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エルーダ迷宮追撃中(四十七層攻略・プラスにゃん)89

「やっぱり角が邪魔なんじゃないか?」

「……」

 ヘモジが憮然とした顔で立ち上がる。

 兜が横を向いてるぞ。

「それにしても起動前のゴーレムだけは厄介だな」

「回収完了」

 ロメオ君が回収した地図を振った。

「残るは北東エリアだな」

 地図の取りこぼしはあるが、落書きは残るところ後二つだ。

「その前にお昼にしようか?」

 チコがにっこり笑った。


 チコが額に汗しながら、一生懸命口を動かしていた。

「無理しなくていいのです」

「折り詰めにして貰ったら?」

 リオナもロザリアも気に掛けている。

 チコは一人、黙々とステーキ定食と格闘していた。

 すべては誤解から始まった。

 リオナとピノがふたり分の定食を頼んだことがそもそもの原因だった。チコはそれでこの店の定食の量が少ないものだと勘違いしたのだ。

 だが、運ばれてきた皿は大人の冒険者がそれなりに満足するだけの量があった。

 チコも肉は大好物であるが、さすがに小さな身体に二人前は多すぎた。周囲が止めるのを無視した手前、引っ込みが付かなくなっていた。

 大食い競争じゃないんだから。午後も冒険あるんだぞ?

「平気」

 モクモクモクモク……

 両サイドからリオナとピノが狙っている。

 しばらくおかしなにらみ合いが続いた。リオナもピノも助けてやりたくてソワソワしてるのに当人が首を縦に振らない。

 それでも限界が近づくに従って、葛藤が芽生えてくるもので。

「ん」

 観念してチコは身を起こした。どうやら食べていいというお許しが出たようだ。

 リオナとピノが両サイドから一切れずつ取ったら、残りが一枚になった。

 チコの視線がレオに向けられた。

「僕? 貰っていいの?」

 チコが頷いた。

 レオは嬉しそうに最後の一枚を取った。

「美味しい」

 レオが笑い掛けるとチコもにこりと笑った。チコの額は汗だくだ。

 もっと早く降参できていたら、そんなに苦労しなくても済んだのに。

 でもこう言うときって小さい頃あったよなぁ。変なところで意地張っちゃうんだよな。

 そしてデザートが容赦なくやってくる。


 午後は北東エリアから再開だ。

 既にキメラによる蹂躙は終わっていて、あるのは残骸だけだった。

 地形的には東エリアに近く、平坦な町並みが続いていた。

 スタート地点からもマップ情報の目印の幾つかを発見することができた。

 地図と落書き、どちらも距離的には変わらないので西側から攻めることにした。

 まずは街道沿いにあるはずの地図探しからだ。

 敵は通常の物に戻っていた。オルトロスの襲撃にチコは目を丸くしながらげっぷした。

「頭が二つある」

 そう言って僕を見上げた。

「そうだな。二つだな。三つあったらケルベロスだな」

「別々のこと考えたら…… どうなるの?」

「どっちかに優先権があるんじゃないか?」

「餌代二倍掛かるね?」

「胃袋は一つだろ?」

「…… 一生半分こずつだったら可哀相だね」

 会話噛み合ってる?

 そうこうしてるとオルトロスがやってくる。が、一瞬で返り討ちにした。

「やっぱり邪魔だな。あの番犬は」

 飼い主が登場するが、接近される前に片付けた。

 ピノがチコにいろいろ話して聞かせている。

 今度はなんと肉屋だった。

 リオナが勇んで扉を破ったが、肉は一切置いてはいなかった。正直あったとしても、こんな場所にある物を持ち帰って食いたいとは思わない。

「ただの廃墟だね」

「肉屋である必要ないのです」

 全く以てその通り。でも代わりになぜか獣から剥ぎ取った毛皮が大量になめされた状態で発見された。

「…… 革細工屋か?」

 アイシャさんの見立てでは大した物はなさそうなのでスルーした。

 そしてなぜか空の保管庫のなかにたった一枚地図が放り込まれていた。

 地図がないのは後は南と南東だけか?

 南はどこにあったのかな? もしかして落書きのあった洞窟の奥だろうか? コテージのどこかか? 森のなかか? 街道自体途中で途切れているので予想も付かない。

 探せば見つかるはずだが、あそこはなくてもいいだろ?

 南東は投石機を三台、まずどうにかしないことにはね。

 さて、落書き探しに移行する。

 大体の場所はここから東、スタート地点からここまでの距離と変わらない位置にあるはずだ。東エリアとの境界近くになる。

 

「ワイバーン」

「コカトリス」

「グリフォン」

「バジリスク」

「雷鳥」

「ちょこちゃん」

「え?」

「ナ?」

 オクタヴィア、レオ、ピノ、リオナ、ナガレ、チコ、僕とヘモジは顔を見合わせた。

 僕たちは今、落書きによって起こされた新たな敵を目視していた。

 今度のキメラは空を飛んでいた。

 僕たちは第一印象を思い思いに述べたがどれ一つ一致していなかった。

 そこで第二ラウンド。望遠鏡を覗き込んで一言。

「ちょこちゃん」

「コカトリス」

「ちょこちゃん」

「…… コカトリス?」

「雷鳥」

「ちょこちゃん」

「……」

「ナ?」

 長い沈黙が流れる。

 アイシャさんが溜め息を付いた。

 第三ラウンド!

「ちょこちゃん」

「ちょこちゃん?」

「ちょこちゃん」

「ちょこちょん」

「雷鳥」

「ちょこちゃん」

「ちょこちゃんて何だよ!」

「ナ?」

 ロメオ君とロザリアが腹を抱えて大笑いした。

「ちょこちゃんは長老たちが飼ってたニワトリだよ。毎日卵を産むいい子だったの。でも一週間前に肉になったの」

「長老ずっけーよな、黙って食ったんだぜ」

 なんでも分けりゃいいってもんじゃないだろ?

「骨だけ土に還したんだって。花壇のなかにお墓があったの」

「いやそう言う話ではなく、それとあれが似てるのかと言う……」

「似てるよ」

「凄く似てる。頭のあのモサモサ感そっくり」

「ニワトリだろ? だったらニワトリと言うべきなんじゃ」

「ちょこちゃん」

「言われるとそうとしか見えないんだよな」

 ピノが言った。

「昨日から二代目ちょこちゃんを買い始めたんだよ。まだひよこなのにモッサリ感そっくりなの」

 その情報はもういいから。


 ちょこちゃんキメラが落とされるまで、東の遠い空を見上げた後、少し早いが、本日の狩りを終了した。

 さすがに南東エリアは三人同伴とはいかないだろう。


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