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白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
4章 獣人領域
108/306

99話 続々VSハールライン

「あまり俺を舐めないだくださいよぉ!」


 ハールラインが腕を振るう。だが、カレン姉ちゃんには当たらない。否、影すら追えない。



「ハッハッハ―。頭に血が上った人の攻撃は避けやすいことこの上ないねー!」


 盛大に煽りながら弓でぶん殴るカレン姉ちゃん。…もはや何も言わないぜ。



 例え違和感しかなくとも、あれが一番合理的なんだから…。吸収されることもないし。でもさぁ…、やっぱり違和感しかねぇ!



 それはさておき、俺も加わろう。全力でぶん殴ればダメージはあるだろ!



「でぇい、でぇいでぇい!」

「おらぁ!」

「行きます!霊孤|《礼子》の名の下に、わたくしの望むままに命を奪いなさい。『ガルミ―ア=アディシュ』!」


 レイコいきなり呪文短縮したぁ!? 早くねぇ!? 全然撃ったこともないだろ!? だが、俺はレイコを信じる! そのまま攻撃!



 …本当は少し怖いけど! だが、これくらいの恐怖は「カレン姉ちゃんが信用していたのに、俺がレイコを信頼しないなんてことできるわけない!」という気持ちで抑え込める!



 などと思っていると俺とカレン姉ちゃんに害を与えずに素通り、槍のような形をした魔法がハールラインに炸裂、奴の体を少し焼いた。無事成功だ!



「鬱陶しいですねぇ!貴方たちが邪魔で、レーコ様がろくに見えません!」

「それが狙いだからなっ!」

「むしろそうじゃないと困るんだよねー。えいっ!」


 カレン姉ちゃんが大きな矢を一射。不意を突いたはずだったのだが、かなり無理な体勢から『グリック』を当てて吸収した。まじかよ…。



「『グリック』!」


 奴がそう叫ぶと荒々しい光に包まれ傷が癒えた。そこまでダメージは与えてなかったが…。全てを無に帰された気分だ。まぁ、実際は違うんだが。だって、この徒労感は消えねぇから!



「チィッ!回復まで使わされるなんて…!」

「舐めすぎだよー。ばーか」

「馬鹿だとぉ!?」

「スキあり!」

「ええと…、『ガルミ―ア=アディシュ』!」

「でぇい!」


 俺の爪を立てた渾身の一撃が腹に。レイコの魔法が俺やカレン姉ちゃんを貫くことなく一発。さらにカレン姉ちゃんの弓の弦が奴の腕を捉えた。



「むー。流石に斬れないかー。アイリおねーちゃんなら切れたのになッ!」

「比べる対象がどう考えても悪いぜ、姉ちゃん…」

「それもそうだねー」

「ぬぅ!俺の前で!俺以外の話をしないでいただきたい!」

「お断りします」

「やだー」

「断る」

「ぬがあああ!絶対、貴方たちの力を奪う!」


 はい、追撃。綺麗に3人分。合計5発ほどが叩き込まれた。煽れば簡単に乗ってくれる。やはりこいつ馬鹿なんじゃ…。



 でも…、効いてる気がしねぇなぁ…。主に俺が魔力を抜かれて強化されたせいだよなぁ…。



「効いてますか?」

「ちょっとは効いてるよー!」

「それって意味…」

「ないですねぇ!」


 何故かハールラインが答えて、俺やカレン姉ちゃんを無視してレイコを殴ろうとする。だけど、無意味だ。レイコだって『身体強化』はできる。紙のおかげだが…。だから、避けることぐらいはできる。避ければ、俺らがいる。どうにかする。



「ていてい!」

「でりゃあ!」


 俺らを無力化していったわけではない。だから、俺らがハールラインに攻撃をすることも出来る。でかい矢が一本背中に。俺がダメ押しとばかりにそれを押し込む! だが、大したダメージではないのか普通に動きやがる…!



