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白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
4章 獣人領域
117/306

108話 続シュガー

「また来ますよ!」


 また突進。芸がない。でも、こいつの中で一番うざい。



 俺達がいるのは部屋のほぼ中央。一番避けにくい位置だが、距離はある。大丈夫。避けられるはず。



 水を勢いよく蹴りだし、『シュガー』の直上を通りぬける。速度は速くても、いや、速いからこそ、向きを変える力が弱く、まだ避けることができる。ただ、水流の煽りを受け、流されるが。



 あ。やっぱりか…。嫌なモノ見つけた…。伝えると嫌な気持ちになるのは確定。でも、四季に伝えておかないと。



「四季」

「はい。何でしょう?」

「俺らがシャイツァーで付けた傷すら治ってた」


 思った通り、俺の言葉に四季の顔が歪む。まじめにどうしよう。「どこかで、回復は自爆の傷だけ」なんて考えていたのが悪いだろうか?



 それはさておき、しっかりとあの光は他人からつけられた傷すらも回復させるようだ。



「撤退も視野に入れたほうがいいか…」

「その前に、この子。私達を逃がしてくれますかね?」


 …確かに。シュガーはわざとやっているのか、偶然なのか定かではないが、出来るだけ俺らを部屋の中央に押しとどめるように行動している。だから…、



「悠長に話している暇はなさそうです!」

「またか!」


 まるで「俺らを帰す気などない」というかの如く、シュガーは大口を開け、水を吸い込み始めた。



 こいつのブレスの回避法は2択。懐に入るか、軌道を逸らすか。気合で避ける? おそらく不可能。俺らの泳ぐ速度よりも明らかにブレスを動かす方が速い。



 それに、床も、天井も、壁も…、何らかの衝撃がこの戦闘が始まってから加わっている。特に壁。なのに、壁を先ほど確認したが、この超重量がぶつかっても欠けてすらいない。



 だからこいつは、ここの損耗は気にしない。故に安全地帯なんてない。



 とはいえ、こいつの雑な攻撃を見る限り、まともに思考しているかどうかは怪しいが。…雑でも当たるとヤバいが。むしろ、当たるとヤバいから雑なのかもしれない。



「来ますよ!」

「「『『壁』』」」


 先ほどと同様に壁を作り、壁で反射させて、軌道を下に逸らす! ……ッ、ダメだ。足りない! 向こうから水が少し漏れてきた。……抜かれる!?



「私が止めます!」


 四季がシャイツァーである、ファイルでブレスを受け止める。幸い、ブレスはほぼ終わりだったらしく、四季がちょっと触れただけで霧散した。



「今のはヤバかった…!」

「もう少しあれの時間が長ければアウトでしたね…!」

「四季!」

「またですかっ!」


 再度の突進。だが、今までと違って、何を思ったか体を捻りながら飛んでくる。相変わらず雑だ。だが、狙っている効果は明白。



 シュガーは、回転することで体全体、およそ50 mの円平面を攻撃面に変えたのだ。先ほどまでは、攻撃面は30 mの円平面だった。つまり、およそ1.7倍…!だけど、



「ですが、抜けれないことはないはずです!」

「ああ!ヒレを伸ばしていても隙間は生じているからな!」


 超高速で回転しない限り、回転したところで、ヒレとヒレの間には隙間が残っている。今のシュガーの回転する速度と、こちらとあちらの相対速度を考えれば、ぎりぎりヒレとヒレの間を抜けられ…。



 その時、突っ込んでくるシュガーのヒレがキラリと光を反射した。



「ダメです習君!」

「わかってる。俺も見えた!あいつのヒレ、凍りっぱなしだ!」


 何でまだ凍ってんだよ! …ああ、体の正面と上面は神戸と激突していたが、ヒレはまだだったか!



