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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第十二章 星月夜に流れ星
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エルーダ迷宮征服中(ウェスタのランタン)34

 噴火のせいで道が伸びている谷間がすっかり埋まっていた。

 前言撤回だ。いやらしいにも程がある。

 迂回路を見つける羽目になった。やはり空飛ぶのが正解のようだ。

 分岐はすぐ見つかったのでそちらを進んだ。

 すると今度はファイアーマンの溜まり場に出た。

「何してんだろ、こんな所で?」

 突破しないことには先には進めない。

 僕もライフルを構えると攻撃に参加した。

 敵は火種がないから、燃えることもできない。ただのマミーだった。

 俊敏だから足元に落とし穴を掘ってやったのだが、落ちる前に動きを止めた。

「落ちなかったのは褒めてやる。でもこういうときは後退して、身を隠さないとな」

 棒立ちになったところを次々射貫いた。

 

 魔石に変わるのを待っている間、休憩を入れた。

「大丈夫か?」

「昨日より楽ちんなのです」

「あんまり稼ぎにはなってないけどな」

「どこかにお宝があるはずです」

 正規ルート上にあればいいけどな。

「あんまり食べると昼飯食えなくなるぞ」

「さっきの残りなのです」

 だからさっき食ってた二個目の残りだろ!


 次の洞窟を降りると意外なことに溶岩がなかった。

 そこは冷え切った洞窟だった。

「安全地帯です?」

「敵もいないな」

 明かりを付けて道なりに進んで行くと、どんどん深度を増していった。

 岩が多くて足を取られることが多くなる。スピードスターのリオナには不利な足場だ。注意しないとな。

 やっと赤い光が見えてきた。溶岩が赤々と燃えていた。

「結構深い所まで来たな」

 おかしなことにこの辺りの壁や床には人の手が入っていた。

「人工の構造物だ」

 嫌な予感がする。

 壁には燭台があり、火が灯っている。

 長い廊下を進むと、大きな地下空間に出た。

「まるで聖堂だな」

 中央に煌々と燃えあがる聖火台があった。天井は高く、柱の前には背丈程の大きな燭台が並らんでいた。床には幾何学模様のタイルが敷き詰められていた。

「怪しいのです」

 リオナが剣の柄に手を掛けた。

「あの炎、魔力があるな。それにあの台座…… 何か書いてある」


『過ぎ去りし輪を数えよ。カークスの先に荒れ狂う炎あり。我が炎を(もっ)て治めよ』


「あう……」

 僕が炎の台座に刻まれている文字を読み上げるとリオナはガックリと首を垂れた。

「クエストなのです」

「ただのヒントじゃないか? 『カークスの先に荒れ狂う炎』ていうのはイフリートのことだろ? この炎を使えばイフリートを抑えられるってことじゃないか?」

「炎でどうやって炎を抑えるですか?」

「その前にどうやって持ち出すかだよ」

「輪はあれだと思うのです」

「え?」

 リオナが聖堂の壁を見上げた。

 壁には大きな石膏の立体模型が掛かっていて、地下四十三階層の地図が記されていた。

 地図には輪が描かれてあった。それは洞窟の穴だったり、大地に空いた穴だったりと、全部で二十個程あった。

「どうやって数えるですか?」

「『過ぎ去りし輪を数えよ』 僕たちが通ってきた輪は、洞窟の入口と出口の輪だけだけど……」

「洞窟を二つ通り抜けて、一回引き返したです。それにここの一つを加えるですか?」

 二つの洞窟の入口と出口で四個、一旦引き返したが、これは一箇所と考えるのか、二回通ったと考えるべきなのか? そして『過ぎ去りし』とあるが、進行形のこの洞窟の入口はカウントに入れるべきなのか?

 あやふやな問いに明確に答えることはできない。他にヒントがあるのではないか?

