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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第十二章 星月夜に流れ星
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エルーダ迷宮征服中(星月夜に流れ星)57

 木後月二十二日。スプレコーンの冒険者ギルドで『火と水の精霊石の競演』の催しが開催された。

 午前中は来賓を招いての先行会が行なわれ、ここに王様を初めとするお歴々が参加される運びとなった。

 町の警備体制はいきなり最高レベルに跳ね上がった。その時間帯、ポータルは手動に切り替えられ、事前申請のない者の渡航はすべてブロックされた。

 町の出入り口はおろか領境の出入りの検閲も数日前から強化されていた。

 そのせいもあって飛空艇で入場される方々がとても多かった。突貫工事で作っていた飛空艇の発着場は既に定員オーバー。結局、商会のドックを借り受けることになった。


 煌びやかな衣装を着た方々が極標準的なサイズの冒険者ギルド事務所前に長蛇の列を作った。それとは別に領主館からやんごとなき方々の馬車が繋がっていた。

 そしてそれらを更に取り囲むように王様たちの車列を一目見ようと大きな人垣ができあがっていた。

 先頭の黒塗りの豪華な馬車がギルド事務所エントランス前に横付けされた。

 赤絨毯が敷かれ、ロメオ君の両親が粛々と出迎えた。

 馬車から王様とヴァレンティーナ様が出てきた。次の馬車からは女性陣が出てきた。

 そばにいた事情通の野次馬に聞いたところ、王妃様と側室とそのお付きらしかった。

 あれが…… ダンディー親父の…… ヴァレンティーナ様たちの……

 滅多に後宮から出てこない方々らしいが、今回お付きの者も含めて十人程が降り立った。

 人混みから溜め息が出る程の絢爛さだったが、リオナにとっては余り面白い方々ではないだろう。リオナを日陰者として扱ってきた方々でもあるし、僕自身なんの興味も沸かない方々であった。いや、正直リオナの生活圏に踏み込んで欲しくない連中だった。

 リオナは祭りの準備で忙しくしているので、こちらには来ていなかった。もしかして気付いているかも知れないが、会わずに済んで幸いである。

 僕は野次馬に紛れて来場者たちを遠巻きに見ていた。どんな方々が来場してくるのか主催者のひとりとして興味があった。

 第一師団の隊長さん夫妻の姿が陛下ご一行のそばにあった。他にも晩餐会で会った大臣や重鎮たちの姿がチラホラあった。

 やんごとなき方々のレセプションはこの後領主館で行なわれることになっているので、うちの肉祭りとは縁のない方々であるから、基本どうでもいいのだが、うちの両親も見に来ているはずなので、それだけは見ておこうと思った。母さんに見つかったら引きずり込まれることは分かっているので、ばれないように慎重を期した。

 客の入りは好調のようだった。

 因みに宰相殿は下見と称して観覧を先日済ませていた。ロメオ君の家族はそこでいろいろアドバイスを貰っていたようだった。

 普段締め切りになっている二階のバルコニーを開放したのもその一つだった。

 王様が一言述べてくれるだろうから、多くの者が見える場所を用意するといいだろうという話だった。勿論バルコニーには姉さんが施した最強の障壁が展開している。

 ちょうど王様から御言葉を貰ってるところである。スプレコーンの急速な発展を褒め称え、あまつさえこのような展示会が催されたことを誇りに思うと述べられた。

 ロメオ君のお爺ちゃんとお婆ちゃんは目に涙を浮かべていた。

 他にも展示会場には宰相殿が提案した工夫が生かされていた。

 まずイフリートやクラーケンの大きさを見学者に実感して貰うために、部位の展示も合わせて行なった。精霊石と一緒にイフリートの角と、クラーケンの足の輪切りといきたかったが、部屋に収まり切らなかったので、足一本の断面の直径を表わした印を壁に描いた。

 精霊石になる魔物の大きさという物をきっと肌で感じることができるだろう。


 結構な時間、王様ご一行は事務所のなかにいた。

 精霊石だけでは寂しかろうと、僕はいろいろ展示物を提供した。金塊、銀塊、ミスリル、大きな宝石の原石などである。ヴァレンティーナ様と姉さんからは各種ドラゴンの部位など、過去に僕が納めた分も含めて提供された。

 これもまたドラゴンの絶大さを物語っていた。

 列はどんどん長くなっていったが、王様やそれに準ずる方々の観覧が済むと加速度的に列の移動が早まった。

 出てきた人たちの顔は老若男女問わず、皆笑顔に満ちていた。

 誰もが魔物の大きさに感動し、普段拝めないお宝に興奮していた。

 昼前には馬車で来るお客の姿はなくなった。

 そしていよいよ一般開放である。


 本日の肉祭りには町の住人以外の参加は認められていなかった。ただ『火と水の精霊石の競演』の展示会の入場チケットがあれば話は別であった。

 俗に言うタイアップという奴である。

 勿論一日ですべての人たちが催しを見ることは不可能なので、観覧前のチケットでも入場はできることになっていた。

 前売りチケットだけでも十万枚が売れたそうだから驚きである。

 町の人たちにはいつも通り無料で出入り自由だと告知したのに、皆律儀に入場券を購入してくれたらしく、十万枚の半分は町の人たちのものだった。外来の人たちは五万人弱であった。

 チケット販売はまだまだ伸びているので、肉祭りは大変なことになりそうである。


 官庁街は完全に封鎖され、一方でポータルが通常運用に戻された。

 守備隊は全員が出動する手筈となっていた。

 後日、祭りの主催者側のスタッフ専用に『ご苦労さん会』を行なうことを告知してあるので、前回までのように彼らが浮き足立つこともなかった。

 ポータルから北門を抜け、中央広場の冒険者ギルドまで長蛇の列ができあがった。

 多くの商店と出店が彼らを出迎えた。

 我が家の正門も開放された。

 会場はいつものガラスの棟周辺に加えて、すぐそばの森に新設された巨大キャンプ場が充てられることになっていた。一軒のロッジ風の監視棟があるだけの施設である。

 子供たちがサバイバルゲームを楽しむために、集合場所や休憩場所にして貰うために設けた物だが、大人たちも訓練や余暇で利用するようになっていた。

 ユニコーンの庭を外周部に作ったせいで、いらなくなった緩衝地帯の森の一部である。

 テントを設営し、調理器材も既に持ち込まれている。広めの平坦地に椅子とテーブルが運び込まれ準備は万端であった。

 昼の鐘が鳴るとリオナが壇上に立った。そして『火と水の精霊石の競演』の催しの成功と町の発展を願って乾杯の音頭が取られた。


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