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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第四章 避暑地は地下迷宮

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エルーダの迷宮再び(巻き込まれて中間層)3

 僕たち三人は転移した先に倒れ込んだ。

 男は「チッ」と舌打ちをしただけで背を向け、その場を去ろうとした。

「待ちたまえ! 名を名乗りなさい!」

 門番さんが怒鳴った。

「君がしたことは重大な過失だ!」

「仲間が危ねぇんだよ。後にしやがれ!」

 男は僕たちを置いてサッサと走り去った。

 門番さんは追いかけようとしたが、僕たちを心配して戻ってきた。

「大丈夫かね?」

「ええ、まあ」

 僕は頭にできたこぶを触った。

「君たち脱出用の転移結晶は持ってるかね?」

 僕たちは首を振った。

「潜る気はなかったので……」

 抜かった。余っていた脱出用の転移結晶は家のトランクケースのなかだ。もちろんリオナが持ち合わせているはずもない。

 気が緩んでいたな。

「私もまさかこんなことになるとは思っていなかったのでな。詰め所の鞄のなかだ」

「ここ、何階ですかね?」

 僕は一階と違って薄暗い通路の先を見つめた。

「さっきの奴に階層だけでも聞いておけば――」

「門番さんはどこまで潜ったことがあるんですか?」

 迷宮の転移ゲートは上の階層から順番に開放していかなければ、使用できない仕組みになっていた。

 今回の様に下層に一気に飛び込む行為は事故の元であるため、規制されているのである。

 一見様お断り、本来招待する者がいなければ、深部にいきなり到達することはできない仕組みになっていたのだが…… まさかこんなことになろうとは。

 このまま脱出ゲートを見つけても、上階をクリアーしていなければ、このフロアのゲートは使えない。

 僕は前回地下一階のゲートを見つける手前で終っている。つまり、何階であろうとゲートは使用できないのだ。リオナは言わずもがなである。

 門番さんが唯一頼りなのだが……

「二十階層までだ。さすがにそれ以上深くなると俺のレベルじゃ」

 つまりこの場所が地下二十階より上の階なら、脱出可能なわけだ。

 今すぐ、やって来たゲートを門番さんが起動できれば問題ない。

 だが足元のゲートは発動しなかった。

「二十階より下なわけだ」

 門番さんは溜め息をついた。

 僕は『魔力探知』スキルを使った。でも、見つけた魔物の名前はどれも『?』不明のままだった。僕が一度も対峙したことがない、知識にもない魔物であるということだ。

 こんなときにロメオ君に頼んだ『魔獣図鑑』があればよかったのだが。

「ひたすら上を目指すしかないのか?」

 僕たちは振り返り、上の階への階段を見つめた。

「本当に死にそうなのです」

 リオナが呟いた。

「は?」

 僕はリオナを見た。

 リオナは壁の向こうをじっと見詰めていた。

「さっきのおっさんの仲間、このままだと死ぬのです」

 今となっては唯一の光明。彼らにゲートを再び開かせるという選択肢が風前の灯火?

 リオナの見詰めている壁の先で、さっきのいけ好かない男の仲間たちが戦っているらしい。

 なるほど、確かに魔法使いと思われる連中の魔力が底を尽きかけていた。

 しかも、そのパーティーに別の魔物がゆっくりとだが、近付いてきている。

 戦闘に集中する余り、周りが見えていないのだろうか?