「レイコー!」

「わかってます!」

「魔法使っちゃっていいよー!」

「え、ですが…」

「いいからー!」

「あ、はい。『ガルミ―ア=アディシュ』!『ロックランス』!『ウォーターレーザー』!」


 カレン姉ちゃんに押し切られるように魔法を使いまくるレイコ。カレン姉ちゃんも大きな矢を数本だけ射る。だが、悉く『グリック』に命中、霧散していく。どうすんだよこれ…。



「『石筍』」

「オブッ!」


 等と思っているとハールラインが吐血した。カレン姉ちゃん…。



「前にだけ関心を向けるイノシシには当てやすいよねー!これ!」


 実に楽しそうな声。ちょっと怖い。石筍…。何だったっけ?



「洞窟で地面から生えているあれだよー!」

「『ガルミ―ア=アディシュ』!あれですか…。全然わかりません!」

「あー、そっかー。実物見たほうが早いよー。見せてもらいなよー。簡単に言うと、洞窟の中でなんだかんだあってできる筍みたいなものだよー」

「実際に見ることにします!」

「それが賢明だよー!」

「オプッ…、貴方たち…!舐めくさってくれますねぇ!」


 ハールラインの纏う魔力が強化された。レイコや、父ちゃん達の魔力を奪ったからだろう。実際…、



「ハハ―!どうです、この力!レーコ様一人、その一部でこれですよぉ!」


 すごくうれしそうに声を張り上げているしな。よほどうれしいのか光弾をくるくると周りに浮遊させているし…。



 盛大な勘違いは指摘しないでおこう。カレンお姉ちゃんでさえ、言わないつもりだろうし。というかむしろ「言ったら怒るよー」といった感じ。



 絶対言わないから安心して欲しいぜ…。てか、うちの家族怒るとマジで怖い人しかいないぜ!



「…むぅ。やっぱりこっちかなー。作戦変こー!」

「え゛!?作戦なんかあったの?」

「失礼な!あったよー!」


 なん…だと。俺の目には脳筋スタイルでごり押ししているようにしか見えなかったのだが…。それでも、俺と違って頭に血が上ったせいで魔力を無駄に吸収させたことは…ないんだろうな。そう考えればしっかり俺よりは考えてるぜ! さっきのもたぶん何か意味があるんだろう。



「もっと魔法主体で攻めていくよー!」

「血迷いましたか!俺が喜ぶだけですよ!」

「ふっふー。本当にそうか確かめてみようよー!」


 カレン姉ちゃんが挑発的に笑う。そんな姉ちゃんの背後にはいつの間に準備したのか。大量の矢が。



 そして、レイコもいつの間にそんなすべを身につけていたのか、『ガルミ―ア=アディシュ』を滞空させている。



「本当にそうきますか,…。ならば、『グリック』!俺も応戦することにしましょう!」


 ハールラインは一瞬だけ困惑の表情を見せたがすぐに魔法を浮かべる。



 『グリック』というだけでいいのかあいつ…。父ちゃん達と同じく吸収する手間が必要だが、それでもずるいなぁ…。



「面白いねー!じゃあ、勝負ー!」


 何が面白いのか俺にはよくわからねぇが、カレン姉ちゃんの声をきっかけに両者動き出す。



 矢がハールラインの火球に激突し互いに消滅。レイコの魔法がハールラインの魔法を呑みこみ、2つ目…に打ち消されるが、後ろから来た矢に打ち消され、直後軌道をギュンと変えてハールラインを狙う。だが、奴は涼しい顔して吸収した。



 カレン姉ちゃんが小さく「ちぇっ」と声を漏らした。…殺意満載すぎて背筋凍るぜ…。

3人の間で魔法が打ち消しあいド派手な音が鳴り響くが…、魔法量が互角だから抜けてくるような魔法はない。



 …あれ? 俺できる事なくね? 紙を使えば参加できるが…、そんなことで使っていいのか? いや、まぁいいだろうけど…、万が一抜かれたらまずいからこのままで。



 それにしても…、あいつは何で今の状況を作ったんだ?あ いつの大好きな吸収ができるチャンスのはず…。俺の自前の『身体強化』を除いて、こちらの魔法攻撃はシャイツァー、もしくは霊孤の力によるものだから、直接『グリック』を当てないと吸収できないが。それでも吸収しないという理由はないはずだぞ?



