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白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
4章 獣人領域
131/306

2018 エイプリルフール  喧嘩

 クリスマスを完全スルーした私ですが、エイプリルフールはふと思い立ったので書いてみました。

さて、お読みいただく前に注意点が少々。


 まず、エイプリルフールなのでノリが少々変です。気を遣いましたが若干メタっぽい発言があります。

次に、時系列。一応118の宿に行く辺りを想定しています。が、想定しているだけなので矛盾していているはずです。

 最後に、2つ目と絡みますが...、今までの閑話と異なり、本編に対する影響は皆無です。


以上です。「それでもいいよ!」という方はそのままお読みください。

なお、アイリ視点です。

 …お父さんとお母さんが喧嘩した。何を言っているかわからないと思う、だけどわたしが一番何が起きているのかわからない。



 きっかけは些細な事。…エイプリルフール(四月馬鹿)なる日があると聞いていた皆、…そう皆。わたしも含めて皆。



 …わたしが一番しっかりしないといけないのに。…たまに「天然入っている」とかよくわからないことをお父さんやお母さんに言われるけれど…、わたしが一番しっかりしないといけないのに…。



 …話が繰り返しになってきそうだ。…わたしが抜けていたことはもはやどうにもならない。開き直って振り返るほうが建設的…のはず。



 …状況を振り返ろう。兎も角、たまたま何故だか今日がそのエイプリルフールなる日じゃないのか。そんな気になったのだ。



 …この時点でなかなか訳が分からない。…精神に干渉でもされたんじゃないかと思う。…もう一回探っておこう。



 『身体強化』してみてあたりを注意深く探ってみる。見える範囲に異物はないか、聞こえる範囲に違和感のある音はしないか、匂える範囲に変なにおいがしないか、そして、一番大切な魔力の痕跡がないか。



 …むぅ。そんな気配は…ないね…。



 …悔しいけど仕方ない。…兎も角、そのエイプリルフール(四月馬鹿)という日だと思った皆はとりあえず、馬鹿っぽいことをしてみようと思った。…お父さんとお母さんは首を傾げていたけど、その場の流れか何も言わなかった。



 …兎も角、馬鹿っぽいこと。という事で、…お父さんとお母さんに禁断の質問を投げつけてみたのだ。



 …つまり、「どっちがわたし達のことがより好きか」だ。…うん。…改めて自分で言葉にしてみて思う。…残酷なことを聞いたと。



 …よく考えればわかる。…初対面で、人を信じることをしなかったわたし。そんなわたしを受け入れて家族として接してくれている二人。…臆面もなく、「わたし達のために世界を敵に回しても構わない」と言える二人。…何故か、それを言うときは顔を一切赤くしないくせに、お互いに対して「好き」というだけで顔を赤く染める二人。



 …そんな二人に聞いたところで決着がつくわけがないことぐらい。…でも、普段は賢い二人。…わたし達に「どっちが好き?」とか聞いてこないことからもわかるように、そんな質問をされても、「無為な争いはしない」で終わったはず。



 …だけど、災難な事に今日はエイプリルフールだった。…馬鹿になる日だ。…お父さんもお母さんも、「「自分だ」」と返してしまった。



 …後は酷かった。喧嘩だ。でも、取っ組み合いはしない。…怪我したら困ると思っているんだと思う。…相手のことを想いやっていて何より。



 …罵詈雑言を吐くわけでもない、…心の傷になったら困るからね。…というか吐いた悪口が、



「俺の方が好きに決まってる!この馬鹿!」

「私に決まってます!習君の馬鹿!」


 …だけ。しかもお母さんは顔を赤く染めてた。…さすがに好きって言われ慣れてなさすぎでしょ。…なんでお父さんの言った「好き」を前後の文脈全てを無視して自分だと思ったの……。



  …目をまっすぐ見られていたから? …わからない。…あ、お母さんが言ったあと、お父さんも顔を染めてた。



 …お父さんもあれだね。…謎だ。…おおかた、お母さんの顔が赤いことに気づいて自分のせいだと気づいたからだろうけど。



 …まぁ、それ以上は悪口を吐かなかった。…おかしい。…わたしが拾い食いしようと行った宿で夫婦喧嘩の現場に遭遇 (聞き耳だけど)をした時は、



「貴方の足くさいのよ!」

「あ゛?お前ガサツ過ぎんだよ!どうやったら洗濯で革のベルト引き裂けるんだよ!新品だったんだぞ!?」

「貴方こそガサツでしょう!?どうやったら砂糖と間違えて小麦粉を入れるのよ!?」


 …だとか色々言っていたのに。…あれが異端だったのかな? ほぼ毎回これだったけど。



 …付き合ってからの日が浅いからかな? それとも嫌われたくなかったからかな?



