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白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
1章 バシェル出国とフーライナ
1/306

1話 召喚

あらすじのなんだかんだその1です

 俺の名前は森野習(もりのしゅう)、この常華(じょうか)高校の三年生。


「おはよー」

「おはよう」


 挨拶をされたら返す。これ大事。



「おせーよ、習!お前いつも15分ぐらい前には来ているくせによりによって始業式の日に遅れてくるんだ!」


 そう声をかけてきたのは俺の幼馴染兼親友の矢野(やの)拓也たくや。幼稚園に入園する前からずっと一緒。



 たぶん、春休みの宿題をやってないのだと思う。



「遅いって言われてもなぁ…まだチャイムまで5分はあるぞ?」


 そう言いながら俺は椅子に座る。えっと、宿題はどれだろ?


「そういう問題じゃない。俺はまだ面倒な数学が終わってないんだよ!」


 やっぱり。予想通りだ。



「そんなに自信満々に言うことでもないだろうに…まぁ、いいけど。ほい」


 苦労するのは本人だし。



「やった!ありがとう!これで宿題が面倒な写経に早変わりだ!」

「おい、宿題終わらせるのも大事だが、ちゃんと理解しとけよ?」


 まぁ、一応幼馴染。少しぐらいは将来の心配をしておいてやろう。


「お前は母さんか。後でちゃんと時間とってやる。で、どうして今日若干遅かったんだ?」

「お前、母さんって…。まぁいいけどさ…。で、今日遅かった理由か?それはだな…。ッ!?」


 説明しようとすると、激しい頭痛、めまい、吐き気そのほか諸々が一気に襲ってきた。あ、これ気絶するわ。そう思った時、俺の視界には、まるで夢でも見ているのかと思うぐらい幻想的な光の幾何学模様が教室中に広がっていた。





------


「ん…ここは…?」


 目を覚ましてあたりを見渡してみるとベッドの上だった。どう考えても学校の保健室ではない。何回かお世話になったことがあるが…。あ、仮病じゃないぞ。ガチなやつ。仮病はタクのほう。



 とりあえず、このベットのふかふかさと豪華さは何だ。なんで部屋の明かりもテレビでしか見たことないようなシャンデリアなんだ。なんで壁紙がやたら豪華なんだ。等々色々突っ込みどころはある。まぁ、そんなことは置いておこう。



 ここはどこですか?



 俺の考えを中断させるかのようにドアが開いた。タクだ。



「お、習起きたか」


言いながらドアを優しく閉める。


「おはよう?タク」


 とりあえず体を起こし返事をする。



「ん、おはよう。よく寝てたな」

「え?よく寝てたってどのくらい?」

「俺が起きてからだいたい1日ってところかな?」

「は?まじで?そんなに?まぁそれはいいけどさ、」


 ここはどこなのか、何があったのかそれらを問いただそうとすると、



「おーけー、おーけーわかってる。説明してやるよ」


 とこちらを見透かしたようにニッと笑った。



「じゃ、お願いする。その前に、立って話すのもしんどいだろうからこっちに座れ」


 俺はベッドの上の俺の横の部分をポンポンたたきながらタクを座らせようとする。



「お、じゃあ遠慮なく。よいしょっと」


 うわ、タクの奴本当に遠慮の欠片も感じさせない雑な座り方をしやがった。壊して弁償とか言われても知らねぇぞ…。



 しかし、俺の内心をものともせずに、さっさと説明を始める。



「じゃ、説明始める。まず、ここは地球じゃない」

「ふぁ!?」


 驚きのあまり変な声が出てしまった。タクが目を丸くして、少し苦笑いをする。


「まぁ、その気持ちはわかる。だが、ここは確実に地球じゃない」

「ということは、よくある勇者召喚とかそういう系のやつ?」

「大正解」


 うわぁ、めんどくさい。魔王とかいるのかな?そんな内心が露骨に顔に出ていたのだろう。タクは微妙な笑みを浮かべている。


「で、帰れるのか?」

「『今は』無理」

「なぜ?」

「それを説明するためにはまず、召喚魔法の原理を説明せねばならん」

「勇者召喚は、まず、勇者に『してほしいこと』を明確に決めておく必要があって、これをしないと決して成功しない。次に魔方陣を書くための床、とか紙。つまり筆記媒体か?に魔方陣を書く。その次に、魔力を流して呪文を唱える。ちなみに、この呪文引くぐらい長いうえに催眠効果でもあるのか途中で寝たから言えないぞ。で。だ。俺らが今帰れない理由ってのが、最初のところにある」

