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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第十二章 星月夜に流れ星
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エルーダ迷宮征服中25

 翌朝、リオナがすっかり枯れ枝のようになって食堂に現れた。

「リオナ、病気!」

 オクタヴィアが心配して床を不規則に駆け回る。

 病気なら万能薬で治るはずだ。だとしたら強力な呪いか? レイス事件の影響が今頃出たのか? 呪いだって大概万能薬で治るはずだが。

 ロザリアを起こそう。

「宿題…… 全部片付けたです」

 食堂のテーブルに突っ伏した。

 なんだ、燃え尽きただけか。

「そんなに溜まってたのか?」

 エミリーが食事を運んできた。

「勝手に苦労してるんです」

 そう言って笑った。

「今週の出来事を作文にしたら、大作ができたです」

 呆れた言い訳だ。

「宿題に大作はいらんだろ?」

「どうせみんなに『旅はどうだった?』と聞かれるのです。だから先手を打つのです」

 それで枯れ枝になってりゃ世話ないな。


 リオナは朝食を食べると朝の散歩に出かけた。

 僕は自室に戻り、ソファーに身を沈めると、薬作りの前に少し考えごとをする。

 エルーダ迷宮の次の階層攻略のことである。

 次の階層からはまた属性に特化したフロアーになる。レイスのいたフロアーも考えようによっては闇属性のフロアーとも言えなくもないが。

 地図情報は階層の深度が増すごとに薄くなっていく。

 直近は火属性のフロアーだ。

 ロメオ君から聞きかじった限りでは、魔石集めで結構賑わっているらしい。ただし浅い場所ではという条件が付くが。魔石(大)が結構いい確率で出るらしく、装備を特化して狩る者もいるようだ。

 ボスはイフリートだ。『地獄の業火』を使ってくるとんでもない奴である。資料によると一度しか使ってこないらしいが、検証例は相変わらず多くはない。

 すべてを焼き尽くす魔法なんだから二度目はいらないだろうと僕は冗談めかす。

 姉さんやアイシャさんの魔法より強力かどうかが問題だ。

 次の階層は水のフロアー、どうにも魔物の登場リストや地図情報が寂しいことになっていた。恐らく水のフロアーは潜らないと大したことは起こらないだろう。予想では水面を船で横断して終わりである。何かあってもナガレがなんとかするだろうし、それが駄目ならそのとき考えよう。

 その次も風と土のフロアーが続く。どうにも情報が少なすぎる。戦闘はできるだけ回避して早期脱出がセオリーになるのだろう。恐らく環境こそが最大の敵という奴だ。


 リオナが帰宅して、エミリーと一緒に学校に出かけた。

 どうにも大人の方が楽してるようで気が引ける。

 そこで仕事をしている振りをすべく地下に赴く。

 そして予定していた万能薬製造に取り掛かった。材料の加工のほとんどは前回まとめてやってしまったので、今回はただ容器に放り込んで、煮炊きをし、いつも通り魔力を込め封をして、寝かせるだけである。すぐ終わってしまった。

「宝石でも磨くか」

 溜まりに溜まった宝石を『鉱石精製』に掛けるのである。

 これだけ上物の石を精製しまくっても、最近めっきりレベルが上がらなくなってしまった。

 まだ最大レベルではないはずだが。もはや石自体のレベルの問題ではない気がするのだが。

 となれば何かすることがあるはずだ。毎回より密度を上げるために小さくすることを念頭においていたが、違う何かが。

 取り敢えず、赤字分は回収しておかないとな。


 リオナが帰ってくると、地上は騒がしくなっていた。

 理由は「ファーレーン自治区に応援に行きたい」という声が村に溢れていたからだ。

 どうやらリオナの書いた大作の内容が、獣人たちに盗み聞きされたようで、仲間が困っているならと、袖をたくし上げる有志が騒ぎ始めたからだった。

 長老が困った顔をしてやってきたが、僕は人族にも等しく手を差し伸べられるのならと条件を出したら、声がしぼんだ。

 そういうのを逆差別というのだ。却って地元の獣人の立場を悪くするのだ。

 お前はどうだったと言われれば、僕は貧しい者を優先したんだと答えるだろうが、それでも結果的に獣人を多く救済する結果になったことを多少危惧しているのだ。

 貴族の称号を剥奪された者たちは特に平等という主張に不平等を感じていることだろう。

 だからこそ援助するなら獣人でなく、ファーレーンの難民すべてに対して行なわなければいけないのである。が、それでも今援助するのは得策ではない。今は一丸となって耐えるときだ。でなければ新たな関係は築けない。

 僕がそう言うとリオナは反論した。

「一丸となるのはファーレーンの人たちだけではないのです。この国が一つになるためなのです! あの人たちは間借りしに来たのではないのです!」

 正論を吐かれた。リオナの方が広い視野で世界を見ていたようだ。

「一本取られましたな」と長老に呟かれた。

 僕は今回傍観することにした。リオナに諭された段階で、適任ではないと思えたからだ。

「ただし、人を頼るな。人助けは自分でするもんだ」

 リオナと長老が陣頭指揮を執って、救援活動を開始することにした。

「いいのかい? 好きにやらせて?」

 アンジェラさんが言った。

「いいんじゃないですか。むしろ理想的ですよ、自然発生的にこういうことが起きるのは」

 昼を食べたら、エルーダに行って宝石集めをするつもりだったのだが、リオナは付き合えなさそうだ。

 トビアや他の子供たちは、ちゃんとうまくやっているだろうか? 我慢が当たり前だと思ってやしないだろうか?

「落ち着いた頃を見計らって、様子を見に行ってみるかな」

 ジグロたちドワーフがゴリアテに入ったと姉さんに聞かされたのはその日の夜のことだった。


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