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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第十四章 扉Ⅱ

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エルーダ迷宮ばく進中(空の城)40

「気位って?」

 下の階に出るとリオナが長老に尋ねた。

「逃げ足が速いと言うことじゃ。見た目はあれじゃが、かなわないと分かるとさっさと逃げおるんじゃ。粘るということをせん」

「ドラゴンより賢い」

「こだわりがないのです」

 オクタヴィアとリオナが深く頷く。

「お主らな!」

「これからどうする?」

 騒ぐ長老はおいといて、ロメオ君が聞いてきた。

「そうだねぇ…… これが記念すべき五十階層なんだよねぇ……」

 真っ暗だった。

 僕は光の玉を浮かべた。

 リアルヘモジが充分歩ける程の、天井の高い石壁の廊下が姿を現わした。

 その突き当たりにこれ見よがしにでかい扉があった。

「『閉じられた扉の先に気を付けよ。備えあれ。愚者には愚者の結末を』じゃと」

 エテルノ様が古代エルフ語で書かれたレリーフを読み上げた。

 そしてそこに書かれている絵は明らかにドラゴン、否、竜か。足が二本しかないことを見ると竜だな。

「ドラゴンじゃないんだね?」

「ナーナ」

「肉じゃないのです」

「ないなーい」

 竜の肉だって肉だろ!

「四本足がドラゴンじゃ。前脚を手と呼ぶかは形態次第じゃが。そのせいで二本足の竜より図体がでかい傾向にある。当然肺もでかいから、ブレスも強力じゃ。一方、竜は前脚が羽に進化した魔物じゃから、前脚を使っているときは空を飛べないのじゃ。身軽さが売りじゃが、ドラゴンのブレスの前には無力じゃな」

 今更ドラゴンと竜の見分け方のレクチャーを受けてもね。

「上の階に戻る?」

「ちょっとやることを思い付いた」

「なんじゃ?」

「飛行石が持ち帰れるかどうか試してみる」

 全員にあんぐりされた。口をぽかーんと。

「呆れた奴じゃ」

「この扉は開けない?」

 オクタヴィアが首を捻る。

「覗くだけ覗かない?」

 ロメオ君が誘った。

 そうだな。お使いに来たわけじゃないしな。

「ドラゴンを想定しょう。ブレスに注意だな」

「長老は平気?」

「誰にものを言っとる。アイシャより確かじゃ」

 多分そうなんだろうとは思うけど、日頃の行いが信頼を軽くする。

「美味しい肉が獲れますように」

 リオナとヘモジとオクタヴィアがお祈りする。

「緊張感、なさ過ぎやしないかの?」

「鍛えられてますんで」

 姉さんの修行が生きてくる。ドラゴンと鼻突き合わせて接近戦をした経験が怯えることのない胆力を僕たちに植え付けていた。

「まずは見せて貰うぞ」

 さすが分かってらっしゃる。チームにはチームの戦い方がある。割り込むと却って悪影響をもたらすことを長老は知っている。やはり年の功か。

「じゃ、行こうか」

 全員で重い大扉を開けていく。

「たまに扉がこっちに倒れてくるような気がしない?」

 ロメオ君が軽口を叩く。

「あるある。見上げる程の大扉って上がどうなってるか見えないもんな」

 扉を押す手に力を込める。

「ナー」

 扉がギギギギッと音を立て開いていく。

「扉が重すぎて、蝶番が壊れるんじゃないかとか考えちゃうわね」

「我は扉のノブが巨人サイズの高さにあったらどうしようかと考えるの」

 皆、沈黙した。

「なんじゃ、その沈黙は!」

「ものの哀れというものを一瞬感じてしまって」

「なんじゃとー」

 大声を上げたところで、先方に気付かれた。

 グワァアアアオ。

 闇に蠢くものが叫んだ。

 グルグルと喉を鳴らしている。

 暗闇に炎の切れ端が燃え上がる。

「ロザリアいないんだった」

 光が投げ込まれるのを一瞬待ってしまった。

 僕は急いで光の玉を部屋に投げ入れた。

 目の前に既にでかい顔があった。喉袋が既にパンパンに膨れ上がっている!

 突然の衝撃波ででかい顔がのけ反った。

 喉に蓄えていた炎を吐き出して、竜は天井を真っ赤に染め上げた。

 一気に空気が熱くなった気がした。結界があるので実際のところ涼しいものなのだが。

 ロメオ君の一撃は目の前の魔物の頭を揺らしていた。

「ナーァナァアッ!」

 無防備なところにヘモジの一撃を食らって完全に沈んだ。

「死んだ?」

 オクタヴィアが首を伸ばした。

 反応が切れた。

「死んだようじゃな」

 長老が唖然としていた。

 恐らく長期戦を念頭に置いていたのだろう。

 無防備になったとはいえ、竜にも本来は結界があるのだ。一撃で倒せるわけがない。

 敵もまさか直撃を食らうなどとは思っていなかっただろう。

「油断大敵」

 オクタヴィアがでかい竜の頭を見上げた。

「これはなんなのですか?」

 リオナが言った。

 見たことのない竜…… ドラゴン?

「四枚羽根のドレイクじゃ。これは珍しい」

 羽が四枚って。竜なの? ドラゴンなの? どっちなのって感じだ。

 でも顔は壮観だな。

 図鑑にないから竜なのだろう。

「美味しいですか?」

 長老は黙ってしまった。

「食べたという記録はないの……」

 そういう価値観で竜やドラゴン狩りをする人はいないからな。

「それより、あそこでよく衝撃波が出せたね」

 僕はロメオ君に小声で言った。

「魔法付与をね。掛けて試そうと思ってたんだ」

 前回アイシャさんが先制攻撃をしていたくだりもあってか、リオナが飛び出す前に衝撃波を撃とうという腹積もりだったようだ。

「エルリン、早く回収して欲しいのです!」

「ナーナ」

「早く、仕舞う」

「はいよ」

 まったく蜥蜴狩ってんじゃないんだぞ。緊張しろよ、緊張。

 ドラゴンが出てきたら、さすがにこんな暢気にはしていられなかったんだろうが。

 僕たちは周囲に罠や宝箱はないかチェックした。

 ロメオ君は早速地図造りだ。


 そして反対側の扉を開けて外に出た。

 同じような広い廊下が待っていた。

「暗い」

 明かりを灯す。

 反応が何もないのはなんでだ?

 ギイイイイィ…… と重苦しい音がした。そしてバタンと音がした。

「?」

 後ろの扉が閉まった?

 突然、嫌な予感がした。


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