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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第十三章 扉

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エルーダ迷宮追撃中(ご苦労さん会パート二)20

 リオナは姉のところではなく、僕に付いてきてレオと同席した。

 うちの家人も同席していた。

 アンジェラさんも今日は来賓側のようである。

「どうにも座りが悪いね」

「いつもご苦労様なのです」

 リオナがしおらしく酒を注いだ。

『これ、美味しい!』

 レオが声を上げた。

 おにぎりかと思ったら肉を食っていた。

「なんの肉だ?」

「ウルスラグナじゃ」

「なんだ、猪か」

「急がずゆっくり食べればいいのです。ドラゴンの肉もイフリートの肉もまだあるのです」

「ナーナ」

「おかか!」

 ふたりは仲良く長椅子に座り込んだ。

 ヘモジは半分にしたおにぎりをオクタヴィアの前に置いた。

 オクタヴィアは揺れる半球を両手で押さえながら中心のおかか目掛けて顔を突っ込んだ。

 レオはそれを見て笑った。

 オクタヴィアが満足した顔を上げると髭におかかがぶら下がっていた。

 おにぎりがぽちぽち手に取られるようになると、そこかしこで「意外にいけるぞ」という声が上がった。

 父親はとても食べ物に見えない料理に戦々恐々としながらも、家族に威厳を見せるべく、勇気を振り絞って口に運んだ。

 母親は「作るの簡単そうね。レシピは教えて貰えるのかしら?」と給仕たちを呼び止めた。

 子供たちは見たことのないへんてこな料理を父親そっちのけで純粋に楽しみながら頬張った。

 想像していたより地味な反応だったが、終わってみれば完食されていた。

 とんだおまけが付いたけど、『ご苦労さん会パート二』は何ごともなく無事終了した。


「次は秋祭りなのです!」

 どっと肩が重くなった。



 翌朝、アイシャさんはレオを連れて一旦里に戻ることにした。コインを数えながら散財だと嘆いていた。

『もっとここにいたいよ。いいでしょ? まだ何もしてないんだよ!』

 レオは抵抗したが、アイシャさんは許さなかった。

『お前、誘拐されて何日経った! 一旦帰って、親に顔を見せてこい!』

 ついでにアイシャさんもまだ見ぬ妹と顔合わせをしてくるそうだ。

 戻ってくるのは早くて明日、引き止められても明後日には戻ってくると言った。

 アイシャさんにとってハイエルフの里は余程退屈と見える。

 残された僕たちは予定通り、エルーダ迷宮地下四十六層、タイタン攻略である。

 アイシャさんが抜けるのは痛いが、精霊石が出ないことが確定しているので気は楽だ。出口だけを目指せばいいのだから。

 舞台は砂漠なので念入りに砂漠用の装備を準備する。

 日除け、砂除け用に外套を着込んで口と鼻を布で塞いだらこっちが怪しい集団である。


 振り子列車ではいつもの作戦会議が開かれた。

「情報は四十五階よりはあるよ」

 ロメオ君はマップ集を開いて言った。

 それは今までのものとはまるで違った情報提供方法だった。

 それは日誌だった。要約すると。


『入口から入ったらひたすら直進。コンパスは当てにならない。戦闘を繰り返しながら何度も砂山を乗り越えると、砂嵐に遭遇した。嵐を避けるために進路を右に切ったが、大きな地割れが進路を塞ぐ。嵐を退けながら割れ目に沿って進む。新手の敵と遭遇すること三度。やがて割れ目に下りる道を見つける。道なりに進むと夜が来る。闇を恐れよ。谷間を抜け、砂山を越えた先にオアシスを見つけるだろう。そこを拠点にして進路を探ること三日。遂に道を見つける。見晴らしのいいときに唯一ある大岩の上に乗り、椰子の木が並んで生えている間を望む。遠くに影を見つける。そこを目指してひたすら進むとやがて足元が石畳に変わり、目的の物が見えてくる。ゴールは近い。日時計を見つける。棒が転がっているので見つけだして中央の窪みに立てると影が動き出す。動かないときは棒が違うのだ。このときインデックスに意味はない。影の先端を追え。やがて先端は入口を指し示す。大地の精霊が待っているだろう。やり過ごすな。戦え。出口はその先にしかない』


