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エルーダ迷宮ばく進中(次なる一歩)78

 僕たちはスタート地点の山の頂に向かった。

 たまたま時間をリセットしたら昼だったので、そのまま糸玉を使って北エリアに飛んだのだ。

 すぐそばに石造りの神殿跡があって、そこから麓に向かって長い山道が伸びている。

 僕たちは麓の盆地を見下ろした。

 窪地の一角にある岩の上に巨大な番人が腰掛けていた。

「古のゴーレムなのです」

「ほお、変わっておるのぉ」

 エテルノ様が望遠鏡で覗いた。

 あいつのおかげでこの辺りにミノタウロスは寄ってこない。

「さてどこから調べるか?」

「この辺りだということは分かってるんだけど」

 改めて地図と拓本を見比べる。アバウト過ぎて厳密な位置は分からない。

 怪しいのはやはり……

「『開かずの扉』から調べ直すのがいいわよね?」

 ロザリアが言った。

「そうじゃな。あそこが一番怪しいからの」

「他にそれらしい建物がないんだよね」

 アイシャさんとロメオ君が答えた。

「でもどうやって? 僕たちがあれを倒すのか?」

「そう言えばあれ倒したことないわよね」

「そうなのです」

 今まではギーヴルドラゴンと戦わせるだけ戦わせて放置してきたからな。

 でもそうしないと『開かずの扉』は開かないんだよな。

 どうやったらあのレリーフの横に立たせることができるんだろうか? 条件が分からない。

 このままでは埒があかないので、いつも通りギーヴルに手伝って貰うことにした。


 ミノタウロスの軍団との三つ巴になった。ちょこちゃんキメラは起こしてないので、ギーヴルはいつもより元気だった。

 だがそのせいで、あろうことかゴーレムの方が負けてしまった。

 勝利を収めたゴーレムが窪地の壁にある巨大なレリーフの扉に触れることで『開かずの扉』に変化するはずだったのに、ちょこちゃんの参入がなかったばかりに……

「予定と違うじゃないの!」

 ナガレが激戦を制したギーヴルに向かって怒鳴った。

 前回のような一発逆転を期待しながら傍観していた僕たちは、すんなり負けてしまったゴーレムを呆然と見下ろした。

 傷付いたギーヴルは身体を休めるべく、ゴーレムが座っていた岩場のある窪地に、つまり僕たちが見下ろす、すぐそこまで来ていた。

「あれ、倒すの?」

 ロメオ君が聞いてきた。

 散々ドラゴンを倒してきた身としては、さしたる問題ではないと思うのだが、どうにも迷宮補正が効いていないように感じるのだ。イベント用に地の強さのまま投入されているような気がしてならなかった。

 手合わせしてみれば分かることだが、まだこの場所には何か仕掛けがあるように思えた。

 突然、ギーヴルが叫んで、暴れ出した!

 乱立する円柱から稲妻がほとばしったのだ。

 どうやら祭事場跡地に仕掛けられていた罠が発動したようだ。

 ギーヴルは稲妻に悶えた。

 尻尾をしならせ大地を叩き、逃げ回っては石造りの民家や石柱やオブジェを破壊しまくった。

「暴れてるのです」

 血を塗りたくるようにがむしゃらに暴れ回っていたが、余りの攻撃の厳しさにどんどん動きが緩慢になっていった。

 回復する程の魔力も既になく、よろめいては石柱や崖にぶつかり、崩れてきた瓦礫の下敷きになった。

 やがてギーヴルは眠るように動かなくなった。

「レリーフはどうするのよ?」

 ロザリアが呟いた。

 まずは古のゴーレムのアイテムを回収しに向かった。

 鉱物以外に鍵の入った小箱も落としていた。

 恐らく『開かずの扉』の鍵だろうが、肝心の扉の方はレリーフのままだった。

「なるほど。一度に両方は手に入らないということか」

「いやー、豪快な戦いじゃったな」

 エテルノ様は感心しきりだが、こちらは正直失敗したなと思っていた。援護した方がよかったと。

 こちらには『迷宮の鍵』があるのだから。

 取り敢えず坂を下りて丹念に手掛かりを探していく。

 祭事場の祭壇になりそうな場所を覗き込んだり、瓦礫を剥がしてみたり。

 行き詰まってしまったか……

 瓦礫になってしまっては増す増す探しにくくなる。

「どこなんだ?」

 扉があるはずなんだ。

 やっぱりあの『開かずの扉』しかないのだろうか? ゴーレムコアの設計図以外、なかったあの部屋に見付けていない何かが眠ってるのか?

 ぼくはリセットすることを視野に入れ始めた。今度はちょこちゃんも召喚して、ゴーレムを勝利に導こう。そのためには……

「あれ見るのです!」

 リオナが突然叫んだ。

 高台にある神殿跡を振り返った。

 崖が崩れて、大きな亀裂が入っていた。そのせいで神殿の壁も壊れて内部に入れそうだった。

「ただのギミックじゃないのか?」

「覗くだけ覗こうよ」

 僕たちはギーヴルの魔石を回収すると、藁をすがる思いで神殿跡に向かった。


「入れそうじゃぞ」

 壁の亀裂を見ていたエテルノ様が言った。

 魔物がいないことを確認すると、オクタヴィアを先頭に進ませた。

 前房(プロナオス)の崩れた壁をよじ登って、内陣(ケラ)に飛び降りる。そこには大理石の床が敷き詰められていて、周囲には円柱が並んでいた。一部は転がって、崩れていたりする。天井もすっかり抜け落ちていた。

 前房に面する玄関扉の閂を開けて、アイシャさんたちを引き入れる。

 中央には礼拝像が置かれた台座がある。像の身体は腰から上がなくなっていた。

 さて、肝心な入口はあるのか、ないのか?

 像の後ろの壁や、その奥の部屋も見た。突き当たりには後房(オピストドモス)に出る扉が一つ。

「ここもはずれか…… やっぱり……」

 ああッ!

 あった…… 格子状のマス目が……

 ここだ! ここが目的の場所だ!

 床には日に焼けた大理石のタイルが敷き詰められていた。床には亀裂が走っていて、それがあの落書きの謎の線と一致していたのだ。

 前房からでは分からなかった。後ろから、礼拝像の視点で見下ろして初めて見付かる一枚の地図。

 僕は興奮しながらロメオ君を呼んだ。


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