閑話 リオナノウタナノデス
短いですが、難解です。
「リオナの『リ』の字は立派なしっぽの『リ』~♪ リオナの『オ』の字はお肉大好きの『オ』~♪ リオナの『ナ』の字はなんでも食べるの『ナ』~♪ エルリンの『エ』の字はえらいの『エ』~♪ エルリンの『ル』の字は留守なのです、の『ル』~♪ エルリンの『リ』の字はリオナ大好きの『リ』~♪ エルリンの『ン』の字は「んー」なのです、の『ン』~♪」
リオナは歌うのです。
雷鳴ってるから歌うのです。
みんなお家に帰ったです。
お祭りは終ったのです。エルリンは来なかったのです。
だから歌うのです。
雨が降ってるのです。雷ゴロゴロなのです。
ユニコーンはお泊まりなのです。おねむなのです。
だから歌うのです。小さな声で歌うのです。
寂しいから歌うのです。お迎え来ないから歌うのです。
「リオナの『リ』の字は利口の『リ』~♪ リオナの『オ』の字はお菓子大好きの『オ』~♪ リオナの『ナ』の字はなんでも食べるの『ナ』~♪ エルリンの『エ』の字はえばりん坊の『エ』~♪ エルリンの『ル』の字は留守番は嫌なのです、の『ル』~♪ エルリンの『リ』の字はリオナ大好きの『リ』~♪ エルリンの『ン』の字は「んー」なのですの『ン』~♪」
足音が聞こえるのです。吐く息が聞こえるのです。
お迎えなのです。
遅いのです。
まだ通りの向こうなのです。
だから歌うのです。
お仕置きなのです。
森に入ったのです。つまずいたのです。
転んだですか?
立ち止まってはいけないのです。
リオナはここなのです。お家じゃないのです。
そっちじゃないのです。
リオナはこっちなのです。
歌ってる場合じゃないのです!
『草風』にお別れ言ったです。妹ちゃんは寝てるです。
だから手だけ振るのです。
外は雨なのです。
雷が鳴っているのです。
リオナは走ったのです。
エルリンを追いかけるのです。
転んだです。
滑ったです。不覚なのです。
うずくまったです。
エルリンの音しなくなったです。
雨は嫌いなのです。雷も嫌いなのです。
とぼとぼ歩くのです。
「リオナ!」
エルリンがいたのです。
「帰ってきちゃったのか。今、雨具、取りに家に寄ってたんだよ」
外套着せてくれたです。長靴も履かせてくれたです。
魔法かけてくれたです。
「ごめんな、遅くなって」
暖かです。服が乾いていくのです。
泥んこもきれいになったです。
もう寂しくないのです。
雨も嫌いじゃないのです。雷も嫌いじゃないのです。
手をつなげるのです。くっついていられるのです。
だから歌うです。元気な声で歌うです。
「リオナの『リ』の字は理屈じゃないのよ、愛なのです、の『リ』~♪ リオナの『オ』の字はおいしいものはみんな大好きの『オ』~♪ リオナの『ナ』の字はなんでも食べるの『ナ』~♪ エルリンの『エ』の字は笑顔の『エ』~♪ エルリンの『ル』の字はルール無用の魔弾なのです、の『ル』~♪ エルリンの『リ』の字はリオナ大好きの『リ』~♪ エルリンの『ン』の字は「んー」なのです、の『ン』~♪」
笑われたです。
家に着いたです。
外套脱いだら、ボサボサです。
タオルが降ってきたのです。
アンジェラおばちゃんなのです。おばちゃん言うと怒るのです。
ゴシゴシなのです。
暖かい魔法の風がくすぐったいのです。
頭をポンと叩くのです。
ご飯なのです。
湯気がおいしそうなのです。
みんなおそろいなのです。
お肉なのです。
「お祭りでたらふく食ったんじゃないのかい?」
リオナの心はフル回転なのです。お腹がグーッと鳴るのです。
だから今日も大盛りで。
食べたら眠くなったです。
今日はもうすぐ終わりです。
今日は特別にソファーでエルリンに寄りかかって、お休みです。
幸せなのです。
朝起きると自分のベッドで寝てたです。
はて?
「んー」
エルリンが居間で背伸びしてたです。
リオナも背伸びしたくなったです。
しっぽの先まで伸ばすのです。
「んー」なのです。
「おはよう」
「おはようなのです」
「リオナの『リ』の字は立派なしっぽの『リ』~♪ リオナの『オ』の字はお肉大好きの『オ』~♪ リオナの『ナ』の字はなんでも食べるの――」
朝ごはんの匂いです。自家製ジャムの甘い匂いがするのです。
すっかり気が抜けたところで、次回から四章に入ります。




