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エルーダ迷宮ばく進中(空の城・攻略開始)43

 遅くなりました。

 遊びのことはそれまでにしておいて、今やるべきことを検討するため食堂に戻ると、ロザリアもアイシャさんもレオも揃っていた。

「遅いのです!」

 ああ、肉か!

 ドレイクの肉の試食会があったんだ。

「では焼き始めますね」

 エミリーが厨房に消えた。

「何話してたですか?」

「今日拾った石の使い道について相談してたんだ」

「なんじゃ、言えない程の石か?」

 アイシャさんが聞いてくる。

「もう一つの別の石と同じくらい言えないかな」

 オクタヴィアとヘモジが自分の口を両手で押さえながら頷いている。

「後で見せて貰おうか」

「わたしも。誰も話してくれないんだもの」

 ロザリアが自分も行けばよかったと愚痴った。

「石より、今は肉なのです!」

 あんな石を見た後だというのに、平静でいられるリオナは偉いな。

「焼けましたよー」

 恒例の万能薬をおいてのお食事会と言うか、夕飯になった。


 残念な結果が待っていた。

「鶏肉なのです」

「ナーナ」

「普通」

 リオナとヘモジとオクタヴィアは肩を落とした。

「さすがにそのフロアにドレイクだけということはなかろう? 奥に進めば、また別の肉が手に入るじゃろ」

 アイシャさんが珍しくなだめる。

「取り敢えず、肉はいらないな」

 僕は言った。

 全員、異存はないようだ。

「鶏肉は皮の部分が美味しいのです」

 そもそも鳥じゃないだろ。

「さすがにドレイクの皮は食べられないものね」

 一皿平らげたナガレが言った。

 装備品になる皮だからな。

 ヘモジが元のサイズでこれを丸焼きにでもしてかじるのならありかも知れないが、チビヘモジはケッてな具合で皿をよけたら最後、見向きもしなかった。

「ナーナ」

「食材としてはニワトリにも劣る?」

 肉は兎も角、全体の売値がどれだけになるかは近日中に判明するだろう。

「それで四十九階層と五十階層、どっちから攻略するか、なんだけど」

「五十階層は後戻りごめんみたいなコースだから、手が掛かりそうだし」

「四十九階層も炎竜だけということはないでしょうしね」

 ナガレとロザリアが言った。

「妾はまだ見ておらんが『急がば回れ』と言うからの。四十九階層から攻めるべきじゃないかと思うがの」

「仮に行き詰まっても、正確な情報があった方が後顧の憂いがなくていいんじゃないかしらね」

 全員が順に進むことに賛同した。

 個人的にはいい採掘場が見付かったらいいのにと思ったりもする。


 ドレイクの肉はどう頑張っても鶏肉以上にはなれなかった。食糧事情が悪い地域なら食用にしてもいいだろうが、他に獣人たちを唸らせる美味しい肉がいろいろある地においては魔石になって貰った方がよさそうだ。

