老けて見えるー!」なーんて、言おーとしてるならー」

「…二人が許しても、わたし達が許さない」


 3人は底冷えするような声で言い、さらにダメ押しとばかりに「ジャリィッ!」とアイリとカレンがわざとらしく鎌と鏃をぶつけ音を響かせる。



 3人の顔は俺らの方からは偶々見えないけれど。「偶々じゃないと思うぜ!」みたいな目でガロウが見て来てる? あ。気温が下がった。余計なこと言うなってことだね。この子ら怖い…。



 ガロウの顔はかわいそうなぐらい汗が貼りついていて、青くなってきている。きっと凄まじいまでの圧力かけられているんだろうなぁ…、助けてあげようか。



「一番最初に、俺らの容姿的にちょうど良いって言ったのはアイリじゃなかったっけ?」

「…むぅ。…確かに言ったけど、あれルキィ様が言った事伝えただけだよ。…わたしはそんなこと思ってない」

「ふふ。そんなに拗ねなくても大丈夫ですよ。ねぇ、習君」

「うん。揶揄いたかっただけだしね」

「…むぅ」


 わざとらしくほっぺたを膨らませるアイリ。可愛い。



「ふふ。アイリちゃん。大丈夫ですよ。そもそもあの時触れたのは主に私達の身長の話でしょう?」


 四季が頬を指でついて空気を抜いて、そのままムニムニ。そのおかげで喋れてないけれど…、顔を見る限り納得してくれったっぽい。…で、ガロウはいつまで震えてるんだろうか。



「ガロウ?」

「大丈夫ですか?」

「ヴェッ!?あ、うん。大丈夫。大丈夫」


 手がまだ震えているんだけど…。本当に大丈夫なの?



「大丈夫。大丈夫。オレダイジョブ…。アイリ姉ちゃんもカレン姉ちゃんもレイコも目が死んでたけどダイジョブ…」

「……トラウマになりますかね?」

「なるんじゃないかな…」


 絶対大丈夫じゃない。やりすぎじゃないのアイリ?



「…お母さんに、というよりも、…女性に年の話を振るのが悪い」

「実、見た目問わず。です」


 視線を向けたからかそんな答えが返ってきた。…怖っ。振らないように気を付けよう…。



「そーいえばー、何の話してたっけー?」

「あっちで私と習君が会わなかった話のはずですが…」


 会わなかったのはたぶん偶然。……偶然で済ませていいのかってレベルで会えてない気がするけど。もはや呪いじゃないかとか思うけど、悩んだってどうしようもない。



「とりあえず、あちらの鍾乳洞の話に戻しましょう」

「だね」

「…とりあえず、これを教えてくれた時に、「石筍?」って首傾げてたのはやっぱり成り立ちが違うから?」

「そうだね。どう見たって石灰じゃないしね」

「…石灰じゃなくても石筍出来たりしないの?」

「そこらへんをよく知らないからねぇ…」

「私達が知っている有名どころでは、中国の桂林(コイリン)にタワーカルストなるものがありますが…、」

「あっちは石灰岩の大地が削られるときに、硬くて残されたやつだしね…」


 目の前にある石筍のように、晶出したことによってできたというわけではなかったはずだ。



「というより、いったい何が問題なんだ?」

「ん?ガロウ。復活したんだね」


 てか、よく聞いてたな…。放置を決め込んだ時にはまだ手がガクガクだったのに。



「…何を考えているかはわかるけど、俺だっていつまでもあの調子じゃねぇぜ」

「そっか。それはよかった」

「余計な事を言いそうになったら、またお姉ちゃん三人に恐怖を叩き込まれるんでしょうけれど…」


 四季、それは言わないであげて。さっきの思い出したのかガロウの顔が引きつってるから。



「コホン、そ…、それはいいから」


 お、立ち直った。



「結局、父ちゃん達は一体何が不思議なんだ?」

「何って…、宝石であるトリラットヤが石筍になっていること…?」

「ですかね…?」

「二人ともわかってないのかよ…。」

「「そう(です)よ?」」


 4人の呆れたような、またかというような視線が俺達に突き刺さる。そういうこともあるよ…。自分でも何故かよくわかってないんだから…。



「…でも、二人が疑問に思っているんだったら、何か意味があるのかもしれない」


 !? アイリの思いがけない一言に3人が追従する。



「待って。その思考はマズイ」

「首を可愛らしくかしげてもダメです」


 一瞬、「やっぱりいいよ。」とか言いそうになったけど、ダメだ。不服そうな顔をしている皆が別の言葉を紡ぐ前に言葉を投げつける。



「盲信はやめよう。ね?」

「…ちゃんと考えてるよ?」

「ほんとに?」

「…うん」

「だって、勇者なんだろ?」


 あ。そういえばそっちもあった。カレンにとっては、勇者という肩書はゴミ同然。アイリもたぶん同じ。カレンに比べるとこの世界の生まれである分、まだ勇者補正があるかもしれないけど。



 アイリが鎌を地面に立てジッと俺らの目を見つめてくる。ちゃんと考えてるよアピール何だろうけれど…、そんなことよりも、彼女の赤い瞳の中に俺らの姿が映りこんでいるのが気になる。



