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エルーダ迷宮ばく進中(空の城・報告)54

 マギーさんの助けで、何とかなった翌日、僕はヘモジではなくリオナとサンドゴーレムを狩りに来ていた。

 ヘモジはマギーさんの勧めで新しい肥料作りを始めることになり、商品倉庫に眠っている様々な品を見せて貰う約束になっていた。

 サンドゴーレムを落とし穴に沈めると、リオナがとどめを刺した。

「すっかり弱くなったのです」

 でかいサンドゴーレムの巨体を見ながらリオナが言った。

 僕たちには常に創意工夫が許されるが、迷宮の魔物たちはその強さを変えることはない。僕たち同様、来る敵に合わせて対応を変えられたとするなら、迷宮の魔物たちは無限の繰り返しのなかでとんでもなく強くなっていくに違いなかった。

 巨体が消えると僕たちは空いた大穴から下に降り、アイテム回収を行なった。

 地下の大部屋には金塊が山のようにあったが、今の僕はこれじゃ全然足りないと思ってしまっていた。

 一体何を造ろうとしているのかと自問しながら、回収に当たる。

 光を浮かべて、よくよく周囲を注視すると、あった!

「リオナ、あったぞ」

「あったですか?」

 リオナが駆け寄ってくる途中で転んだ。

「イタタタ……」

「大丈夫か?」

「引っ掛かったのです」

 足元を手で探ると鏡像物質が転がっていた。

 金を含ませて目視可能なレベルまで純度を落とすと『楽園』に放り込んだ。

 匂いがあればいいのにとリオナは愚痴った。


「大量だったな」

 今回はいつにも増して金塊と鏡像物質の量が多かった。その分、他の鉱物や硬貨、宝石類は少なかったが。人の定めた価値観では儲かったということになるのだろうが、迷宮の定めた価値基準ではこれでも普段と同等ということなのだろう。

「タイタンやってくか?」

 リオナは首を振った。

「ヘモジがいないと張り合いないのです。コモドの宝物庫に行くのです」

「コモドがお宝溜め込んでいるわけではないのです!」

 突っ込みを先読みされた。

 してやったりとリオナはニヤリと笑う。


 ゲートを一旦出た先では、何やら騒ぎが起きていた。大体迷宮で問題を起こすのは新参者だと相場は決まっている。

 知らんぷりして、四十七階層をリセットすべく、ゲートに飛び込んだ。

「はずれなのです」

 夜のエリアに出てしまったので、一旦外に出る。

「まだ騒いでるな」

 何やってるんだろ? ギルドが対処しないのか?

 僕たちはもう一度入り直すと日中のエリアに出たので時間を確定して、そのまま酒蔵に飛んだ。

 コモドが相変わらずミノタウロス相手に暴れていた。

 なるほど四十九階層のミノタウロスより一段弱いと感じた。

 タイミングよく、介入してコモドの骸を回収した僕たちは宝物庫に入り、まとめて全部かっさらった。

「満腹なのです」

 ヘモジがいたらゴーレム倉庫も漁りたかったのだが、今日は休日なので、昨日の報告を事務所にして帰ることにする。今回は難しいところはないので地図情報だけで構わないだろう。宝物庫も鍵がなきゃ入れないし。

 若干早めの昼食だが、今日はピノたちも来ているからちょうど落ち合えるかも知れない。

 取り敢えずマリアさんの所だ。

 外に出ると静けさは取り戻したようだが、まだ何かギスギスしていた。

「こりゃ、このまま帰った方がいいかな?」

「騒いでた連中は事務所なのです」

「やっぱりそうか。ピノたちは?」

「まだ食堂にはいないのです」

「騒いでた連中ってなんなんだ?」

「レジーナ姉ちゃんの天敵なのです」

「まさか! 愚連隊? 第一師団が来てるのか? 王都をほっぽり出して?」

 思わず小声になってしまった。

 リオナはこくりと頷く。

「事務所大変だろうな。リオナ、ピノたちが出てくるのを待って、今日のところは引き上げさせよう」

 しばらく待っているとゼンキチ爺さんを先頭に子供たちが出てきた。殿はレオだ。

「兄ちゃん! 来てたのか?」

「まあ、小遣い稼ぎだ」

 子供たちは充実した笑顔を向けてきた。

「何かあったのかの?」

「あったというか、これから起きそうというか。だから今日は切り上げて急いでここを離れて貰いたい」

「えー? お昼なし?」

「食うなとは言ってない! ただ、エルーダでは駄目だ。ゲートへ急げ。帰ったら肉祭りでもなんでもしていいから」

「それなら帰る!」

 現金な奴らだ。

「事務所から出てくるのです!」

「急げ!」

 そう言って僕たちは別れた。

「回り道して事務所に行こうか」

 事務所から出てきたのなら、問題ない。

 かち合わないようにしながら事務所に向かうことにした。

「十五人なのです」

「結構な大所帯だな」

「何しに来たですか?」

「さあね。任務で来たとは思えないけどね」

 各地の迷宮は例の件で今は厳戒態勢中だ。特命を受けた連中が各地に赴いている状況だ。そこに愚連隊が大手を振ってくるとは思えない。


「マリアさん」

 扉を開くと、窓口に向かった。

「あら、今日はふたり?」

 職員全体がどこか憔悴していた。

「近衛が何しに?」

「手柄を上げるんだそうよ」

「なんの?」

「あなたたちが引き受けてるアレよ」

「情報が漏れたの?」

「腐っても貴族よ」

「邪魔されるのはごめんなのです」

「何騒いでたんですか?」

「いきなり五十階層に入らせろと言うものだから、引き止めてたのよ。死なれたら面倒でしょ?」

「生きてても死んでても面倒な連中というのは、いるものだね。一階から始めるように諭したが無理だろうな」

 リカルドさんもいたのか! よかった責任者がいて。

「会議中だったんだが、王都から慌てて帰ってきたんだ」

 ゲートが使えるようになって、一番よかった点はいつでもこのリカルドさんを呼び戻せることだな。

「てことは王都にも情報が?」

「いずれ引き上げ命令が出るだろう。その後、懲罰だろうな。首にはできん連中だから、高が知れてるだろうが。で、何しに来た?」

「あ、そうそう。地下四十九階層のマップができたので。報告に」

「早いわね。四十八層がついこの間でしょ?」

「上からのお達しなので」

「情報が揃うのはいつでも歓迎だ」

 僕は宝物庫から出た地図とロメオ君のメモを提出した。手続きはもう手慣れたものだ。

「ミノタウロス…… 多いわね」

「マリアさんは潜ってないんですか?」

「わたしはイカサマした口」

「みんなそうだ。炎竜を見たら、長居はしたくなくなるもんだ」

「ドラゴンに比べたら小物なのです」

「あんな足場のないところで戦いたくないでしょ?」

「それはそうなのです」

「そうか、こういう構造になっていたのか。一度見て回りたいもんだな」

「注意事項はあるかね?」

「城のなかのミノタウロスは別格かな」

「強かったのです。リオナも疲れたのです」

「君たち見てると強そうに思えないんだけどね」

「城のなかのミノタウロスはほんとに強いのです! リオナたちが押し負けてたです」

 負けちゃいないが、リオナも自分の劣勢に気付いていたか。

「さすがに三体相手にしたときは困ったのです」

「戦い方をまずなんとかしなさい」

 呆れられた。

「報酬はお姉さんたち経由でいいのね」

「はい。『紋章団』経由で」


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