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白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
4章 獣人領域
126/306

117話 アリアの本

 歩くサンコプさんに置いて行かれないように建物を出て右へ進む。そしてさらに歩くこと約30 m。



「着いたぞ」

「「近っ!」」

「おっ!相も変わらず仲いいねぇ…。ま、それはさておき、本は高価。それに、禁書もあるから出来るだけ塔の近めにおいておく必要がある。後は…、まぁ、入ってくれれば多分察する」


 察する? 何を? よくわからない…。だけど、サンコプさんは言うだけ言うと、せかせかと入っていってしまった。



「謎ですけど、さっさと入りましょうか。おいて行かれちゃいましたし」

「ああ。そうだね」


 四季に手を引かれて、お寺のような雰囲気を漂わせている建物の中へ。建物の境界をまたいだ瞬間、紙とインクのにおいが鼻をかすめ、視界を本棚に占拠される。図書館に入ってきた! って感じがする。



「ありゃ、手なんて繋いじゃって…。図書館デートか?知的な感じがするねぇ…」

「そうですかね?で、アリアの本はどこにあります?」

「チッ。嫁さんみたいに、もっと大げさに動揺してくれたらよかったのに。シュウはちょっと顔を染めるだけかよ」


 チラッと四季の方を見ると、顔を空いている手で覆っている。だけど、完全に覆い隠せていない部分から見えている肌は鮮やかに紅潮している。明らかに恥ずかしがってるね。自分から手を引いたから余計に。



「四季。本を探そう?ね?」

「そ…そうですね。探しましょうか」

「だが、手は離さないと。仲良くするきっかけ作っただけみたいで、俺っちさみしい。あ。そうだ。リンパスに夫妻がここにいる事伝えてくるわ」


 え。ちょっと待って。俺達を精神的に虐めて放り出すの? 待って。頼むから待って。照れ隠しか、四季の握力ちょっとだけ上がってる気がする。少し痛い。って、待って下さい。まだろくに説明受けてないです!



 あ。振り返ってくれた。ただし、腰から上だけだけど。彼は、ニッと口角をあげて舌を出す。あ。これ。ダメなやつだ。



「あ!そうそう!本は一冊だけにしておけよ!?マジで!一冊だけだから時間余ったからって、いちゃつかれても困るけどな!あ、そうそう。禁書区画にも入るなよ!?ここには誰もいないが…、ますます誰もいなくなるし危険だからな!そんなところで隠れてあんなことこんなことするなよ!?」


 俺らどんなふうに思われてるの!? って、待って。本当に何も説明されてないです! だけどそれは彼には伝わらない。彼は尻尾をにょろにょろと軽快に引きずって出て行った。



「私達、あの人にどんなふうに思われてるんでしょうね…」

「さぁ…?俺が根性なしなのはバレてると思うんだけどな…」


 四季は俺の言葉に頷きもせず、否定もせず、ただ曖昧な表情で沈黙する。逆にその気づかいが心に刺さる…!



「それはそうと、何も説明せずに行っちゃったね」


 誤魔化すように口に出す。



「ですね…。彼も何かいたたまれなくなったのでしょう。後…、私もですが、習君も、口を魚のようにパクパクさせてただけですから…」


 あー。それで反応されなかったのか…。気づかなかったけど、



「ところで、図書館に誰か他に人は?」

「いないと思いますよ。あれだけ騒いだのに…、関係者すら出てきませんから」

「アークライン神聖国と図書館の扱いの差が酷くない?」


 あっちは司書とかもいたのに…。



「例え禁書があっても、それの守りが万全。さらに利用者が少ない。というよりも、いない。これが全てではないでしょうか?」

「だから本は温度、湿度管理ぐらいで大丈夫…ってわけか」


 となると、俺ら二人で一から今から読む本を漁る必要があるわけだ。驚くほど非効率。



「何か案内板的なものはn「ありますね」あるのか…。しかも近い」


 四季の指さす方…、図書館の入り口から入って少しだけ入ったところ。書架よりも少し手前。そこに板がデーンと置かれていた。



「よく考えれば、最初の案内板ぐらいはわかりやすいところに置きますよね。司書もいないのですから」

「まぁ、そうだね。見てみようか」


 二人で板へ近づき…、



「「うわぁ…」」


 揃って声をあげた。 これは酷い。何で、図書館の半分以上が歴代首長関連の本で埋まってるの!? しかもそのうち2分の1がリンヴィ様関係って…。



 理由はだいたいわかるけど…。たぶん、獣人族が纏まるため。外見が違いすぎるから、どうしても同じ獣人でも、他族的な考えが生じる。丁度、日本人と英国人みたいに。だけど、国が今の形(連邦制擬き)を取り続けるために、一つであり続けるために、精神的支柱である首長のことを知れるようにしているのだと思う。



