表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
869/1072

エルーダ迷宮ばく進中(メッセンジャー)28

 引き付けて雷を落としながら、数が増えるのを待つ。が、さすがにソウルが邪魔だった。

 機知に富んだ動きでこちらを翻弄してくる。

 数が集まると手が付けられなくなるので、優先して倒そうと思うのだが、そういうときに限って火蟻が邪魔をする。

 ロメオ君が衝撃波を放つ!

 ソウルがバタバタと倒れた。

 巻き込まれて怒った火蟻が火を吐いて応戦してくる。

 雷を落として黙らせる。

 前列が吹き飛んだ。

「今がチャンス!」

 僕の肩を足で踏み締めながら、肉球パンチを僕の頭に連打する。

「お前が焦ってどうする!」

「十羽一唐揚げ!」

 唐揚げじゃないから! 十把一からげだから!

「ナーナ?」

 残りの九羽はどうした?

 知るか! お前ら邪魔したいのか!

「鳥?」

 キョロキョロしたっていないよ!

『魔弾』を撃たせろ!

「早く! 早く!」

 そう思うなら肩の上で暴れるな。

 ライフルの望遠鏡を覗くな!

「お前が覗いてどうする!」

 頭でオクタヴィアを押し出して、僕は照準を覗き込んだ。

 ゾロゾロと入口を囲んで、仲間の背中に乗って強引に川を渡ろうと試みる一団に照準を合わせると、僕は『魔弾』を放った。

 閃光に飲み込まれて敵の姿が消えていく。

 川の水が激しく揺れて、岸辺に打ち上げられた。

 光が消えると目の前の地面に穴が開いていた。

 川の水がドッと押し寄せ、火蟻の死骸を奥に押し流した。

 生き残りにとどめを刺しながら、川を凍らせ、対岸に渡った。


「マッピングのしようがないね」

 (いびつ)で広すぎる地形を地図にしている時間はない。

 どこかにある地図を探した方が早いだろう。

 ドスンと大きな音がした。

 でかい何かが動き出した。ドスン。

「嫌な予感」

「もう予感じゃないって」

 背景の岩場だと思っていた物が動きだした。

 ヘモジが火を吐いてくる残党にとどめを刺した。

「ナーナ」

「ヘモジ!」

 後ろに山のように巨大な蟻が現われた。


『火山蟻、レベル六十八。オス』


 火山蟻は同胞を殺して回る小さな存在を標的に定めた。

「ナ?」

 いきなり長い脚の一本に踏みつぶされた!

 僕は『魔弾』を撃ち込んだ。

 障壁が軌道を反らせて、威力を弱めたが、腹部に命中して、下半身を抉った。

 甲高い悲鳴を上げた。

 ロメオ君が間髪入れずに氷の槍を複数、放った。

 数発が弾かれたが、残りは頭部を貫き、沈黙らせた。

 そして僕は雷を突き刺さった槍に向けて放った。

 もはや障壁はなかった。

 断末魔の叫び声と共に地に伏した。

 オクタヴィアが爪を立てたまま僕にしがみついて様子を伺っている。

 ヘモジは無傷のはずだが。

「大丈夫か、ヘモジ?」

「ナーナー」

 魔法の盾が地面にめり込んで、出られなくなっていた。

 周りの土砂をどけて、盾を引き剥がした。

「ナーナ」

 起き上がったヘモジは大きな敵を見上げた。


「ナ?」

 現われた辺りを調べるとあった。宝箱である。

「地図だ、地図」

 僕は罠を警戒しつつ鍵を開けた。

「地図ゲッ……」

 箱のなかにあったのは真っ赤なガントレットだ。

「まっかっか」

 オクタヴィアが物珍しそうに覗き込んだ。

 僕は取り上げると早速『認識』に掛けた。


『煉獄の籠手。近接二百五十。魔法付与、魔法攻撃力プラス二百五十。追加効果、地獄の業火。魔力消費、三百。魔力貯蔵量、三百。魔力残量、ゼロ』


「『地獄の業火』?」

 ロメオ君が耳を疑った。

「魔力消費、三百。魔力貯蔵量、三百だって」

「三百? 魔石(中)サイズかな?」

「一発しか撃てないんじゃな…… 伝家の宝刀か?」

「そうみたいだね」

「ナーナ!」

「『試す!』だって」

「ヘモジにはでかいだろ?」

「ナーナ!」

「自分サイズにしちゃ駄目!」

 僕が指摘する前に通訳に指摘された。

「ナー」

 甘えても駄目!

「ロメオ君使ってみる?」

「そうだね…… でも接近戦は苦手なんだよね。僕には宝の持ち腐れかな」

 三百という消費量を考えるに、僕たちが思っている『地獄の業火』より数段威力が落ちるものと想像できる。姉さんを初め、僕たちが放つ『地獄の業火』の魔力消費量はそんなものではない。

 もし同程度の威力で消費量が抑えられているとしたら、これは儲けものである。

「試すだけでも」

 僕は先程倒したでかい火山蟻を指差した。

「じゃ、一回だけ」


 ロメオ君は持ち合わせの魔石で魔力を補充すると、先程のでかい的に目掛けて、ガントレットを装備した拳を打ち付けた。

 拳が触れると同時にまといついた業火が巨大な火蟻を巻き込んで豪快に燃え上がった。

「おおっ!」

「丸焼け」

「ナー……」

 ヘモジの想像とは違ったようだ。僕たちの『地獄の業火』とは似て非なるものだった。高温の業火は敵に纏わり付きながら燃え続けはしたが、周囲にはさしたる被害をもたらさなかった。

 恐らく近接用に調整されたものだと考えられる。でないとガントレットをした者が常に爆心地にいることになってしまう。

「ヘモジ」

「ナー」

「いらないって」

 豪快な大爆発を期待してたんだろうなと、ロメオ君と顔を見合わせ笑った。

「うちじゃ、近接は限られてるからな。アイシャさんはいらないだろうし、リオナもどうかな」

 魔力消費もでかいし、他の付与もないし、お蔵入りだろうな。

 周囲を探索して、エリアの行き止まりだと判断した。

「後は帰り道だけど」

 地図はどこだ?

 突き当たりの壁に上り坂を発見。壁を跨いだ先に出口への通路を見付けた。戦闘中に壊れる仕組みだったのかな?

 オクタヴィアの後に続いて僕たちは壁を一枚乗り越えた。

「あった」

 宝箱が通路の突き当たりに置かれていた。

 今度こそエリアの地図だった。大きさから言って今までの二倍の広さがあったようだ。

 いよいよ残りは中央エリアの正解ルートだけになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
「十羽一唐揚げ」十羽のうち一羽だけを唐揚げに調理すること。転じて、無駄や見落としの多いことを指す。よく、十羽を一塊の唐揚げにすることに誤解されるが、あり得るならば大きすぎて大抵の場合は中まで火が通って…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