NTRゲーがぶっ壊れました
久々に投稿。
ノリで大半作っているので、どこかおかしいかも……?
ではどうぞ。楽しんでくれたらそれでいいです。
『ごめんなさい 幼馴染みの君へ』。主人公の太郎くんの幼馴染みである彼女が下劣なオッサンによって嵌められ、快楽堕ちされるNTRゲーム――いわゆるエロゲーである。
ルートは幼馴染みだけでなく、幼馴染みの母親や主人公のクラス委員である従姉。彼女達が堕ちて、主人公を想う心から離れていくのがこのゲームの真髄である。
そして、今。物語は終盤に差し掛かっていた。主人公の太郎くんが廃墟にて幼馴染みの姿を見つける。そして彼女は知らないオッサンと青年達に犯され、太郎くんを絶望へ叩き落とすシーンである。
太郎くんは幼馴染みの神埼命の姿を見つけた。そして彼女はあられのない姿を――――
「テメーら。何回アタシに説教させるだ? あ"?」
――――なーんてことはなく、オッサンを正座させ、青年達をボコボコにして死屍累々していた。
……この娘。辱しめられる予定だったのに、何回も防衛成功させていた強者であった。
「よぉ、タロー。ちょっと待ってろ。この豚に真の帝王が誰かわからせてやってからデートしようぜ」
ミーちゃんが右手で手を振りながら、左手でオッサンの胸ぐらを掴んでいた。
……笑顔が怖い。あ、申し遅れました。どうも主人公兼ナレーターの太郎です。
一応、神埼命ことミーちゃんの幼馴染みをやっています。
「ぶ、ぶひ……なんでこうも勇ましいのだ!? わたしの情報では気が弱い乙女だったはず!?」
「はぁ!? んなわけあるか豚。何年前の話してんだよテメーは。小学校卒業前の話じゃねーか」
その通りである……。ミーちゃんは気が弱くない。むしろ凶暴だ。中学の頃はレディースの総長として夜、自分を引き連れてパトカーとカーチェイスしていた。
毎度、「ギャハハハハ!」とかわいい顔に似合わない笑い声をあげてるミーちゃんに対して自分は泣いてました。はい。
ミーちゃんの暴走に巻き込まれて拉致紛いな形で、速度無視な早さでドライブさせられてるので泣きたくなるよ、そりゃ……。
おかげでおまわりさんに何回も追いかけ回されていたよ。……なお、これを切っ掛けにおまわりさんと顔見知りとなっており、毎回顔を合わせると「苦労してるなお前」って声をかけられる。
……こんな形でおまわりさんの業界では有名にはなりたくなかった。
「つーか、アタシとヤってなんになんのよ。テメーみたいな豚とヤっても楽しくねーよ」
「いや、その……これNTRゲームじゃん。清楚なヒロインを快楽堕ちさせられるゲームだから、ヤればあなた様をゲットできるのではないかと」
「んなわけあるか! 快楽堕ち? はん。淫売娘共と一緒にするんじゃねーよ。むしろ、無理矢理ヤられたら警察に即通報して訴えてられるのが常識だろが。世の中、そう簡単にいくかよバーカ!!」
……その通りだけど、ミーちゃん。無理矢理ヤられた女の子はそう簡単に警察に通報できないくらい傷ついているし、何よりそこから淫売のようにさせられるからね?
「てか、アンタ。アタシの母ちゃんもNTRとしてたじゃねーか。何? 父娘共々ゲットしてーのか?」
「なんか字がちがくね!?」
「合ってるよバーカ。母ちゃん攻略したきゃ、父ちゃん攻略しろ」
「どゆこと!? なんで人妻寝取るのに旦那を攻略するの!?」
「うちの父ちゃん曰く、
『人のメスをとろうとするのは男の本懐。許す。だが、しかし、ウヌが我を攻略しなければ、我が北斗の奥義で沈めてやろう』
って言ってたぜ」
「その人絶対覇王だよね!? わたし、とんでもない人に喧嘩売っちゃったよね!?」
「まあまあ。アンタのこと父ちゃんは認めているし、この後、合体するか決闘するかでアタシの母ちゃんが手に入るから」
「どっちもヤダ! てか、なんで合体の選択肢があるの!?」
「父ちゃんは二刀流なんだぜ? スゲーだろ」
「嫌な新事実!」
オッサンが汚ならしく涙を流しながら首を振る。確かにミーちゃんの父ちゃんを攻略して合体か決闘は嫌だ。
いくら天然美女のミーちゃんのお母さんの神埼紀代さんと恋仲になりたくても、ミーちゃんのパパこと神埼ラオウさんと仲よくできるのはキツいと思う。
あんな身長二メートルある筋肉モリモリな男の人と仲良くなるにはそれなりの勇気が必要になるよね。ちなみにミーちゃんのパパは二刀流です。
なぜわかるって? ……自分も迫られたから。
「それとタローの従妹も手をつけようとしてたじゃない」
「あの、なんでそのことを……?」
「黙ってろ豚!」
「ぶひぃっ」
あ、頬叩かれた。もうノックアウトしそうじゃん。
「まだ寝るなよ。この話が終わったらテメーを警察につきだしてやっから」
「うぅ……な、なんでこんなことに」
「うっせぇ。とにかく従姉もヤろうとしていた。そーだな?」
「い、イエス」
「よし、許す。てか、徹底的に性根を折れ」
「えぇ!?」
オッサンがびっくり仰天。無理もない。これまで否定的だったことをいきなり従姉だけは肯定的にしたのだから。
「あ、あの……なぜに?」