 氷があることの問題は、先ほど見たときよりもヒレの太さが太いという事。俺らの考えていたよりもヒレとヒレの隙間が小さくなるな…。…抜けれられるか? いや、違う。何としてでも抜ける。



「四季!壁を!」

「わかってます!ついでに白紙の紙も数枚渡すので、隙を見て書いてください!」

「わかった!」


 シュガーに突っ込みながら返事をして、真っ白な紙を受け取る。



 綺麗な紙だ。少なくともここの白色とは比較すること自体が間違いだと思えるほどには。



 って、俺は何場違いな事を考えてんだ。今はそうじゃない。ポケットに紙を押し込む。目指すは一番安全な外側をめがけて突き進む。内側はヒレが云々以前にシュガー本体があるので死ぬ。



 そして、ある程度近づいたところで、進行方向をシュガーと平行に。これで彼我の相対速度は最大だ。これで抜けられる…か?



 ダメか! 間近までブォン! という音が迫ってくる! 抜け切るのは確実に無理だ。そう認識すればやることは早い。



「「『『壁』』」」


 金属の壁が紙と引き換えに出現。だが、おそらくこれだけではシュガーの攻撃を回避しきれない!



 だから、俺と四季は壁を下から支える。無理に抜け切ろうとして失敗するよりかはいくらか損害がマシだろう。そう言う判断だ。



 『壁』とヒレ…、正確には氷だが、それらが猛烈な勢いで激突する。カン! などというかわいらしいモノではなく、ズバゴォン!とでも形容すべき重音が鳴る。



 そして、俺と四季の支える腕に猛烈な衝撃が加わり…、一瞬で『壁』全体にヒビが入る。少し遅れて、壁は木っ端みじんに粉砕。だが、既に俺と四季は『壁』の後ろにはいない。

何故って、激突と同時に弾き飛ばされたから。



 ダァン!



 シュガーのジュリジュリ! と天井で新鮮なひき肉を製造する音に負けないほどの音を立て、俺と四季は床に激突。それだけでは止まらず、そのまま壁に吹き飛ばされる。



「「ッ!」」


 二人とも、何とか壁に激突する前に何とか受け身を取ることに成功した。傷は…。ああ、もう。確認するだけ無意味だな。重傷なのは明らか。このままでまともに動けるわけがない。



「「『『回復』』」」


 傷が癒える。だけど、痛い!



「今日三回目だけど、全然慣れない!」

「慣れるのはダメでしょう…。むしろ強くなってますよ!ほら、紙が…!」


 四季の手から紙が元からなかったように消える。もう限界か…! 畜生! だが、先に『壁』だ! こっちの方が先に切れそうだ。後…、



「何か使える触媒魔法は…!?」


 四季に尋ねる。あ。焦ってるのか、俺? 四季に対して少し怒鳴るような口調になってるぞ…!



「あれば既に使ってます!闇と聖魔法はよくわからない代物ですし…!」


 だが、四季もそんなこと気にしている余裕はなかったようだ。俺と同じくかなり焦っている。



「雷は!?」

「水中ですからこちらまでダメージが来ますよ!?それに拡散してしまってろくなダメージにならないかと!相打ちは絶対ごめん被りますが、一矢報えずに死ぬのはもっと嫌ですよ!?」


 やっぱり雷はダメか! 何であの時にリンヴィ様に土と風の触媒魔法撃ったかな!? いや、あの時はリンヴィ様がかなり強いのわかってた上、敵対しそうだったから、やらない選択肢はなかったわけだが…!



「また突進です!」

「大丈夫。この位置からなら余裕!」


 危なげなく回避。だが、この位置だと次の突進が…!



「って、ブレスか!これなら避けられる!」

「さっきと同じ回避法でいけますね!」

「さっき目印になってた触媒魔法はなくなってるけどね!」

「わかってますよ!ですが、やる以外に選択肢はないです!」


 四季の言う通りだ。さらに、一回やったからといって油断すれば死ぬ。だから油断はしない。2回目のブレスと同様にタイミングを計って、シャイツァーを口に投げ、上唇を掴む。



 先ほどは思いっきりぶん殴ったのに閉じなかった。だから、余計なことをせずにそのまま退避。奴の上方へ。



「見ましたか!習君!」


 四季が嬉しそうな、輝く顔で声をかけてくる。いつもよりも3割以上可愛く見える。…何故だろう? 何でこんな時に四季がいつもよりかわいく見える?



