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エルーダ迷宮ばく進中(五十階層攻略中・次なる一歩、その前に)75

 だが、それは突然だった。

 ロザリアの光の玉は光跡を描くことなく、突然、炎竜の目の前に出現したのだ。

 これには炎竜も姉さんたちも驚いた。

 驚いた炎竜は視界を奪われ、光源から逃れるべく長い首をもたげた。

 そこになんの予告もなく、ナガレの雷が落ちた。これもまた稲妻など見えぬ程の至近距離からの攻撃だった。

 戦闘終了である。

 因みにナガレはトレントの杖を持っていない。相変わらずのブリューナクであるが、気付いたときにはあっさり習得してしまっていた。これにはエテルノ様も脱帽した。

「最近の召喚獣は利口じゃの」と。

「ナー?」

 褒められたと思ってモジモジしているヘモジを見詰め、前言を撤回しようか悩んでいた。

 一方、姉さんたちは別の意味で目を丸くしていた。

 炎竜というのは世間一般ではドラゴンより強い竜だと信じられていた。

 竜だし、僕は妥当な結果だと思っていたのだが、たしかにフェイク辺りより身体もでかいし強そうではある。

 初顔合わせで、姉さんたちは世間の常識の方を信じた。

 それを実質上、ナガレひとりで倒してしまったものだから驚いているわけだ。自分たちだって、ソロで余裕で倒せる癖に。

 でも僕はやはりドラゴンとは格が違うと思うのだ。特に回復力は。

「炎竜の肉は鳥肉なのです」

 勿論、肉質の面でも雲泥の差があった。

 肉はいらないので、魔石に変わるまで周囲の探索をする。

「ナーナ」

 ヘモジが宝箱を見付けたようだ。

 どうせ碌な物は入っていない。当たりが出るのは数十個に一個だ。

「碌な物がないの」

 エテルノ様も覗き込んだ。

 装備品と硬貨が少しだけだ。

「素材に変えるぞ」

「お願いします」と僕が言ったら、「ちょっと待って!」とサリーさんが止めに入った。

「レアじゃないの!」

 確かに付与装備だ。

「鉄じゃぞ?」

 エテルノ様が言った。

「これだけでも売ったらそれなりの値段になりますよ! うちの隊に欲しがる者だっていますから!」

「でも、鉄じゃぞ?」

「何が悪いんですか?」

「入り用なら回収しますけど」

「リオナが持っていってあげるのです」

 と言いつつ自分で使ってみる気である。

「魔石、回収したよ」

 ロメオ君が言った。

「よし、移動だ」

 本日は先日やり残した東側の攻略なので、進行的には気楽なものである。

 扉は四方すべてにあるが、通っていないのは東側の扉だけだ。

 通路に出て突き当たりの扉に向かう。

「ナーナ」

「普通か?」

 そうだな。冷気もないな。

 扉をそっと開けるとなかにいたのは……

「見たことがないのです!」

 僕が『認識』を働かしても分からなかった。

 アイシャさんとエテルノ様が覗き込む。

「竜じゃな」

「ただの緑竜じゃ。草食じゃ」

「この辺りでは見ない竜ね」

 ヴァレンティーナ様が覗き込んだ。

 草竜みたいなもんか。

 リオナが先程の武器を持って近付いていった。

 先程と同じ段取りで始まったが、ナガレが手を抜いた。

 そしてリオナが太い脚に斬り付ける。

 傷付いたか?

 リオナも首を傾げた。

 ちゃんと魔力を補充したのに、どうやら鱗に負けたらしい。

「タイムリミットじゃ」

 ロメオ君が麻痺から回復した緑竜の頭上に追加の雷を落とした。

 緑竜は為す術なく倒れた。

 そしてまた時間待ちである。

 宝箱はなかった。

 リオナも剣を僕に預けに来た。

「役に立たなかったのです」

 刃こぼれはしていないようだ。

 僕は『楽園』に放り込んだ。

 そして二つあるうちの東扉を進む。


 今日は半周した突き当たりで、脱出用の転移結晶を使って外に出る予定である。ちょうどいい時間になるはずだ。

 次の扉も熱くも冷たくもなかった。

 が、しかし「当たりなのです!」と、今までになくリオナが声を潜めた。

 ダークドラゴンだった。

 みんな用心した。

「よし、行くぞ!」

 ロザリアが光の玉ではなく、『聖なる光・改』で目眩ましをしたところで突入、一斉攻撃で容赦なく敵の動きを止める。ダークドラゴンは魔法に強く、光属性にめっきり弱い。魔力の減衰分は『聖なる光・改』と『アローライフル』で補った。

