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Cheeky Snow  作者: レルバル
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第一話

空は青くどこまでも澄んでいるようだった。

大きな雲もなく、ただただ空の青だけが広がっている。

その空の下に小さな町が一つあった。

自然に囲まれ豊かで温かい町。

ニューオレンジ州にあるアルドラ渓谷。

山と山の間に挟まれた美しい盆地には大学も、図書館も、全てが揃っていた。

あちこちに残る爆撃の跡が生々しく残っていた。

壊れた建物などは綺麗に修復され人々は活気づいていた。

空襲なんてものは一つの大きな石碑と共に忘れられようとしていた。


「あなたのそれは恋なんかじゃない、ってキミは言ったけど」


忘れもしないよ。


「この痛みには、じゃあなんて名前がつくんだい」


僕は静かに。

新しい軍服に身を包んだ身を太陽に晒し。

目の前の墓場にそう話しかけていた。


「きみがいなくってこんなにさみしいんだ。

さみしい。さみしいよ、シャロン」


嗚咽にも似たような口調。

だけど僕の目から涙なんて洒落たものは出ない。

悲しいことに変わりはない。

だけど、何かが蓋をしているように涙だけは出てこなかった。


「シャロン。

 この胸の痛みは何なんだろうね。

 僕は……。

 いったい何を基準に生きて行けばいいんだろうね」


手に持った花を墓の基部に置く。

ラズベリーの綺麗な白がよく似合う真っ白でシャロン――雪という名前が分かる色の綺麗な墓は、太陽の光を浴びている。


「胸が引き裂かれそうだよ。

 キミがいないのに世界が回るなんて、僕はおかしくなりそうだ」


僕は、そういって自分の軍服の胸元を掴んだ。

目の前の墓は白く、黙ったまま何かをいう事も無い。

それも当たり前か。

彼女の――シャロンの骨も肉も。

何もそこにはないのだから。


「だからせめて――」


真っ青な空に僕は誓う。


「せめて君を殺したヤツラに、僕の傷みを思い知らせてやろうと思うんだ。

 いいだろう、シャロン?」


風が僕の体を包み込む。

真夏、暑いというのに僕はそんなこと感じなかった。

いや、むしろ感じる精神的な余裕がなかった。

だけど風が吹いた事で僕は彼女が承諾してくれたんだと。

そう思うことにした。





     ※






「――長い。

長すぎる」


僕の目の前に座っている少年はそういう目をして僕をじっと見つめていた。

全く、僕の話を暇そうに聞いてくれるじゃないか。

この少年の名前は永久とわ波音はのん

初めて聞いたときは変わった名前だって思ったけど今改めて思うと中々にいい名前だと思う。

銀色の髪の毛と碧色の目はなんというかのんびりしてるなぁ、という雰囲気を僕に伝える。

華奢な体つきと顔立ちは一目見ただけじゃ男なのか女なのか分からない。

はじめて会ったときは驚いたよ。

まさかこんなところで“君”に出会うなんて、ね。

これも運命なんだろうって、思った。


「で、なんでお前はここまで俺に付きまとうんだ?」


そしてこの少年のかわいいところは非常に無知って所かな。

年相応よりも低い気がするよ。

だからこそ僕がいてあげなきゃいけない気がするんだけどね。


「理由はタダ一つ。

 君を殺せばF.DやS.Dは絶望し連合群のものになる作戦が起動したからだよ」


だから簡単に砕いて教えてあげなきゃすぐに頭の上に?を浮かべる。

流石にここまで噛み砕けば波音も理解してくれるだろう。


「それに、かわいいし、僕のタイプだからに決まっているじゃないか♪」


別に僕は嘘はついていない。

波音の前では嘘はつかない。


「え………ええっ!?」


今ようやく僕の言葉を理解したらしい。

波音は驚き、打ちひしがれたような表情をした。

ほら、素直で子供みたいでしょ?

かわいいよね。


「俺は……死ぬのか……?」


それに加えてこのネガティブっぷりというか。

僕は少し小さくため息をついた。

何のために今訓練してるのかぐらいは理解してると思ったんだけどなぁ。


「そうならないように今こうして訓練してるんでしょ?

 それに僕の目が黒いうちは――」


目の前の少年を見つめる。

本当によく似ている。

しぐさ、呼吸、癖、話し方。

声のトーンぐらいしか違いを見つけることが出来ない。


「波音に指一本触れさせないさ」


あのころからもう何年たったか覚えてない。

だけど僕はまた運命を見つけれた気がしたんだ。






               This story continues.

新連載です。

お待たせした……のかな?

意外と人気だったセズクさんサイドのお話です。

よろしければお付き合いお願いします。

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