「『してほしいこと』を決めるっていうとこか?」

「そうだ。それを成し遂げない限り俺らは帰れない」


 うげぇ…。なんで見ず知らずの他人のためにそんなことをせにゃならん。


「ちなみに、その内容は、聞いて驚け!『魔王討伐』だぞ!」


 うん、すまない。楽しそうなところ申し訳ないがそのテンションについていけそうにない。


「そーなのかー」


 こんな反応になっても仕方ないよね。だが、タクは嫌だったらしい。


「え、そんな感想持っちゃうの?もっと『え!?魔王討伐!?』とか『ふざけんなよ!』とかになるんじゃないの?」

「そういわれてもさ…。ぶっちゃけさ、異世界+勇者=魔王。これほぼ公式だぞ?」

「確かに、でもなぁ…」

「諦めろ。ところでさ、」


 タクは俺が聞きたいことに思い当たる節がないらしく、目をパチパチさせる。



「なんだ?」

「言葉理解できたのか?」

「ああ、できた。ていうか正確にはできるようにさせられた。勇者召喚の魔法にはご丁寧に召喚した国の言語が読み書きできるようになる機能がついてるらしいぞ。あ、お前がぐっすりスヤスヤ寝てた理由もそれにあるかもしれないそうだ」

「どういうことだ?」

「もともと何らかの理由でここの言語が理解できるから、過干渉でも起こしたんじゃないかってさ」

「なんで?」

「ん?お前がここの言葉を理解できる理由?知らねぇよ?けど、心当たりはある」


 タクは目をキラキラさせている。こういうのが好きだからな。こいつ。



「じゃあ、説明よろしく」

「淡泊だな…。お前らしいが。じゃ、いくぞ。俺らみたいに召喚された異世界人は必ず『神授の道具』と呼ばれる道具、『シャイツァー』をもってるそうだ。で、その『シャイツァー』は持ち主に応じた力を与えるんだそうだ。で、お前の持ってる『シャイツァー』がここの言語を理解する力を持ってるんじゃないかっていうのが理由じゃないかってさ」


 マジでこいつ好きそうなやつ来たな。それはともかくとして…。



「『シャイツァー』?持ってるって言われても俺は今持ってないし。タクも今何も持ってないじゃないか」

「ああ、異世界人の『シャイツァー』は必要な時に取り出せる。見てろ」


 そういうとタクは目を閉じて



「『召喚』」


 と呟く。それよ同時に手元には二振りの刀が現れた。


「うわぁ、綺麗」


 双刀の美しさに思わずそんな声が出た。それが少し恥ずかしくて、俺がごまかすように頭を掻いていると、



「おい、習も召喚してみろよ。そしたらきっと謎が明らかになるぞ?」


 俺のシャイツァーが気になるのか目をキラキラさせるタク。



「わかった、やってみる」


 とりあえず、タクのをまねよう。



「『召喚』」


 言葉とともに手元に現れたのは…。


「「え…ペン?」」


 二人の声が重なった。これ、どっから見てもペンだよね?無駄に豪華だし、万年筆っぽいけれどだから何だという話。どうやって魔王と戦うの?ぶっ刺せと?

 


「まぁ、ペンならペンで仕方ない。それよりも、そのペンにどんな力があるか聞いてみろ」

「聞く?どうやって?こう?あなたにはどんな力がありますか…?」


 …笑うなよ。タク。



「天然かお前。心の中でやるんだ。説明悪かったかもしれないな。すまん。あ、そうそう。『シャイツァー召喚』も目を閉じる必要はない。聞くのと同じでいい」


始めからそう言えよ。恨み言はグッと心の中に閉じ込めて、やってみる。



「お、なんか頭の中に言葉が浮かんできた」

「お、成功したか。どう?」

「えっと、すべての言葉がわかる能力と、字を書く能力だな」

「すさまじく微妙だな。てか、全てってどのレベルだ?」

「んー、地球の言語、この世界。あと、他の異世界も含めた言語として認められている言葉だな。動物のは無理っぽい」

「帰れれば英語最強だな。羨ましい」


 それは俺も思ったわ。ただ、一つ言わせてくれ。お前の英語を手伝っているのは俺だぞ。帰れれば覚悟してもらおう。

 


