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エルーダ迷宮ばく進中(メッセンジャー)27

 翌日、僕とロメオ君とヘモジ、オクタヴィアでもう一度、攻略することになった。

 リオナは来るかなと思ったのだが、いろいろ付き合いがあるようで苦渋の選択をした。ナガレもそれに追従する形で、ロザリアもアイシャさんも適当な理由を付けて欠席である。

「先も見えてるし、感想だけ聞かせて」だそうだ。

 明日は『魔弾』で一掃するか。アイテムの回収はもうどうでもいい。



 翌日は定時より早く、ロメオ君と合流して、エルーダに向かった。

 こちらも休日気分を演出しなけりゃやってられない。と言うわけではなく、販売所で『虫除け』を購入することにしていたからである。

「使えなかったら、ピノたちにやればいいよね?」

「あいつらまだ火蟻のフロアじゃないからね」

「ピノたちはどうやってクリアするんだろうね」

「爺さんもそんなに急いではいないみたいだから、手前でじっくり隠密レベルを上げる気かも知れないな。元々隠密性が高い連中だけど、問題は戦わずにやり過ごせるかだな」

「ナーナ」

「これ何?」

「それは保存食。うちはいらないから」と言ってるのに買い物籠に放り込んだ。

「今日のおやつ、それでいいんじゃない?」

「なくなるまで他のおやつ禁止だな」

 オクタヴィアとヘモジがじっと僕の顔色を伺う。

「ナ」

「半分にする」

 籠から半分取り出して戻した。

「ええと、虫除けは……」

「やっぱり、適応レベルは四十代までだね」

「六十はさすがにないか」

「数ばらまいたらいけないかな?」

「ナーナ」

 勝手にまた持ってきた。

「粉末ジュース?」

「試す」

 美味しいのか? 何味だよ。

 長居すると余計な物が増えるので、さっさと出ていくことにした。


 四十八層に入ると、本流の敵を始末した。

 衝撃波を抜けてきた相手をヘモジに任せたが、いつになく楽しそうだった。

 今回、アイテム回収はついでなので、過剰防衛気味に応戦することを許してる。

 ロメオ君もヘモジも大いに破壊に興じた。

「マズ……」

 リュックのなかでオクタヴィアが呟いた。

「まだ始まったばかりだろうに、もう封を切ったのか?」

「保存食まずい。パンみたいなクッキーまずい」

「それを言うならクッキーみたいなパンだ」

「食ってないで、索敵頼むぞ」

「やってるから平気」

 ゴイン! ヘモジがとどめを刺した。

「ナー?」

 当たりどころがずれたが、敵は絶命してくれた。

 まだ速い敵のスピードには翻弄されてるようだ。

 ロメオ君も慣れない衝撃波の練習になっていいだろう。術式はとうに学んでいるが、魔法使いにも嗜好という奴があるからな。

 おまけに普段は全力出せないしな。

 罠を解除してようやく先の扉に辿り着く。

 やはり人数がいないと余裕がなくなるな。

「じゃ、行くよ」

 段取りは済ませた。

 まず一気に突入した。

 結界を最大範囲で展開して、敵との距離を取る。

 敵が近づいてくる所に虫除けを放り込む。

「お、効いてる?」

 一瞬ひるんで後退した。それからしばらく遠巻きにしている。

「足止め成功だ」

 警戒しつつ回り込んでこちらに押し寄せようとするので、追加の虫除けを転がした。

「まだ、使えるね」

「蹴散らすことはできないけど、昨日よりは大分楽だ」

 順に結界と雷で対応する。

 圧倒的に有利にことは進んだ。

 ヘモジが防衛ラインを押し上げる度に、回収した虫除けを前線に放り込む。

 ロメオ君は順調に雷を落としていった。

 敵は虫除けを警戒して遠巻きに火を吐いてくるので、上手い具合に吹き飛んでくれた。

「ナーナ」

 虫除けの在庫も効力も切れた。が、もう勝敗は決した。

 視界さえひらけていれば、こちらの優勢は変わらない。

 虫除けが切れても結界の範囲は、敵が一斉に押し寄せてきても完全に埋まるものではもうない。

 僕たちの攻撃は敵を容易く沈黙させた。

 ヘモジもロメオ君も頬を上気させていた。オクタヴィアでさえ、尻尾を立てて興奮している。

「あっという間だったね」

 パーティー戦ではいつも控えに回っているから、ここまでやるロメオ君を見ることは滅多にないが、やはり天才だった。

 ロメオ君の半分でいいから制御力が欲しい。

 ヘモジも今日はミョルニルを思う存分振り回せて生き生きしている。

「マズ……」

 オクタヴィアは……

「『魔弾』いらなかったな」


 アイテム回収は兎も角、エリアの探索は必要だ。

 監視の目が少ない分、慎重に罠を探した。

「あった!」

「ナーナ」

 罠を解除しつつ、一通り探索を終えると、ロメオ君がメモを書き込んでいく。

 道は奥の一本だけだ。天井もきのうの前半程高くない。

 今回も例の呪文を掛けたが、やはり落書きは現われなかった。

 僕たちは先を進んだ。

「ソウル発見!」

 巨大ソウルかと思ったら、人サイズだった。

 この通路で巨人サイズだったら完全につかえてるか。

「サイスだ!」

 これまた珍しい武器だが、見た目が怖い。

「こんな狭い場所で使う武器じゃないよね」

「そ、そうだな」

 衝撃波で一撃だった。通路の幅いっぱいに放った一撃は避けようがない。

「死んでない!」

 ヘモジが飛び込んでサイスの弓なりに反った刃を砕いた。

「ナーナ」

「よくやったぞ、ヘモジ」

 ヘモジがくねくね踊り始めた。

 どうやら敵は身体を盾にして本体を守ったようだ。一瞬気でも失っていたのだろう。

 装備品を回収する。

 脇道らしい脇道がないな。と思っていたら、まるで荒野のような場所に出てきた。

 そこには敵がうようよいた。火蟻とソウルの混成だった。

「またなの?」

 手前に川が流れていて、どうやらそこが境界になっているらしかった。

「ここで迎撃できるのかな?」

 虫除けは使い果たしたし。ソウルが邪魔だ。

「『魔弾』を撃ち込もう」

 集まってきたところをまとめて排除する。

 まずは挨拶代わりに衝撃波だ。広範囲に向けて二連発。

 敵がこちらに気付いた。

 近場にいたソウルが沈んだ。無警戒だった火蟻も吹き飛ばされた。

 敵がワラワラと湧き出した。

「うわっ」

 壮観だな。小高い丘の上に火蟻の大集団である。



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