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エルーダ迷宮追撃中(タイタンもう一回)31

 その夜、遅くなってアイシャさんが戻ってきた。

「すまなかったな。両親とレオの母親に引き止められてしまってな」

「お帰りなさい、ご主人」

 オクタヴィアが尻尾をくねらせ出迎えた。

「変わったことなかったか?」

「タイタン倒した。でかかった」

「なんだ、次のフロア攻略したのか?」

「金銀財宝ザックザク?」

 ヘモジが両手を広げて嬉々として語った。

「一緒にリベンジに行こう?」

「妾は負けた覚えはないぞ」

「今度は一分を狙うです」

 アイシャさんは苦笑いした。

「やはりここはいいな」

 アンジェラさんがお茶を運んできた。

「あの子は置いてきたのかい?」

「ああ、村の掟があるからな。里長たちと両親がどうするか話し合っておる。許可がでれば迎え入れてやるつもりじゃ」

「待ち遠しいのです」

「魔法も碌に覚えておらんからな。本人には気の毒じゃが、当分先じゃろ」

「食事は?」

「いや、いい。適当に食べながら戻ってきたからな」


 明日、タイタン狩りをもう一度することになった。また倉庫が満杯になるが、さすがに今度は姉さんには頼れない。市場に流すまでの間、保管しておく場所を確保しなければならない。

「別荘にでも積み上げておけばよかろう」

 アイシャさんの一言で決定した。

 近くに鉱山都市アビークもあるから、そっち経由で銀と銅は持ち込めるかも知れない。

「タイタンまでの最短距離を見つけたんだけど」

「遅くはならなかったのだろう?」

 意味深にこちらを見つめる。同じ足跡を辿りたいと目が言っていた。

「では、前回と同じ道を」

 こういうときに限って新しい発見があるかもしれないからな。



「まさか……」

 冗談から出た誠…… 新しい発見が本当にあった!

「ここに来て別ルート?」

 みんな呆然としていた。

 問題は例の影追いの日時計がある場所で起こった。

 なんと、あの日時計の柱に使う棒、刺す向きを上下入れ換えることができたのである。天地をひっくり返すと当然のことながら影の辿るルートも変わってくるのであった。

 辿り着いた先は全く別の祠だった。

「扉は変わらないんだな」

「あんな仕掛けがあったとは思わなかったのです」

「案外、使える棒が他にもあるのかも知れないな」

「これって正解に続いてるのかな?」

 祠のなかは狭かった。敵もこの狭さのなか戦いたくないと思ったのか、一向に姿を現わさなかった。

「闇蠍がいないのです」

 ふらふらと右に左に通路が続いていく。

 そして行き着いた先に扉が現われた。

「これは?」

「脱出部屋の扉だ!」

「もしかしてあの扉に繋がってるの?」

 扉を開けたらゲートのあるお決まりの部屋があった。

 だがその先に普段はない別のもう一つの扉が待ち受けていた。

「何かいるのです!」

 扉の外に確かに反応がある。

「ロザリア、蠍だ」

 扉をゆっくり開ける。僕たちはゆっくりと通路に出る。

 そして先制攻撃!

 見える位置の一体を倒すとゾロゾロと周囲の闇が迫ってきた。

「ほお、面白いな」

 アイシャさんは後方を振り返った。

 衝撃波で後ろの群れを一掃した。

 前方の群れはロザリアの光の魔法の餌食になった。

 蠍は必死に近付こうともがくが、腹を見せるだけで無駄であった。

「ここって……」

 全員が周囲を見渡した。

「素通りしたあの扉よね?」

 思い出した! マリアさんに聞きたかったこと。このゲートの行き先だ。トラップだというならどこに出るのか?

「近道だったのです」

「まさか闇蠍に遭遇しないルートが存在したとはね」

 先達たちはどっちのルートを選択してきたのだろうか? 或いはもっと別の。

「タイタンはすぐなのです」

 最初に来たときは疑心暗鬼だったが、先が分かっていれば気も楽だ。

 そして難なくタイタン部屋の前に。

「ナーナ」

「大きい、すっごく」

 ふたりがアイシャさんに必死にタイタンの大きさを伝えようとしている。今日は朝からオクタヴィアはご主人にべったりだ。

「どうせ穴掘って終わりじゃろ?」

 ふたりの興奮を一言で一蹴した。

「その手があったか!」と言いたいところだが、分かっていた。穴に落としてしまえばあの大きなハンマーの効果も制限でき、倒し易くなるということは。

 懸案はどこまで掘れるかということだ。

 迷宮を傷付けると当然例のあれが出てくる。迷宮を破壊するなら破壊可能オブジェクトだけだ。

 タイタンフロアはどこまで掘ることが許されているのか?

 ここは相当深い場所にあるはずなのだ。

 部屋の下は砂なのか土なのか?

 前回タイタン自身が床掘ってたから床を破壊することは可能だろう。

 だが、あのでかいタイタンを落とす穴をというのは……

 階層のレベルに見合う環境の強化もなされているとは思う。思うのだが、もしものことがあったらタイタン以上の『闇の信徒』が出てくることになる。そうなったらかなりやばいことになる。自然消滅なら何日だったか……

 精霊石を求めてイフリートのフロア辺りが今活気づいているが、恐らく入場制限されるに違いない。

 なるべく丁寧に、砂を掻き分けるようにして掘ってみよう。

「やってみなければ分からんじゃろ」という言葉に背中を押されての入場である。

 敵は奥からやってくる。

 ズン、ズンと。さすがに二度目となると感動は薄れるもので、皆冷静に状況が見れていた。

「床を抜くぞ」

 僕は床を抜いた。それだけでタイタンは膝まで沈んだ。片足を落としたことでバランスを失いよろめいて壁に衝突した。

 リオナが消え、ヘモジが走った。何も言ってないのに一斉攻撃が。

 全員敵の隙を逃さなかった。

 五枚の結界があっという間になくなった。

 何もすることがなかった。

 リオナが復活し掛けた結界ごと核を切り裂いた。

 宣言通り一分を切る早業だった。

 まさか本気でやろうとは。

 ヘモジがリオナに「とどめは自分だ」と抗議している。

 次やる機会があったらね。

 そして、これこそタイタンの精神攻撃なんじゃないかと思える程アイテムを残していった。

「やった金が少ない!」

 ロメオ君が言った。

 今回ははずれのような当たりのような、金少なめ、宝石、ミスリル、アダマンタイトちょい多めみたいな。

 よかったアダマンタイトならゴリアテに送れる。あそこならお金で買い取って貰えなくても物々交換が可能だ。

 回収を始める。

 アイシャさんと一緒に大きな塊を小さくして袋に放り込んでいく。

 ふたりでやると仕事が早くて助かる。

 宝石は粗方回収終わり。硬貨を袋に放り込んでいく。


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