 雷を落として麻痺させ、羽を焼き、脚を吹き飛ばした。

 実物に比べて補正の効いたダークドラゴンはかなり弱かった。

 ブレスを吐こうと喉袋を膨らませたところを、リオナが『アローライフル』で一撃を加え、吐き出させる。

 観客がいるので鏃は許可された通常の物を使っている。ナンバリングが通らないと使えないので、ライフルも通常の規格品である。強化した鏃を使うときはライフルも僕のオリジナルを使っているが、ばれるとまずいのでしまっておく。『アローライフル』に匹敵するヘモジの強化ボルトも今回はお預けである。こちらは魔法の矢の延長なのでお咎めはないはずだが、今日のところはリオナに付き合わせた。


 次の瞬間、頭が吹き飛んだ。

 終わりである。

「ナイスなのです」

 ロザリアとリオナがタッチを交わす。

「にーく、にーく」

「ナーナ、ナーナ」

 僕はふたりの後に続いて、肉の回収に向かう。

「倉庫、借りられます?」

 ヴァレンティーナ様に尋ねた、町の備蓄倉庫を借りられるかどうか。

 でも返事がなかった。

 まだ呆然としている。

 返事を聞かずに、回収した。

 自分だって一撃でドラゴンを葬れる無双があるのに、驚かなくてもいいんじゃないだろうか? 迷宮補正だって掛かっているわけだし。

「ひたすら直進なのです」

 次の扉も真っ直ぐ進む。

「炎竜だ」

 数は三だ。

 さすがに目眩ましからは入らなかった。一斉に動かれると困るからだ。

 ということで先制攻撃は、ナガレ、ロメオ君、僕のいきなりの雷撃から始まる!

 接射による直撃である。雷攻撃特有の派手な稲妻はほとんどない。閃光が瞬いただけだったが、威力は充分である。

 雷撃だけで片づいたのならそれでよし。息がある個体にはリオナが追撃を加えて終わりである。が、今回は出番がなかった。

 ふたりのハイエルフも高みの見物である。

 単独パーティーどころか、マンツーマンのほぼ個人戦だった。

 サリーさんは茫然自失。

 ヴァレンティーナ様や姉さんと行動することが多いから、この手のことには慣れているはずなのだが、それはふたりの個人技によるところが大きいと理解していたのだろう。

 でも僕たちは戦術で勝利を収めるのである。それも最小限の力で。結果として個人技になってしまったが。


「ツインテイルドラゴンだ」

「ほお、よう知っておるの?」

「ドラゴンの情報はあるので」

「肉弾戦が強いだけの奴じゃ。尻尾の動きが独特じゃから、タイミングに気を付けよ」

 主にリオナとヘモジに向けた言葉だ。

 出番があればいいが。

 ロザリアの目眩まし兼、照明が投入され戦闘開始である。

 雷の雨が降る。

 あっという間に行動不能に。

 アイシャさんが頭を吹き飛ばして戦闘終了である。

「美味しいですか?」

 聞かれても分からないよ。

 その辺の焦げた肉片でも――

 目の前に肉片が。

 早く毒味しろってこと? まあ、待ち時間あるしな。

 敵の回復が早いから与えるダメージが少なく見えるが、お互い水面下では結構な魔力を消費している。鬼装備のおかげで魔力の回復でこちらが困ることもないけれど。

「普通だな」

 僕は焦げた肉片の食べられそうなところを選んで食べた。毒はない。

「普通では想像できないのです!」

 じゃあ食え。と焼けた肉片部分を削いでやった。

 感想は?

「普通なのです」

 ほれみろ。

 はずれと言うか、今回の組み合わせは当たりだったのでサクサク攻略が進んだ。

 突き当たりに差し掛かった所で計画通り外に出た。

 さあ、昼だ。



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