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エルーダ迷宮追撃中(四十七層攻略ゴーレムコア)97

 結論から言うと四十七階層の情報開示は地図情報とリセットに関することだけになった。

 落書きと宝物庫の情報は追加情報として有料で提供されることになり、情報には守秘義務と、破った者には罰則まで加味された。情報料はかなりの高額になることが予想され、僕たちに入る報酬額の調整がかなり上の方で行なわれているらしい。噂では前代未聞の歩合制になるのではと言う話だ。

 宝物庫の鍵は開けられない可能性もあるが、死なない限りドラゴンを繰り返し狩れるわけだから、かなり高額な開示料に設定されるらしい。

 それもいつものギルド流の思いやりである。この額が用意できないようなパーティーはそもそもドラゴン狩りに参加する資格などないのだというあれである。

 コモドは兎も角、ギーヴルは数を揃えても難しいことはミノタウロスが証明している。

 一体どれだけのパーティーがチャレンジするのだろう。

 取り敢えず地図情報は無料なのだから、裏技のエリアばかりではなく、他のエリアにも足を運ぶ連中が確実に増えるだろう。


 リオナとヴァレンティーナ様の話は尽きず、僕たちは一旦退席して、例の本探しをさせて貰うことにした。

 姉さんは本を探す僕をお茶を飲みながら眺めている。

「なんでそんな物を探してるんだ?」

「ちょっと、古い資料を見つけたものだから」

 ゴーレムのことは伏せた。話すときにはロメオ君が話すから。

 なかなか見つからなかった。

「魔法の塔に置いてきた?」

「かもしれん」

 他人事だと思って。

 本棚に架けられた梯子を上り下りすること何度目だったか。

 金糸のタイトルに赤い背表紙が目に入った。

「見つけた!」

 思い切り引き抜いたら梯子から落ちそうになった。

 姉さんは不思議そうに自分が翻訳したはずの辞書を覗き込んだ。

 記憶を巡らし、該当する断片を探した。

「ああ、それか!」

「確かにエルフ語の勉強で使ったが、途中で飽きて後半はあいつにやらせたんだった」

 あいつと言うのはジーノさんか?

「借りていい? いつ返せるか分かんないけど」

「お前、これが何か分かるのか?」

「辞書でしょ」

 突っ込まれるとボロが出るので、急いでおさらばした。

 姉さん、ごめん。言えるようになったら必ず言うから!


「ロメオ君! これこれ! 辞書ッ!」

 僕は宝物庫に駆け込んだ。

 ロメオ君はまだ宝物庫にいて、僕のはしゃぎっぷりに驚いていた。

「辞書?」

「その術式を読むための辞書だよ」

「へぇえええ?」

 ロメオ君が奇声を上げた。

 僕たちは辞書と設計図にかじり付いた。

「最初の単語は……」

 同じ言葉を辞書のなかから探した。

 そもそも読めない文字なので索引を引くのも一苦労だった。

「あった!」

『始め』という意味だった。

「やっぱりこの辞書で合ってたんだ。よかった」

「これどうしたの?」

 ロメオ君が聞いてきた。

「巻末見てよ」

 ロメオ君は辞書をひっくり返して裏表紙をめくった。

 すぐに無言になった。

 口をパクパクさせて目だけで訴えてくる。

「僕もびっくりしちゃったよ。まさか姉さんがこんな辞書の翻訳してるなんてさ」

 途中で投げ出した姉さんの名前はあるのに、後始末をさせられたジーノさんの名前がないなんてね。

「ほんと、凄いね」

「エルフ語を現代語にしてただけらしいけどね」

「これで、他のコアも読めるようになるかな」

「魔法術式も新たな進化を遂げるかも!」

「姉さんたちにいつ頃話す? それとも話さないでおく?」

「いざとなったらこの設計図を破棄してもいいぐらいには、情報を集めておきたいから、その後かな」

「どう考えたってこの術式がこの面積に収まるはずないもんな。ロメオ君が姉さんと同じスキルを手に入れられたらいいんだけど」

「上手くすれば、このなかにマニュアルも含まれてるかも」

「そんなことあるの?」

「魔導具なんかは操作マニュアルを石にいっしょに刻んでおくケースとか割とあるみたいだよ。第三者が修理したりするときあると助かるでしょ?」

「これにもあると思う?」

「細かい設定とかしないといけないわけだから、あると思うよ」

「楽しくなりそうだ」

「リオナは楽しくないのです」

 びっくりした。

 鳥肌が全身に回った。

「助けて欲しいのです」

「まさか……」

 振り向けば姉さんたちがいた。

「何を企んでいるかと思えば」

「駄目だ!」

 僕は姉さんの前に立ちはだかった。

「見せられないよ! 約束してくれないとね」

「リオナ話してないのです。これはロメオ君の夢なのです」

 見りゃ分かるよ。両手に手錠されちゃって。

「よく頑張ったな」

 拘束されていたリオナの紐付き手錠が解かれた。

 領主館に置いてきたのすっかり忘れてた。

「まさか、謀反じゃないでしょうね?」

 ヴァレンティーナ様まで付いてきていた。

「そんなことするわけないでしょ!」

「何を誓えばいい?」

「見ても誰にも言わないこと。魔法の塔にも、王宮にも。一切他言無用のこと! 取り敢えず今のところはだけど…… 得られた情報はすべてロメオ君に帰属すると認めること」

「いいだろう」

「わたしも異存はないわ」

「ロメオ君、ごめん」

「いいよ。いつか話すつもりだったんだし。少しタイミングが早まっただけだよ」

 僕たちは図面の載ったテーブルへの道を空けた。

 ふたりは何も言わずにテーブルまで進み、上に載っている物を見下ろした。

「痛かったのです」

 手を擦りながらリオナが僕の元にやって来た。

 僕は手を撫でてやった。

 手錠だなんて、余程リオナに手を焼いたようだ。

 その姉さんたちが固まっている。


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