 あれか。自分がピンチだからせめて記憶に残そうとしてとか、生存本能とかか? 俺の脳が一番俺の思考分かっているはずなのにな、変なの。…死んでたまるか。



「聞いてますかー!?」

「え!?聞いてた。見てない。何があった?」

「口の中の傷。まだ残ってましたよ!」

「口って…、シャイツァー投げたやつ?」

「はい!これなら…って、うわっ。」


 シュガーがブレスを吐き、さらに猛烈に回転しながら俺らの下を通過。ムナビレよりも後ろにいたからあたる要素は微塵もなかったのにも関わらず。



 だが、シュガーの突進で生じた水流で再び部屋の中央に押し流されてしまったが…。



「さっきの話の続きだけど、シャイツァーの攻撃だけでシュガーを文字通り削り切れる?」

「何回もやれば」

「それまでに俺らミンチになってない?」

「うっ…。流石になってそうですね…」


 あまり言いたくないが、どう考えても削り切るよりも先にこっちが死ぬ。それが、すりおろされてか、轢かれてかはわからない。だが、どっちにしろ愉快な想像ではない。



 って、またか!



「突進だ!」

「またですか、この位置なら…!」

「壁数枚で何とかなるな!」


 隙を見てチマチマと書いて、2枚仕上がった。これと既に書いてあるぶん一枚を加えて完全に俺らを守り切れる!



 そして、思った通り。退避の時間を稼いでくれた。やっぱり、紙の消耗がまずい…!



「せめてシャイツァーが大きくなれば守りやすいのですがね…!」

「それでも結局、膂力の差で弾き飛ばされるけどね!それよりも、複写できればいいのに…!こう…、ガリガリって書いたら同時に2枚3枚って仕上がったりしないかなぁ!?」

「あっ」

「どうした。四季?」

「ちょっと待ってください」


 四季が存外真剣な顔で言う。思わず黙る。あ、でもただ待つだけじゃなく、こちらも紙を書いて増やさないと…!



「習君。確か、習君って、ペン先変えれますよね?」

「ペン先?ああ。確かに、ペン、ボールペン、鉛筆と色々変えられるけど?今…、というか何の役に立つのかわかんないよ?」

「いえ、参考になりましたありがとうございます!でしたら…!」


 だから何? と聞く前に、喜びに満ちた顔で言葉を紡いだ。俺をその顔の美しさにはっと言葉とともに息をのんだ。あ。



「習君にできるなら、私にもできるはずです!」

「四季。テンション上がってるとこ悪いけど。ブレス」

「うぇ!?あ、はい」


 一瞬で冷静になって、壁の紙を用意する四季。ついでに2枚ほどの白紙ももらった。それにしてもまたブレスか。



「ん?吸い込みをやめましたよ?」

「え?もう?時間がかなり短いが…、まさか…!」


 と思ったら、シュガーは変則的に水球(・・)を吐き出してくる。なんだ。水球か。



「舐められたものですね…!」

「だね。この程度なら!」


 ぶっ潰せる。ぶっ壊すのは何もシュガーだけの専売品じゃないんだよっ! ロックランスを突き刺し、さらにダメ押しでシャイツァー! これで全て潰せた!



「突進来ます!」

「了解!」


 ブレスからの間隔が短い! …足を持ってかれかけた。だが、何とか避けた!



