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老人の歌(『若様ご乱心』カードゲーム)3

 カードの裏が見えるのはやはりまずいということで、前話修正。7/9

「いいじゃないか!」

 僕のカード、いいじゃないか! 最強じゃないか!

 倒せないということは僕を前衛に置いておけば、後衛も安泰ということじゃないか。おまけに場にある間は常に十五ポイントのアドバンテージ。後衛のエミリーの「前衛応援」の効果で倍の三十ポイントだ。


「ナーナーナ」

「え?」

 退場?

「なんでだよ!」

「ナーナ」

 姉さんのカードだった……


『攻撃力二十。「範囲魔法」で攻撃力が残っている限り、同列攻撃可。後衛攻撃可。「エルリン」を「お姉さんの威厳」で退場させられる。ただし、「範囲魔法」か「お姉さんの威厳」かは一つしか選択できない』


「なんだとーっ! 誰だ、こんなカード考えたのは!」

「ナーナーナ」

 村のみんなで考えた?

「もしかして……」

「ナナ」

 ヘモジが嬉しそうに右手で空を指差し、左手を腰に手を当てて腰をフリフリ、仁王立ちして言った。

『最新カードゲーム『若様ご乱心、スプレコーン編』絶賛発売中!』と。

「もう商品化してたのか……」

「ナーナ」

「そんな馬鹿な…… その商品名だけは何とかならなかったのか?」

 僕がそう言うとヘモジがリオナのカードと取説を出してきた。


『攻撃力十四。攻撃力が残っている限り、二回攻撃可。「エルリン」以外の「無効化」カードを破壊可。「隠遁」効果ですべての攻撃を三回無効にする。隣に「エルリン」がいると「ご乱心」発動(取説参照)』


『「リオナ」(ご乱心モード)…… 双方の場に「リオナ」以外の女性カードがあるとき、その合計ポイント数だけ攻撃力がアップする。ただし「隠遁」は解除される』


「何これ? これじゃ、リオナご乱心だろ?」

「ナーナーナ」

「何…… 僕の別のカード? 二枚あるのか?」

「ナーナ」

 通常モード用とご乱心モード用? どちらか選んで使えるっだって?

「ナーナーナ」

 それだけご乱心モードは卑怯? 

 卑怯ってなんだよ!

 二人対戦のときは通常モード使う? ってことは多人数でもできるのか?

 何々……

 僕はご乱心モード用カードの注釈を見た。前記の記載に加えて、更に記載があった。

 

『「リオナ」が相手側の場に置かれている場合。「ご乱心」を発動(取説参照)』


 また取説を見る。

『「エルリン」(ご乱心モード)…… 攻撃力二倍。攻撃力が残っている限り、連続攻撃可。「無効化」カードを破壊可。倒されるか「リオナ」が場から退場するまで効果は維持される』


「ナーナ」

 ヘモジがもう一枚カードをそっと出す。

 ロメオ君のカードだった。


『攻撃力十五。「範囲魔法」で攻撃力が残っている限り、同列攻撃可。「なだめる」で「エルリン」と「リオナ」どちらかの札を退場させられる。「エルリン」が場にある限り、十以下の攻撃無効化』


 ヘモジがケタケタ笑う。

「ロメオ君…… なんかいつもごめん」

 納得した。

 商品名通り、若様はとんでもないカードだった。

 ルールを大きく逸脱することで、ゲームを面白くする効果があるのだろう。

 三回戦のどこで「リオナ」と「エルリン」を投入するか、打開するカードを誰が持っているか分からない状況での駆け引きは面白いことだろう。特に「エルリン」は破壊が難しく、無効化回数を回復させることもできる「万能薬」とのコンボは絶叫ものだ。さらに「エミリー」がいたりすると場のカードを全滅させる可能性も秘めている。

「レジーナ」「ロメオ」や「アンジェラ」を上手く使って、どちらか一枚を見たら、優先して駆除していかないといけない。

 今は人もカードも足りないのでできないが、二人対戦以外の戦い方として、タッグ戦やチームバトル、サバイバル戦などがあるらしい。

 特にサバイバル戦は人気で「ご乱心」が乱発されるらしい。

 わざと争乱を起こして、高みの見物をする者もいるが、仮にそこで勝利したところで三戦のうちの一勝に過ぎない。大切なのは二勝することなのだ。

 従って、一戦に傾倒するヘモジは消耗戦によって三戦目を棄権して、僕が勝利した。


「ナー」

 うなだれるヘモジ。

 随分時間が経ってしまったな。

「まだ話し合いは続いてるのかな?」

「ナーナ」

 もう一戦?

「よーし、受けて立とう。ぎゃふんと言わせてやる」

「ナーナ?」

「『ぎゃふん』を知らないのか、異世界ではほんとに負けたときはそう宣言するんだぞ。『わたしが悪うございました』という意味だ」

「ナーナ!」

「負けた方がシャッフルな」

 手が小さいから一苦労だが、次の勝利に思いを巡らし頑張っている。

 コンコン。ドアがノックされた。

「ナ?」

 カードを置くとヘモジが、ドアを開けに向かった。

 そこにはエンリエッタさんが立っていた。

「話し合いが終わりました。下に集合してください」

 ヘモジがうなだれた。

 僕はカードを片付け、ヘモジの腰袋に戻してやった。

「また後でな」

「ナーナ」

 僕たちは食堂に向かった。


 壁の消音結界用の魔石はまだ薄ら輝いている。

「お疲れ様」

 立ち会った者たちの憔悴しっぷりに思わず声を掛けた。客は帰ったようだ。

「手強かったようじゃな」

 リオナたちもアイシャさんたちも戻って来ていたが、閉め出されて中庭で待たされていたらしい。

「悪いわね、待たせてしまって」

 ヴァレンティーナ様が家人全員に座れと手で促した。

「すまぬ、飲み物を貰えるか?」

 エミリーが台所に飛んで行った。会談中はエミリーたちも使用人部屋に閉じ込められていたらしい。

 レオがテーブルに突っ伏した。

「しっかりせぬか、薬は飲んだじゃろ?」

「気力までは回復しないよ」

 全員の前にコップが並んで一息吐くと、会談のあらましが語られた。


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