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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第十四章 扉Ⅱ

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マルサラ村水害騒動3

タイトル変えました。

 オクタヴィアの大きな欠伸と共に朝が来た。

「ナーナ」

 ヘモジも足元にいた。

「お早う」

「人いっぱい集まってきた」

 僕たちは夜通し見張りを立てながら、一夜を明かした。

 操縦室のベッドから起きるとテトが操縦席で眠っていた。

 窓の外は朝日で眩しい程きらめいていた。

「お早うロメオ君」

「お早う。面白いことになってるよ」

 ロメオ君が足元を指差した。

 僕は床下のガラスの先を見た。

 大勢の人たちが岸辺に集まってきていた。

「ロメオ君は寝た?」

「これから寝かせて貰うよ」

「テトはいつ寝たの?」

「もう起こしていい頃だね」

「誰か起きてるか? 人数分朝食を頼む」

 伝声管でキャビンに伝えた。

『ただいま、お持ちします』

 レオの声だ。

 しばらくするとレオではなく、サリーさんが食事を持ってきた。

「テト起きろ、食事だぞ」

 僕はベッドを仕舞い、壁に収納してある簡易テーブルを引き倒した。

 ロメオ君が窓を開けて涼しい朝の風を入れた。

「昨夜はご苦労だったな」

 サリーさんがバスケットをテーブルに置いた。

「いいえ、村のためですから」

「さっき連絡があった。ヴァレンティーナ様たちが村に着いたようだ。我々もここを引き払って一旦、合流する。それから解散だな」


 食事を済ませると僕たちは甲板に出た。

「うわぁあ」

 テトが周囲を見渡し、驚いた。ずっと操縦室のなかだったからな。

 実行犯の僕も正直、朝のこの景色には驚いた。昨夜は咄嗟のこととは言え……

 巨大な湖ができあがっていた。

 水の濁りも消えて透き通った水面が朝日に揺れていた。どこからともなく現われた水鳥たちが羽を休め、水面に色を添えている。

 これは異世界で言うところの『クレーター』という奴だ。地面を削った土砂が縁を盛り上げ天然のダムを形成していた。

 並々と溜まった水の上澄みは滝となり、下流へと流れ落ちていく。

 一方削れた山肌は無残であった。

 サリーさんの話では峰の高さが元の半分になったらしい。

 原因がなんだったのか?

「ドラゴンが寝ぼけて体当たりしたかな」

 テトが冗談を言って笑った。

「さて、村に行くか」

 ロメオ君と操縦を替わると、僕たちはマルサラ村に向かった。

 地上の人たちは手を振って、僕たちを見送った。

 朝露に濡れた景色はどこまでも美しかった。


 ヴァレンティーナ様の船が村の上空に停泊していた。大きな影を落としていた。

「赤いな」

「真っ赤ですね」

 操縦席には僕とテトが座っていた。ロメオ君は寝ている。

 真っ赤な船体が景色に映える。

「ゲートでよかったんじゃないか?」

「何かあったときは、あそこが指令所になるんだ」

 サリーさんが扉を開けて入ってきた。

 子供たちのテンションの高さに付いていけなくて逃げてきたらしい。

 露の薫るこんな朝は獣人にとって至福のときである。

 テトも操縦室の窓を全開にして、高度を下げて飛んでいる。

 村に到着すると、向こうからボードに乗った連絡員が飛んできた。

 サリーさんはヴァレンティーナ様の船に報告しに向かった。

 足元を見ると小型艇がギルドの出張所前広場に到着していた。

「救援物資運んで来ちゃったかな?」

「朝の送迎じゃない?」

『ワカバが呼んでるのです』

 リオナが言った。

「なんの用だ?」

「乗せてくれだって」

 テトが言った。

「しょうがないな。ちょっと行ってくる」

「了解」

 僕は甲板に出るとボードを出した。


「なんの用だ? ワカバ」

「町に帰るんやろ? 乗せてってぇな」

「ギルドに送迎用の――」

「おっさんばっかりやねん! チコたちもおるんやろ?」

「悪いわね」と母親にまで頼まれては仕方がない。と言うか、放任し過ぎだろ?