 …まぁいいや。その後、正気に戻るかと思いきや、戻らなかった。サンコプとシールが来て、



「お?喧嘩か?いいねぇー」

「喧嘩なのかい?僕には仲良く見つめあっているようにしか見えないけど…」


 なんて言った。…確かにシールの言う通り、…喧嘩というよりはただの見つめあいだった。



「ところで議題は?」

「「どっちが子供のこと好きか」」


 …二人の声が揃ってた。ここまではよかった。…ここまでは。



「そんなことよりー。どんぐり食べよ?」


 ………。…ちょっと意識が飛びかけた。怖かった。スーラの言ったことはダメだった。…ダメなのが分かり切っているくらいにダメだった。なのに言ってしまった。



 …スーラはきっと、自分の言ったことが、裸一貫で熊の前に出るだとか、上空から何もなしで飛び降りるだとか、そんな生易しいモノじゃなくて、…ええと、なんだろう?


 …お父さんたちが言っていた言葉を使うと、TNTに始まって、プラスチック爆弾、核爆弾、水爆、等々の爆発物にぐるっと周りを囲まれた状態で、それらの導火線すべてに火をつけるようなもの。



 …なんて思ってなかったはず。…だけど、その言葉はダメだった。…わたし達がいるから。



 …カレンは特殊だけど、家族関係を心から求めたわたし達にとって、…親と家族の関係は大切。だからこそ、二人は激高した。



 …二人に濃密殺意を叩きつけられて速攻でスーラは落ちた。…いつの間にか口を塞ごうとしていたシールもついでに落ちた。サンコプが介抱したから多分大丈夫。…トラウマだろうけど。



 …で、そのまま二人はにらみ合った。…殺意出したまま。「…せめて殺意は抑えよう?」そんな言葉さえ言えなかった。…永遠とも思える見つめあいの末についに二人は言ってしまった。



「「四季(習君)なんて嫌い(です)!」」


 と。…そしてそのまま部屋に戻っていった。



 …嫌いって言うタイミングは同じだし、何より今日泊まるところは同じなんだけど……、これはツッコんだほうがいいの?



 …振り返り終了。



「で、どうするんだ?姉ちゃん」

「手はあるのですか?」


 …レイコとガロウは心配そう。…だけど、そこまで大事にならない気がする。



「…とりあえず、追いかけよう。…お父さんはガロウとわたし。…お母さんは、」

「ボクとレイコだねー!」

「…うん。それで」


 …カレンに言葉を取られてしまった…。別に構わないけど。



「…ガロウ。行くよ」

「あいよ。でも姉ちゃん。行く場所一緒だぜ?」

「…知ってる」


 …何となく言ってみたくなっただけ。







______


「ナニコレ」

「…予想通りだね」


 部屋に戻ると、お父さんとお母さんがやけに広い部屋の両端でそれぞれが布団にくるまっている。…触れたらこっちまでやられそうになるほどの鬱感を漂わせながら。



 …横見ればすぐに解決しそうだけど、放置してたら解決しないよね。…とりあえずお母さんが見えないように仕切りでも作っとこう。



「…ガロウ。手伝って」

「え?」

「…手伝って」

「お…おう」


 …2回も言わないと動いてくれないのね、…ガロウはまだ慣れてないからかな? …この際、あの状態のお父さんを完全に無視することになれるのがいいことかどうかは置いておくよ。



「…落ち込んでいる原因は簡単なんだから、すぐに何とかなる」

「なるのか?」

「…何とかさせる」


 …何とかならなくてもありとあらゆる手を尽くして何とかしてもらう!



 …ふたりが本当に別れたがっているわけがないってことがわかってるからこそこういう決意は出来るんだけどね。



「で、どうする?」

「…とりあえず布団はぐ」

「は?」


 …ガロウはポカーンとしてるけど、気にしない。…さて、わたしはそこまで大きくないから素手で布団をはぐのは大変だ。



 なので鎌を使う。…布団の下に鎌を入れる。あとはサイズを大きくするだけ! …簡単。



 …というわけで、そい。



 バサッ!