「アイツがレズで変態だからよ。毎度毎度、アタシの寝込みを襲うわパンツを盗むは、タローとのデート邪魔するわでいい加減うっとーし! 恋人つくっていい加減失せろを何回思ったか!!」
従妹の楓ちゃんは女の子大好き人間だ。何度も何度もミーちゃんに迫るわ、自分を威嚇するわ、もうこちらが疲れるくらい行動力ある。
文武両道才色兼備って言われガチだけど、ぶっちゃけ変態生物の方がしっくりくる。
……ミーちゃんの拳で何度も沈められる光景を見ているが、それでもミーちゃんを諦めない。
そのせいで、ミーちゃんは横恋慕が嫌いらしい。
「つーわけで、あの変態とヤりたきゃやれ。もう監禁して閉じ込めてやるのも許すから。というか殺れ」
「い、一応……太郎くんの従妹なんじゃ。殺せとかやり過ぎじゃあ……」
「この間、バットで返り討ちしたのにゾンビのごとく迫ってきやがったけど?」
「その娘、ホントに人間なの!?」
楓ちゃんが人間やめてるのは周知の事実だよ。というか、女の子かどうかも怪しい。胸が膨らんでいるけど、下にアレがついてても否定できない究極生命体だから。
「チッ、ヤる気ねーのかよ。使えねーな」
「この娘……なんでこうなったのかなぁ」
「あん? そりゃ。何回もそういう場面を見てきたからに決まってるだろ」
「ええェェェェェ!? 何回も遭遇したの!?」
ちょっと違うが、まあ概ね正しい。厳密にらミーちゃんは何度もそういう場面に『遭った』という経験を知っているのだ。。
ループした記憶だったのか、それとも前世の記憶からだったのか、それは定かではないがミーちゃんは何度も『そういう場面』に遭ったことを覚えている。
それがどんなにひどく、悲しいことか計り知れない。知らない男に辱しめられ、堕ちていく自分なんか想像できないし、したくない気持ちはわかる。
ミーちゃんはそのことを両親に打ち明けて、一時期精神科に通いがちなってしまったこともある。自分に打ち明けて、心を軽くしようとしたこともある。
しかし、その悪夢を小学校卒業になっても抜け出せず、いつしかミーちゃんは病んでいた。そして、壊れていき――――
「んで、アタシは決めた。そうだ――――不良になろうって」
「なんで!?」
「不良になっちまえば誰も近づかねーと思ってな。そのおかげで男共は畏縮するわするわ。けっこー便利だったけど、タローがアタシと離れようと成績たけー学校に進学しようとしたから、やめたけど」
「太郎くんのおかげでやめたんだ……。というか、太郎くん。離れたかったの?」
うん。普通に恋したいし、ノーマルライフを満喫したかったから。ミーちゃんのおかげで刺激ばかりの毎日で、普通が恋しくて……。
まあ別に会いたくないとは言ってないけど、ミーちゃんのせいで事後処理任されるのはもうヤダ……。
「ざけんな。テメーはアタシの幼馴染み兼旦那予定の男だ。ぜってー離れていやらねーから」
「何このノロケ。というか、男らしいよこの娘」
勇ましいのが彼女の取り柄です。元々気の弱い保護欲掻き立てる女の子だったのに……。どうしてこうなったのだゴッドよ……。
「まあいいや。つーわけで後はあの人に任せるわ」
「え、あの人って?」
オッサンがキョトンとする中、ズシーンズシーンと地鳴りしていく。
そして紙のようにコンテナの壁がベリベリと破れていき、二メートルある男だった。キュートなネコちゃんの髪止めがつけられた大男である。
わー……ミーちゃんのパパだー……。
「どうしたぁ、マイドウターよ。急な連絡を寄越してぇ」
「コイツがアタシを誘拐して食おうしていた」
「んなぁにぃ! それは誠かァァァァァ!!」
ビリビリと震える空気。猛将のごとく雄叫ぶミーちゃんのパパに、オッサンも震えは止まらない。失神しないだけでも奇跡的だ。
「見事なオスの思考なり。人の恋仲に手を出そうとする考えは、否定はせぬ」
「な、なら見逃して……」
「たわけ! ここで貴様がどれほどの男か試すときだろう!」
ミーちゃんのパパはオッサンの肩を掴み、逃がさないようにする。オッサンは力一杯動くがびくともしない。
「これから我が攻める。もし、耐えきれたならば、貴様が太郎の小僧から命を取ることを許そう……」
「ちょっ、なんの攻め!? 拳的な攻めで合ってるよね!?」
「安心せい。徐々に良くなる」
「い、いやだァァァァァ! こんな展開、NTRじゃねェェェェェ!!」
「ごちゃごちゃうるさいぞ! ではユくぞ! ふんぬゥゥゥゥゥ!!」
「ぎゃあァァァァァ!!」
その後。オッサンがどうなったかは……知りたくなかったので、廃墟から出た。
誰も得しない結末だったと思う……。
廃墟から出た自分とミーちゃんはしばらく歩いたところにある公園のベンチで座っていた。
ミーちゃんが喉を渇いていたので、ジュースを奢った。
それにしてもオッサンはどうなるのだろうか。そのことをミーちゃんに聞いた。
「快楽堕ちじゃないの? まあ、因果応報だし当然の報いだ」
誰もうれしくないと思うが。
「そうか? 腐のお姉さま方には嬉しい展開だろ」
嫌、腐のお姉さま方は美青年か美少年達の交わりが見たいからね。オッサン×覇王な展開は見たくないからね?
