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コヤンイオーバーヒート  作者: ぼんごれ
3/5

1月30日 りとる・ほらん あんど そら

知り合いに韓国人の知り合いがいるのですが、その彼の初来日とかをもとに書きました。今回は何も戦闘などは起こりません。でも小さな変化が起こる、そんな話です。

ほらん<ソラ、今日、何で

    こうなったんだろうな。

 

    たしかにわからないね。>ソラ


***************

魔法やサイボーグがあまり人々に知られていないとはいえ存在するのと同時に、サイキックと呼ばれるような、超能力者といわれる人々もあまり人々に知られてはいないものの、それなりにいる。

 人知れず空を飛んだり、怪力を出す、そんな能力を用いて活躍するヒーローも、やはりそれなりにいる。


 1月30日、成田空港駅。

静かに入線した京成電車から、一人の少女が降り立った。

緑色のフード付きの長袖パーカーにカーキ色の長ズボンを着ている。フードをかぶっていない頭の部分から短髪でボーイッシュな顔が出ている。顔は年齢相応の少し幼さの残る顔。その一方で背格好はすらりとしている。そして肩から身分証明の為に取ったパスポートと財布、携帯電話とカメラを入れたボディバッグをかけている。


 彼女は高木ほらんという。歳は17歳、少女と女性のちょうど混ざるころあいといえるだろう。大学受験を控え、そろそろキャプテンとして活躍しているサッカー部を引退しなければならないことを少々心残りに感じている、そんなスポーツ少女だ。


 彼女は改札を抜け、到着ロビーへと向かう。

彼女は服装からもわかるように、旅行に出るために成田空港に来たのではない。彼女の親友、ミン・ソラが韓国から飛行機で3泊4日の日程で遊びにやってくるのだ。


ソラにとっては春休みの3泊4日だが、ほらんにとっては普通の日だ。さらにほらんにとって鶴見から成田空港へのアクセス列車は高い。だからソラは別にひとりで行けるからいいよ、と気遣って出迎えを辞退した。しかしほらんはソラが来るならとても嬉しいから迎えに行きたいと主張し、さらに学校は風邪で欠席しますといってサボってきた。


 共働きのほらんの家。ほらんが学校に行く頃には両親ともにもう出かけている。その隙を見計らってこっそりと成田空港へと向かったのだ。


 ほらんにとってソラはまさに竹馬の友だった。国籍こそ違えど、鶴見の同じマンションの同じフロア、さらには隣同士という環境で生まれた。また年齢としてはソラが1歳下だが、そんなことはほとんど意識してこなかった。しかしほらんが中学2年生のころ、ソラは家族の都合で韓国へ帰国してしまった。それ以来なんとなく距離を感じており、また行きたくても沖縄より距離的に近いとはいえ、やはり遠い釜山を訪ねるのはとても困難だとあきらめていた。しかしソラがほらんに会いたいとソラの両親を説得したらしく、晴れて来日が実現したのだ。


 ゲートの前についた。椅子に座り飛行機を待つ。釜山航空110便、成田着は午前10時ちょうどと公式サイトの時刻表には書いてあったが、若干早着する見込みだと電光掲示板に表示されていた。

 到着まで30分、どうしようかと思ったが、とりあえず携帯電話でゲームを始めた。

 

 様々なところから様々な音がする。大空港は賑やかな雰囲気だ。いや、賑やかというよりうるさい、少しうるさすぎてゲームに集中できない。そう感じたほらんは携帯電話にイヤホンをさし、携帯電話からの音声に集中した。

 