 地図の代わりに事務的に書かれた散文があるだけだった。

「一日で回れるのかしらね?」

 ロザリアが言った。

「ボードの出番かな」

 ロメオ君が言った。

「えーっ」

 苦手なロザリアが不満そうな顔をした。アイシャさんがいないから劣勢だ。

「この機会に乗れるようになるんだね」

 ロメオ君はお構いなしだ。

 でもあながち悪い話ではない。下は砂地だ。転んだところで怪我はない。

「インデックスって?」

 ナガレが尋ねた。

「文字盤の数字とか印のことじゃないかな?」とロメオ君が言った。

「ところでなんでオクタヴィアがいるの? あんたご主人と一緒に行かなかったの?」

 ナガレが座布団の上の猫に視線を向けた。

「寝坊したら置いてかれた」

「遅くまであの子と双六なんかしてるからよ」

「ナーナ」

 ヘモジも同意した。

「使い魔が置いてかれてどうすんのよ」

 オクタヴィアがしゅんとなった。

「アイシャさんが選んだんだ。気にするな。必要なら起こしたさ」

 一番気にしてるのはオクタヴィア自身だ。余り責めてやるなよ。

「オクタヴィア、いらない?」

 無茶苦茶寂しそうな視線で見詰められた。

 あちゃー、そう受け取ったか。

「そう言う意味じゃなくて! ただの里帰りだから。明日、明後日には戻ってくるんだから」

「言い過ぎよ」とナガレが仁王立ちで僕を責めた。

「お前が言うなよ!」

「ナナナナーナ」

 ヘモジが励ました。

 しぼんでたオクタヴィアがひょこっと元気に首をもたげた。

「時間勿体ない、早く行く」

 列車の速度は変わんないよ。

「機嫌直ったわね」

「お前なんて言ったんだ?」

「ナ、ナナナナーナ」

「『鬼の居ぬ間に羽を伸ばすチャンス』だそうよ」

 同情したこっちが馬鹿だった。


「じゃあ、行こうか」

 エルーダの冒険者ギルドの事務所に情報はないかと寄ってみたらマリアさんは不在だった。珍しく休みを取ったらしい。


 地下四十六層、タイタンのフロアには他のパーティーはいなかった。イフリートたちと違って魔石を落とさないことが分かっているからだろう。

 情報通りに僕たちはひたすら真っ直ぐ進んだ。

 歩いている間にそれる可能性もあったが、結構砂漠には生命があって位置情報は正確に掴めていた。

「サボテンワームなのです」

「やだねー」

 近づかなければ襲われないとは分かっているが、仮にもワームである。

 僕たちは早速、ボードを取り出した。

 ロザリアに合わせてゆっくり低空を飛んだが、砂の上を歩くよりは遙かに速かった。

 ロザリアのリュックは僕が預かって『楽園』のなかに放り込んである。

 コンパスは情報通り、乱れに乱れた。当然決まった方角を指してはくれなかった。


 最初の敵はロックゴーレム。サンドロックトードではない正真正銘のゴーレムだ。

 紛らわしい。

二十階層にいたストーンゴーレムの恐らく上位版だろう。レベルはほぼ倍に上がっているが、見た目は余り変わっていなかった。大きさもほぼ同じだった。

 だが、行動は大きく変わっていた。

「速い!」

「でも遅い」

 オクタヴィア……

 僕の賞嘆に速攻で突っ込みを入れた。

 確かに遅いが、ゴーレムとしては画期的な俊敏さだった。

 巨大な拳が砂を巻き上げた。が、既にコアは撃ち抜かれていた。

 頭上からリオナが『ソニック』アンド『チャージショット』を放っていた。

 すっかり手際がよくなってしまって。

 宙返りをして戻って来た。

「何か落とすですか?」

 地下二十階のストーンゴーレムは屑鉱石専門だったが。

 フットベースボールぐらいの銅鉱石が出た。不純物七割といったところだろう。ましになったと言うべきかな?

 僕は不純物を分離した物を『楽園』に放り込んだ。

 二体目が砂山の頂に現われた。

「距離があるな」

 実入りがないのだからやるだけ無駄である。スルーを決め込んだ。

 二十階層のストーンゴーレムと同じ対応である。

 ところが上位版はやはり進化していた。

 なんとその名の通り(ロツク)を投げてきたのである。

 どこに岩があるんだよ!

 砂原のどこにも岩なんて見当たらない。

「もしかして魔法?」

 ロメオ君が言った。

「なんだって?」

 ただでさえ実入りがないところに魔力を消費されてしまっては、屑鉱石すら落とさなくなる。

 かと言って、岩を投げつけられてはスルーもできない。

 仕方がないので僕たちは前進する。

 結界に岩が当たって砕けた!

 飛んでるときに岩をぶつけられては事故の元だ。

 こちらの射程に入った。

 反撃開始だ!

 リオナがまた狙撃した。

 ゴーレムは固まったまま動かなくなった。

「この距離からコアを一撃とはね」

 ゴーレムの専門家も真っ青だ。

 また銅に変わったが、量は著しく減っていた。握り拳ぐらいの大きさだった。そこから不純物七割を引くと。銃弾の鉛代ぐらいにはなるのだろうか?

 それにしてもリオナは絶好調だな。

 魔法を使う僕たちも銃を持ってはいるけれど、精度で完全に負けている。しかも飛びながらだから恐れ入る。


 三体目、四体目と進行方向にまるで標識のように現われる。

 その度に進路の調整を余儀なくされるが。

「まるで一直線に誘ってるみたいなのです」

 たぶん、倒していけばその内大きな看板に出くわすのだろう。

 資料には『砂嵐に遭遇』とあったが、目の前の雲行きが怪しくなってきた。

 僕たちは外套を目深に被り。口と鼻を布で塞いだ。

 あ、ゴーグル忘れた…… ま、いっか。


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