 それにしても…、こいつの行動原理がわからない。今のように応用効かせてくることもあるが…、こいつの行動は、今まで全て



1. 最奥から入り口に突撃

2. ブレス

3. 入り口から最奥に突撃


 とループしてる。わけがわからない。プログラミングに失敗したロボットか何かか? これだけの行動でも、巨体のせいでかなりの脅威になるのだが。



「習君!できましたよ!」


 四季の嬉しそうな声に振り向くと、四季はキラキラと輝く顔で紙を嬉しそうに見せてくる。



「なにそれ?」

「『複写紙』です!やってみればできましたよ!」

「え!?言ってみただけだったのに…。ありがとう。書いてみる」


 複写紙の下に紙を一枚置いて、書く。使い方あってるよな? 四季を見てみると頷いた。よし、壁なんてなくても膝を使えば字は書ける。字の美しさ? ごみ箱に捨ててしまえ。



 字はすらすらと書ける。だがこれ…。



「魔力消費がいつもより多くない?具体的には1枚分ほど」

「みたいですね。書く時間を省略する分、魔力をよこせという事でしょうか?おそらく、最初の一枚は別として、一枚増やすごとに一枚分増えます」


 つまり、2枚一気に書けば3枚。3枚なら5枚…か。それに間違いなく書きにくくなる。それに、筆圧を濃くしないと複写できなくなるだろうな…。だから、机があってもおそらく精々一度に5枚が限度。



 今は机なんてない。だから、できて2枚か…。



「だが、今は魔力よりも紙が欲しい。だから都合がいい!」

「役に立てたようで何よりです!それよりも、突進来ますよ!」

「ああ!」


 この距離感であれば、掠って、水流に煽られるぐらいですむ…。ッ!? 水球!?



「「『『ロックランス』』」」」


 さらに、シャイツァーを突き出す!



「よし、砕いた!」

「ですが、シュガーの突進は回避不能です!」

「だね!こんな応用してくるなよ…!」


 水球潰している間に逃げきれなくなった! ああ、もう! 『身体強化』して、『壁』残り全て!



 全部で5枚。だが、シュガーの巨体はそんなもの存在しないかの如く、軽々と粉々にする。そして、接触。



 ズガッ!



 体が激しく揺れる。床に一回、壁に一回。合計2回か。はは…、痛すぎて痛みがないとか…笑えてくるな。



 あー。腕が引きちぎれたかー。そこに浮いてるなー。アハハー。はぁ。痛すぎて頭も少しヤバくなってた…。まぁ、即死しなかっただけマシか。



 腕は、拾ってつなげた方が魔力消費少ないかな? 腕の在ったところに腕を当ててと・・…。体中の骨が逝ってるはずなのに、痛くないから普通に動けるな…。



「「『『回復』』」」


 治ったはず。腕をグルグル。よし。違和感なく動くな。



「四季?何してるの?」

「習君こそ。何故、私と同じように腕を回しているんです?」


 ……。なるほど。四季も腕をやられたと。……よし。撤退するか。だが、ただでは逃げない。せめて調教してやろう。



「キュ!?」


 ん?まだ鳴けたのか。鳴かないから鳴けないものだと勝手に思ってた。よし。決着を付けよう。たぶん殺しきれないが…、こいつが今と同じ行動をしてくれるならば、チャンスはある。こいつの表皮が無駄に硬くてよかったな。逆に。



「ブレス来ます!」

「ファイル!」


 貸して! と言わなくても貸してくれた。それどころか、書きやすいようにしたから支えてくれる。これなら…!まとめて5枚は書けそうだ!というか出来ないと死ぬ。だが、シュガーが吸い込み終わるまでに俺が書き終わる方が早い。



 よし、タイミングを計って…!



「「『『壁』』」」


 金属でできた壁が出現。何度もやっていれば、この『壁』の持続時間が短いことはバレている。だからだろうか? 最初に太く強いの。その次に小回りの利く水球を撃ってくる。だが、そんなこと俺らも読めてる。



 3枚の壁は砕け散りながらも確実にブレスの向きを変え、水球を防ぐ。次は…、突進か。



いつになく速度がない。やはり溜め時間とか、行動後の硬直とかあるのだろう。その分、口を開けて泡…、というよりそれなりの破壊力を持ったブレスを吐くことで、補うつもりなのだろうが…。今までよりも格段に遅い。この程度なら…。



「「『『柱』』」」


 柱をシュガーの真下に急に出現させる。すぐにへし折れて使い物にならなくなるが、少し浮き上がればそれでいい。これで…、奴の突進の勢いを利用すれば受け流すことができる。



