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エルーダ迷宮ばく進中(メッセンジャー)35

 報告するだけして、僕たちは外に出た。

 アイシャさんはハイエルフの里と連絡を取るために先に帰ったので、全員その場で解散することにした。

「エルリンはどうするですか?」

「ちょっと散財しちゃったから、補充かな」

「リオナも一緒に行くのです」

「四十七階な」

「コモドも狩るですか?」

「そうだな。中型飛空艇のために回収しておこうか」

 大した時間は掛らないだろうということで全員、参加することになった。

 前回お宝を回収したままだったので、四十七階の酒蔵に行く前に、無手で飛んでリセットする。

 適当に入ったエリアが昼間だったので、そのまま糸玉で酒蔵に飛んだ。

「いいか、コモドがギリギリ勝てるように加勢する。再生能力を使わせて肺を回復させるから、

息があればそれでいい。ただ逃げられると困るから、羽は再生させないように。危ないようなら躊躇せず、とどめを刺すんだ」

 それだけ言うと僕たちは落書きを確認した。

 建物が大きく揺れた。

「よし行こう」

 僕たちは階段を上り地上へ出た。

「やってる、やってる」

 結界を張りつつ観戦である。

 今回はさっさと両目を失ったコモドが劣勢に立たされた。

 だが、窮地に陥ったドラゴンのブレスは容赦がなかった。

 所構わず吐きまくるものだから、城壁の上にいるミノタウロスの被害は甚大、大いに苦戦を強いられていた。

 尻尾を振り回すわ、激突するわで、城壁が崩れて、結局いつもの双方共倒れの様相を呈してきた。

 コモドは自ら壊した瓦礫に埋まって息も絶え絶えである。

 それを城壁に残ったたった一つのバリスタが狙っている。

 コモドの障壁が復活する前に…… 狙いを定め……

 コモドの最後の一鳴きと共に喉袋がマグマのように赤く燃える。

 双方がとどめの一撃を加えた。

 城壁にいた最後のミノタウロスたちはブレスに焼かれて消えた。

 だが、最後のバリスタの矢はコモドドラゴンには届かなかった。

 僕の結界に当たって、目の前の地面に落下してきた。

 コモドドラゴンがしわがれた声で勝ち名乗りの雄叫びを上げた。

 が、ここに漁夫の利を狙う僕たちがいた。

「肺は痛んでいないようだ」

「ナーナ!」

「とどめは自分が刺すって」

「あら、ごめんなさい」

 雷がコモドドラゴンの脳天に落ちた。

 沈黙のなか、長い首がだらりと垂れて瓦礫のなかに沈んだ。

「ナーッ!」

 ヘモジが膝から崩れた。

「そんなにショックか?」

「元気を出すのです。敵は瀕死のドラゴンなのです。戦う価値などないのです」

「ちょっと!」

 ナガレが自分の飼い主に異議を唱えた。

「まあまあ、それより早く回収しないと」

 ロメオ君が仲裁した。

 なぜかナガレが僕を睨む。

 お前が勝手にやったんだろうが!

「そんな目で見るな。ナガレもよくやったよ」

 なんで主が召喚獣の機嫌を取らなきゃいけないんだ。

 僕はドラゴンの回収に、みんなは魔石の回収しに向かった。


 回収を済ませると宝物庫に飛んだ。

 そしてお宝を仕分けながら回収する。

「人数がいると楽だわ」

 いつも丸ごと浚って、宝物庫で分別してるからな。小分けにしてくれるだけでも助かる。

「ナーナーナ」

「え?」

「タイタンも倒すだって」

「まさか、お宝漁りの梯子?」

 ロメオ君が僕の唖然とした顔を見て笑った。

「いいアイデアなのです」

「ナーナーナ」

「とどめは自分だって」

「どうせひとりでやりたいんでしょ? いいわ、付き合ってあげる」

 自分がしたことが大人げなかったと感じたのか、ナガレが折れた。

 ていうか勝手に話進めるなよ!

「じゃ、四十六層で。他のパーティーに狩られてるかも知れないけど」

 ロメオ君が音頭を取った。

「そう簡単に倒される奴じゃないのです」

 いつも簡単に葬ってる奴が言うか!

「狩られてたらサンドゴーレムで我慢する」

 オクタヴィアが提案するがそれは却下だ。サンドゴーレムを倒さなきゃ、普通タイタンのいる部屋には行き着かないのだから。

「最短ルート、墓地ルートから行くか?」

 僕たちは普通じゃないルートから行くことにした。


 タイタンを倒したら、メルセゲルの町でリオナの高級布漁りに付き合うことになった。

 反物をこれでもかと買い込んだ。

 全員で荷物をたんまり持って店を出て、物陰に隠れたところで僕がすべて回収した。

 なんと言うか、我が家のあのだだっ広い宝物庫がいっぱいになる日も近い気がした。


 帰宅してようやく解散したところで、僕は宝物庫に回収した荷物を吐き出した。

 ロザリアは教会の手伝いに向かい、ロメオ君はすぐ側でゴーレムの研究を始めた。

 リオナは自分の棚に店が開ける程、大量に補充した反物の整頓を始めた。

 ナガレはチョビたちにお土産のじゃがバターと魚の干物を持って中庭に、ヘモジとオクタヴィアは温室畑に向かった。

「……」

 僕の前には山積みになった財宝が……

「これ…… 僕ひとりで整理するの?」


 結局、夕飯時まで掛ってしまった。

「さあ、夕飯の準備はできてるよ」

 地上に出るとアンジェラさんがしゃもじを持って出迎えてくれた。

 僕は手を浄化して席に着いた。

 ヘモジとオクタヴィアがアイシャさんに今日の武勇伝を聞かせていた。

 アイシャさんが外出着のまま着替えていないところを見ると、帰ってきてまだ間がないということだ。

 エルフと渡りが付かなかったのか?

 リオナとナガレはエミリーと一緒にフィデリオの相手をしている。

 あ、歯がまた増えてる!

 あれ? ひとり足りない。

 ロメオ君は自宅で家族と食事なので帰宅したが、ロザリアが戻ってきていない。

「ロザリアは?」

「まだ帰ってきてないのです」

「珍しいな」

「密談中なのです」

「盗み聞きか?」

「聞こえないから密談なのです」

 リオナの様子から察するに犯罪に巻き込まれているわけではなさそうなので、先に食事を始めることにした。

 それにしても密談とは。ロザリアには縁遠い言葉だ。

 来賓の相手をしているだけだろうが…… 教会のお偉いさんでも来てるに違いない。


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