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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第十二章 星月夜に流れ星
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エルーダ迷宮征服中(予行終了と副産物)35

「燃えてるです」

 食堂のいつもの席でいつもの注文をする。

 料理を待つ間、リオナは傍らに置いたランタンに掛けた覆いをめくり、なかを覗きながら目を輝かしていた。新しいおもちゃを得た子供のように楽しそうにしている。

「普通布を掛けたら火は消えるのです。この炎は頑張り屋さんなのです」

 問題は熱くないことだと思うぞ。布を掛けても燃えない。足元に置いておいても火傷すらしない。どちらかというと炎というより光のようだ。そのくせ燃え種になりそうな物を近付けると着火するのだ。

「大体、これどうやって使うんだ? イフリートにこのまま投げればいいのか?」

「えーっ、そんなことしたら壊れるのです!」

「使わずに済めばいいんだけどな」

「最後まで取っておくのです」

「でも使ったらあっさり終わるかもよ」

 兎に角、使い方だよ。それが丸っきり分からない。現場には持って行くが、使うかは状況次第だ。

 料理がやって来た。

 リオナは早速食べることに集中し始めた。

 午後はまずジュエルゴーレム狩りを手伝って貰って、それから高級布の買い付けに荷物持ちとして付き合う予定だ。


「不便だな」

 消えない炎というのは意外に不便だった。乱暴に扱っても消えることがないのは利点なのだろうが、敵を起こしたくないときには困りものだ。

 布を掛けておけばいいのだろうが、それで別の光源を用意するのもおかしな話だ。

 今回は光が届く範囲の敵は起こしてしまおうということになった。その分、早い対応が求められるが、リオナがいれば問題ないと判断した。

 核の位置を順次示してやれば即行リオナは対応して、弾丸と『霞の剣』で近距離から黙らせていった。

 その内、リオナは自分から先に核の位置を見つけるゲームを始めた。

 要は核の位置を察知して、先に宣言して僕と答え合わせをする遊びなのだが、恐ろしいことにかなりの的中率を見せた。

「右肩、手前ッ!」

「正解!」

 こちらが答えを教える間もなく飛び出して、ゴーレムの片足を吹き飛ばしていた。そして倒れたところで肩に銃弾を浴びせた。

 ヘモジも大概だが、リオナは輪を掛けてすごい。暗いと何が起きたのか分からないときがある。

 こっちはガードが遅れないようにするだけでヒヤヒヤものだ。

 三体をあっという間に仕留めて戻ってきた。

「なんで分かるんだ?」

「なんとなく」

 野生の勘が敵の急所を探り当てるらしい。こっちが一々急所を指定しないで済むのはありがたいが、その分、先走らないように抑えるのが大変だ。

 突然、後ろの方が明るくなったと思ったら、後方から迫ってきたゴーレムが炎に巻かれていた。

 先行し過ぎてランタンを後方に置き去りにしていたところに、ゴーレムが突っ込んできて勝手に炎上したのである。

 僕とリオナは唖然としてその光景を見つめていた。

 周囲をより明るく照らしたことで、寝ていたゴーレムたちが次々目を覚ました。

 そして僕たちを見つけると鈍重な身体を揺さぶりながら接近してくる。が、ランタンに接近した途端、真っ赤に燃え上がるのである。

「まるでトラップだな……」

「ああやって使うのですか?」

「そうみたいだね」

 設置型の罠だ。こういう魔道具は今まで使った例しがなかった。精々魔法で掘った落とし穴が関の山だ。

「体力がガンガン減っていくな」

 影響を脱したゴーレムが近づいてくるがもはや敵ではない。余計な魔力消費をされる前に止めを刺していった。

「弱い敵ならイチコロなのです」

「燃えて何も残らない気がする」

 ゴーレムだから実体が残ってるんだ。他の魔物だったら灰になってる。

「回収するアイテムに影響がなきゃいいが」

 ゴーレムに関しては影響はほぼなかった。宝石、ミスリルザックザクである。


「全部片づいたな」

 リオナが最後の宝石を回収袋に入れた。

「大漁なのです」

 僕は回収袋を受け取ると『楽園』に放り込んだ。

 リオナはランタンを手に持った。


 メルセゲルの村に入るために一旦外に脱出して、入り直した。

 朝降っていた雨もすっかり上がっていた。

 ヘルメスなど宝飾関係でしかメルセゲルには来ないので、繊維関係の店先を見て回るのは結構新鮮だった。

 荷物持ちがいるからと、リオナはこのときとばかりに大量に購入して回った。

 最近は扱う量が増えたので、迷宮から出たとき目立たないように修道院のアイテム預かり所を使うようにしていたらしいのだが、僕がいれば手数料はタダだし、お持ち帰りも楽なので容赦なかった。

 メルセゲルの村で織物店を何軒も梯子しては物陰に隠れて買った反物を『楽園』に放り込んでいった。

 どれだけ買ったか分からなくなってきた。というか、いくら持ってるんだ? さすがにここでは小切手は使えない。でもリオナは大商人のように大商いを繰り返した。何せ魔石(大)を捨てる程リュックのなかに抱えてるのだ。

 現実世界で魔石(特大)を捌くのは至難の業だが、この世界では問題なく換金できる。魔石自体が金なのだから、両替できなければ通貨としての意味はない。

 その都度手数料を取られるのは癪だが、それでも現実世界より利便性があるのは喜ばしい限りである。

「ご主人、これは?」

 僕は味も素っ気もないただ大きな布を見つけた。

「帆布か?」

「いいえ、これは耐水性の布でございます。軒先に掛ける日除けなどに使うものです」

「保つ物なのか?」

「はい、当店の日除けも長く使っておりますが、この通りでございます」

 長くって、村自体、最近できたものじゃないのか?

「たとえば、これを使って布張りの船などできないものかな?」

「それでしたら裏地を強化したこちらの布などいかがでしょうか?」

「あるの?」

「はい。地方によっては布張りのカヌーとかいう船がございます。多くは耐水性の魔物の皮など使いますが縫製が難しく、その点こちらの布は加工も容易く人気のある商品になっております」

「どうやってつなぎ合わせるんだ?」

「具体的なことは秘伝ですので詳しくはお教えできませんが、こちらの糊を使います」

「糊? 接着剤か?」

「はい。一度付けたら剥がれない強力なものです」

 それから僕はリオナそっちのけで店主と長話をした。

 僕はこれで船を作ろうと考えたのだ。

 それも荒波に耐えられそうな奴をである。船に馬車のような幌を掛ければ船倉に水が入らないだろうと考えたのだ。転覆してもそう簡単には沈まないはずだ。布同士の合わせ方、布の繊維の向き、いろいろ聞いた結果、普通にテントなどにも使えそうなので大量購入を決めた。

 我に返ったときにはリオナが選んだ反物やらが僕の周りに堆く積まれていた。

「あちゃー」

「あちゃーじゃないのです! お会計は済んでるのです。早く運んで欲しいのです!」

「まだ回るのか?」

「まだ序の口なのです」


 こうして我が家の宝物庫は建設以来初めて満杯になったのであった。

「宝物庫じゃなくて、空いてる倉庫があるんだから、そっちに入れなさいよ」と真っ先に物色しに来た自分の召喚獣にリオナは怒られていた。

「ごめんなさいなのです」

 どっちが主人か分かりゃしない。

 地上に出ると冗談抜きでヘモジが畑を耕していた。

「マジですか?」

 ヘモジは鼻に泥を付けながら満足げに笑った。


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