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エルーダ迷宮ばく進中(空の城・攻略編)50

 破壊を免れた瓦礫の影にゲートを繋いだ。

 ヘモジが先陣を切って突っ込んだ。

 全員が渡り切るまで警戒するはずのヘモジの結界が突然、破られた!

 敵だ! 待ち構えていたのか!

 ヘモジは床を転がりながら体勢を立て直す。

 ミョルニルを振り回し敵を遠ざけ、盾を構え直した!

 渡り切ったナガレも応戦する。

 その隙にリオナと盾を構えたロメオ君が飛び込んだ。

 僕はゲートを維持しなければいけないので先に跳ぶわけにはいかない。

 ロメオ君が爆炎で近場の敵を薙ぎ払う。

 リオナが遠くの弓兵を銃で仕留めていく。

 アイシャさんとエテルノ様が突入して、形勢は逆転。

 ヘモジとロメオ君は盾の防衛ラインを築いた。

 ロザリアが突入して、聖結界を張ると、戦場は格段に安定した。

 敵側の魔法が跳んできた!

 僕がゲートを出ると、コモドのフロアーにいた側近や副官レベルのミノタウロスが軍勢のなかに混じっているのが見えた。

 突出していたリオナが、魔法を回避しながら戻ってきて、盾の後ろに飛び込んだ。

 障壁の外で魔法が炸裂した。

 こちらの視界を遮ると二十体近い敵が一気にその距離を縮めた。

 そしてこちらの障壁を物量で破壊しに掛かる!

 が、アイシャさんにはお見通しだった。衝撃波一つで、視界を切り拓き、なおかつ半数を沈めた。

 ナガレが追い打ちを掛ける。

 リオナも反撃に移った。

 僕が障壁担当を代わるとロメオ君とヘモジも飛び出した。

 ロメオ君が魔法でひるませたところにヘモジがミョルニルを叩き込む。

「強いの」

 エテルノ様が感心する。

 でもそれは僕たちに向けられた言葉ではなかった。

 僕はエテルノ様にみんなが褒められたのだと思い気をよくして、早速『魔弾』の修練をさせて貰うことにした。

 銃を取り出すとこれまでにない程、精錬させた『魔弾』を薬室に装填した。

 威力重視ではなく、僕の一番苦手な制御を別の形に昇華して。

『鉱石精製』が働いたのか、いつになく硬い弾丸ができた気がした。

 気のせいのレベルだが、撃てば分かるだろう。

 指揮官クラスの頭を狙った。

 二陣の軍勢が大波のように押し寄せてくる。

 ロメオ君が薙ぎ払う炎が見えた。

 不思議と集中できた。

 敵陣の肉壁の隙間から隊長クラスの兜が覗いた一瞬。

 僕は吹き飛ばした。

「爆発しなかった?」

 大きな巨体が崩れていく。

 望遠鏡から目を離して肉眼で確かめたが、結果は同じだった。 

 次の一体も、次の一体も通常弾頭で仕留めたかのような、あっさりしたものだった。

「威力が落ちてる?」

 どうして? 増してるはずなのに!

 動揺してる僕の肩に、アイシャさんが手を置いた。

「威力は上がっておる」

 そう言って、アイシャさんは魔法を一回り大きなミノタウロスに当てた。

 魔法がパーンと弾けた!

「え? 何? 結界?」

「ここの敵は弓兵を除けば雑魚に及ぶまで結界持ちじゃ、最低でも二発じゃ」

 それでロメオ君は単発系の魔法ではなく、継続ダメージが入る爆炎を使っていたのか?

「みんな何気なく倒してるから、気付かなかった」

「成長しておるのはそなただけではないということじゃ」

 よくよく見ればヘモジもバッシュをかましてから、殴りかかっていたりする。

 リオナもロメオ君たちが結界を剥がした敵を優先的に排除している。

 ロザリアも光の矢を二発ずつ、タイミングをずらして撃ち込んでいた。光跡が長く見えた。

「指揮官クラスは皆、多重結界持ちじゃ」

 エテルノ様の魔法だけは結界に遮られることなく敵を破壊した。

「我の魔法の最大の特徴がこれじゃ」

 してやったりとほくそ笑んだ。

 障壁貫通能力…… 結界はエーテルを弾くようにはできていない? 

 そう言うことか!

 ドラゴン系の結界は無効化できても、それ以外の魔物の結界を僕たちが無効化できたわけではない。半ば強引に力でねじ伏せているだけのことだ。

 僕の『完全なる断絶』はエテルノ様の魔法を防げるのか? 素朴な疑問が湧いた。

「なんでもなく見えるもの程、案外難しいものじゃ。ど派手な爆発など見た目はよいが、要は余剰エネルギーの無駄な放出に過ぎない」

 面白い! エテルノ様の発想は今まで会った誰のものとも違う。

 力で上回ることがベストではないと。丁度よいことがベストなのだと。

 ゼンキチ爺さんの剣の教えに通じるものがある。

 そうか、魔法もまた、剣と同様に無駄を省いていくことが、上達の鍵なのか。

 一言で言うなら洗練だ。

 今までだってロメオ君程じゃないが、制御には気を払ってきた。でもそれはあくまでそつなく当てることが目的だった。

 一瞬、僕の身体のなかに雷が落ちたような衝撃を感じた。

 今のは……

 近づいてくる敵陣に向けて僕は銃口を向けた。

 ちょうどよい一撃。それは何も威力を絞ることじゃない。

 ちょうどよく使いきることだ。

「今だッ!」

 僕の一撃は一団の将目掛けて飛んだ。そしてその導線上にいた敵兵たちをも巻き込んだ。

 敵将の兜が地面に転がったとき、壁になっていた連中もまた地に伏した。

 できた?

『魔弾』の新しい使い方。過剰な一発分の威力をなん発にも分けたような感じ。障壁を破るのにちょうどいい一撃。装備を貫通してとどめを刺すのにちょうどいい一撃。

 一発集中では暴れてしまう『魔弾』も、分散させたら大人しくなった。素直になって心なしか威力も増したような気がする。アンドレア兄さんの『魔弾』にちょっと似てたかも。

 結果的に何枚もの障壁を貫くことができた。

「ああ、リオナが仕留めたかったのです!」

「ナーナ!」

 ふたりが取って置きの料理の皿を取られたかのように抗議してきた。

「逃げ出したぞ」

「逃がすわけないでしょ!」

 ナガレが雷を落とした。なるほどナガレの雷も長めだ。

 ロメオ君、アイシャさんの雷が続け様に落ちた。

 退却した連中は城のなかに逃げ込んだ。

「倒しも倒したりじゃな」

 エテルノ様が戦果を見下ろした。

「アイテム回収だけはなんともならんの」

 急に情けなくなった。こればかりは人海戦術だ。

 どうせ碌な物がないんだけど。

 全員が装備品の掘り起こしに入った。

「宝物庫を早く見付けたいのです」

 そうなれば目の前の骸はすべて魔石で構わないからな。

 指揮官クラスの敵は一回り上等な装備をしていたが、やはりサイズがあわなきゃ始まらない。

 骸が魔石に変わる間、僕たちは地図情報を集めた。

 宝箱は三つ。どれも鍵なしだった。中身は僕たちにはどうでもいい装備品とわずかな硬貨だけだった。



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