 俺らの上を滑らかに通り抜け壁に激突。どうせダメージはない。



「四季、火魔法使う。水中だけど。だからこそ意味がある」

「私達も吹き飛びますが…。ま、いいでしょう。外でアイリちゃんたちが待ってますからね」


 これだけで悟ってくれるのか。俺が何をやりたいか。ただ…、もっと離れてても紙で魔法使えるようになればいいんだけどな。その方が多少は衝撃がマシになる。とはいえ、離れすぎても俺らは死ぬのだが。難儀なものだ。



「使う魔法は火球でいい?」

「いいのでは?あれは純粋な熱の塊です。すぐに周りに吸収されるでしょう。それよりも蓋、もしくはダメ押しの方法を考えましょう。」


 ダメ押しね…。やりたいのはやまやまだが、おそらくこのまま喰わせる(・・・・)方が効果はあるはずだ。



「あ。でも、火球よりも、『超高温火球』にしてみようか。その方が熱量を持ってそうだ」

「ですね。では、それをお願いします」


 賛同ももらったし、書くか。水中だからか、『火球』より強いからか、書きにくいな…。それでも書きあげるけど。



「あ、壁もお願いいたします。今なら、『鉄壁』や、『不壊の壁』など書けそうですよ?」

「不壊は困る。片方は表皮より柔らかくないと…。ん?いや、2枚用意して片方が不壊ならいいか…。やってみる」

「まぁ、不壊なんてありえませんけどね…」

「まぁ、気分の問題だよ。気分の」


 『超高温火球』は書けた。後は、壁2枚。『シュガー』はジッとしている。次で仕留める気だろう。面白い。受けてたってやろう。ペンをさらさらと動かして…。



「はい。出来た」

「お疲れ様です。では、あの子の行動を待ちましょうか。予想通りならば…」


 ニッコリと二人で笑みを浮かべる。



 予想通りならあいつを倒せる。無理でも調教できる。最奥の壁。シュガー、俺ら、そして門。それらが一直線に床に、天井に平行に並ぶ。よし、準備は整った。



「突進来ます!」


 さぁ、来たぞ…! どう出る!?



「ブレスを吐いてきませんよ!?」

「なぁっ!?吐いてくると思ったのに!?」


 俺らの声を聞いてシュガーは心なしか嬉しそうに口角をあげて、口を開く。始末できると思ったのだろう。



 だが…、これは嬉しい誤算だ。わざわざ喰うほうを選ぶなんて。ブレスがない分楽だし…、何よりこいつに致命的な一撃を叩き込める!



 さっき書いたばかりの紙を目の前に放り投げ、少しだけ後ろに下がる。シュガーよりも圧倒的遅く、逃げることも出来ず、奴の口の中に入る。だが、想定内だ。



「「『『鉄壁』』」」

「「『『不壊の壁』』」」


 そして、魔力を全て攻撃に回すために、『水中服』の魔法を切る! これですべて整った。よし。忘れずに耳を塞いで……、



「「『『超高温火球』』」」


 俺達からすでに壁で見えなくなった紙。それから、普通の紙ならば、一瞬で跡形もなく燃え尽きるであろう熱量が壁越しに生じる。



 それと同時、水中であるのにも関わらず爆音とともに爆ぜた。その爆破の衝撃で弾き飛ばされて猛烈な勢いで外へ。



 カハッ…。予想はしていたが…。衝撃が尋常じゃない…。耳も痛いし…、それに息も…。出来ない…。



 グエッ…。後ろに何が…? ああ。アイリとカレンか。上にはレイコとガロウもいる。



 意識を手放してしまいたくなるが…頑張って耐える。自発呼吸はしておかないと面倒だからな…。



二人に引っ張ってもらいながら水上へ。



「「ぷはっ!」」


 『水中服』のおかげで呼吸できていたが、空気がものすごく美味しく感じる。



 何か皆言っているが…、帰ってこられた安心感でもう無理だ。心の中で謝りながら視界が暗転した。

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