「ん?何か寒気が…」

「気のせいじゃない?」


 ちっ、何か漏れたか。


「ペンならかけるか試そう」

「試さなくても、ペンは『書ける』って言ってるけど?」

「書くにしてもいろいろあるだろ?ボールペンとか鉛筆とかシャーペンとかないとは思うが筆とか」


 一理ある…か。



「やってみる。」






_______


「まさかの全種対応か。」

「だから何だという話なのだが」


 全ての筆記用具のような(俺たちの思いつく限りという注釈がつくが)筆跡で書けた…というより書けてしまった。

 


「とりあえず、この言葉を贈ろう。おめでとう!謎ペンは謎機能の付いたペンに進化した!」

「進化してないんだよなぁ…」


 謎が明らかになっただけ。

 


「それはそうと、タクのは?」

「剣術へのある程度の補正と火魔法に対する若干の補助。」

「戦闘系だな」


 魔王討伐を考えるなら絶対にそっちのがいい。

 


「ああ、そうそう。『シャイツァー』は壊れないぞ。あと、自動で戻ってくる」

「えぇ…さらに意味の分からないペンになったな」

「おめ」

「二度目は結構」


 先手を打つ。…なんで落ち込む。お前このネタ大好きなのか?まぁほっとこう。



 ……このペン。壊れないし勝手に帰ってくるのか…本当なのか?試してみよう。



 とりあえず窓を開けます。



「おい、何をするんだ」


 立ち直ったか。タクが何か言っているが無視して、窓に向かって振りかぶって、そーい!おー、とn、



「痛ってぇ!何すんだ!」


 思いっきり殴られた。のたうち回るくらい痛い。

 


「この考えなしが!下に人がいたらどうすんだよ!」

「夜だからいいかなと思って」

「まったく…。夜なら暗くてどこまで行ったか分からないだろうが!?」


 確かに。でも、耐久性は高いっぽいからワンチャンあると思う。…うん、そういう場面じゃないよな。



「とりあえず、帰ってくることが確認できればそれでよしということで」

「投げる必要性はなかったな」

「だな。で、どうやったら戻ってくるんだ?」

「このマイペースめ…」


 タクが指を眉間に押し付けている。不機嫌になっているな。



「怒ってばかりだとはげるぞ?」

「主にお前のせいでな」

「そーなのかー」

「2回目。で、さっきの質問の答えだが、もう一回『召喚』すればいい。ただ、手元にないからか、さっきみたいにノーリスクじゃない。魔力が減るらしい。距離によって増減するぞ。魔力が1でもあれば戻ってくるみたいだから、なくしはしないと思うぞ」

「そうか、ならば『召喚』」


 む、何かが減った気がする。が、きちんと手元にペンは戻ってきた。ペンも無傷だ。



「確かにそうみたいだな」

「親友を信用しろよ」

「してるよ、ぶっちゃけ見てみたかっただけ」


 あー、また頭抱えてる。だいぶ前諦めたとかいってなかったっけ?