 しばらくたったころだった。一瞬音が聴こえなくなったのだ。その静寂とともに空港のゲートが少し紫色に、そしてゆがんでいくように見えたのだ。


「疲れているのかな。」


ほらんはそう感じた。


しかしその歪みは2~3分で元に戻った。


「釜山航空110便は、ただいま到着しました」


ソラの乗った飛行機が到着したことを告げるアナウンスがかかる。


いよいよだ、いよいよソラに会える。そんな期待と、そしてソラが無事に到着したことを嬉しく思う気持ちで思わず席を立った。


それから入国審査で時間がかかったのか、40分くらいしてから、ソラはデイバック一つ背負った格好でゲートから出てきた。


長旅からか少し疲れているようだった。


「おう!」

ほらんは出入口の柵から身を乗り出して手を振った。


ソラは少しはにかみながら、しかし強くほらんの手を握った。

その表情はとても嬉しそうだった。


「長旅お疲れさん。」

ほらんは握った手を上下に振り、喜びを表現した。


「ありがとう。元気だった?」

ソラは落ち着いた、しかし喜びの籠った声で言った。


ソラも髪は短くしていた。そして眼鏡をかけた顔は年相応だがとても利発そうに見えた。そしてジャンパーの下は「NUKE」と書かれたロングTシャツを着ていた。

しかしズボンは何と半袖だった。


「おう。しっかしあれだな、相変わらず季節感ねーな。」

ほらんも笑いながら言う。


「だって寒くないし。東京って釜山より温かいじゃん?」

ロシアほどではないにしても北にあり、冬は非常に寒いところだと聞く釜山からの旅人にはきっとそう感じるものなのだろう。韓国には行ったことのないほらんはそう思った。そして実際に、若干ではあるが釜山は大陸性の気候の影響で寒く、ソラにとっては東京は温かく感じられるのであった。


 二人は空港での食事は高いから、といったん鶴見のほらんの家を目指すことにした。

運賃1700円、約2時間の旅だ。和食は今日の夜、ほらんの両親が連れていってくれる。だからほらんとソラは、ソラが日本で食べた牛丼チェーンの牛丼が恋しいというのもあって、二人で鶴見駅前の牛丼チェーンのお店に行くことにした。280円の幸福。それはいつでもすぐそこにあるものだと信じていた。


 二人は先頭車両の一番前方、2人掛けの椅子に腰かける。前向きのロマンスシートはおしゃべりをして移動するのにはちょうどよかった。


二人はさまざまなことを語り合った。中学2年のときに分かれて以降どうしていたか。ソラは韓国の高校には入試がないこと、しかしながらヤジャという夜間学習の時間があり、その時間がつらいこと。ほらんはスポーツ強豪校のさらに花形のサッカー部の部員になり、さらに去年、見事キャプテンとなったこと…。


 二人は泉岳寺の駅で三崎口行きの電車に乗り換える必要があったのだが、羽田空港まで乗り過ごしてしまった。しかし少しでも話していたいと思う気持ちからか、むしろとても嬉しく思ったのだった。そしてなにか特別なことが起こりそうな、そんな雨の日の雰囲気を二人で楽しんだ。


 そして予定よりも少し遅れて15時ごろ、ほらんの自宅へと戻ってきた。ソラが泊まることは両親から許可を得ている。ソラの荷物を広げ、さらにしばし話をする。

 

 そして少し休息をし、牛丼を食べに行こうとしたその時、また起こったのだ。しかもこんどは急に世界が静かになったかのように音がしなくなり、そしてパステルカラーのドットと赤と青の線が扉越しに、まるで裂け目でもあるかのように見えたのだ。

 ほらんは固まっていた。なんだかとても嫌な予感がしたからだ。

 一方ソラはその違和に身を乗り出そうとしていた。まさにその姿は知らなかった世界を見て、興味津々といった様子だった。ほらんはその裂け目に向かおうとするソラを止めようとしていた。


