↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『神機』:護りし者  作者: 赤魂緋鯉
第一章 『神機』:護りし者
10/113

第九話

「それは、どういう物なのですか?」

「……知らない方が良いと思うよ」

 暗いトーンの声で話すレオンに、これ以上は知らない方が良い、と察したセレナは踏み込んだ質問を避けることにした。

「どうなっているにせよ、早く解放してあげないとね」

 呻(うめ)くようにそう言ったレオンは、左右のコンソールレバーを強く握りしめた。

 敵機が再び速射砲の冷却タイムに入ったのを見た彼は、自機の姿勢を低くして敵機の懐を目指して高速で突撃を開始する。

『なめるなよ傭兵!』

 口角が最大まで上がっている敵機のパイロットは、レオンの赤い機体に向けて、ビームを左右の砲身から同時に放った。

 それは発射直後に拡散し、散弾銃のようにビームの雨がレオン機に襲いかかる。

「傭兵をなめないでもらいたいね」

 レオンは皮肉交じりにそう言うと、向かって右側の巨岩めがけて、スラスターをフルパワーでふかして跳躍してビームを回避した。

 壁蹴りジャンプの要領で岩の中程を蹴り、武器をブレードモードにして敵機に飛びかると、右腕を肩の砲身ごと切り落として敵機のやや手前に着地した。

『ヒヒッ! 近づいたなぁ!』

 それでも、怪しい笑み崩さない敵機パイロットがそう叫ぶと、機体の大きな頭が左右に割れて、フルチャージされた近接用のレーザー砲が出てきた。

「へえ」

 レオンは特に慌てる様子もなく、足がそろっている敵機に回し蹴りをたたき込んで、前のめりにビタン、と転倒させる。

『なあぁぁぁぁ!?』

 高威力のビームを地面に撃ち込んだ衝撃で、敵機は正面の非レンズ式カメラがロストしてしまった。

「なめないでもらいたい、と言ったはずだよ?」

 同じ調子でそう言ったレオンは、敵機左側の腕も切り落とし、両脚部の根元にブレードを突き刺し、足回りの駆動系を破壊した。

『畜生!』

 万事休すになった敵機のパイロットは、覚えてろ! と、いかにも小悪党っぽい台詞(せりふ)を吐くと同時に、脱出装置のスイッチを押した。

 すると頭部が身体から分離して、身体から流線型をしたコクピットのコフィンが、『王国』方面へ高速で射出された。

 それは15メートルほど地面を滑ると、スラスターが起動して宙に浮き上がった。

「逃がすかっ!」

 レオンはそう叫ぶと、すかさずコンソールの左にあるスイッチをオンにする。すると、機体の背中から翼状のスラスターが展開する。

 後方に向けて噴射するそれを加えることで、そもそも高い機動力がさらに強化された。

「なああああぁ! にいいいいぃ!?」

 逃げ切れると高をくくっていたパイロットは、レオンにいとも簡単に追いつかれて仰天する。

 レオン機は上昇用スラスターをふかして飛び上がり、空中でコフィンをつかんだ。

「畜生めええええぇ!」

 それを地面に落下させたレオンに、摩擦によってコフィンのスラスターが破壊されると、たまらず敵機パイロットは白旗信号をレオン機に送った。

「……頑張ったね。今助けるよ『聖女』様」

 コクピット右下に映し出されたそれを見つつ、レオンは小さな声で力強くそう言った。

 

 機体を片膝がついた姿勢にし、スタンバイモードにしたレオンは、セレナに、ちょっと待っててくれ、と言ってハッチを開けた。

 すると上に開いたそれの中から、先に腰ハーネスが付いた降下用のウィンチが2つ出てきた。

「俺も行って良いですかダンナ」

「いいよ」

 ハーネスを装着したレオンとジョンが地面に降りて、ワイヤーとハーネスをつなぐカラビナを外すと、ワイヤーが自動的に巻き取られてハッチが閉まった。

「おーい、ハッチを開けてくれ」

 敵機のコフィンの傍に来たレオンが、敵機パイロットにそう言うと、彼は悪態を吐きながら素直にハッチを開いた。

「はいはい、動かないでくれよ」

 銃を手にしたレオンがコクピット内に入ると、

「ケッ!」

 シートベルトを外していたパイロットが、心底嫌そうな顔をして諸手(もろて)を挙げていた。

 レオンはその手を後ろに回して手錠をかけると、彼のもつ銃を取り上げてコクピットの外に出した。

「アイツはな、ちょっとバカだけど良い奴だったんだ……!」

 ひざまずく元上官を見下ろしてそう言ったジョンは、彼を蹴り倒してレオンがいるコクピットの中に入った。

「さてと、問題はこれだね」

 入ってきたジョンを一瞥したレオンはそう言って、目の前にある自分の肩ほどの高さがある、後部座席の金属製の黒い箱に手を置いた。

「開けるのに少し手間取りそうだな……」

 彼が箱の下を探ると小さな蓋があり、それを開くと中にコネクターが付いた制御盤があった。

 それを見たレオンは、『レプリカ』を遠隔操作したデバイスを取り出し、そのケーブルのアダプターを箱のコネクターにつないだ。

「それ、ハッキングもできるんですか?」

「ああ。知り合いに頼んだ特注品でね」

 画面をのぞき込んで訊ねるジョンに、レオンは口の端を少し持ち上げた。

 ハッキングアプリを起動して30分ほどすると、カチン、という音がして箱の上面の蓋が半開きになった。

「ジョン君、覚悟はいいかい」

「あ、はい。大丈夫っす」

 そのやりとりの後、ショッキングな光景に備えて身構える2人が、慎重に蓋を開いて中身をのぞき込むと、

「……」

「……」

「……?」

 そこには金髪碧眼の幼い少女が、不思議そうに彼らを見上げて首をかしげていた。

 彼女は全裸の上に、拘束具で身体を箱に固定されていた。

「……まあ、バラバラじゃなくて」

「よ、よかったっすね……」

 非常に気まずそうな表情の2人は、お互いの顔を見合わせてそう言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。