「ところで、俺みたいに長く寝てたやつは他にいるのか?」

「いるが、名前がわからん。新しいクラスメイトだしな。顔もまだろくにあわせてなかっただろ?でも、先生以外は全員いる。数えた」

「なるほどね。そういえば、召喚されてからのみんなの様子は?」

「若干、魔王倒してって言われたときに混乱しかかったけど、望月と西光寺がうまくまとめたよ。望月は新クラスメイトだぞ。一、二年生の時は別のクラスの学級委員だった」

「望月?たしかフルネームは望月光太(もちづきこうた)だったか?」

「そうだけど…なんで知ってんの?」

「逆になんで驚くんだ?有名だろ?人望あるし」

「それもそっか」


 納得したようだ。



「望月はいいやつだぞ。西光寺も」


 西光寺は本名 西光寺賢人(さいこうじけんと 彼の性格は、慎重で真面目。これでほぼ集約できる。いいやつだ。ちゃんといろいろ見てるし。



「で、そのあとは?」

「城に残って魔王倒す望月派と自力で帰ろうとする西光寺派に分かれた」


 え?いきなり仲違いしてんの?まじで?ないわぁ…俺のそんな心情を読み取ったのかタクは笑いながら言う。


「うん、言い方が悪かったな。『分けた』が正しい」

「?それ、どういうことだ?」

「理解できてないみたいだな。説明しよう!」


 なんか香ばしいポーズ決めてるけど、突っ込んだら負け。突っ込んだら負けだ。



「ぶっちゃけてしまえば保険だ」


 鋼メンタルか?お前。そのほうが話進むけど。


「保険?」

「ああ、保険。仮に魔王を無事に倒したとして本当に戻れる保証はない。だから、同時並行で自分たちの力で戻る方法を探そうってことだ」

「もっと詳しく」

「さっきも言ったが、魔王を倒しても帰れる保証がない。あと、人間目線でしか話聞いてないし、ひょっとしたら王様たちは俺らを兵器扱いするために呼んだのかもしれないという疑惑があるからな。さすがに、みんな物事の善悪にはいろんな基準があるのはわかってるけれども、とりあえず、今の俺らがよく知らないやつを一方的にぶん殴るのはいやだ。

逆にみんなで戻る方法を探したら。さっきの逆パターン。つまり魔族がマジで「ヒャッハー!戦争だぁ!人間なんてみんな死ねぇ!」とかだったら夢見が悪い。あと、この方法は見つけられなかったらいつ魔王討伐に戻るかが決めづらいとかいうのもある。そんな感じ。だから分けようぜ!ってさ。発案はさっきの二人な」


 ちょっとだけわかった気がする。



「極端に言えば、分けてそれぞれ俺らにとって最善を尽くそうってこと?」

「そういうこと」

「それにしてもさ、あの二人に少し嫉妬するな。」

「ん?ああ、混乱を収めたことか?」


 俺は頷く。


「確かにその二人の存在はでかい。でもな、女子は薫さんと新クラスメンバー天上院さんがまとめてたぞ。あ、天上院さんは天上院雫(てんじょういんしずく)さんな。お嬢様だけどめんどうくさくないことで有名らしい。実際俺にはそう見えた」

「あと、(かおる)さんか。あの理科、主に化学の好きでしっかりした。で、かつ西光寺の双子の姉の。その二人なら納得だわ」


 ちなみに天上院さんを見てもないのに納得できるのはタクがそう言っているからだ。わりとタクはこういう目はしっかりしてる。


 だのになぜかだいたい相手がトラブルに巻き込まれているんだよなぁ…。俺はいつもそれに巻き込まれる。



「なんでいきなり遠い目になるんですかねぇ」


 あきれた声でタクが言う。誰のせいだと思ってるんだろうこいつ。



「ああ、忘れてた。お前ペンならたぶん戦えないよな?」

「たぶん」

「戦えない人は原則西光寺についていくことになってるから」

「原則?じゃあお前は?」

「俺は残る」

「そうなのか…理由は?」

「恥ずかしいから内緒」


 内緒か、気になるが言いたくないなら仕方あるまい。



「西光寺ってことは、帰還魔法捜索でいいんだよな?」

「あぁ、それでよき」


 了解。だったら俺や西光寺の当面の目標はそれだな。望月達が魔王討伐と。どっちが大変なんだろうなぁ……。



「で、出発はいつだ?」

「明日の朝8時、ああ、ちがう2の鐘が鳴るころ。こっちは6時から二時間おきに10時まで鐘がなるそうだ」

「早くないか?」

「噂が広まる前に脱出したいらしい。」

「ふーん。で、今何時くらい?」

「0時」

「なあ、残念なことに眠くないんですが」

「だろうな。図書館くらいしかないけど行ってみれば?文字理解あるなら俺らが読めないものも読めるだろうし」

「そうか、じゃあそうするよ。場所は?」

「俺の部屋まで帰る途中にあるから案内する。どのみちお前も部屋に連れていかないといけないし」

「そうか、ありがとう」


 そう言って二人で立ち上がり他愛もない話をしながら部屋を出た。

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