そして空間の裂け目が閉じる。


「なんだ、あれ…。」

ほらんは呆然としていた。


「なんだか楽しそうだった。とってもポップでクールだったね。」

ソラはまるで初めて遊園地に来た子供のように目をキラキラさせていた。


「楽しいなんて話じゃないだろ…あたしたち、その…なんだ、大丈夫か?いや、これはいくらなんでもやばいんじゃないか…。」

ほらんは珍しく不安そうな顔をしていた。


「堂々としなよ、キャプテン。きっとわたしたちに何か特別なことが起こるのかもしれないよ!」

ソラはほらんを優しく小突く。

しかしほらんは緊張のあまりほとんど固まってしまった。


部屋が静寂に包まれる。


どれだけたっただろうか。二人はほぼ同時に耳鳴りを感じた。


見ている光景が一瞬で真っ白になる。

さっきのポップな世界が頭の中に飛びいるかのように入ってくる。

さまざまな音が耳に直接、まるで耳の中で、いや、頭の中で誰かがしゃべっているかのように3人くらいの人の声が聞こえてくる。


「普通の人間にはできないことを実現できる合理的に説明できない超自然な心眼という肉眼では見えないものを見る「こころの目」同じことが耳についても言えますサイズをやってみましょう直観を良くして超能力の基礎トレーニン…次は頭の体操です。左に1、2、右に1、2…過去わたしによってつくられた存在はわたしを超越することがありその少女2人は…」


だんだんとその風景、その声に慣れてきたころ、二人は個別に白い光に包まれた。

そして服が光へと消え、二人に新しい服をあてがわれた。


ほらんは黄緑をベースとしたへそ出しルックともいえる服。袖は巫女服のように開いている。そして濃い緑のスカート、頭にはゴーグルが載っている姿へと変わっていった。


一方ソラは青いワンピースに白いエプロンのかかった、そして袖が離れているエプロンドレス。また足にはルーズソックスを履いている。一方で眼鏡は外れている、そんな姿に。


そして光が収まる。


二人はお互いの姿を見る。

あまりに突飛で、奇抜で、まるでコスプレイヤーのようなその姿を見てほらんは顔を真っ赤にし、ソラは大いにクールジャパン、日本に来てよかった!と満面の笑みでしゃべっていた。


「17にもなって魔法少女ってか…マジかよ…。これ絶対秘密だぞ!…だけどこれどうすりゃいいんだよ…。うちの親が見たらなんていうか…。」

ほらんは顔を落とした。


「ほらん、楽しもうよ。コスプレイヤーなんてこの世の中意外といるもんだよ。もちろん秘密にしておくけどさ。」


 よく見るとほらんの目は緑色に、ソラの目は赤色になり、耳にはほらんは虎、ソラには兎を模したかのような耳としっぽがついていた。


 ほらんは自分の耳が存在することを確認したうえでなんだかわからない、そして隠しようのない耳を見て思わずため息をつく。

ソラはその姿を見てクスクスと笑う。


「常識では考えられないことを楽しむのもライフハックの一つだよ。」

ソラはいたって余裕そうだった。


「ライフハックって…。そりゃそんな余裕がほしいさ。だけどね、こんな姿見たらふつうドン引きだ…。」


「だけどもほらん、ちょっと変だと思わない?」

ソラは少し不思議そうに答える。


「何が?」

ほらんはにらみつけるかのような目線でソラを見た。


「いやね、魔法少女っていったらお供の動物とかいると思うんだ。だけどいない。これってどういうことだろうね。」

ソラは興味津々といった具合でほらんを見る。


「知らねーよんなこと。魔法少女であろうが何であろうが別に関係ねーだろ。だいたい何であたしたちがこうなるのさ…」

ほらんは今にも泣き出しそうだった。


「そうか…。でもとりあえずどんなことができるのかな、って考えるだけでワクワクしない?」

ソラの目は本当に無邪気に輝いていた。


ほらんはどんな悪いことが起こるのだろうかという嫌な予感、何よりこのコスプレまがい、いや、もしかしたら本物のコスプレをしていることに対しての羞恥心で今すぐにでも消えてしまいたいような気分だった。


「だけどほらん、おなかすいたね。」

ソラはほらんに微笑みかける。


「もう何だよこれ…腹なんて空かねーよ。」

ほらんの声は空しく部屋に響いた。


こうして二人の不思議な、のちに超能力であるとわかる能力を持つ人間としての生活が始まったのだった。

如何だったでしょうか。また続き書きますので、よろしくお願いします。


※いつも感想ありがとうございます。いただいた感想を読んだり、反応を見るのがいま一番の小説を書く励みになっています。


Twitterやってます→@bgr_oruka

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