 僕は探した。

 リオナも匂いを嗅いだりして周囲を調べている。

 ふたりで聖堂をくまなく見て回ったが、答えらしい物はなかった。となれば、先の言葉のなかに別のヒントが隠れているとみるべきだ。

『過ぎ去りし輪を数えよ。カークスの先に荒れ狂う炎あり。我が炎を以て治めよ』

 荒れ狂う炎…… 地図に載っている『荒れ狂う炎』を表す炎の目印をよく見ると何かが収まりそうな爪があった。

「ああ!」

『我が炎を以て治めよ』

 同じ形だ! この場所を表す『我が炎』と『荒れ狂う炎』とが同じ大きさで、同じ形状をしていた。

 僕は手を掛けて、引っ張った。すると『我が炎』が外れた。

 そしてピタリと『荒れ狂う炎』と重なったのである。

「……」

 何も起きない。

 リオナが炎の形の一片をじーっと見つめた。そして、重ねた分だけ厚みを増して出っ張った炎を強引に押し込んだ。

 すると出っ張りが押し込まれて、何かの仕掛けが動き出す音が聞こえた。

 そして僕たちが通ってきた洞窟の出入り口の輪っかと、噴火して火柱が上がった穴を示す輪っかとが火の魔石のように燃えるように赤く染まった。

「噴火した穴が四つもあるです」

「僕たちが来る前にも噴火してたんだろうな」

 往復したとしても表示できるのは一つだけだから一つと考えるのだろう。

 そしてこの洞窟の入口の分を含めると……

「十個なのです」

「床だ!」

 僕は閃いた。

 床に描かれた幾何学模様に埋もれた『十』を見つけ出すのだ!

 やけに数字が床に描かれていると思ったら。気になっていたのだ。

「あったのです!」

 数字が刻まれたタイルが外された。床下から装飾が施された異国風の長細いランタンが出てきた。

「これにあの炎を入れろってことかな?」

 ランタンを炎にかざすと、勝手にランタンに火が灯った。

「おーッ!」

 僕たちは感嘆の声を上げた。


『ウェスタのランタン。未来永劫消えることのない聖なる炎。不浄なる者を寄せ付けない』


「いい物ですか?」

「そうだな。種火にいいんじゃないかな。台所に置いといたらアンジェラさんたちに喜ばれるかもな。消えないんだってよ」

「消してみていいですか?」

「え?」

「ちょっとだけ試すのです」

 消えたらどうすんだよ?

 リオナがランタンの扉を開けて手で仰いだが、炎は揺らめくだけで消えることはなかった。

「そもそも何で燃えてるか分からないからな」

 薪も油も魔石の類いもないのだ。燃焼する物がないのに燃えているのである。まるで魔法の火の玉だ。

「むしろお持ち帰りできるのかが心配だよ」

 これがイフリート対策になるようだが、使ったらこれまたなくなってしまうのではないかと気に掛かる。

 秘匿されているのか、ここの話はマップ情報のなかにはなかった。この手のアイテムの話も聞いたことはない。ということはここまで辿り着いた者がいなかったということだろうか?

 いや、ここまでこの洞窟は一本道だった。誰も辿り着かなかったとは思えない。

 とすると謎が解けなかったのか? 

 僕が読んだ聖火台の文言は古代エルフ語で書かれていた。どれだけの冒険者があの言葉に気付き、意味を知ることができただろうか?

 恐らく、ここに仕掛けがあるとも知らずに皆通り過ぎたのだろう。

 取り敢えず、もう昼だ。『ウェスタのランタン』が迷宮から出たら消失するか試してみよう。

「もう昼だけど、どうする?」

 リオナはしばらく考えて言った。

「出口まで行ったらおさらばするのです」

 僕たちはこのまま進んで、長い坂を今度はひたすら上り外に出た。


「一本道だったな」

「でも、ここどこですか?」

 目の前に橋があった。三本の橋のどれかだと思われる。本日の当たりである。

 カークスと一戦交えたかったが、今日のところはこれまでにしておこう。

 転移結晶を使って僕たちは迷宮を後にした。


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