 …あぁ、勇者逆補正もあるかもしれない。シャイツァーが鎌だったから、勇者はおろか神まで嫌い。だからこそ…、という補正が。



 レイコとガロウも家族になった経緯は似たようなものだけど…、二人に比べればまだ勇者補正がありそう。どう考えても、一般的な人に比べればないも同然だけど。



 改めて盲信をやめてもらおうという目標達成の困難さを実感した気がする。こんなことで実感したくなかったなぁ…。



「何故か頭を抱えてしまわれましたが…?」

「…すぐ立ち直る」


 まぁそうなんだけど。さてと…、



「ま、変だと思うだけで、あっちでも石筍みたいに宝石が出来ることがないわけではないだろうから…。いいや」


 思考放棄ともいう。



「…じゃあ、さっきのは?」


 さっきの? …ああ。感情かな。



「あっちの違和感は…」

「拭いきれませんね…。というよりかは、何か変だという確信があります」

「そーいうのはー、大事にすべきだと思うよー?」

「だよねぇ…」


 ただ…、このもやもや気持ち悪い…! どうしようもないけど。



 グゥゥウ



 ん、お腹の音? 誰?



「俺だよ。父ちゃん。母ちゃん。ごめん」

「構いませんよ。行き詰ってきましたから、ここでお昼といたしましょうか」

「うん。そうしようか」


 早速、準備。とはいえ、こんなところで料理をするようなつもりはさらさらない。火なんて使った日には死ねる。メピセネ砂漠の通路みたいに風通しがいいわけでもないのだから。



 持ってきておいた缶詰とパンを取り出していただきます。



 缶詰は高いからか、美味しい。けれど、やっぱり真面目に作った料理と比べれば味が落ちる気がする。アクシデントもなくご飯を完食、穴を下へ。



「…またか」

「ですね…」


 壁や地面にニッズュンで見た白と黒だけでなく、見慣れた汚い白がある。ため息も付きたくなるというもの。



「…これで何回目?」

「3回目だね」

「リブヒッチシカと、ウカギョシュがいましたものね」

「リブヒッチシカのおまけにノサインカッシェラもいたけど」


 あれは厳密にはチヌカではない。シャイツァーっぽいやつが暴走した結果だったはず。



「おとーさん達こっちに来てから、チヌカに会いすぎじゃないー?」

「そんなこと言われても…」

「なぜか私達が行きたいところに、行ったところにいるのですよね」


 痛い、めんどい、しんどい、辛いとあいつらにいい思い出がない。にもかかわらず、いる。



「あの…、どういたしました?」

「全く話がわからんぜ!」


 あ。そっか。この二人チヌカは始めてか。えーと、この二人と会ってから強いと言える敵は…、カネリアとベンジスクートとハールラインか。うん、見事にチヌカがいない。



 とりあえずさっくり説明しよう。







_____


「…というわけ」


 「うわぁ…」みたいな顔しないで。俺らも困ってるんだから。



「で、そんなのを感じた父ちゃん達はどうしたいんだ?」

「出来たら進みたい?かな?気配を感じたとはいっても…、ここは成り立ちが成り立ちだし」

「ですよね。槍が貫通したのであれば、槍の先っぽの血肉が付着しただけかもしれませんものね」

「でも、だからこそ、」

「進まない方がいい気もするのですよね……。特に今は、触媒魔法が…」


 かなり使ったからねぇ……。頭の中で魔法を思い浮かべながら、使えない魔法を指折り数えてみようか。



 まず、消化に使った水。次にリンヴィ様に無駄撃ちした風と土。そしてシュガーの口内で発動させた火。後、図書館で使った聖魔法。



「あ。全滅してますね」

「!?…聖魔法は?」


 珍しくアイリが刮目させてこちらに詰め寄ってくる。ちょっと待って。アイリ。落ち着いて。うぅ…、誤魔化してもなぁ…。使えない理由言わなきゃダメだよね…。下手したら命に係わる。



「図書館の禁書の解呪に使ったんだよ」


 ぴたりと動きを止め、天を仰ぎ見るアイリ。きっと今までの出来事を点と点でつないでいるんだろうな…。



「…やっぱり図書館が閉館してるの二人のせいだ…」

「正解。賢いね」

「…これだけ情報があればわかるよ」


 皆、誇るわけでもなく自然にうんうんと頷いている。…そっかぁ。



「ちなみに、閉館理由は、解呪したら本が吹き飛んだからだよ」

「ぐっちゃぐちゃになってしまったから整理中です」


 何を言っているの? みたいな顔されても、俺らも何でああなったかよくわかってないから。



「だからこそ迷うんですよね…。進んでもいいですが、ここで引き返すのもありなのですよ」

「行ってみませんか?この前までならばわたくしは無力でしたが、今は何かいたとしてもお二人のお力になれると思うのです!」


 四季が「引き返すのもありなのですよ」って言ったのに、その瞬間に食い気味に言ってきた!? 役に立ちたいって気持ちもわかるけど…気合入りすぎ。まぁ…、いいか。



「敵がいた場合、戦う覚悟は出来てる?レイコ、ガロウ」

「もちろんです」

「愚問だぜ。父ちゃん」


 二人の目は…、うん。大丈夫そうだ。なら、



「進もうか」「進みましょうか」

「…二人とも同意見みたいだし行こう」

「だねー」

「ああ」


 さらに下へ。壁の白い部分が少なくなってきているためにわずかに暗くなってきている。その上、地下水のせいか足元がドロッとしていて滑りやすくなっているが…、探索に支障はない。



 さて、底には何があるかね……。

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