 単に首長…、主にリンヴィ様のことが好きすぎるだけな気がしないでもないけれど。



「あれ?でも、リンヴィ様の本ばっかりな割には誰もここにいないよね…」

「そうですね…。建物が違うんでしょうか?」


 その考えからこれを見てみると…。うん。確かにそうみたい。首長とリンヴィ様関係の本と別分野の本が置いてあるところに謎の線が引かれてて区分けされてる。これが別の建物であることを示しているようだ。



「あっちには司書さんいるんですかね…」

「いるんじゃない?こっちの人も下手したら向こうに行っちゃってるのかもね」

「で、あちらは人手が足りないので追い返すに追い返せないと」


 うん。ありそう。リンパスさんやクヴォックさんに似た人が、本を借りようと司書さんに殺到している光景が脳裏をよぎった。察するってこれのことか。だめじゃん…。



「ま、本探しましょうよ。アリア関連はおそらく歴史で…」

「今、いるところが文学 (首長除く)の棚だから…。歴史はここから左だね」

「みたいですね。お任せしていいですか?」

「いいけど…。四季はどうするの?」

「料理を調べようかと。米や、醤油。味醂などですね」


 日本の調味料ね。これで料理の幅が広がる! 調味料は自分で作れたらべストだけど…、最悪買い占めればいい。



「わかった。お願いしていい?」

「はい。お任せください」

「これで一緒に作れる料理の幅が広がるね」


 何故か四季がピキッと固まった。何で?



「四季?どうして固まってるの?何かあった?」

「え…、いえ、何でもありません!ええ。決して、私の手料理を…。って、と、とにかく…!探してきます!」


 顔を真っ赤にして図書館を走っていく四季。え…。ちょ。図書館で走ったら危ない…。って、もはや聞こえないよね…。



 さっき四季が言いかけたのは…、「私の手料理を食べて欲しい」とかそんな感じ? 俺の思い上がりでなければ。だけど。



 今までずっと一緒に作って来てたけど、これはあれか。久しぶりの日本食は一人で作って胃袋を掴みたいとかそういう感じかな? 何となくこの想像は当たってる気がする。だって、考えただけで顔に血が…。うん。恥ずかしくなって走り去ってしまうのも納得だ。



 切り替えて探そう。あ。禁書区画をチェックしておかないと。そういえば、四季は見てなかったけど、大丈夫かな…。



 ええっと…、文学区画の最奥が禁書区画ね。了解。多分大丈夫だし、探そう。



 少し歩けば、歴史区画。区画の大きさは、奥行50 m、高さ5 m程の廊下3本程度。割と広く見えるけど、一冊一冊が大きいのが多いから蔵書数はそこまでじゃないと思う。



 適当に見ながら歩いていれば、1m級の大きさのある『アリアの伝説』なんていう丁度よさそうな本があった。



 周囲に座れるようなところはないけど…、まぁ、『身体強化』していれば、1冊を読む時間程度立ちっぱなしでも問題ない。







______


 さて、読了だ。



 サンコプさんが言っていたことが事実と確認できた以外は特に何もなかったな。彼女の仲間のこととかも詳しく書いているわけでもなかったし。



 あくまでアリアが主人公の物語だ。小説で言えば、他の人物の掘り下げ待ちか? さらに、本人が書いたわけじゃなくて、口伝。筆者とアリアが同じ時代に生きていたことは間違いないけど。彼女が具体的にどうやって呪いを除去したとか書いてない。



 あ、でも…。「身重だったから周囲 (獣人族)が止めたこと」と「それにもかかわらず、彼女とその仲間が呪い除去、人間領域への出立」を何らかの要因のために強行したことに確信を持てたのは収穫かな?



 でも、それくらいなんだよね…。さて、まだ、時間あるし…、もう一冊適当な本でも探そう。歴史じゃないやつをね。歴史は後でちゃんと時間とって読む必要がある。奥の方に何かないかな?