 誰かが気付いて撤退命令を出すべきだ。

 そうなると彼らはここに押しかけるだろうから、僕たちがピンチに陥ることになるのだが。

 僕は門番さんを見た。

「その子の言う通りかね?」

 門番さんが神妙に僕に尋ねた。

「間違いなく」

「そうか……」

 門番さんは武器を取った。

「これも仕事だ。君たちはここに残りなさい。迎えは必ず来るから」

 そう言って救助に向かおうと歩み出した。

「僕たちも行きます!」

「行くのです。ひとりより三人なのです」

「駄目だ! 二十階層以下ということは、ここの魔物はレベル四十はあるんだぞ」

 一階層進むに従って大体敵の平均レベルも一ずつ上がっていく。一階がレベル二十平均だとすると、二十階ということはレベル四十台の魔物が徘徊している計算になる。

「フェンリルだって一撃なのです」

 リオナは自分の武器をかざした。

「倒す手段はあります」

「君たちね……」

 門番さんはさすがに困った顔をしている。

「こう言えばいいですか? 僕、こう見えてヴィオネッティーなんですよ」

 門番さんの顔に驚きと共に希望の光が灯るのを感じた。

 家の名前をこんな風に使うだなんてね…… 

 僕とリオナは戦う準備を急いだ。

「弾の確認をして」

「満タンです。予備の弾もあるです」

 胸ポケットを覗き込んだ。

 そして鞄のなかの薬の在庫も確認した。

「あるのです」

 いざというときのために新型弾も。全部ヴァレンティーナ様に取り上げられたのだけれど、ないと寂しいので保険に三発鞄に忍ばせていた物を取り出し、予備の弾倉に装弾した。

 そして僕は回復薬と万能薬をそれぞれ二本ずつ門番さんに手渡した。

 門番さんの武器は腰に刺さった装飾重視のなまくらな剣だけだ。槍は僕を助けるときに放り投げてきた。

 互いに装備の緩みをチェックする。

「変わった武器だな」

「まあ、見ていてください」

 あの男がどうなろうが知ったことはないが、他の連中、否、この任務に忠実な門番さんを見殺しにはしたくない。

 連中が死んだ後に脱出用の結晶を回収するという手もあるのだが。

 さすがにそこまではね……

 何よりリオナの期待を裏切るわけにはいかないだろう。

 リオナの視線はいつだってまっすぐだ。

「魔物の名前は分かりませんが、敵のレベルは分かります。大体五十台ですね」

「ということは地下三十階層当たりだな」

 厳しい戦いになりそうだ。

 敵はレベル五十の魔物。足長大蜘蛛と同等レベルだ。微妙だ。

 ここで考えていても仕方がない。急がないと間に合わなくなる。

 僕は歩きながら『エルーダ迷宮洞窟マップ・後巻』を開いた。通路の造りを確認しながら進むのだ。うまくすれば階層が分かるかも知れない。それが分かれば、襲われている連中の居場所までの道程も。罠も敵も、事前に知ることができる。

「罠があるのです!」

 リオナが指さした。

「分かるのか?」

 リオナは頷いた。

「あの程度の罠では人族しか引っかからないのです」

 そのための罠なんだが……

 リオナは迷宮の罠が魔物を捕まえるために仕掛けてられている物だと思っているらしい。

「迷宮の罠は侵入者である我々を妨害するために仕掛けられているんだよ」

 門番さんが説明してくれた。

「リオナたちが悪い子?」

 真剣に門番さんを見詰める。

「悪い奴が仕掛けたんだよ。だからリオナは罠があったら避けるんだ」

 困っている門番さんに代わりフォローする。

「悪い奴って誰?」と聞かれたら説明に窮するのだが、聞かれなかったのでよしとしよう。

 さて、罠の場所のおかげで地図は二枚に絞られた。三十一階と三十八階だ。どちらもゲートから近い場所に最初のトラップがある。ちなみにこのトラップの罠は二枚とも毒矢である。

 右の壁に沿って歩くと踏む仕掛けになっている。一枚の床がスイッチになっていた。その上に載ったら横からガスが噴射されるみたいだ。

「毒だぞ。そこの床踏むなよ」

「分かってるのです」

 リオナはスタスタと先を行く。

「リオナ!」

 僕は先に行かないように諭すべく声を上げた。

「結界から先には行かないのです」

「結界?」

 門番が僕を見た。

「一応張ってますんで、いきなり即死はないと思います」

「敵がいないのです。あのおっさん連中が倒したですか?」

 リオナにはこのフロアーの状況が見えているらしい。

 ならば罠にだけ気を付けて。

 一度に複数のことをこなすのは難しい。地図を見ながら、結界を張り、『魔力探知』を使うのはさすがにやり過ぎだ。

 リオナが立ち止まった。曲がり角に来たようだ。

 これでマップは絞れた!

 ここは三十一階だ!

 道が右折してるのは三十一階だけだ。

 最悪、十フロアー戻れば脱出できる。

 これで敵の正体も分かる。

 僕たちは『エルーダ迷宮洞窟マップ・後巻』の三十一階の頁につめ寄った。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 少し気になって調べたところ、フロアーではなくフロアらしいですね
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