 いっそトレド爺さんの所に居候でもしたらどうだ。

 僕は船の自足型転移ゲートを起動するように言った。

 専用の転移結晶で僕たちは船の格納庫に出た。

 ワカバは目を丸くしている。

「こっちだ」

 階段の袖からヘモジとオクタヴィアが覗いた。

「いらっしゃいなのです」

 リオナが出迎えた。

「リオナ姉ちゃん!」

 子供たちがワラワラ出迎えた。

「これが新しい鎧か?」

 ピノが話し掛けた。

「格好ええやろ?」

「これドロップ品だろ? なんでサイズがピッタリなんだ?」

 ピオトが言った。

 さすが職人、よく気付いたな。

「若様がなんかしたんやろ?」

「せやったら仕方ないな」

 ピオト、方言が移ってるぞ。

「朝ご飯食べた?」

 チッタが尋ねた。

「食わんと母ちゃんに殴られるからな。今朝のパンは蜂蜜薄めやってん。帰りに蜂蜜買っていかな、明日の朝食、もっと薄うなってまうわ」

 たわいもない会話に盛り上がっていると、ヴァレンティーナ様の船が動き出した。

 側の操縦室の扉に飛び込む。

「サリーさんは向こうの船に同乗するから、先に帰っていいって」

「じゃあ、帰ろうか」

 テトも解放してやり、帰りは僕が操縦桿を握ることにした。

 魔石も充填完了。全装備異常なし。

 ドタドタと船内を駆け回る音がする。

「転ぶなよ。床は硬いぞ」

 船の針路をスプレコーンに向けた。


 後日、あの湖はそのまま貯水湖として利用することが決まった。

 今まで暴れ川だったために、長らく橋を架けられなかったが、湖に堰を作り、水量を調整することで安定化させ、橋の建設を可能にするという。

 魔法の塔のアルバイトが大量投入され、立派な石橋が架かったのはそれからわずか一月後のことであった。


 帰宅すると、アンジェラさんが部屋から出てきた。

「うまく行ったかい?」

「おかげさまで」

 子供たちは全員鎧を脱ぎに地下に降りて行った。ただひとり、ワカバを残して。

「おや、まあ」

 子供たちはワカバと連れだって、トレド爺さんの家に向かった。そこでワカバも鎧を脱いで一日中遊び倒すのだろう。

 アスレチックを造るために森を切り開く音がする。

「あーあ、何しようかな」

 どうせ休日なのだけれど。

 ロメオ君は帰宅し、リオナとナガレは装備もそのままに足早に出て行った。

 眠り羊を金色に染めに行くのだろう。

 ヘモジとオクタヴィアは畑に向かい、アイシャさんとロザリアは自室で一休みするらしい。


 庭に出るとチョビたちが家をこしらえていた。

「冬の間、家にします」

 池の畔に大きな石を積み上げていた。石の隙間で冬を越すらしい。冬眠はしないと言う。召喚獣だから構わないのだが。

 石が足りないと言うので、町の外に散歩に出ることにした。

 ゲートで北の石橋に飛ぶと、川岸に向かった。

 昨日の雨で水量を増した川の流れは速かった。

『気分爽快です、ご主人』

『たまには外に出るのもいいものですね。っと』

 鋏で水を掬ったら、魚が挟まっていた。

『塩焼きが食べたいです』

「そうか? じゃ、今準備するからな」

 薪を集めて焚火を作った。

「あ、道具が何もないんだった。ちょっと持ってくるからな」

 転移結晶を使って自宅まで飛ぶとリュックだけを背負って川辺に戻った。

 川辺に戻ると、チョビたちが釣りをしていた大人たちと仲良くなっていた。

『戻ってきた』

「若様も釣りですか?」

「いいえ、魚を捕るのはこの子たちで、僕は調理担当です」

「交ぜて貰ってもよろしいですか?」

 断わる理由もないので歓迎した。

「ようし、大物釣るぞ」

 あっという間に釣り大会になった。

『わたしたちも負けませんよ』

『嵐の後はよく釣れるんですよ』


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