 なんて探してたら、『勇者のための獣人分類学』とか言うのを見つけた。読むか。名前からして歴史ではないはずだけど…。



 えっと、なになに…、



「獣人の群を地球的な分類で分けようと思って書いてみる。だが、筆を執ってしばらく書いたはいいが、私は地球の動物の類や目を完全に覚えているわけではなく、また、生物学の進歩により、うろ覚えであった私の知識が否定されているかもしれないことを忘れていた。だが、未完は悔しいので書き上げた。それを前提に置いておいて欲しい」


 絶対これ書いた人、几帳面だわ…。生物学者でもない限り、分類とか知らない。覚えてない。興味ない。の3コンボだと思うのに…。



 俺だって、人が辛うじて言えるぐらい。動物界脊椎動物亜門脊索…、あれ? 何だっけ。まぁいいか。重要でないし。



 さて、次…。読む。読む。どんどん読む。



 うん! はっきり言って意味不明。



「やってみたけど、やっぱり目とか類被りすぎ。一般的に分類出来ないよ!分類が間違いなの!?泣くよ!?」(意訳)とかの愚痴? がつらつらと述べられていて、その次に、呪文のような種族分類が羅列されてあった。



 だけど、諦めない。この人ならきっとわからない人のためにわかりやすく書いてくれている気がする。



 で、ページをめくっていくと、詳しい説明があった。あったけどちょっと難解だ。俺なりに翻訳してみよう。ついでに紙に書き留めておくか。メモに使う用の白紙は常に持っている。



子――ネズミと、象。 地球でも確か、ネズミから象へ進化した気がするからその関係?

丑――牛や、キリン、カバ等。体格が牛に似ている皮膚の硬いやつ?

寅――分類で猫にあたるもの。わかりやすい。

卯――兎と有袋類?カモノハシとかもいるらしい。

辰――龍と、水から出せば死ぬ哺乳類。鯱とかイルカとか。…何故か(リンパスさん)空中をいきいきと飛んでたけど。

巳――爬虫類。これもわかりやすい。ただし、胎生 (卵は産まない)らしい。

午――馬やサイ。インパラ等の馬っぽいもの。

未――羊、ヤギ、アルパカ等の羊っぽいもの。モフモフ。

申――猿。ただし、人間は除く。

酉――鳥類。これもわかりやすい。胎生。

戌――犬とかの仲間。狐やタヌキ、ハイエナ等。

亥――イノシシやら豚の仲間。



 あと、魔族。魔族は魚類、両生類。及びその他の生物。だそうだ。群の中でも偏りが酷い…。パッと見て、どう考えても、巳と酉だけ種族数めっちゃ多そうなのに、卯とか、亥少なそう。そもそも無理やり地球の分類に当てはめようとするから無理が出るんじゃ…。



「おーい?シュウ?君。俺っちの話聞いてた?」

「あ。お帰りなさい」


 何で青筋立ててるんだ…? 何かしたっけ?



「シュウ。それ何冊目?」

「2冊目ですけど…。あ」


 答えたと同時に、サンコプさんの笑顔が深まった。…ご、ごめんなさい…。すぐに収納するので…。はい。



「まぁ、いいけどよ。あっちでいろいろやってたら戻ってくるの少しだけ遅れちまったからしな」

「色々とは?」

「まぁ、いろいろだ。主にリンパスを探すのにてこずっちまった」

「何で?」

「…子供らに聞いてくれ。俺っちも途中から聞くのを諦めた」


 俺らの子供? 何で…?



 …まさかとは思うけど、リンパスさん…、子供たちと遊んでいたけど、リンヴィ様との子供が云々ってリンヴィ様巻き込んで暴走した? それとも…、俺らの子供をキーワードに一人寂しくリンヴィ様との子供の妄想でもして壊れた?