 ただ五十階層のスタートが四枚羽のドレイクだと言うことだけは分かった。どう考えても最終的にドラゴンクラスが控えていることは間違いないだろう。

 逆に言うと四十九階層の敵の強さはドレイク止まりとも考えられる。フロアボスがいたとしても、そう考えれば逆算しやすい。

 翌日はアイシャさんも、ロザリアも合流しての攻略になる。おまけにエテルノ様まで一緒だから完全に戦力過多だ。

 いっそ炎竜を真っ先に葬ってしまうのも手だな。



 翌日、僕は早起きしてパン屋に寄った。

 頼んでおいた大量の備蓄用のパンを荷馬車に乗せて持ち帰ると、納屋に入る前に『楽園』に納めた。

 折角のいい匂いが台なしになる前に、予め用意しておいた保存箱にパンを型崩れしないように。

 若干名増えたが、これで十日は遭難しても凌げる公算だ。

 あと二日で一月分の備蓄が完了する。

 朝食を済ませ、リオナの朝の散歩が終わると出発だ。


 四十九階層は浮島を回廊で繋いだ巨大な要塞だ。

 最も大きな島にある城攻めが課題になるフロアである。

 ゼンキチ爺さんが呪われていた、パスカル君たちと行ったあの食人鬼の砦フロアによく似ている構造だった。

 浮島を繋ぐ橋を渡る度に待ち構える敵を突破するのが、味噌のようである。

 ただここの敵がまだ未知数なことと、頭上に炎竜が見張りとして控えていることに注意が必要だ。

 魔法が禁じ手のようなフロアであるから、鏃と言って、もはやはばからない例の投擲武器を持ち込むことにした。

 炎竜が禁じ手封じの役に立つかはいささか疑問ではあるが。


 僕たちはスタート地点から最初の橋を渡り、対岸の島に着いた。

 序の口で敵の姿もなかったが、ロザリアがもう退場したいと言い出した。

「こんな場所だなんて聞いてません!」

 いいえ、言いました。空に浮かぶ城だって。

 どうやら勝手な解釈で、大きな城のある大きな浮島が一つだけあって、群島は背景のようなものだと思っていたらしい。巨大な回廊を形成している話しはしたと思うのだが……

 こっちの気のせいか?

 取り敢えず今日は役に立たなさそうである。その分、五十階層の暗闇で頑張って貰いましょ。

「まずはロケーションを堪能しろというところじゃな」

 アイシャさんの言う通り、この島は全方位の島々を見て取れる位置にあった。

 そして一番発見されやすい場所でもあった。

 巨大なバリスタの矢がどこからともなく降ってきた。

「移動するぞ、走れ!」

 隠れる場所もないので次の橋に雪崩れ込んだ。

 すると第一村人発見! どこかで見た兵士だった。第四十七層でコモド狩りに協力してくれていたいつものミノタウロスの面々だった。しかも装束だけ立派になっちゃって。

 番犬はいないようなので、却って御し易かった。

 が、橋を中程まで渡ったところで後ろの群島が完全に破壊された。

「えええ?」

 思わずロメオ君が声に出した。

 昨日あれ程チマチマ掘っていたのが、馬鹿のようである。

 島が四散すると多くの瓦礫が重力に引かれて落ちていくのとは裏腹に、浮かんでいく残骸が!

 ああ、あれを回収したいッ!

 だが目の前には迎撃すべく迫ってくる敵の一群が。長い階段の先に迫っていた。

「ここは我が盾になろう。エルリンはあれを回収して参れ!」

 長老が格好いいことを言ってくれた。

 でも大丈夫か?

 アイシャさんに確認すると、頷いた。

 日頃、小馬鹿にする癖に信頼はしているようだ。

「なら、遠慮なく」

 オクタヴィアが気を利かせてご主人の元に戻った。ヘモジも僕の側から長老の前に立ちはだかった。

 なんというか…… 背の低い順に並べ、みたいなことになっている。


 僕は浮上する塊の上に転移した。

 そして、重石代わりに『楽園』から取り出した金塊で周囲を囲った。

 上昇から下降に転じたところで、土砂を取り除いていく。軽くなって浮き上がりだしたら、金塊の量を調整する。一定の大きさにまでなったところで、つまり我が家の地下訓練場に収まる大きさまで小さくできたところで回収する。

 足場のなくなった僕は当然落下するのだが。

 慣れたもので敵のど真ん中に降りてやった。

 エテルノ様たちに迫る前衛の後衛を配する陣にだ。

 僕が『転移』を繰り返したことで、目を付けた御仁が空の上にいた。

「やれるもんならやって見ろ!」

 僕は魔力を放出して、一瞬で周囲を凍らせてやった。

 炎竜は激怒した!

 そして僕がいる場所目掛けて、容赦のない一撃を叩き込んだ。


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