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エルーダ迷宮追撃中(四十七層攻略・地図回収)72

「白が最初の西エリアの見張り小屋で、黄色が北の空き地、黄緑色が南の入り江で、水色が宝物庫前のベランダの上、青色が武器屋の廃墟で、残るは赤色、橙色、紫色、茶色だ」

 そろそろ糸玉の転移先が混乱し始めたので確認しながら僕はメモを取っていた。

 僕たちは空になった宝物庫で次の移動先を検討している最中だった。

「地図はどうやって探すのよ」

 ナガレは空になった宝物庫の天井の梁を見詰めながら言った。

「手当たり次第しかないだろ?」

「最初のエリアは結構走破してるから、そこから行く?」

「街道沿いに近い場所じゃないかと思うんですけど?」

「そうじゃな、入場ゲートがどこも外縁にあるとすると、どのルートでも大体同じ距離、難易度の位置にあると考えていいじゃろ?」

「じゃあ、最初のエリアのもう少し内側を探すようだね」

「橋の投石機をまた破壊しなきゃいけなくなるけど」

「やるしかあるまい」

「記録は取ったし、あの辺りは派手にやっちゃっていいんじゃない?」

「日が暮れる前になんとかしましょう」

「ナーナ」

「頑張るのです」

 オクタヴィアが僕の頭の後ろで大きな欠伸をした。

「じゃ、酒蔵に戻ってそこから入り直そう」


 見張り台に飛ぶと僕たちは長い階段を駆け下りた。

 階段を上がってくるオルトロスとミノタウロスを地上に突き落としながら先を急いだ。

 建物を盾にしながら路地裏を通過して、橋の手前のゴーレムが隠れている建物を目指す。

 僕たちが駆け抜けた後方に大岩が撃ち込まれ土埃を舞い上げた。

「前に二体!」

 こちらに気付いたミノタウロスが路地を塞ごうと脇道から駆けてくる。

 角から頭を出すか出さないかというところでアイシャさんが魔法をぶち込んで吹き飛ばした。亡骸の全身に建物の破片が突き刺さっていた。

 僕たちは走り去る。敵の索敵に捕捉される前に。

 ゴーレムのいる建物に乗り移るため、手前の建物を駆け上がる。階段の位置もどこに何体いるかも前回掌握済みだ。すべて同じというわけにはいかないが大まかな配置や死角は分かる。

 一気に建物を制圧して、ゴーレムの狙撃ポイントに。

 僕は『魔弾』で隠れているゴーレムのコアを破壊する。

 全員が隣りの建物の屋上に移ると、そこはもう投石機が見えるポイントだ。

 前回同様、ロメオ君が『地獄の業火』を放つ。

 オルトロスがこちらを捕捉し吠え出したが、もはやその声に反応する者はいない。

 僕は橋の向こうにゲートを開いた。

 全員橋を渡ると、そのまま街道を目指した。

「ここからは慎重に!」

 ここからは未攻略エリアだ。城のバリスタは既に全損している。気兼ねなく探索できるが、日暮れまでの時間だけが気掛かりだ。

 全員が頷いた。

 普通の町並み、兵士がふらついてるだけのゴーストタウン。ただここはキメラの類が出ていないので兵士が減ってない。

「三体! 横から来るのです」

 リオナは壁に張り付き、通りの向こうからやって来る敵に対して狙撃体勢を取る。

 ヘモジもボーガンを地面に垂直に立てると弓の先に付いた鐙に足を掛け、弦を両手で引っ張りロックした。

 僕も反対側の壁に張り付き、ヘモジの準備を待って銃を構える。

 敵はゆっくり横の路地からこちらに近付いてくる。距離があるのでまだ気付く様子はない。

「ナーナ」

 ヘモジがようやくボルトをつがえて構えた。

 敵が目の前の空き地のような場所に差し掛かる。

 物干しに埃まみれのシーツが棚引いている。

 最初の一体が頭を出した。尖った槍を持っていた。

 僕たちは二体目までを息を潜めてやり過ごし、三体目の頭を……

 魔法付与されたボルトが頭を吹き飛ばした。ミノタウロスがシーツに絡まり地面に崩れた。

 残った二体が吠えた。

 だが、こちらに気付くことなく地べたに転がった。

「番犬が来るわよ」

 叫び声を聞き付けたオルトロスが四匹、こちらに向かっていた。すばしっこく物陰に隠れながら接近してくる。

 ナガレが僕たちの間に立ちはだかった。槍を振り上げ、天を刺す。

 稲妻が四匹の上に同時に落ちた。さすが百発百中のブリューナク。

「増援だよ!」

 飼い主たちがやってくる。

「ナーナ」

 ヘモジが次の装填準備をする。

 ほんとおもちゃだよな。それで倒されたんじゃ、相手も浮かばれないんじゃないか? それともあれか、でかくなったら手持ちのバリスタになるのか?

 飼い主はリオナが仕留めた。

 同行者が三人遅れてくる。

「お先」

「ナーナ」

 同時に構える。そして同時に発射。二体が倒れた。残った一体はリオナが仕留めた。

 マッピングの時間がやってきた。

 地図が見つかるまでは地味にやるしかない。でないと迷子になる。

 そしていよいよ日が沈みかけたとき、リオナとナガレが見つけた。

「今度は何屋だ?」

 雑貨屋か?

 小さな軒にすっかりがらくたになってしまった商品が並んでいる。

 奥の棚に地図が収まっていた。

 明かりを灯して近所の軒先にあった作業台の上で確認する。

 今までのマップ情報と照らし合わせる。

「間違いないよ」

 西地区の地図が手に入った。前回の北西部の地図とも繋がった。だが、それでもギルドのマップ情報に記載されている地図とは連結しなかった。

 雑貨屋では見るべき物も特になく、引き上げることにした。

 また迷宮に夜が来るわけだが、リセットしないだろうか。


 外に出ると、日暮れまでまだ一時間の猶予があった。

 家に戻るとレオはまだ帰ってきてはいなかった。

 さすがにオータンの迷宮は交通の便が一昔前のエルーダ並みに悪いから時間がかかっているのだろう。

 僕たちは装備を外すと、本日の回収品の選別を行なった。

 前回同様、欲しい物だけを残してすべて売却する手筈である。それまでは我が家の宝物庫に放り込んでおくことにする。売れる物からコツコツとだ。



 レオはギリギリ食事に間に合った。なんだかやけに疲れていた。

「どうだった?」と尋ねたら「獣人、元気過ぎだよ」と嘆いた。師匠がいるとは言え、ピノのパーティーだ。どう考えてもいけいけだ。

 食事の席は専らレオの冒険の話になった。

 僕たちはよってたかってどんな一日だったのか、事細かに話をさせた。

「そう言えば肉祭りするのか聞いてくれって、ピノ君たちに言われたんですけど」

「忘れてたのです!」

「僕も忘れてた」

 リオナは長老の元に向かい、僕は姉さんの元に向かった。

 コモドドラゴンを解体屋に送って貰わないといけない。アースドラゴンならミコーレに出せるのだが。

 二匹分送ったらどんな顔されるか、いろいろ聞かれるだろうし、気が重い。

「祭りのためだ、しょうがない」


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