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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第十三章 扉

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エルーダ迷宮追撃中(長老はまだいる)50

 おやつにしては豪勢なひとときは騒がしくはあったが落ち着いて過ごせた。

 ひとえに長老が食べることに集中していたせいもあるが、レオがアイシャさんに外の力の取り入れ方のレクチャーを申し出たところから一気に魔法談義になって、周囲の者たちはその講釈に聞き耳を立てるのに夢中になっていたわけである。

 フィデリオはお腹が満たされると、船を漕ぎ始めたので自室に寝かしつけられた。

「さてと」

 たらふく食って飲んだ長老はようやく自分の仕事を思い出したようで、お茶を片手に話し始めた。

 長い前置きを終えるとようやく本題に入ったが、その言葉に皆耳を疑った。

「大地に穴が開いたとき世界が滅びる?」

 全員が声を揃えた。

「穴というのはどれくらいの穴のことを言うのでしょうか?」

 エンリエッタさんが尋ねた。

「巨大な穴だとしか言い伝えにはないが、迷宮深層を攻略した者なら似た景色を見たことがあるのではないか?」

 地面の大穴なんて、自分が開けたもの以外思い当たる節はないが。

「もしかして大きな柱が出てくる奴ですか?」

 リオナが言った。

 あれは四十層のミノタウロスの迷宮フロアだ。

「人を模したようなゴーレムが出てきたあの?」

「穴なんかなかったわよ? 下海だったし」

「あっ! 柱の先、空の上に…… そう言うこと?」

「近いうちに世界のどこかに大穴が開くらしいとうちの連中が調べ上げ、兆候を掴んだ」

「兆候って?」

「どこです?」

「ファーレーン」

「そんな!」

 ロメオ君が愕然とした。そうだ、僕たちは島大陸がこの目で海に沈むのを見た。

 長老曰く、今はなき本島ではなく、僕たちが一時避難していたその先の未開の大陸にその穴が開くと言うのだ。

「穴が開いたらどうなる?」

 姉さんが話し掛けたとき、ロメオ君が挙手した。

「あ、あの! 僕も話があってここに来たんですけど、でも後でもいいかなと思ってたんですけど、もしかしたら関係あるかも知れないんで!」

「何かしら?」

 ヴァレンティーナ様が優しく促した。

 長老はじっとロメオ君の顔を見つめると言った。

「空に亀裂でも入ったのかの?」

「なッ!」

 ロメオ君が目を見開いた。

「驚くことはない。二つの事象は必ずセットで起こるものじゃ。それで? まず話してみよ」

「は、はい」

 ロメオ君は咳をした。

「あ、あの。僕の父の個人的な知り合いの冒険者から報告が来たんです。西方の未開の地の空に亀裂のようなものが見えたって。時間にして十分ぐらいだったそうですが」

「待て! そんな知らせは来ていない!」

「たぶん王都には届いていると思います」

「西方遠征に参加した者たちが目撃者になったのなら、もっと騒ぎになっているはずだ」

「いいえ、場所は火竜の巣のある稜線の向こう側なんです。山脈の東からだと稜線が影になって見えなかったはずだと言っていました」

「まだ遠征部隊はそこまで到達していないはずだ。そんな場所で何をしてるんだ? その冒険者は」

「ええと…… 貴族の方々が我先にと競って未開の深部の情報を集めていらっしゃって、個別に冒険者を雇い入れて」

「抜け駆けか。そんな余力などなかろうに」

「いや、部隊が行く前にこっそり獲物を回収できれば、収益を独占できる。十人の貴族で分けるより、冒険者と二分した方がいい儲けになるだろう。おまけにリスクは冒険者の命だけで自分で負う必要がないものだ」

「つまりその依頼を受けた冒険者がお父上にそう報告して来たのね?」

「はい。僕たちのことを知っていて、火竜の巣の向こうを空から探索しないかと。僕は面白そうだから、みんなを誘おうと思って」

「その誘い、断わって貰うしかないの」

 長老が言った。

「お前たちのような優秀な冒険者には別にやることがあるんじゃ。亀裂ができた場所を特定できたのなら僥倖じゃ。後はその場を監視しておればいい。ことが起こるそのときまで」

「やることとはなんじゃ?」

「世界中の迷宮を漁り、迷宮の管理者を探すのじゃ」

「それって教会じゃ?」

「いいや、教会は迷宮を維持管理しているだけじゃ。実際に迷宮を迷宮たらしめているのは別の存在じゃ。我らはそやつらを管理者と呼んでおる」

「それが今回となんの関係がある?」

「答えと対処法を知っておるのじゃ。何が起こるのか、どうすればよいのか聞かなくてはならない」

「なぜ迷宮の管理者とやらに二つの天変地異について聞かなければいけないのです?」

「迷宮はその成り立ちから古い伝記や神話を溜め込んでいる。さっきの話にもあった四十階層で見た景色とやらの大本になる情報があるはずなのじゃ。我らハイエルフの調べた限りではこの現象がなんらかの悪影響を及ぼす前に、管理者に会って解決法を見出さねばならんのじゃ」

「管理者って? 迷宮で暮らしてるの?」

「分からぬ。我らとておうたことなどないのじゃ。ただ同じことが起きたときの遠い過去の資料にあるだけなのじゃ『会いに行き、回答を得よ』と」

 長老が来た理由はそれか?

「それでどの迷宮におるのじゃ?」

「できるだけ多くの迷宮を調べねばならん。既に攻略済みの者たちにも。管理者を知る者がおるかどうか、そこへ至る道を」

「どういうこと?」

「教会に聞くわけにはいかないのですか?」

「教会は迷宮の管理をその管理者を通して行なっておる。だが、それは情報伝達を行なう仕組みを介してであって、管理者本人とやり取りをしているわけではない」

 全員がロザリアを見た。当然ロザリアに知る由もない。

「妾がイベントに参加したときもそのような者におうたりはしなかったの」

「教会に確認して参りましょうか?」

 ロザリアが護衛と交渉したようだ。

 しばしのインターバルができた。

「お祭りの屋台巡りに行ってくるのです!」

 リオナはナガレとレオを連れて家を飛び出していった。

「お茶がすっかり冷めてしまったな」


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