 単純に量の問題か? 腕を振るえば吸収できるとはいえその間無防備になるわけだしな。俺でも上半身を守った隙に、足をいじめるとかはするぜ。



 たぶん俺の家族ならレイコ以外は嬉々として隙を叩きに行く。



 ん? あいつの口が動いている? …『グリック』? むっ!



 突如として軌道を変えた何か。それを叩き落す。形を見る余裕なんざなかったが…、今のは矢だった。間違いなくカレン姉ちゃんの矢の性質までも強奪出来ている!



「カレン姉ちゃん!あいつ、俺らの魔法もちゃんと!」

「知ってるよー!」

「ふぁ!?」

「あ、ごめん嘘―!推測できてたよー!の間違いー!」


 びっくりしたぜ…。「なら何でレイコのことわかんねぇんだよ!」ってあともう少し遅かったら叫んでたぜ…。



「まぁ、マネできていたところでー、所詮はボクの劣化だけどねー」

「何ですって!?俺のこれは完璧なはず…」

「フッフー!面白い冗談だねー!」


 カレン姉ちゃんは意地の悪い笑みを浮かべる。実際、魔法を撃つことに意識の大部分を割いているのか、軌道は変わったことは変わったが、誤差レベルだった。



「ボクの技術はね、そんなもんじゃないんだよー!」


 カレン姉ちゃんは弓に矢を5本番え、発射。それを高速で繰り返す。だが、それをしながらも発射された矢は全てハールラインの放つ魔法を回避し、奴に迫る。ハールラインは焦ったように『グリック』を振るい吸収する。が、5本に1本はハールラインに突き刺さる。奴を殺すには到底威力的な意味で足りないが…、抜群のコントロール。



 その上、そんなことをしながらでも、危ないと判断した魔法はしっかり叩き落し、矢はきっちりと前に飛んでいる。



「なっ…、貴方は片手間でも矢をまっすぐ飛ばせるのですか!?矢をまっすぐ飛ばすだけでも難しいというのに…!?」

「当然。操るのもねー」


 わざとらしく言葉を切る。そしてものすごく意地の悪い笑みを浮かべ…、



「片手間でもできるんだよー。わかった?この偽物めー」


 ハールラインが「ギリッ」と音がなるほど唇を噛む。出血しているから、相当腹に据えかねたようだ。だが、言い帰すことは出来ねぇ。事実だからな。



 カレン姉ちゃんは父ちゃん達が途中で見つけた蕾から孵った? ハイエルフで生後2か月たってないとか言うわけのわかんねぇ生命体だが…、自分の得物である弓、すなわち、シャイツァーの扱いは間違いなく一流。



 俺はシャイツァーがどんなものかはわかんねぇが…、それでも、付け焼刃でしかない奴の矢の制御能力と、おそらく十全に把握できているであろうカレン姉ちゃん。勝負になるはずもねぇ。まず土俵からして違う。



「ほらー。何か言い返してみたらー?ねぇねぇー」

「絶対に、貴方は、許しません!」

「許してもらわなくてもいいよー。そんな権利は貴方にはないからねー」


 煽る煽る。あいつの血管切れるんじゃねぇかな?



