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エルーダ迷宮ばく進中(五十階層攻略中・手がかり)72

 リオナの剣は宙に舞った。

 だがすぐ腰の裏に二の剣が光るのが見えた。

 片手で僕の両手の一撃に耐えられるか!

 僕は上段から剣を振り下ろした。

 リオナの剣が喉元を狙って突き上げられる!

「そこまで!」

 突然、眩しくなった。

「ちょっといい加減にしたら?」

 光の玉を浮かべたロザリアがいた。

「あれ?」

 リオナがキョロキョロ周りを見渡す。

 僕とリオナは肩で息をしていた。

「もういい加減終わりにしたら?」

「みんな見てるよ」

 後ろにいるロメオ君が言った。

 振り返ると全員が庭の低い壁に肘を突いてこちらを見ていた。オクタヴィアが欠伸した。

 ヘモジがなぜかやる気になってミョルニルを振っている。

「ヘモジ」

 順番が来たかと目を輝かせた。

「また今度な」

「ナァー」

 大袈裟に膝から崩れ落ちた。

「うちのチームのアタッカーふたりを相手になんてしたら、こっちが保たないよ」

 代わりに抱き上げて部屋のなかに戻った。

 まず火照った身体を冷気で冷やした。

 寒かったのかヘモジは逃げた。

 汗が引いたところで浄化魔法を掛ける。

 リオナとふたりスッキリしたところで装備を脱いで、ほっと一息。ソファーに転がった。

 時計を見るとあれから一時間が過ぎていた。

 ロメオ君たちを止めるはずが止められてしまった。

 欠伸が出た。

「お主たちはその年で剣を極める気か?」

 エテルノ様がミルクを入れてくれた。

 全員が席について一息入れた。

「そっちもなんとかなりそうじゃの」

「まだまだですけどね」

「まあ焦らんことじゃ」

 エテルノ様はさっさと休めと言って先にロフトに上がった。

 全員はロフトに上がれないので、男性陣はこのままここで休むことにした。



 翌朝、食事の席で二枚の地図を見ながら、作戦会議が行なわれた。

 今日中に出口に達することが既に分かっているので、その前に未探索エリアを上手にクリアーして、上手い具合に脱出するルートを模索する。勿論、未到達エリアがどこに繋がってるかは推測の域を出ないが、それでも全体的な方向性だけは決めておくことにした。

 方角は分からないので、勝手に今いる方角を南西と位置付けると、出口があるのはおよそ真北となる。南側には多少の凹凸はあるが、既に三つの入口が存在し、外縁に達しているので、未到達エリアは出口を境にシンメトリーにコの字型になっていると推測される。

 北側出口が北の縁にあるのなら問題ないが、マリアさんから貰った地図だけでははっきりしない。ただ分かっていることは地図を重ねた場合、最低でも外側に後三周あるということだ。

 もし出口が縁より内側にあるとしたら、すべてを攻略する前に出口に達してしまい、手付かずのエリアが残ってしまう可能性がある。

 そこで僕たちはまず出口に対して横方向、西側に進む。

 今回の攻略に際し、西側の縁を把握しなければ始まらないのだ。これが五列にも、六列にもなろうものなら、本日の計画はすべて白紙である。そのときは未到達エリアが大分残るので、いつも通りの攻略となる。予測通り、二列、三列辺りで外縁部に当たることを期待する。その場合、西側をすべて攻略してから、東に向かうことになるだろう。

 上手い具合に扉が繋がってくれていればいのだが、西の縁を回るのに東南の隅から回り込まなければならないと言うような事態になったら、その場合、止むを得ないが大回りすることになるだろう。

 どう考えてもすべての部屋が一筆書きのように繋がっているとは思えないので、今日はいつもより多く行きつ戻りつを繰り返すことになるだろう。行き止まりに極力出会わないことを期待する。

 兎に角、どちらにしても今夜の泊まり込みはない。

 時間帯によっては途中、出口に向かい、一旦外に出てゲートの利用権を取得してから攻略再開となるが、今日中に回れそうなら出口には向かわず、東側に直行し、上手い具合に一周して戻ってくる予定だ。

 どの道、残るようなら、明日、北の出口から入り直すことになる。


 というわけで僕たちは西の縁を目指した。あと何列残っているのか?

 一つ目の火竜の部屋を越え、二つ目の草竜の部屋を越えて、三部屋目に突入する。ここまでの部屋には北と西側に分岐が存在した。

 三つ目の扉は熱かった。


 今回、全員で遠距離発動式魔法をぶつけたせいでレッドドラゴンはよけること叶わず、最後はリオナの『アローライフル』の直撃を受けて沈んだ。

 頭も羽も脚もない。みんな無茶苦茶である。


 魔石に変わるまで待ちながら、周囲を調べた。扉は北側にしかなかった。

 希望が見えた。

 次の部屋も同様に北と東にだけ扉があればいい。少なくとも西側になければいいのだ。

 次の部屋には火竜が五匹もいた。まったくもう面倒臭い。

 扉は東側にだけあった。戻る感じだ。東、東、攻略済みなので北に、また西、西に行けないので北に、西に、南に、戻って再戦して、北、東、東、南に一部屋有るはずなので、昨日攻略した東の部屋で再戦、南に下りて再戦、西の部屋を攻略。苦労したのに草竜でがっかり。

 北、東、北……

 目が回ったところで休憩。

「戻りが多過ぎだよ」

 ロメオ君が地図を見下ろして言った。

 進行具合はどうなんだろうか? 部屋数を数えると既に十五部屋を超えているので、遅くはない。ただ昼までに北に辿り着けるかどうか。


 案の定二時間遅れで、北の出口に繋がる階段前に到着した。北の出口は幸いマップの縁にあった。

「魔石どっさり」

 大量の魔石に追い出されたオクタヴィアが、詰まったリュックをポンポンと叩く。

 ロメオ君の背中のリュックも満杯だ。

 外に出たら、このリュックの膨らみ具合と、魔石の大きさが目立ってしまうので、ここで整理する。

「特大が全部で十三個。大が二十八個。中が二十六個、それと精霊石が一個……」

「出ちゃったね」

「スパッと決まっちゃったからな」

 アイシャさんがまたレッドドラゴンの口のなかに放り込んだのだ。前回よりちょうどいい感じで、完璧だった。頭も吹き飛ばずに残っていたし。完全に運だけど、出る物がようやく出た感じだ。

 でも、あれでやっとだから、もう出ることはないだろう。

「屑石がでないってのも凄いよね」

「ほんとだよね」

「あれだけ無茶苦茶したのにね」

「弱い連中はあっさり倒れてくれたからの。細切れにせずに済んだのじゃ」

「なるほど」

 時間的に見て、東側を攻略することはできないと判断して、僕たちは記念すべき五十階層出口から外に出ることにした。

「遂にここまで来たか……」

「念願の最深部だ」

「わたしたちやったのね」

「やったのです」

「ナーナ」

「感慨も一入じゃな」

「ゴール着いた」

 いつもと変わらない転移部屋。でもここから奥にはもう転移部屋はない。

「ん?」

 落書きだ。これはどこかで見た……

「四十七階層の落書き?」

 ゲートの先の突き当たりの壁に描かれたそれを見ながら、ロメオ君が言った。


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