 いつもなら察して何かを言って呉れるサンコプさんはやつれてげっそり。答えてくれそうにない。



「あ。そうだ。シキは?」

「え?見ませんでした?」

「見てねぇぞ?案内板から見て右側から探したが…。これよりまだ左側か?」

「あれ?四季は右にいたはずですよ?とりあえず、探しましょう」


 本を元の棚に押し込み、奥側の廊下へ。四季は…。っているじゃん。ちょっと奥まってて見にくいけど。普通にいる。



「いました。行きましょう」

「え?どこにいるんだ…?って、そっちは…。あー」


 どうせ誰もいない。サンコプさんの腕を引っ張って走る。四季はまるで初めて会った時のように、椅子に座って机の上に本を広げてそれを読んでいる。



 この構図、いいなぁ…。四季の大人というか、知的な感じが…、猛烈に「本を読む」という行為に合っていて…。四季が何倍も素敵に見える。本のサイズが大きいからちょっとシュールだけど。



 逆にそこが乙だ。手に余るサイズの紙を丁寧に一枚ずつめくっていく四季…。元から好きだったけど、もっと好きになったかもしれない



 って、何やってるんだ俺。いつまでも見て居たいけど、子供たちが待ってる。本に熱中しているから、目の前に俺が立つぐらいじゃ、気づかないだろう。名残惜しいけれど、手っ取り早く本を取り上げようか。



 わざとらしく音を立てて、四季の前へ。…案の定気づかないか。



 閉じないように中指をページの間に挟み込んで4本の指で持ち上げる。重いから『身体強化』必須だけどちゃんと持ち上がった。



「四季。サンコプさん来てくれたよ」

「あ。ごめんなさい。わざわざありがとうございます。習君。それ閉じてくれていいですよ。パッと見た限りその次のページからはダブってます」

「シキ…?あんたそれ何冊目?」

「え…?三冊目ですが」


 それが何か? と言わんばかりに首を傾げる。愛嬌があって可愛い。



「はぁー。あんたら揃いも揃って俺っちの言う事…。「あ」やっぱりぃぃ!忘れられてるぅぅぅぅ!」


 四季も俺も忘れていたから、サンコプさんが壊れた…。



「くっそう!さっき、シュウはシキ見て、「初対面の時と同じみたいで惚れなおす」とか何とか思ってやがるし、シキはシキで、シュウを見て、「初対面の時と同じみたいだけど、あの時よりカッコいい?」とか思ってやがるし…!マイペースすぎるんだよっ!俺っちの周りにはマイペースしかいねぇのか!」

「「ちょ!?」」


 何で今それを言ったんですか!? しかも、あなたも同類ですよ!?



 って、とりあえず落ち着こう。不意打ちでも落ち着くんだ。落ち着くために思考するんだ。



 ええと…、四季の動揺具合からして、サンコプさんの言ったことは四季の本心。で、俺の動揺から、四季にも俺の本心がバレているわけで…。



 …あれ? 落ち着くどころか、余計に動揺するだけじゃ…。視界にスッキリ! とした顔をしているサンコプさんの顔が入った、これ、俺らの悶える姿で溜飲を下げている…? ほぼ完全に自業自得だけど…ムカつく!



 あ。落ち着いてきた。…ふぅ。ん? あれは何だ? 何か浮いているような…、ああ。目の錯覚か。ひょっとして、まだ動揺してるのか…?



 とりあえず、目をこすってみる。あれ? …見えたまま。錯覚じゃないのか?でも、あんな…、2 mクラスの本が浮くか?



 …浮くね。リンパスさん浮いていたし。



「あ。落ち着いちまった?おもんねぇの」


 サンコプさんが何か言っているけど無視。なぜなら音を立てずに本が開き…、突っ込んできたからな!



 あの本の中に書いてあるものが何かわからない。だけど、見慣れた汚い白とも黒ともつかぬ灰色が、何かを伝えるかのようにのたうち回っているのを見る限り…、当たるとロクなことにならないことだけはわかる。



「四季!」

「はい!お任せください!」

「ちょ、え。何!?そんなに怒ってんの!?」


 サンコプさんが動揺しまくってるけど、説明は後! 彼との距離を一気に詰める。図書館で安全に使えるような攻撃魔法を、俺は今持ってない! 故に、四季に頼るしかない!



「やめて、折れる折れる!体折れる!って、紙出さないで!追い打ちじゃねぇか!死体蹴りじゃねぇか!謝るから!」


 サンコプさんの頭を無理やり下げさせて、射線を確保する。



「『聖弾』」


 間髪入れずに四季の澄んだ声が図書館に響き、本に向かって白いエネルギー体が飛んでいく。



「避けられました!魔法は消しますよ!」

「頼んだ!本は…、こっちに来るか!」


 なら好都合、撃墜する。サンコプさんを支点に…、左に回転!



