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老人の歌4

 派遣することで双方、異論はなかったので、そこまでは簡単だった。ただ人選は悉くはねつけられた。

 まず、騎士は該当からはずされた。ヴァレンティーナ様が選んだ人選が根底から否定された。

 そして次に当人と姉さんだが、これも王宮の紐の付いた人物は遠慮願いたいということで行き詰まった。そもそも『銀花の紋章団』はヴァレンティーナ様の祖母が始めたことで、それを紐が付いたと言われてしまってはどうしようもない。

 そこで僕たちはどうかとなったら今度は魔法使いでは駄目だというので、剣を使えるリオナとアイシャさんではという話になったが、未成年もエルフも無理だと断わられた。魔法使いが駄目ならロザリアも駄目かと言ったら、これまた駄目だと返された。

 残るはヘモジとオクタヴィアぐらいしかいないぞ。

 そこで提示されたのが、ドラゴンスレイヤーで魔法使い、冒険者で前年度の武闘大会の優勝者だった。

 使いの者は承認した。何が琴線に触れたのか分からないがそういうことになった。

「ひとりじゃ行きませんよ。あんな遠くまで」

「分かってるわよ」

 ヴァレンティーナ様は移動手段として飛空艇を出すことを了承させていた。

 さすがに僕だけでは心許ないので、せめて旧国境までと粘ったらしい。

 この条件を呑まなければ僕が首を縦に振らないと納得させたようだ。

 当然だろう。わざわざある移動手段を捨てて、馬車で何ヶ月も掛けて移動するなど時間の無駄だ。砂漠を行くとなればでかいあれもいるのだから、街道に沿って移動しなければならない。

 先方は折れた。ただし地上に降りていいのはあくまで僕だけだそうだ。

「僕ひとりでどうやってドラゴンの相手をしろと?」

「さあな。ひとりで事足りると考えているのだろう」

「ひとりと言ってもお前には召喚獣が二体もいるだろ」

「チョビも行くか?」

 ナガレの頭の上にいるチョビとイチゴが身体をもたげた。

「いたですか!」

「普段いない人たちが大勢いれば心配するでしょ? ついでだから敵じゃないことを教えていたのよ」

『イチゴちゃんと留守番してます。お仕事もありますし。でも、必要だと感じたらいつでも呼んでください。いつでも馳せ参じますから。ドラゴンの羽なんてちょん切ってやりますよ』

「そのときは呼ばせて貰うよ。留守の間、みんなをよろしくな」

『はい、お任せ下さい』

 二人揃って鋏で敬礼した。

 そのままの姿勢でナガレの頭に乗ったまま中庭に去って行った。

「話を戻そう」

 

 旧国境で降りて、そこからは場所を特定されないために馬車での移動になる。

 船はその場で待機。往復に一週間は掛らないというからそのように。ま、帰りはボードか中型飛空艇で帰ってくればすぐだろう。

 途中までの随行者はいつものメンバーに、姉さんが選ばれた。ただ入れ替わりにアイシャさんが居残ることになった。理由はハイエルフの里からの例の返事を受け取らなければならなかったからだ。

「では、そのように。出立は明日の朝だ」

「報酬は?」

「金貨百枚」

「ドラゴン討伐に百!」

「ローラシエナ王国金貨だ。三倍の価値がある」

「それでも三百枚なのです」

「残りは成功報酬だ。金では買えぬ物をくれるらしい。詳しくは現地でだそうだ。折り合いが付かずに戻ったとしても前金は返さなくてもよいそうだぞ」

「そのつもりじゃないよね?」

「最悪そういうことよ。往復で三百なら損はしないでしょ?」

 ギルドの取り分、この金額だと二割ぐらいを引くと、この国の金貨にして二百四十枚か。うちの船員は高給取りなんだけどな。十日間、五人分で五十枚。メンバーは日給じゃないからいいとしても、ただというわけにはいかないだろ。姉さんの取り分も考えると、とんとんだな。

 討伐が叶うとして、ドラゴンの亡骸は回収させて貰えるのか、そもそもドラゴンにもいろいろいるわけで、モドキ程度ならいいが、上級ドラゴンだったら勝てるかどうか。

 金で買えない物か…… 

 そうだ! 『ドラゴン』の本があったんだ!

 あれ、どこへやった? リュックのなかに入ったままか? どんなドラゴン相手でも『認識』スキルが反応するように一通り目を通しておかないとな。

 それと食料やら魔石やらも準備しないとな。非常用の備蓄もそれくらいはあるが、あくまで非常用だからな。

 戦闘はヘモジがいれば大丈夫だとは思うが、念のために飛び道具を充実させておくか。

「では、解散しましょ」

 全員が起立したので、僕は我に返った。

「頼んだわよ」

「はい」


「それじゃ、準備をしっかりな」

 姉さんたちが帰ると、僕たちは各々準備をすることにした。

「ロメオ君とテトたちにも知らせないと」

「ピノ君たちには僕が」

 レオが出て行った。

「言えば聞こえるのです」

 リオナは壁の結界用の魔石を外した。

「ロメオ君ちに寄ったら、そのままクヌムで魔石を両替してくるよ」

「リオナはパン屋に注文を出してくるのです」

「なら途中まで一緒に行こう」


 中央広場でリオナと別れると僕はロメオ君に予定を説明し、その足でエルーダに向かった。

 火蟻クイーンを狩って特大を手に入れ、魔石の交換屋で魔石(大)に両替した。

 午後は、これを使って投擲用の鏃を作ることにする。


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