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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第15章 踊る世界
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時を待つ日々(闇の信徒・巨人騎士を複製しよう)7

 切り立った断崖の向こうからそれは現われた。

「古のゴーレム!」

 ロメオ君が叫んだ。

「あれが?」

 エテルノ様が身構える。

「違う! 似てるけどあれは……」


『闇の信徒・巨人騎士(ナイトゴーレム)、レベル八十』


「あれ、僕のゴーレムにできるかな?」

「ええッ?」

「お前な……」

「そりゃ面白い試みじゃの」

「長老! 笑いごとではないぞ」

「鎧を着たゴーレムか…… 意味分からん。あの装備も含めて本体なのかの?」

「サッサと倒して、実際に複製してみれば分かるだろう」

「それにしても強そうじゃの」

 エテルノ様が袖をまくった。今までどんな戦闘でも身構えたことはなかったのに。

 それにしても…… まさに騎士だな。四十九層のミノタウロスの精鋭の鎧がでかくなった感じだ。古のゴーレムと見紛うばかりに細身のすらりとした姿に、これまた見事なナイトシールドとランスだ。

「かっこいいね」

「ロメオ君もあれにする?」

「僕はタイタンでいいよ。魔法使いに必要なのはやっぱり強靱な盾だと思うから」

「動き回る矛より盾か…… なるほど一理ある」

 エテルノ様が頷いた。

「でもあれ倒せるのかな? 全身ミスリルだよね?」

 そう言いつつもロメオ君は杖を構える。

「切れないことはないけどね」

 僕は自分の剣をちらつかせた。

「売ったらいくらになるのかの?」

 気配を消す魔法を掛けた。

「エテルノ様の寿命でも一生遊んで暮らせますよ」

「普通の狩りだったら久しぶりの当りなんだけどな」

 ロメオ君、普通の狩りじゃ、あれは出てこないから。

「だが、どうやって倒すつもりだ?」

 こちらは動揺ひとつしていない。

「気負うことはなかろう」

「ならまず動きを止める!」

 僕は断崖から姿を現わした『闇の信徒』の足元を緩めた。サンドゴーレムにしてやるようにすっぽり収まる大きさで。

 完全に先手を取った! と思ったのだが『闇の信徒』は断崖を蹴り飛ばして、あっさり落とし穴を回避した。そしていきなりこちらに突進してくる!

 ゴーレムの動きじゃないって!

「何をしている!」

「こっちのせいじゃないから!」

「面白いッ!」

 エテルノ様が顔面に魔法をぶち込んだ。相変わらず出所の分からない一撃だ。

 敵は大きくのけ反り、足を止めた。頭が三分の一消えていた。

 フルフェイスの兜かと思ったが、その物がゴーレムの頭だった。となると鎧もか。

「さすがミスリル製じゃな」

「急所のコアは鳩尾の奥だ!」

 コアまで突き通すには剣じゃ届かないか……

 ミスリルは万能な金属だ。切断や衝撃に強く、熱にも強い。特に魔法耐性がぬきんでている。おまけに軽い。

 顔の三分の一を吹き飛ばしただけでもエテルノ様は人外だ。

「薄っぺらい装甲を切るのと違って、塊だからな」

 僕はライフルを取りだした。

「何発打てば通るのかな……」

「来たッ!」

 ロメオ君が叫んだ!

 ランスがとんでもない間合いから飛んできた。

 僕は結界で弾き返し……

「!」

 抜けてきたッ!

「結界か消された!」

 咄嗟にもう一度、結界を張り直して事なきを得た。

「嘘だろ? あの巨体で搦め手かよ」

「『結界砕き』とはな」

 姉さんが結界を咄嗟に張ってくれていた。

「ドラゴン戦では重宝しそうじゃの」

 エテルノ様の目の色が変わった。

「ヘモジがへそ曲げなきゃいいけど」

「肩に乗って指図だけしてそうだよね」

「いい拾い物だと思うよ。使うシーンなさ過ぎだけどさ」

 敵のワンステップがでかい。視界からあっという間に出られてしまう。

 照準が定まらない。

「今止めてやる!」

 姉さんが足元を固めた! 一瞬で真っ白に凍らせた。

 僕とは熟練度が違い過ぎる。

「今だ!」

『魔弾』を撃ち込んだ。

 何かが目の前に覆い被さってきた。

 衝撃が手前で起きた!

「うわっ! なんだ?」

「盾じゃ!」

 そうだった。ゴーレムの癖に盾持ちだった。

 半分損傷した盾が緩やかに回復していく。

「やはり回復持ちか」

 エテルノ様が与えたダメージも既にほぼ完治している。

「その腕貰ったッ!」

 ロメオ君がランスを持つ腕を狙って風の矢を斉射した。

 相変わらず投槍のような矢だった。

 脚が固められていて、逃げられなかったゴーレムはロメオ君の攻撃をもろに食らった。

「ちょっと休憩」

 僕の後ろに隠れて、万能薬を飲み干した。

 ロメオ君が全魔力を投入して片腕がやっとなのか……

「後は任せよ!」

 エテルノ様は落ちた腕を周囲の砂で囲って押し固めてしまった。これでもう腕は再生できない。同じ部位が存在する間は次が再生することもない。

「残る腕はわたしが貰おう!」

 こっちが驚くほど派手な雷撃が盾に落ちた。随分長い閃光だった。

 視界が戻ると盾を構えていた肘から先が溶けてなくなっていた。

「あーッ! 複製できなくなったらどうすんだよ!」

「うるさい、いいからとどめを刺せ!」

 ここまでお膳立てされて仕留めないわけにはいかない。が、足元の氷がど派手な雷のせいで消えてしまっていた。

 敵はその隙に逃げを打った。たった一歩の後退がどんなに追い駆けても追いつけない距離を取ることになる。

 でも僕は違う!

 転移からの風魔法による跳躍で一瞬で懐に!

「この距離なら逃げられまい!」

 両手のない木偶に遮る手立てはもはやない!

「くらえ!」

『魔弾』連射ッ!

 ありったけの魔弾を圧縮して、ピンポイント攻撃だ!

 三発目でコアの外装に届いた。そして四発目!

 手応えを感じた!

 僕を押し潰すように前屈みに倒れ込みながら『巨人騎士』は巨大なミスリルの塊になった。

「これ、放っておくと別の金属とか宝石に変わるんだよね?」

 いきなり場違いなことをロメオ君が口にする。

「まあ、理屈ではそうだよね」

「絶対損するよね」

 その割りに顔が笑ってるよ。

「他の魔物ならコアを分離すれば部位は残るけど、ゴーレムはね……」

「さっさと複製した方がいいんじゃないか?」

「そうだった」

 僕は『楽園』から生きたゴーレム・コアを取り出そうとした。

 するとどこからともなく幾つもの声が!

「ちょっと待て!」

 姉さんやロメオ君が慌てて鞄のなかからコアを取り出した。

 エテルノ様もリュックを下ろすと、なかからうるさくしゃべるコアを取り出した。



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