「あ、ガロウー。ちょっとだけ魔法撃ってて。レイコと話したいからー」


 俺に否はない。とりあえず魔法をぶっ放す。



 撃ってる間、横から時折、レイコが「え!?」や、「出来ませんよ!?」なんて言っているが、カレン姉ちゃんは「出来るよー!やってみてー」の一点張り。



 だが、俺が紙を一枚使い切るかどうかという非常に短い時間で決着がついたようだ。



「まだ、しばらくお願いね。ガロウー」


 あいよ。俺の横でレイコが詠唱する。さっきとまるっきり同じ、長いものを。



 現れた光球は、ゆっくりとハールラインに向かってゆく。が、ハールラインの魔法も俺のも、その魔法に触れられない。そしてハールラインの前へ。



 それに気づいたハールラインが目の色を変えて『グリック』で撃墜。



「出来ました!」

「おめでとー。出来る気がしたけど、出来るとは思わなかったよー!」


 うわぁ…。まさかの勘!? 俺は勿論、レイコも超微妙な顔になった。



「細かいことは気にしちゃだめだよー。ほらほらー、ガロウも手伝うー!」

「え!?俺が参加してもただ単に吸収されるだけだと思うが…、いいのか?」

「そうですよー!吸収してしまいますよー!」


 何で必死なんだよ…。カレン姉ちゃんはそのセリフを聞くとより笑みを深める。心に決めた人がいる俺さえときめかせるような顔だ。だがそんな顔で、



「構わないよー。殺っちゃえー!」


 天と地ほどの差とはこういうこと。そう確信できるほど、濃厚な殺意の籠る言葉を発した。



「チィッ!」


 カレン姉ちゃんがグリックで強奪した魔法を叩き落したからか舌打ちするハールライン。



「レイコの魔法をまねようとしてもそうはいかないよー!」

「クッ!何故です!レーコ様も偶然できたにすぎないというのに!?」

「寝言は寝て言えー。レイコの魔法はレイコの魔法。見てマネすることしかできないお前にー、妹が後塵を拝すわけないじゃーん。ばーか」


 煽り倒すなぁ…。


「ほら、ガロウー。早く殺ろー!」

「お、おう。」


 くるっと振り返った姉ちゃんの眼圧はすごかった。思わずぶるっとしてしまうほどに。



 とりあえず俺も加わって魔法を撃つ。そうなるとあいつも量を増やさざるを得なくなる。



「レイコ、撃墜ゆーせん。できるだけ吸収させないよーにね」

「了解です。サイズ、量はどれほどで?」

「二人とも今のをキープ!ボクが頑張るよー!」


 カレン姉ちゃんは宣言通り矢の放つ本数を増やす。的確な操作によって、ほぼ全ての矢をハールラインの下へ。



 すげぇな…。でも、ほとんど吸収されているんだよなぁ…。



 ハールラインは矢の対応をするついでに、レイコの魔法よりはまだ比較的操作しやすいのか、カレン姉ちゃんの矢を飛ばすが…、まぁ無意味だ。さっきできなかったことが、状況が悪化して出来るようになるわけねぇじゃん。集中しているならともかく、片手間で。



 魔法量が増えたせいでハールラインは奪った魔法すら足りなくなってきたのか、矢をただ一直線に撃つ頻度が上がった。



「そろそろいーかなー?」


 いいって…、何が? とどめか? ハールラインには聞こえてないみたいだが…。



「うん。よさげだねー。じゃあ、決着をつけるよー。触媒魔法以外の最大火力をー、同時に叩き込むよー!」


 よくわからねぇけど、従おう。とはいっても…、俺の最大火力は預かった紙を同時に叩き込むことだけだぜ!



 紙に魔力を注ぎ込んで魔法を展開。俺の周辺に滞空させる。レイコも自前の『ガルミ―ア=アディシュ』に加え、紙の魔法を展開。一体紙が何枚犠牲になったのか…。そして、カレン姉ちゃんも矢を滞空させる。



