エルーダ迷宮ばく進中(空の城)36
ロメオ君はそのままに、僕は溜まりに溜まった回収品の分類を始めた。
話したいことがあったのだけれど……
「でかいのから始めようか」
まずは鉱石の類い。
名札を確認しながら、人数分を等分配していく。大きな塊のまま分類できる分は、さっさと分けて、それぞれの棚に。残りは等分にカットして収めていく。
ここまでは簡単だ。
次は硬貨だ。
これはもう数はおいといて、種類ごとに袋にまとめていく。
後でギルド本部に持ち込んで、人数分の手形に変えて貰う。
武具や装飾の類いは、等しく分けることはできないので、取り敢えずまとめておく。
一定期間、放置している間にほしい物を選んで貰う。取り敢えずは一週間。考え中の場合は弾いておいて貰って、さらに一週間待つことに。
被らない限り、値段に関係なく、その人の物になる。被った場合には前回の取得から時間が経っている方に優先権を与える。そうなる前に交渉で処理して貰ってはいるが。
宝石に関しては僕が一元管理する。
専用の箱のなかにまとめておき、現金化した段階で分配する。理由は『鉱石精製』してから転売した方が高く売れるからだ。
これも値段に関係なく欲しい人には譲ることに。もちろん精製してからでも、しないままでも構わない。
宝飾品として身に着ける宝石はデザインなども考慮して完成品を購入するので、武具の強化に使う分以外は、裸の宝石を欲しいという者はうちにはいない。
これも一応最高級品は売らずにストックしてあるので、武具に付けるならいつでも無料進呈することにしている。
ヘモジやナガレたちの分の棚もあるが、彼らが取っていいのは、それぞれのご主人様の棚からのみである。
が、我が家の召喚獣たちは自立しているので、自分の分は自分で稼いでいる。
特製ジュースが売れるので、ヘモジの懐も最近潤っているはずだが、迷宮での小物集めはやはり、やめられないようである。
それと一応子供たちの棚もある。基本現金と預金通帳のみ。ピノとレオの分は冒険者としての回収品もあるが、そこは自主管理に任せている。
セキュリティーに関してだが、子供たちだけの入室は許可していない。宝物庫に大人がいれば入ってこられるが、でなければ入れないようにしてある。
もちろん信用していないからではない。彼らの身の安全のために、我が家の金庫には入れないということにしてあるのである。これはエミリーも例外ではない。アンジェラさんの許可がなければ扉を開くこともできないのである。
「今何時?」
のっそりロメオ君が起きてきた。
「もうすぐ夕飯かな? 食べていくでしょ?」
「じゃあ、お相伴に与ろうかな」
「進展あった?」
「取説がもうすぐ解読できるかな」
「仕組みの方はまだまだ?」
「全然だよ。先は長いよ」
大きな欠伸をする。
「ところで、面白い話があるんだけど」
そこで僕は『強化魔法』と各種スキルとの連動性について、今日、試した結果を報告した。
「ほんとに?」
僕は頷いた。
「『強化魔法』は眼中になかったな…… 複数同時展開って管理が面倒臭いんだよね」
「そうそう、効果が切れたからって知らせてくれるわけじゃないしね」
「いつの間にか切れてて、突っ込んだら返り討ちとかやだもんね。でもさ、大発見だよ! スキルだけでも習得できたら、凄いよ! 僕も『魔力強化』欲しいかな」
「『魔力上昇』と『魔力回復』とは別物だと思う?」
「『魔力回復』は僕、持ってるけど。上位スキルじゃないんでしょ?」
「体質かな?」
「それにしても最近の子供は恐ろしいね」
「ほんとだよ。遊びのために『付与魔法』なんて、有り得ないから」
「明日頑張ってみようかな」
「じゃ、これ」
僕は例の本を渡した。
たぶん習得方法は『魔法大全』を見れば書かれているのだろう。ただ眼中になかったと言うだけで。
「スタミナ系も欲しいかな……」
「お夕飯の準備ができました」
エミリーが呼びに来た。
上では相変わらず、作文に子供たちが嵌まっていた。
ハサウェイ・シンクレアは長老と出かけていて留守だった。
当て込んでいた子供たちは肉料理そっちのけで唸っていた。
僕とロメオ君はそれを横目に当たり障りのない話をした。
それから僕たちはまた地下に潜り、先の話の続きを話した。
そして地下第四十九階層のことについても。
「いよいよ、マップ情報がゼロの階層だよ」
「冒険者ギルドになら多少の情報はあるんじゃないかな?」
「明日行くついでに聞いてくる?」
「学校行ってる間に迷宮に潜るとリオナたちにずるいって言われるからな。お願いするよ」
「分かった。じゃあ、聞いておくよ」
僕は明日の午前中、旅先で使い切ってしまった備品を補充することにした。
子供たちの問題はロザリアが付き合うことで完結した。
ゲームして遊ぶ気力もなく、朝も早いので、家路に就いた。




