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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第十三章 扉

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エルーダ迷宮追撃中(四十七層攻略・宝物庫)65

「これはクイーン部屋並みに凄いんじゃないか?」

「戦わなくていいんだからそれ以上だよ」

「ギミックじゃないの?」

 ナガレが言った。

「恐らく本物じゃ」

 アイシャさんが金のネックレスを首だけのマネキンから持ち上げて言った。

「なんだかんだ言って最近の僕たち、お宝の持ち出しが一番の重労働になってるよね」

「戦う重労働の方がいいのか?」

「滅相もない」

 ロメオ君もアイシャさんも浮かれてる。

 一方慎重なのがオクタヴィアだ。さすが唯一呪われた経験のある猫だ。宝石の類いは遠巻きに見るだけで近づこうとしない。その癖、床に落ちてる小物は平気で拾い上げる。

 両手の肉球にコインを挟んで、嬉しそうにこっちを見詰める。

「はいよ、背中向けな」

 背中の小さな鞄にコインを入れてやる。

 ヘモジが金のブレスレットを王冠のように頭に載せてはしゃいでいる。

 遊んでないで回収しろ。

「もしかしてこの部屋の鍵、希少品扱いだったのかしらね」

 ロザリアが言った。

「そうかもしれんな。この報酬は正規の報酬に比べて法外じゃ」

「どこかに鍵を落とす強敵がいるのか、即死級の宝箱があるのかも知れないわね」

 雑談を交わしながらせわしなく回収袋に物を放り込んでいく。

 あれだな、外はミノタウロスサイズなのに宝物庫のなかの宝物は人間サイズなんだよな。

 人間から強奪した物だという設定なのだろうか?


「回収終了」

 根こそぎである。取りも取ったり丸裸だ。

「後は夜明け後の探索のために投石機とバリスタの破壊だな」

 再びマップを広げて、外縁部の城壁の上に辿り着く道を探る。

「また転移するか」

 見えているのだから転移してしまえば早かろう。地図がなければ手当たり次第に攻略しなければならないが、その必要がないのだから気が楽だ。

 城壁の上と言っても城自体がでかいので一周するだけで重労働である。城下と同じく、西側に降り立ち、そこから東回りに一周するのがいいだろう。

「ちょっと待って!」

 ロメオ君が引き止めた。

「ここポイントにしない?」

 ああ、そうだった! その手があった!

 でもそうなると何色を捨てるか? 投石機のある橋の袂の水色か、入り江の砂浜の黄緑色か。

 橋の袂はリセットされると敵陣の真っ只中になるので水色を捨てることにした。

 僕は水色だけ籠から出してその場で退場できるか試みた。

 さすがに宝物庫のなかからは転移できなかった。

 宝物庫の扉には必ず見張りが立つだろうから、どこか手頃な場所はないだろうか?

「あそこがいいのです」

 リオナが指差したのは通路でも部屋でもなんでもない、渡り廊下の先に見える迫り出したバルコニーの屋根の上だ。

 次に来るときは宝物庫がリセットされた後であり、城内のミノタウロスも当然、復活しているわけである。城壁の見張りの目は気になるが、距離もあることだし、ここならいきなりと言うことはないだろう。


 僕たちはベランダの屋根に転移して、周囲を見渡した。

 夜の闇は今のところ僕たちに味方している。

 僕だけ一旦外に出て、すぐ戻って来た。

「よし、記録された」

 改めて攻略再開である。


 報酬はもう充分なので、あえて戦闘をする必要もなく、バリスタの破壊に専念することにした。

 こっそり近づいて工兵ごと衝撃波でまとめて城壁の下に吹き飛ばす。

 敵は未だに何が起きているか気付いていない。

 ボスを倒されて指揮系統が麻痺してるのかも知れないが、それにしてもこちらのやりたい放題である。どう考えても裏があるように思えてならない。

 日が出たら城下町の情報を記録するために、城壁の歩廊をもう一周することになる。だから、見過ごすことなく、念入りに敵を始末していく。

「なんだか、スカスカなのです」

 リオナも感じ始めていた。城内の敵の数が少な過ぎることを。強い弱いは兎も角、絶対数が少な過ぎるのである。

「メインのルートから外れてるからかな?」

 ロメオ君が言った。

 確かにこんな外周をほっつき回る冒険者は余りいないだろう。

 余計なことをしても、いつリセットされるか分からないのだ。地上の脅威になる武器を破壊したところで、ここまで来たパーティーにとってはもうどうでもいいことなのだ。

 後は出口を探すのみだ。

「そうだ、出口探さなきゃ」


 早く撤収していては、いつまでたっても日が昇らないので、予定時間まで出口を探すことにした。

 地図を再び開く。

 屋根の上では風が強くて、地図が暴れるので、足元に見える渡り廊下に僕たちは下り立った。

 城内に入って、最寄りの扉を開ける。

 敵はなし。

 ただの空き部屋だ。倉庫代わりに布を掛けられた椅子や机が収納されていた。隣りの部屋が広めのホールになっている。

 カーテンを開けて、城の全景を手に入れる。

 適当なテーブルの上に地図を置く。

「ええと。宝物庫の位置は……」

 地図の方角を回転させながら、ロメオ君が位置決めをする。

 それが終わると、出口を探す作業になるのだが、全員あることに気付いて黙り込んだ。

 そもそも地図に『出口』と書いてあるはずがないのである。この地図は冒険者の記録ではないのだ。

「そういえばマリアさんは出口が玉座にあるって言わなかったっけ?」

「ああッ!」

「言ってたのです!」

「何? 戻るの?」

「ナ?」

「そういうことになるの」

 と言うより、僕たちの侵入経路が脱出経路だったのではないか?

 僕たちはどこかで出口の前を素通りしてしまったのか?

 あれ? どこから飛んだんだっけ? 大広間のバルコニーってどこだっけ?

 渡り廊下に戻り、城を見上げるもどこから飛んだのか分からない。

 地図を見ながら階層を数える。

 そして位置の確認ができると僕たちは広間に戻った。

「壁はまだ破られてないみたいだよ?」

 ロメオ君が開いたバルコニーの扉からなかを覗いた。

「ちょっと散漫なんじゃないの?」

 ナガレが警戒することなく踏み込んだ。

「まったく。こんな手抜き見たことないのです」

 ゾロゾロとリオナとヘモジ、オクタヴィアが入っていった。

 僕たちは警戒しつつ、部屋を調べ始めた。

 王族の居住区へと続く鍵の掛かった扉、玉座の周辺、壁や床下、隅から隅まで。

「やっぱりないわね」

 残るは来た道を戻るか、王族の居住区の先しかないが。

「この扉、壊せないのです」

 ヘモジがミョルニルで叩いても居住区の扉はビクともしない。典型的な『開かずの扉』だ。

 しかも『迷宮の鍵』でも開かないとは。

 ただの見せかけか、条件があるのか。

 来た道を戻っても答えがなければ、マリアさんにまた細かいことを聞かなければなるまい。

 手土産はやはり……


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