 ハールラインも逃げることはせずに相対する。正確には、妨害しようとしたがカレン姉ちゃんに遮られたから諦めた。逃げても背後から殴られて死ぬだけだしな。



 あいつの浮かす魔法は8割ほどが矢。元がどれだけあったかわからないが、かなり消費させることができたといえるはず。



「よーし、皆―行くよー!」


 俺らに向けて発されたはずのその言葉。だが、その一言で、あいつの周りに滞空する矢さえも向きを変えハールラインの方を向く。



 は…? 意味が分からない。だが、俺らよりもハールラインの動揺の方が酷い。



「『グリック』!『グリック』!『グリィィィック』!何故です!何故…!」

「わかんないのー?」

「貴方に何がわかるのです!?」

「ハハハー。滑稽だねー!」

「『グリック』!『グリック』!」


 半狂乱だ。憐憫の情すら抱く人も出そうだ。俺は抱かねぇが。



「はぁー、表面だけ見てさー、それを奪うだけで満足する貴方がさー、ほんとーにさ、おとーさんやおかーさんの役に立ちたくて頑張ろうとしているボクや、レイコ、ガロウに敵うわけないじゃんー」


 姉ちゃんが忠告めいた事言ってる…だと!? あ、ごめんなさい。そんな目でこっち見ないでください。



「じゃー、行くよー!」

「『グリック』!『グリック』!」


 一斉に魔法と矢が動く。最初はハールラインも『グリック』で吸収していたが…、悲しいかな、距離の関係で吸収できたのは矢ばかり。相殺するために矢を撃ちだしても速攻でカレン姉ちゃんの管理下に置かれて奴に返る。



 そんな状況は魔法が到達するまで続き…、魔法が到達すると、『グリック』!という声すら、魔法が着弾する「ドドド!」という騒音に遮られる。尤も『グリック』と言えているかどうかは怪しいが。むしろ悲鳴を上げている気しかしねぇ。



 しばらく、魔法は命中し続け、砂煙が上がる。魔法が着弾しきって砂塵が晴れると、ハールラインが倒れ伏していた。



「うぅ…」

「むー。まだ息があるねー。頑丈だなー。魔力を防御に回したのかなー。…もう相殺して残ってないと思ったのになー」


 なんて言いながら矢を手でクルクル回転させながらスキップして行く。



「ヒヒーン!」


 この声は…! なんて思ったら、目の前を何か物体が通り抜けた。



「おとーさん!おかーさん!」

「お父様!お母様!」


 二人とも御者台から降りてきた父ちゃん達に駆け寄る。変わり身が早い。



「見たところ三人とも無事…か?」

「そーだよ!」

「そうですか…、良かったです」


 父ちゃん達は安心した顔を見せた。到着した時は雰囲気張り詰めていたしな…。顔は姉ちゃんたちに遮られて見えなかったが。



「じゃあ、レイコちゃんとカレンちゃんに傷が本当に残っていないか確認しますよ」

「ああ、お願い。ガロウもおいで。確認しよう」


 経緯を聞かずにこれか…。俺らの状態が大事ってところに大事にされていると「うぐぅ…」感じる。…はぁ。



「カレン姉ちゃん。あれはいいのか?」

「あれ?あー。息の根止めてなかったねー」

「ん?ハールライン生きているのか?」

「あ、そーだよ」

「殺しちゃダメじゃないですか。カレンちゃん。レイコちゃんのお願いが…」

「あー。そうだったねー」


俺的にはあいつは殺していいと思うが…、野暮か。



「とりあえず縛ろうか」


 父ちゃんが縄を取り出してハールラインへ接近。



「ん?空が…」


 突如陰った空に父ちゃんが一言。



「上!何かいる!」


 アイリ姉ちゃんが叫ぶ。それと同時に、父ちゃんも母ちゃんも『身体強化』を全開にして、俺とレイコを抱え、馬車の蔭へ。



「ズドン!」

「グェッ」


 ハールラインが上から落ちて来た何かにつぶされ冗談のように死んだ。



「セン!カレンとガロウ、レイコを頼む!」

「早く!」


 馬車の中に俺らを詰め込む。



「ちょっと待つんじゃ!あれは…!」


 何で族長代理(イビュラ)爺がいるんだ…。



「来るなら来い!」

「龍ですか…。ですが、子供たちはやらせませんよ」

「啖呵を切ってないでやめるんじゃ!ちょ、頼むから待ってって…!」



 だが、イビュラ爺の言葉虚しく、無情にも双方から魔法を放つ気配がした。

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