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エルーダ迷宮追撃中(四十七層攻略・レオ・アンド・ピノ)79

 僕たちが起こした大型の魔物はコモドを抜くと今日の分を含めて四体だ。

 クラーケンを起こす落書きがあった洞窟で回収したメモ書きを見直すと、南西、西の二箇所の点同士は線で繋がっていたが、南は繋がっていなかった。

 故に城内の酒蔵の点と、南エリアの点はそのままになっている。

 今日の分を含めて、今後繋がる予定はあるのだろうか?

 今日の分のメモが回収できなかったのは痛い。リセットしたら、真っ先に回収するか? 

 一体何なんだ、この四十七階層というのは! 調べれば調べるほど何かが隠れている気がしてならない。

「お腹空いたのです」

「俺も」

 今日は二重奏だ。

 お昼にして、午後からはリセット、そしてコモドドラゴンをふたりに見せてやることにする。勿論宝物庫の回収もだ。この資金を以て、レオの装備を整えるのであるから、予定は外せない。

「若様あった!」

「え?」

「何が?」

 埃を被って灰色になった猫が出てきた。

「地図見つけた」

 倉庫の奥の奥、物があって敬遠しそうな場所にそれは置かれていた。

 オクタヴィア、大手柄だ!

 どうせリセットすれば再生するのだからと障害物を押し潰しながら取りに行く。

 地図はこのエリア、東の地図だった。情報は揃っているので今更なのではあるが、手前で用意した手書きの地図より、やはり迷宮が供出してくれた地図の方が何かと正確だろう。

 もはやここに用はない。

 外もちょうどいい具合に暮れている。

「よーし、お昼にしよう」


 ふたりの獣人の腹時計は実に正確だった。一番混んでいる時間帯にぶち当たってしまった。今日は人数が二人多いので、座席も大きなテーブルか、二つ隣り合うテーブルを選ばないといけなかったので、待たされる時間が長くなった。

 オクタヴィアの蜘蛛の巣を払ってもまだ時間が余る。レオとピノはそれでもエルーダが珍しくて楽しそうだった。

 待たされて感覚が麻痺したようで、リオナもピノも席に着くと普段の倍の注文を出した。

 残りのメンバーもミートパイをシェアするために幾つか追加した。

「悪かったな、ピノ」

「何が?」

「腕」

「こんなのへっちゃらだよ。すぐ治ったし」

「あそこで飛び込んでくるとは思わなかったのです」

 リオナの言う通り、僕もあれは予想外だった。

「ナーナ」 

 レオを守るべく結界内に収めた矢先に、その前に飛び出されたのだ。腕の先までガードが間に合わなかった。

 リオナもヘモジも面食らっただろう。

 不幸中の幸いだった。

 俊敏すぎる盾持ちなんて聞いたことがない。

 無鉄砲と言うべきか、勇敢と言うべきか……

 魔法の盾もそろそろバージョンアップさせるか。

 まずピノの盾に限っては魔力容量を大きくしてやろう。ソケットを二つ用意すれば、石を無駄にすることなく最後まで使えて、尚且つ継続使用できるだろう。

 ピノは物持ちがいいからな。魔石をギリギリまで使い切りたくなるのは分かるが、予想外の衝撃を受けると今回のようなことになるんだ。ソケットを二つにすればそんな心配もなくなるだろう。

 後はレオだが、アイシャさんはどうする気だ?

 弓は便利だが、今のままでは一定のダメージを与えるだけの代物でしかない。ハイエルフの特権は享受できないだろう。膨大な魔力を付与できる何か、魔法の矢では無理があるし、弓に仕込むしかないのだが。ヘモジの遊びとは違うからな。