「ぐえぇ」


 あ。ごめんなさい。体重かけたせいで余計に体が曲がってますね…。サンコプさんでよかった。



 回転による遠心力をペンにのせて、飛んでくる本を無理やり閉じさせ、そのまま床へと突き刺す!



「今度は外しませんよ!『聖弾』」


 ファイヤーボールに似た白く発光する弾が本に激突。少しの間抵抗するように「バサバサッ!」と暴れたが、結局はその一撃で沈んだ。



「ふぅ。サンコプさん。ごめんなさい、説明するより、先に沈黙させる方がいいと思ったので」

「ああ。そうだったの。許す。俺っちじゃなけりゃヤバかっただろうがな!腰がいてぇ…」


 蛇なのに腰か…、ニョロッとした部分と人間の胴の境目かな?



「どうでもいいこと考えてんじゃねぇぞ。で、これは何だ?」

「「本ですね」」

「見りゃわかる。本が飛んだのは、禁書区画だからだろうかね…」


 ここ禁書区画だったのか! 全然気づかなかった…! 俺も四季は全力で頭を下げて謝る。



「いーよ。俺っちがちゃんと説明してなかったのが悪かったんだ。禁書区画は入ろうとする奴の力量で弾けるようになってるから大丈夫だと思ってたが。普通に考えりゃ、勇者は弾かれねぇわな!すまんの」


 とだけ言うと、俺と四季の頭を掴んで無理やり上げさせ…、



「今は、このブツを確認しようぜ」


 と本を持ち上げた。え…、そんな無警戒に持ち上げて大丈夫なの?



「あ?あー。大丈夫だろ。あんたらが既に浄化してんだろ?だったら呪いの類は死滅してるよ。毒は俺っちなら大丈夫だ。即死毒でも大抵は耐性がある」


 じゃあいいの…かな? ほとんどってところが大丈夫じゃない感じがすごいけれど。



「表紙は白と黒の2色ねぇ…。だが、それ以外は何もなしと…。タイトルすら書いてやがらねぇ」

「その白黒は遺跡で死ぬほど見ましたよ」

「へぇ…。呪いを封印でもしたのか?中身は…、ないな。カバーだけじゃねぇか!」

「『聖弾』が当たる前はありましたよ。チヌリトリカの色でした」


 もはや俺らにとっては見慣れた色になりつつある、あの色だ。



「うへぇ…。面倒だな。ところで、『聖弾』って何だ?」


 『聖弾』?ええっと…、何だろう?



「聖なるエネルギーを集めて撃ったもの…ですかね?」

「何で物理的に影響があるかなんて聞かれてもわかりません。」


 「そもそもエネルギーとは?」とか、「物体をエネルギーだけで動かせるか否か?」とか、「エネルギーは、目視可能か?」なんて問が浮かび上がってくるけど、解答なんて知らない!



 でも、光ヨット的な技術があったはずだから、光っぽい、聖なるエネルギーもそれに近しいことは出来るはずだ。あれ? 光ってエネルギーだったっけ? 光量子とかいう粒だったような…。…光がエネルギーの一形態なんだったか?



「どうでしたっけ?」

「おう。シュウ。俺っちが悟ってる前提で質問するのはやめろ。確かに悟ってるけどな!」

「じゃあ。いいじゃないですか」

「よくねぇわ!悟ってても噛みあわねぇこともあるしよぅ。そもそも、てめぇの頭の中で?が乱舞してることぐらいしかわからん!」


 自分でもきっとよくわかってないから…。



「魔法だからそれでいいじゃねぇか。過去の勇者様も、「魔法だし。仕方ない!」で済ませていたらしいぞ」


 俺らと気が合いそうだ…。



「で、この本どうします?」

「そりゃひとまず持ち出すぞ。その前に、どこから抜けたかを探さなにゃなならんな。探すの手伝え。俺っちはこの目の前の列探す」

「では、俺は右の列を」

「では、私は左を」

「禁書は持ち出されたことはねぇはずだから、隙間を探してくれりゃあそれでいい!」

「「了解です」」


 えっと、棚の隙間隙間…。隙間…。2 m級だからすぐに見つかるはず…。あ。なーんだ。すぐに見つかったね。



「「「あった!」」」

「「「え?」」」


 ちょっと待って。何で声が重なるの?

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