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『神機』:護りし者  作者: 赤魂緋鯉
第一章 『神機』:護りし者
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 (あお)く美しい大海原が、どこまでも広がっている惑星があった。その中にある陸地は、とてつもなく巨大な三日月型の大陸と、その弧の内側に浮かぶ無数の島々で構成されている。しかしその面積は、島々をすべて含めたところで、惑星全体のたった2割程でしかない。

 そのわずかな陸地に住まう人間は、似たような見た目や、同じ血族同士が集団となって国を作り、その数はもっとも多いときは200を超えていた。

 古今東西、国の優劣は生産力と軍事力で決まり、どちらにも劣る国が滅ぼされることは逃れようもない宿命だった。


 ――神のごとき破壊力を持つ、人型機動戦車・『神機』がこの世界に現れるまでは。


 世界暦195年の初め、世界各地に存在する遺跡から、突如として(よろい)(まと)った高さ12メートルほどの、人型に近い機械が次々に出土した。

 全世界に信仰されている宗教・『世界教』の神話に出てくる、数多(あまた)の神々の姿に似ていたことから、その機械は『神機』と名付けられた。

 それを調査したところ、その内部には復座の操縦席があることが判明した。だが、何をしてもそれは機動することはなく、研究者達の頭を大いに悩ませた。

 そこでひとまず、彼らは『神機』と共に出土した、古代の文字が刻まれた金の板を解析することにした。そうしたところ、『神機』の機動には、3つのものが必要だということが分かった。

 そのある物というのは、純水、『聖女』とその生き血の3つだった。

 『聖女』とは『世界教』における、人々を目に見えない()しきものから守り、心や身体の傷を癒やすという、特殊な能力をもった女性のことだ。

 それを知った各国は、誘拐や倫理を無視した方法まで用い、国ぐるみで国内外から『聖女』をかき集めた。

 そして、同年最終月の13ノ月13日。極東(きょくとう)の端のある小国において、10代以下の『聖女』の生き血でしか、『神機』が機動しないことが実験中に発見された。

 満を持して明らかになった『神機』の性能は、

 195年時点で、試作兵器を含めたすべての兵器を無効にする装甲と火力、ほぼ無尽蔵にエネルギーを生み出す動力源、人間を遥かに超える演算能力のコンピューターを搭載している。

 といった、オーバーテクノロジーの塊だった。

 そんな超兵器『神機』の存在は、この世界のパワーバランスをひっくり返してしまった。

 世界で初めて『神機』を起動させたその国は、まさに無敵の兵器であるそれを用い、近隣諸国を次々と征服して領土を拡大していった。

 出遅れた他の国々は、国同士を統合して新しい国を作ったり、諸国が寄り集まって連合を作ったりするなどをして対抗し、何とかその国の拡大を食い止めた。

 それから5年経った頃。数少ない『神機』を喪失することを恐れ、模造品(レプリカ)の開発と量産を試みる国が出てきた。

 『神機』の優れたコンピューターを用いて開発したそれは、3つのものがなくても動かすことが可能である一方、ほぼすべての性能がオリジナルより弱体化していた。

 それでも破壊力は申し分なく、人間の兵士であれば1000人、通常の戦車であれば100両単位でまとめて吹き飛ばせるほどの性能があった。

 まもなくしてその量産も始まり、戦場は『神機』同士の一騎打ちから、それとレプリカを用いた集団戦へと変わっていった。

 

 232年現在、『連合』、『自由』、『帝国』、『王国』、『公国』、『島国』の6つの超大国が存在し、それらは常にどこかで小競り合いを起こし、領土の奪い合いを繰り広げている。


 232年7ノ月12日、大陸北東部に位置する『王国』は、その西隣の『公国』に宣戦布告する。その直後『王国』は、広大な平原が広がる『公国』南部から、ほとんど不意打ちの形で侵攻を開始した。

 レプリカ137機と『神機』4機を保有する『王国』に対し、『公国』は『レプリカ』64機と『神機』2機しか保有しておらず、しかも、そのうちの1機はまだ起動ができていなかった。

 圧倒的な物量差に押された『公国』は、国土の南半分を6週間でほとんど制圧されてしまう。それを鑑みた国を構成する諸侯たちは、戦況を打破し領地を守るために、ため込んでいた豊富な資金を用いて、仕方なく『レプリカ』を持つ傭兵(ようへい)を雇うことにした。

 相場の5倍にもなる破格の報酬とあって、不利な戦況にもかかわらず、計72機もの『レプリカ』が『公国』に集まった。

 高い練度を誇る百選錬磨の傭兵たちの活躍により、侵攻速度を大幅に鈍らせることに成功した。

 ジリ貧になるのを避けたい『王国』は、『公国』北部を領地とするファイン・H・キャクストン公爵の領地に、『神機』1機と『レプリカ』5機を送り込んだ。彼の邸宅を襲撃した部隊は、公爵の近衛(このえ)兵部隊を壊滅させ、その娘の誘拐に成功した。

 彼女の身の安全を条件にして、『王国』軍部は公爵に『公国』への後方支援の停止を要求され、公爵はこれをのんだ。

 彼は『公国』軍の後方支援を一手に引き受けていたため、補給が滞り始め士気が低下。『王国』の侵攻速度は再び加速し始めた。

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