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エルーダ迷宮ばく進中(空の城・攻略編)51

「また待ち伏せなのです」

 リオナが身を低くする。

 待ち伏せが頻発するようになって、僕たちは思うように進めなくなった。

 最後の城門を突破するところまでは容易かったのだが、建物内部に入った途端、精鋭のみの編成になり、難易度が跳ね上がったのである。

 動けないでいると、あちらこちらに隠し通路があるようで、掃討したはずの後方から挟撃されることもあった。

 一対一の戦闘では、たまにこちらの技量を上回るケースも出てきた。

 速さこそあるが、リオナの剣もまだ発展途上である。一度、剣を交えてしまうと敵の装備も相俟って決着が付けられなくなってきていた。

 通路の狭さもあって、ヘモジは完全に押されていた。そもそも技量など二の次のヘモジにはつらい戦いになっていた。

 小さな身体のせいで、接近戦が主体のように見えるが、基本的に大きさを自由に変えられるミョルニルのリーチを長くすることでヘモジは常に敵の先手を取ってきたのである。だからその先手をかい潜られてしまうと、ヘモジの場合力任せということになる。

 それでも充分と言えば充分なのだが。ミョルニルの柄尻まで使うようになるとさすがに心配になる。

「ナーナ!」

 疲れた? 嘘付け! 面倒臭くなっただけだろ。

「代わってやるよ。後ろを見張りな」

 戦ってる最中に、飛び跳ねて嬉しそうに戻ってくる。

「ほお、エルリンの剣捌きは初めて見るの」

 何度も見せてる気がしますけど。

 エテルノ様が僕の代わりに障壁を張ってくれるようだ。

 ヘモジとすれ違うタイミングで、敵はまとめてこちらを薙ぎ払いにきた。

 僕は結界でそれを防ぎながら、肉薄するところまで詰め寄り、膝の後ろを切り裂いた。

 屈強なミノタウロスがドスンと膝を落としたところで、背中に回り込み、鎧の隙間から首の後ろに剣を突き立てた。

 これはリオナの剣では戦いづらそうだ。

 障壁は双剣の付与効果で無効化できるが、この装備を貫くには魔法攻撃力が足りていなかった。ピンポイントで鎧の隙間に銃弾を撃ち込んでとどめを刺していくのはもはや神業だ。それに弾数は有限だから、事実上リミッターが付いているようなものだ。制限時間内に倒さないと打つ手がなくなる。

「『霞の剣』にするか?」

 リオナに声を掛けた。

「問題ないのです。こいつらの動きはもう分かったのです」

 リオナは僕の後ろに下がって弾を補充する。

「グオオオオオッ」

 威勢のいい盾持ちが突っ込んでくる!

 手には巨大な鎚だ。

 勢いのまま目の前に倒れ込んだ。衝撃で完全に目を回している。

「『大男総身に知恵が回りかね』ってね」

 異世界ではそういうらしい。

 足元を緩めてやった。まさか顔面から倒れ込むとは思ってなかったけど。

 二体目を撃破した。

 敵はまだまだやってくる。

「こりゃ、時間がかかるな」

 体力はどうにでもなるが、気力は萎える。そうなったら事故の元だ。

 そうだ! 忘れてた。

 僕は『身体強化』の魔法を唱えた。

 腕力、魔力なんでもござれだ。

 魔力が上がれば比例して、僕の剣の切れ味も増すことになる。

 物陰に隠れていた敵が突貫してきた。こちらには位置がばればれなのだが。

 簡単に迎撃された。

 僕の所まで突破できた敵はゼロだ。残念。魔法を解除する。


「一階は片づいたな」

 アイテム回収の間、マッピングをして貰う。隠し通路があり過ぎてロメオ君は呆れた。

「危ないから、最後だね」

 敵を完全に始末してからにしよう。

 ヘモジはオクタヴィアからクッキーを貰って口に放り込んでいた。

「まったく、主を戦わせて高みの見物をしておる召喚獣がどこにおるんじゃ」

 エテルノ様も呆れているが、苦手を引き摺って、時間を浪費するのはそれはそれで隊の消耗になるのだから、ヘモジの何気ない判断は、勇気ある決断だと言ってよい。

 自分が巨大化するにはこの通路は狭過ぎるぐらいにしか、当人は思ってやしないだろう。


 魔石を回収すると攻略を再開した。

 敵は一騎当千、数で来ないだけ却って楽な戦いになっていた。さすがに二体、三体となるとつらくなるが、単発で来る分には御し易かった。

 どんな戦技もこちらとの戦力差を埋める程ではなかった。

 それより城がでか過ぎた。

 いつぞやの迷宮並みに広い気がする。実際はそんなことないのだが、兎に角、歩かされる。城としては健全な造りだと言ってよいのだろうが、回り道ばかりだ。

 さすがに夕方になり、小腹が空いてくると不安がよぎる。

 ゴールが先か、日没が先か。

「徹夜かの?」

 それはない。と思いたい。

 このフロアにも糸玉があればいいのに…… ここでやり直したら、またスタートからだ。


「宝物庫発見!」

 オクタヴィアが叫んだ。

 僕の額をピタピタと叩いた!

 尖塔に鍵部屋を見付けた。渡り廊下などなく、二階から螺旋階段を上るのだが、こんなとこまで誰が荷物を上げるんだと言うくらいの場所だった。

 小窓の外には居館の屋根や破壊を免れた城壁の上の様子が窺えた。

 外にいる兵士の数は疎らだ。

 あっさり鍵を開けると、中にあったものはまさかの脱出用のゲートだった。

「まさかここが別ルートへの入口?」

 オクタヴィアが無言になった。

 勘違いという奴だ。勿論誰も責めたりしない。みんな同じことを考えたのだから。

 さて窓の外には同じ尖塔がもう一つ、居館を挟んだ反対側にもあるのだが……

「面倒臭いの」

 螺旋階段を下ると掃討した二階フロアを横断して反対側の塔に上った。上階にいる敵は僕たちの登場の遅さに苛立っている頃だろうが、こっちだって忙しい。

 大体、あの転移ゲートを通ろうと思ったら、結局、またここまで来なきゃいけないわけで、宝物庫を見付けたら帰りたいくらいだ。

 再び長い螺旋階段を上る。

 敵が一体弓を構えていたが、高い塔から飛び降りる羽目になった。落ちる前に事切れてはいたが。

「あった! 今度こそあった!」

 さすがに転移部屋がもう一つ出てきたら、泣くところだ。

「量は余り変わらないね」

 ロメオ君が残念がった。

「地図もあったのです」

 ロメオ君は固まった。

「ほら、このフロア全部の地図なのです。大盤振る舞いなのです」

 このフロアにはないと完全に思い込んでいたからこの衝撃は結構痛いね。序盤の宝箱に分割された紙片が一枚とか、予告してくれないと…… 心構えもあるだろうに。しかも最深部で全部揃うなんて、どんな嫌がらせだよ。

 まあ、ロメオ君の心中は察するとして、残るは居館の三階から上の部分だけだ。


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