時を待つ日々(闇の信徒・巨人騎士を複製しよう)9
遅くなりました。
再びタイタンフロアに戻り、当初の予定を完了させた。
ロメオ君はタイタンを手にして、名を無難に『タイタン一号』と名付けた。今後増えることを見越して、通し番号を振ることにしたようだ。
明日、エテルノ様は古のゴーレムを、姉さんはタイタンか古のゴーレムかまだ迷っているが、どちらかを取りに行く予定である。
「その前にコアを増やしておいた方がいいだろう」
姉さんが言った。
量産ですか? 既に自重の域を超えてますけど、いいのかな?
まあ、姉さんがいいと言うのなら、僕は構わないけど。
ダンディ親父にも「目こぼししたのに」とか責められそうだからな。二、三体は献上しておきたいところである。
鏡像物質に反応してくれれば、タイプXのくだりからまた始まって『コア複製』が始まるはずだ。
命は惜しいので一度に二個までという制限が付いた。
「アイシャは欲しがるかの?」
「いらないんじゃないですか。リオナは欲しがりそうだけど」
「獣人は魔力がないから召喚できんじゃろ。気の毒じゃが」
「レオは?」
「あやつには早過ぎる。せめてエルーダを完全攻略ぐらいして貰わんとな」
「そのうち、ちっちゃなゴーレムとか、猫型とか自由に造れれば面白いんだけどな」
ロメオ君が言った。
猫型と聞いてオクタヴィアは耳がピンとなった。
「平和利用なら我も大歓迎じゃ」
「そうだ、これからは工房を使わせて貰わないと」
「いつでも構わんぞ。準備はしてある。セキュリティーも完璧だからな」
「しかし、研究するとなると、でか過ぎるゴーレムは置き場所に困るな」
「じゃあ、普通にコアゴーレム辺りを取得しておきますか?」
あれだって充分でかいけど。
「それでは機能的に物足りん。タイタンが小さくなってくれればよいのじゃがな」
「無い物ねだりというものだぞ、長老」
「ゴーレムの詳細がもっと分かれば、そのうちロメオ君が造ってくれますよ」
でもあの大きさだから、あれだけの魔力を内包できるとも言えるのではないだろうか?
「リオナも欲しかったのです! 小型化推奨なのです!」
「ナーナーナ! ナナナナナ!」
僕たちがゴーレムを手に入れたと知るや、早速リオナたちが欲しがった。が、あいにく複製はそう簡単ではないと言いくるめて諦めさせた。
ふたりはせっかくのブルードラゴンのシチューを悲しそうに見下ろした。
「召喚は無理でも命令はできるから、それで我慢するんだな。ヘモジは…… 念話が通じないかもしれないから……」
ヘモジは愕然と立ち尽くす。
そもそもなんでできると思うんだよ。
「明日、試してみればいい。タイタン同士の戦いなんて普段見られるものではないからな」
姉さんが言った。
そもそもタイタンがいないよ。
「俺たちも見たいです! 同行させてください!」
アルベルトさんが姉さんに頼み込んだ。
「ならば『銀花の紋章団』に入って貰おうか? ギルドメンバーとして守秘義務を負う覚悟があるのなら、同行を許そう。さすがにこれ以上、秘密に付き合わせては、まずいことになるやもしれんからな」
もう充分足を踏み込んでる気もするけどね。身の安全を考えるなら、その方がいい。
「でも、俺、来年――」
「就職先を気にしているなら問題ないぞ。『魔法の塔』に内定が決まっておるのだろう? あそこの内勤のほとんどは『紋章団』と掛け持ちだからな」
「そうなんですか?」
ナタリーナさんも食い付いた。
「努力する奴ほど金が掛かるのが魔法使いの世界だ。常にジリ貧の連中が研究費をどうやって工面しているのか、お前たちはもう知っていよう?」
「僕たちの内職も『銀団』経由って言えるのかな?」
ファイアーマンが言った。
「そう言えばあったな。『そこに隠れているのは分かっている! 生命探知君』だっけ。あれ、まだ売れてるの?」
「売れてますよ! 絶賛販売中です! 今じゃ、学院でも『魔法探知』取得の授業の必須アイテムになってるんですよ! 」
ビアンカが声を荒げた。
「発明した本人がなんで知らないんですか?」
ダンテ君にも突っ込まれた。
いつの間にそんなことに…… ただのおもちゃだったはずなのに……
姉さんを見たら、姉さんも知らなかったようだ。
「こやつの収入源はいろいろあるからな。気にならんのじゃろう」
今日一日、パスカル君たちの教官をしていたアイシャさんが言った。
ん? 前衛をしていたのか? 衣装が前衛よりだ。
「だからこんな大きな家に住めるのですね」
シモーナさんが言った。
「辺境伯のご子息なんですから、これくらいは」
ナタリーナさんが言い掛けたところで、フランチェスカが耳元で囁いた。
「え?」
固まった。驚愕の瞳だけが僕を見た。
明日の予定が固まるとロメオ君と姉さんは帰っていった。
みんなはドラゴン肉のシチューをたらふく食べて、転がって、カード遊びを満喫した。
僕は全員分の薬の予備を作り、盾のための魔石を用意した。
タイタン同士を戦わせるより、ヘモジかリオナにやらせる方が早いんだけどな。
「そうだ!」
ゴーレムが傷付いたら、どうなるんだ?
回復能力があるから自分で回復してくれるのだろうか? 召喚獣と違って、倒されたら戻ってこられないんだよな。
「大戦前にやられ過ぎるのは問題だな。それに…… 欠損部位を埋めるためには膨大な魔力がいる…… かも」
やばいな。リオナたちを遠ざけておくか、先手を打って、補充し続けないといけないか……
「その辺も明日の課題になるじゃろう」
やはりヘモジに勝る者はないな。
「それより、いくら広いからって、あそこで二体戦わせるには狭いんじゃないの?」
ナガレが言った。
「ナガレも欲しいか?」
「いらないわよ。面倒臭い」
リオナのためにもそれがいい。
「まあ、無理なようなら、引っ込めればいいさ」




