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エルーダ迷宮追撃中(四十七層攻略・レオ・アンド・ピノ)80

 さて、コモドの成れの果ての魔石も回収したことだし、次の場所に飛ぶことにする。

 東の城門から東エリアに戻る計画だったが、予定が変更されたので、別のスタート地点に。

 地図情報がすっかり飛び地になってしまったので、繋げる意味も込めて南東方向を攻略することに決めた。

 当然、東の落書きを使って、南東エリアにキメラを呼んだりはしない。ミノタウロスの抵抗が大き過ぎたら考えるが。まずは投石機を見つけ出さなければ。

 落書きの位置は結構南にあったので恐らく東の河川と南の海が合流する辺りにあるのだろう。

 スタート地点は初めてリセットを経験したあの池の小島である。

 裏手の湿地を抜けると進入禁止エリアの下流域が見えてくる。泥だらけになる気はないのであちら側に行く予定はない。落書きを見つけに行くときは空からだ。

 そう言えば新しい小型飛空艇はピノにもまだ見せてなかったな。


「いやー、これはまた」

「見晴らしいいのです」

「絵画のようじゃな」

 イーゼルを用意して絵を描きたくなるような景色だった。

 島に掛けられていた橋を渡り、小高い丘を一つ乗り越えたら、そこには広大な平原があった。

 見渡す限りの原っぱ。

 海鳥だか野鳥だか知らないが、たくさんの鳥たちが背の低い草原を埋め尽くしていた。

 思わず駆け出したくなる、そんな景色だった。

 但し、あれがなければだが。

 等間隔にこちらを向いてそびえ立つ投石機が三つ。なぜかこのエリアだけ複数、立ちはだかっていた。

「どうしよ」

 予想外だった。

 視界の開けたこの場所で三つはないだろ。

 それによく見ると戦闘する気満々の塹壕が掘ってある。

 なんでここだけ臨戦態勢なんだ? 海から来る外敵でもいるのか? クラーケンか?

 振り向けば草原は湿地に変わり、低地がどこまでも続いていた。クラーケンということはあるまい。

 南西方向には南の入り江へと続く岩棚へ続く丘が見えた。

 僕たちは北進することは止めて、南に飛ぶことにした。落書きポイントだけ見つけて、今度リセットするときにでもキメラを仕掛けることにする。


 丘を戻り、視界が切れた所で小型艇を出した。

 ふたりは予想通りの反応を見せてくれた。小型艇その物にか、僕の手品にかは分からないが。

「早く乗り込むのです」

 リオナに背中を押されてピノとレオは甲板に押し上げられた。

「何これ?」

 ピノの腰に安全帯が巻かれて、フックが金具に掛けられた。

「迷宮探索用の船なのです」

「ナーナ」

 どうやって運び込んだのか、あることないことリオナとヘモジが説明し始めた。

「これは秘密なのですよ」

「ナーナ」

「若様呪われた! ベヒモスに呪われた? だからアイテムを飲み込めるようになったって言ってる!」

 オクタヴィアが通訳しながら驚いている。

「信じるなよ! 前に説明したろ!」

「くくくくっ……」

「ちょっと、ロメオ君!」

「ごめん…… だって」

 笑い過ぎだよ。

 船が少しだけ浮上した。

 丘の向こうから狙われないように低空飛行である。

 射程圏外までは帆も張らずに『浮遊術式』だけで進む。

 蛇行してることに意味はない。操縦士が笑い過ぎて前が見えていないだけだ。

 周囲に敵影なし。

 水溜まりが点在する湿原を飛んだ。

 鳥たちが逃げ出して空に舞った。

「侵入者がいたらすぐばれるな」

 案の定ばれた。

 後方で衝撃音と共に泥が空高く巻き上がった。

「危なかったー」

 ギリギリ射程圏外だった。

「あそこまで届くとはな」

 アイシャさんも驚いている。

 確かに飛距離も威力も町中の物とは比べものにならなかった。

 このエリアに出てくるキメラが特殊なのか?

 そうは見えなかったし、迎え撃つには投石機の向きは逆だ。やはり南を警戒しての物だろうが、イベント抜きで何かあると言うのだろうか?

 起こしていない巨大な魔物は、順番で言ったらこのエリアの落書きで起きるだろう、南の魔物ぐらいだ。南は南を襲うだろう? でも襲うとしても例のコテージぐらいしかないんだよな。コースを変えてこっちに来るとか?


 木が点々と生えているだけで、道らしい道もなかった。

「あれじゃない?」

 確かに建物と言える物はあれしかなかった。

「灯台だよね?」

 この湿地を進まずにあそこまで辿り着くには船が必要だ。リオナがお持ち帰りしようと言った、城のドックにあった豪華な船を思い出した。

 ああ、あれの使い道はこれか?

 でも果たして冒険者の何人がこんな場所を目指すのか? あの地図屋の地図と落書きの関係に気付かなければ誰も来やしないだろう。

「防人でもいるのかな?」

 反応はない。すっかり無人のようだ。

 石畳が引かれた庭に船を降ろした。ここは廃墟というわけではなさそうだ。生活感が残っている。

 目の前にはマリンブルーの穏やかな海が広がっていた。

 僕たちは建物の入口を探した。

 すると海とは反対側に木の扉を見つけた。

「あったのです」

 罠があるといけないのでリオナと場所を換わった。

「罠はなさそうだな」

『迷宮の鍵』も反応しない。

 鍵は掛かっていないのか?

 ノブを回すがビクともしなかった。

「壊れてる?」

 僕が距離を取ると、アイシャさんが衝撃波を加えた。

「……」

 扉はビクともしなかった。

 進入禁止エリア? ここまで来て?

「なんで?」

「落書きがあるとしたらここしかないよ!」

 見渡す限りそれらしき所はない。

「たぶん合ってると思う」

 レオが言った。

「だって」

 レオは弓矢を海に射た。

 矢は弧を描いて波間に消えた。

「ほら、禁止エリアじゃない。禁止エリアはこの建物だけなんだよ」

 言われてみればおかしなことだ。

「時期尚早ということかの?」

 皆の脳裏で一つのシナリオが組み立てられた。

 あの三機の投石機。やる気満々の塹壕。このエリアに出てくる魔物は東の落書きによるもの以外に、恐らく南のエリアに出るはずの魔物も出るのだ。備えのレベルから考えると今までの大物連中とはワンランク上の何かが出てくると考えられる。

 つまりボス的な魔物が。となればまず、露払いを殲滅しなければいけないわけで、それには残りのエリアの落書きを解放する必要があると思われる。

 落書きポイントの全解放こそがこの扉の鍵だ。

「なんでこの階だけ面倒臭いですか!」

 リオナが爆発した。

「面倒臭くしてるのは我々じゃろ? クリアするだけならもう出口は見つけておるのじゃからな」

「他のエリアも充分面倒臭かったわよ」

 ロザリアが言った。

「今回はマップが広いからね」

「糸玉の仕掛けが複雑に思えるのはこっちの都合じゃ。本来、昼だけでなく、夜通し、連鎖した時間のなかで何日も掛けて攻略するのが正当な攻略法なのじゃろうからな」

「どっちにしてもここは無理っぽいわね」

 ナガレが言った。

「記録していく?」

 南東のスタート地点を記録した紫の糸玉を使うか考えた。

「三機の投石機の射程内にあるような場所は危ないし、こっちでいいんじゃない?」

 ここの落書きを見た途端、何が起こるか考えたら、ここも安全だとはとても思えないのだが。


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