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エルーダ迷宮ばく進中(フライング)3

 次の敵はランタン・シールドというバックラーと籠手を一緒にして、なおかつ剣まで付いている変則武器を持った相手だった。

 シールドは盾の内部に光源を仕込んで、スリットを通して敵を照らすという物だった。

 盾で受けてからの切り返しが速そうな武器だった。それに明かりを持たずに戦闘できるのは秀逸だ。

 ヘモジが面白がっていじくり倒していた。

 勝手に再召喚して、身に着けて、盾に付いた剣を振り回して、挙げ句、首を振った。

 どうやら盾で相手をぶん殴る方が好みらしい。

 ぽいっとシールドを投げ捨てた。

「あッ、こら!」

 勝手に小さくした挙げ句、捨てるとは。

「…… 置物にいいかな?」

 このサイズなら光の魔石でも仕込んで照明代わりにするのもお洒落だろう。

 僕は小さくなってしまったランタン・シールドを持ち帰ることにした。

 その年の冬、このランタン・シールドが我が家の玄関の壁に飾られ、照明代わりに使われることになる。


 元々の持ち主のソウルは呆気なく一撃を浴びせる前に葬られていた。

 本体はシールドではなく兜だった。

 なかなか使える物がドロップしない。


 さらに進むと罠が二つあって、それをスルーしたところに敵がいた。僕たちは罠を流用することにして敵を呼び込むために音を出した。

 敵は案の定動きだした。

 僕は敵が罠に掛かり易くなるように通路の幅を狭めた。

 そして敵を二つの罠に引っ掛けた。

 壁から突き出された槍の束に串刺しになり、炎に煽られた。

 戦う前からもうフラフラだ。

 僕たちは安心してアイシャさんがとどめを刺すのを待った。

 が、突然こちらに突っ込んできた。

 そして僕の結界に掛かった。

 ドーン! 目の前で爆発した。

 オクタヴィアの目がまん丸に見開かれた。

「自爆した!」

「ええっ……」

 装備品が…… ああ……

 だが離れた場所に傷が付いていない剣を見つけた。

「こ、これ本体だ!」

 こいつ、自分を放り投げてから自爆しやがった!

 僕は敵の本体にむかついた分も含めて強めに衝撃を浴びせた。

「駆除完了」

 なかなかの策士だったが、素のスペックの方もなかなかのものだった。

 これは楽しみ。

「これで一方通行前のエリアは攻略したかしらね?」

 ナガレが僕に聞いてきた。

 僕は頷いて地図を閉じた。

 分岐は多々あったが、取り敢えず一方通行の扉や隠し通路は後回しにしてきた。

 いい時間だし、午前はこれで切り上げて、午後からは一方通行の先を攻略しよう。


 今日はピノたちが休みなので食堂でかち合うことはなかった。

 例の件で詰め寄ってくる連中も幸いいなかった。

 どうやら高レベルのほとんどのパーティーが四十七階層を試したらしい。そして大概のチームはオルトロスかミノタウロスにボコられるか、突如降ってきた大岩に押し潰されて撤収を余儀なくされたらしい。

「あんなとこ攻略なんて無理だぜ。あの犬っころに囲まれたときには死ぬかと思ったぜ」

 そんな声が店のあちこちから聞こえてくる。脱出用の転移結晶がさぞ売れたことだろう。

「まずはイフリートからなのです」

 リオナが言うと「その前にレイス倒す」とオクタヴィアが言った。

 思い返すと結構茨の道だった気がする。ほとんど自ら招いた結果ではあるけれど。


 昼食を終えると次のエリアに向かった。

 再びスタートからの開始である。糸玉が恋しい。

 ここまではマップ情報に記録があったが、ここからはそうはいかない。

 ロメオ君がいないので僕がマッピングすることになるのだが、この手のフロアで記録ミスは致命的だ。正直気を使う。

 まずは記録の残っている一番手前の一方通行を目指す。記録によると一本道の行き止まりのはずである。

「止まるのです!」

 リオナとオクタヴィアが目を凝らす。罠の発見ばかりは視力に頼るところが大きい。

 薄暗くなければ僕たちにも活躍の場はあるのだが、夜目の利くふたりが頼りだ。

 ロザリアが光球をリオナたちの視線の先に放った。

「あった!」

 ふたりが声を揃えた。

 僕たちは進んだ。一瞬足元が光った。

「止まれ!」

 ワイヤーだ!

 ヘモジが前のめりに転んだ!

 ワイヤーが切れなくてほっとしたのも束の間、ヘモジは身を起こすためにそのワイヤーに手を掛けた。

 プチン! という音がした。

 ヘモジの頭のすぐ上を槍の束が交錯した。

 ヘモジが尻餅をついた。

「馬鹿ヘモジ!」

 オクタヴィアが僕の肩から飛び降りてヘモジに寄り添った。

「奥の罠は囮だったようじゃな」

 なるほどよく見るとこの辺りの明かりが少ない。足元が一層暗かった。

「慎重に行こう」

「ナーナ」

 ヘモジが盾を構えた。

 オクタヴィアが戻ってきて、リュックに収まった。

「敵発見!」

 リオナが言った。

「一体だけだな」

 僕は通路の曲がり角目掛けて火の玉を放った。

 爆発に気付いた敵がこちらにやってくる。

「よし行こうか」

 角から姿を現わしたら攻撃開始だ。

 だが、途中で敵の反応が途切れた。

「罠に掛かったのか?」

 僕たちは慎重に先を進みながら、反応が消えた辺りを照らした。

 天井に吊された丸太トラップに一撃されたらしい。

 ロザリアが天井を照らした。

「ここだけ天井が高くなってるわね」

 僕は即行で地図に記した。ランダムに配置された割に大掛かりな仕掛けになっている。

 その間にみんなは亡骸を回収する。

 アイシャさんはパイプを吸うのを止めて、拾ってきた木の枝に火を付けた。木は灰色の煙を上げた。

 背中からの直撃だったらしい。

「この程度で即死なんて……」

「当たり所が悪かったかな」

 結界が衝撃を受けた!

 突然、障壁の向こう側が炎に包まれた。

 丸太の影にいた敵にナガレが攻撃されたらしい。

 巨大な炎の渦のせいで周囲が見えなくなった。

「魔法か!」

「甘いのです!」

 リオナが銃弾を頭上に向けて放った。

 天井から何かがドサリと落ちてきた。

「どうやら最初の反応はこいつのものだったようね」

 転がっている装備に本体はなかった。

 思わず唾を飲み込んだ。

「なんなの? こいつら自身でトラップを仕掛けてきたと言うの?」

 あるいはそういう設定でこの場所に配置されているかだ。

 今度の敵は軽装鎧だった。リオナがきれいに撃ち抜いているので本体は御釈迦である。

 よくもまああの状況下で本体を一瞬で射抜けたものだ。

「魔法使いか?」

 魔法の発生源がないところを見るとそうなのだろうが、天井の梁に飛び移る当たり、アサシンのようでもある。

 装備類に魔法に特化した部分はなかった。


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