「そうかな。うちの母ちゃんは好きだって言ってたけど」
それは一部のマニアックな人だから。
まあ、何はともあれ無事に済んでよかった。こうして事件にならず済んだことは喜ばしい。そういうことにしておいて……。
「なぁ、タロー。ちょっと聞いていいか?」
ミーちゃんがいつになく真剣な顔で聞いてきた。
「アタシが寝取られたら、悲しい?」
悲しいけど、普通かな。あんまり傷ついてないかもしれないから。
「……ヒデーな。それでもアタシの彼氏か?」
彼氏だからさ。だってミーちゃんにとってそれが『幸せ』になれることでしょ?
もし寝取られたら、たぶんその人の何かが足りないから横恋慕した人についていく。つまり、加害者だけでなく被害者も悪いということなのだ。
だって、その人の何かが足りないからお嫁さんは満足できない。『幸せ』になれてない。
自分はミーちゃんが『幸せ』なら、それでいいかって程度なのだ。
「それがアタシの『幸せ』って言い切れるのか?」
言い切れるさ。だって自分を裏切ってでも君は自分の『幸せ』を求めた。そういうことでしょ?
『幸せ』ってなんなのだろうかと考えたことはないだろうか。
愛されてるから『幸せ』。
裕福だから『幸せ』。
楽しいから『幸せ』。
その逆もある。
傷つけられてるから『幸せ』。
奪われてるから『幸せ』。
失っているから『幸せ』。
『幸せ』は形のない概念であり、個々にあるあり方だと考えている。
「間違ってるだろ。そんなの……」
『正しい』『間違い』の問題じゃない。ようは『幸せ』か『不幸』の違いさ。人が求める『幸せ』は個々によって違うのさ。
ミーちゃんが『幸せ』である。心が暖かくなる。だから自分は『幸せ』だ。
それが例え間違ってると言われても、それが自分の『幸せ』だと言い切れる。
「冷めてるなお前……」
かもね。ミーちゃんに振り回されたから、達観してるかも。
「アタシの記憶ではアンタはヘタレだったのに」
ヘタレって悪いのかな? 勇気がないとか言われがちだけど、要は慎重になってその人を傷つけないようにしている優しさじゃないのかな。
「アンタのヘタレは女を物足りなくさせるっての。たくっ。小説家になるつもりかオメーは」
さてね。自分はそうなるかどうかは、今後の行動と気分しだいさ。
「ホント、ドライだけど飄々してるところは変わんねーな」
自分は変わらないさ。ミーちゃんが『太郎』を忘れるまで、自分は変わるつもりはないよ。だってそれが自分だからね。
そう言って、ベンチから立ち上がり、帰路につく。ミーちゃんもそれについていく。
彼女を変えたのは『ミーちゃんじゃないミーちゃんの記憶』だ。それは良い意味でも、悪い意味でも、彼女に影響を与えて自分の人生を刺激的にしてくれた。
感謝はしないけど、恩はいつか返すよ。ここにいるミーちゃんに、だけど。
「あーくそ。今日はタローを食おうとしていたのに」
往来で肉食発言はやめてね。
「ヤダ。アンタがハニーって呼ぶまでやめない」
遥か遠い目標だこと。
そんな軽口を叩きながら、帰る自分達。夕陽で影が伸び、かつて一緒に遊んだ子どもの頃のように手を繋いで帰る。
自分とミーちゃんの関係はまだまだ続くのだろう。
「あはぁ! お姉さまァァァァァ! やっと会えましたぁ。さあ、わたくしと愛とヌチャヌチャな展開に……!」
「テメーは無限の果てへ消え失せろ!」
「あびばはァァァァァん!!」
……帰り道。従妹がミーちゃんに発情して襲いかかってきた。それによって、民家に被害があって通行止めになる事態に……。
本気で引っ越してミーちゃんから離れようかと思った。海外に逃げたらいいのかな……。
そんなことを思いながら、夕陽に黄昏るのだった。
……なぜか最後に変態(笑)