「ちょ、姉ちゃ、むぎゅ!」


 …ガロウが布団で遊んでいるけどいいや。…今はお父さんだ。…布団をはがれたのに、未だにちっちゃくなってブツブツ言っているのは逆にすごい。



「…お父さん?」

「んあ?カレン?」


 …わたしの声にはすぐ反応してくれるのね。布団はがれて無反応だったのに。…ちょっと嬉しい。



 …それにしても、



「…お父さん、すごく酷い顔になってるよ?」

「だろうね…、死にたい」

「…お父さんが死ぬならわたしも死ぬけど?」

「生きる」


 …日頃の行いって大事だね。



「ぷはぁー。で、父ちゃんはどうしたんだ?」

「…顔」

「うわぁ。ひでぇ」

「ガロウですらわかるか」

「父ちゃんは俺が鈍感だと言いたいの?」

「いや、そう言うわけじゃないけど…」


 …見ていて痛々しい。…いつもなら、笑顔を浮かべているんだけど、…どこか自嘲気味だ。



「…仲直りしたいんでしょ?…呼んでこようか?」

「したいけど…、嫌われてたら立ち直れない…」


 …だよね。…わたしもお父さんとお母さんに嫌われたら死ぬ自信がある。



「アイリ。なんか変な自信持ってない?」

「…持ってないよ」


 …察された。…胸を張っていたわけじゃないのに…。…やっぱりこういうところは気を遣ってくれてるんだね。



「…そもそもの話、聞いたわたし達が悪いんだけど、何であんな問にまともに取り組んだの?」

「エイプリルフールだから?」


 …うわぁ。



「「何も馬鹿にならなくても…」」


 わたしとガロウの声が重なると、お父さんは目を丸くてして驚いたようにこちらを見ている。…相変わらず顔色は悪いけど。



「なんでそんな顔をしているの?父ちゃん?」

「…お父さんがエイプリルフールを説明してくれたんだよ?」


 ぱちくりと目を瞬かせると「あー」と苦笑い。そして、



「違うよ。エイプリルフールは馬鹿になるんじゃなくて、嘘をついてもいい日なんだ。場所によって色々決まりはあるけどね。嘘ついていいのは午前だけとか。嘘をついたら必ずネタバラシをするとか」


 わたしはガロウと顔を見合わせた。間違いない。…解決策あった。



「…お父さん。…さっきのエイプリルフールの嘘ってことにすれば?」

「そうすりゃきっと丸く収まると思うぜ?」


 お父さんは目を混乱しているのかパチパチとさせる。



「もう一回言って」

「…エイプリルフールってことにすれば?」

「さっき言ったこと全部」

「ああ!」


 お父さんは嬉しそうに立ち上がった。向こうでもお母さんの嬉しそうな声が上がっているから…、よし。



 ガロウと顔を見合わせてさっき立てた仕切りのところへ。やっぱりカレンもいた。4人で仕切りを片付ける。…後は眺めるだけだね。



「なあ姉ちゃん。母ちゃんの顔酷いけどいいの?」

「…いつもメイクしているわけじゃないからいいでしょ」

「どのみちー、仲直りするまでー、あの顔だろーしねー」

「致し方ありません…」


 …そう。残念だけどわたし達にはどうしようもないのだ。…今のところ、お父さんとお母さん自身の心は、二人で守ってもらうしかない。



「ええと、四季…」

「はい。何でしょう。習君」


 言葉が切れた。…お互いの様子を窺っているようでびくびくしている。



「あの、さっきはごめん。あれ全部エイプリルフールの嘘なんだ」

「えっ!そうなんですか!奇遇ですね。私もあれ全部嘘なんです!」


 …奇遇 (仕組んだ)だけどね。…言わないけど。…実際、こっちとあっちで同じ着地点になったのは偶々だし。…奇遇じゃないのは会話の流れだけ。



「ええっと、で…、今から言うのはエイプリルフールの嘘じゃないよ。ええっと…、俺はやっぱり、四季、貴方が好きです」


 …お母さんが嬉しそうに口を横に結んで、二人の顔が赤くなった。



「ええと、私がこれからいう事もエイプリルフール関係ないんですけれど…、私も、習君、貴方が好きです。大好きです」


 言った瞬間、お父さんがお母さんを抱きしめた。…うん、大丈夫そうだね。



「…ちょっと外出てよう」

「だねー」

「仲直り記念ですね」

「え?ほっといてもいいの?」

「…大丈夫。…しばらく置いておけば元に戻る」


 処理が追い付いていないガロウをわたし達3人で外に引っ張り出す。…後で、エイプリルフールだから、「嫌い」って言ってみようかな?



 …やめておこう。…二人のことだから、そのこと(エイプリルフール)を忘れて多大なショックを受けそうだしね。

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