 取り敢えずお守り用のぬいぐるみ選びからだ。すっかり忘れてたわ。

 お肉定食大盛りがリオナの前にドンと置かれた。そしてピノの前にも。

 ふたりは目を輝かせた。

 見てる方は食べる前からげんなりだ。

 ふたりは大食い競争でもしているかのように肉にかじり付いた。

 他のテーブルの連中も興味津々で食べっぷりを覗き込んでいる。普通セットを二つにすればまだ可愛げもあるのだが、普通セット三セット分はある。

 僕たちの分も来たので、ふたりの実況はやめるが、結果から言えば、我が家の居間でいつも見るような事態になった。

 後半戦まだあるんだぞ。

 他人のことは余り言えなかったのだが。


 長めのインターバルがてら、リセット作業に入った。

 ロメオ君、ロザリア、アイシャさん、僕の四人の班に分かれて、別々のゲートに飛び込んだ。

 僕ははずれを引いた。

 夜の時間帯に紛れ込んだので、恐らく北の方のエリアのどれかだ。

 僕は早々に外に脱出した。

 当たりを引いた場合、一分程おいてから出る約束になっていた。

 最初に実行したときに気付いたのだが、同じ色の糸玉は籠があろうがなかろうが出るときに位置情報を上書きしてしまうのである。だから出る順番を間違えると正解を不正解で上書きしてしまうのだ。だから当たりを引いた班は最後に出る必要があるのである。それぞれ別の色の糸玉を使えばこんな手間はいらないのだが、仕方がない。

 僕が外に出るとすぐ二班が合流した。

 アイシャさんの一班が遅れている。どうやら当たりを一発で引いたようだ。

 そして一分程で戻ってきた。

「当たりだよ」

 レオが言った。

 外で待ってればいいのに一緒に行ったのである。肩に見たことのある弓を背負っていた。アイシャさんのトレントの弓だ。

 本人も余り使っていないようだし、そういう選択肢もありか。

 はずれの糸玉を籠に放り込み、当たりだけを持ってゲートに再び突入した。

 天気以外何も変っていない東エリアのスタート地点にいた。

「じゃ、酒蔵に行くよ」

 投石機破壊とメモ書き回収か、バリスタ殲滅と宝物庫漁りか、食事中に話し合った結果、東エリアはもういいだろうという結論に達した。

 落書きのおおよその位置も判明したことだし、メモ書きの最新バージョンは次のエリアで回収すればいいだろうということになった。

「ふたりとも驚くなよ」

 ピノは他のドラゴンも見ているのでさほど驚かないと思うが。

 酒蔵に転移すると目の前に落書きがあった。

 間を置かずして、すぐさま大きな揺れが僕たちを襲った。

 念のために丸められて転がっているメモ書きを回収する。

「お」

 僕は見てすぐロメオ君に渡した。

「最新版になってるね」

 東の落書き現場の点が増えていた。

 外に飛び出すと戦闘が始まっていた。

「ドラゴンだ!」

 ピノもレオも目を丸くした。

 消耗戦は果てしなく続き、双方疲弊して、共に倒れた。

 ドラゴンに息があったのでナガレが仕留めた。

「めちゃくちゃだよ」

 ピノの感想に若干の新鮮さを感じながら、僕たちは腹黒い戦略を駆使して宝物庫に達した。

「一応繰り返し言って置くが、報酬はすべて等分配だ」

 レオのために言ったのだが、本人は他人事だと思っているようだった。荷物持ちの駄賃だけで満足する気のようだ。

 易々と開錠して入り込んだ僕たちはすっかり手慣れた手付きで回収作業を始めた。

 ピノとレオは余りのお宝に呆然と立ち尽くした。

 何倍もの量が我が家にあっただろうに。

「ピノとレオはそっちにあるお金を袋詰めしてくれる? ここの物は消えないから、落ち着いて。なるべく分別しながら入れて頂戴ね」

 ロザリアが言った。

「結構まとまって置かれてるから、かき混ぜない方がいいよ」

「そこの金と銀のお鍋を使うと一気にすくえるのです」

 等々、勝手知りたるという感じでアドバイスが飛ぶ。

 因みにリオナの言った物はお鍋ではない。ミノタウロスのコップだ。

 ふたりは顔を見合わせて苦笑いをする。

 ふたりがコイン集めに熱中している間に、僕は大きなアイテムを次から次へと『楽園』に放り込んでいった。

 ふたりが我に返ったときにはすっからかんになっていて、目の代わりに口をポカンと開けていた。

「二度美味しい」

 オクタヴィアが呟いた。

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