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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第十二章 星月夜に流れ星
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エルーダ迷宮征服中24

 地下に寝かせていた『万能薬』が留守中放置されていたので、ちょうどいいあんばいになっていた。

「ええと、これは今回使い切ったロメオ君に。レイス戦ではロザリアも結構消費したから、これはロザリアに。アイシャさんはどうなんだろ?」

 保管庫にあったものを三本取り出して、新たに完成した物を五本保管庫に収める。

 そういやパスカル君たちはまだ大丈夫かな?

 積極的に迷宮攻略の実習をしてるなら、全員で月一本は消費するだろうからな。二本ぐらい送っておくか。うち以上に魔法使い遍重パーティーだからな。別の友達のパーティーとも行くことがあるかも知れないから、もう一本…… いや、さすがにそれは多いか。

 残り三本。姉さんたちは足りてるのかな? 貯水湖はもう完成したんだろうか? うーん…… ピノはどうなってんだ? あいつ飲んでんのか? 胃腸薬代わりには飲んでいそうだけどな…… 予備にあと何本か作っておくか。

「オクタヴィア、いるか?」

「ナー」

 ヘモジが階段の上から覗いた。

「ヘモジか。オクタヴィアは?」

「ナーナ」

「買い物に付いてった?」

「ナーナ」

 仕方がないな。僕は地下を出て、二階に上がった。そしてアイシャさんの部屋の扉をノックしようとしたら、殺気を感じた。

「あ…… はい。後にします」

 アイシャさんの分は一個、保管と。

 在庫用に五本ぐらい作っておこうかな。

 明日、リオナは学校だったよな。明日にするか。


 別れたはずのロメオ君がまた玄関にやって来た。

「いい物見に行かない?」

「いい物?」

「旗艦だよ。旗艦。棟梁が見せてくれるって」

「図面も上がってきてないんじゃ?」

「だから、その図面の候補が挙がってきたんだってば。早速、設計模型で比べるんだって。明日には王宮に送られるから今日中なら見ていいって」

「随分急だな」

「今回のファーレーンの船団派遣に旗艦で颯爽と登場したかったみたいだよ」

「そもそも置いてかれてんじゃん」

「それを言っちゃ……」

「でも、どんな物か見たいね」

 僕たちは早速、工房に急いだ。


「候補は三つだ」

 棟梁が言った。模型なのにでかい。食堂の長テーブルぐらいでかい。

「これはスタンダードな案だ。文字通り第一世代を二隻並べて渡りを付けた感じだ」

「気嚢が一つ?」

「三角形を作る構造だ。小型飛空艇の原理を応用した」

 ハンモック構造を巨大化したのか。一番安定性はある感じだが。居住スペースと風船の間が結構空いている。装甲でガードしているが、ここの強度次第だろうな。模型では木の細い棒になっているが、ここがワイヤーになるのか、金属製の梁になるのか。経験則から言って、魔物の爪が掛かるような構造は極力廃した方がいい。

「次はこれだ」

「なんだこりゃ?」

 それは枕のような形をしていた。横に長い、そうだブーメランだ。ブーメランを太目にした感じだ。

「重心大丈夫なの?」

「風に煽られると横転しそうじゃの」

 棟梁が言うなよ。

「縦にした方が安定するんじゃないの?」

 ロメオ君が言った。

「おお、それはいい案じゃな」

 とは言え、このブーメラン型、見た目は相当格好いい。

 重心は考えているんだろうが…… 強度的にも、機動性にも難ありだ。気嚢の形を維持するために相当無駄な梁が必要になりそうだが。

 多分ボツになるだろう。

「三番目がこれだ」

 それは一番目の物と真逆、気嚢が二つあり、居住スペースが一つにまとまった物だ。逆三角形を構成するそれは、居住区が他の候補より狭いことを除けば、一番シンプルな構造だ。ただ地上にある場合、安定性は期待できない。常時浮上していないといけない。

「でも空にいるなら、これが一番安全だと思うけどな」

「王様から、言伝がある」

「僕に?」

 棟梁がギルド通信のメモを僕に手渡した。

 なんでギルド通信なんだ?


『お前ならどんな船にする?』


 はなからコンペする気ないんじゃないかよ!

 棟梁がガハハと笑った。

「グルか?」

「うちも落っこちるようなもんは作りたくねぇからよ」

「そう言われてもね。急には……」

 自分の物になるなら気合いも入るのだろうが、ダンディー親父の乗る船じゃな。でも落ちたらリオナも悲しむからな。


 飛行中は逆三角形が安定しているが、地上にあっては三角形が安定する。いいとこ取りするには真ん中の頂点が動けばいいんだ。

 模型を見ながら模型以上のアイデアを探す。

「がっちりした構造をこの二つの気嚢で構成して、真ん中の居住区だけはフリーな状態にしておく。飛ぶときは構造体の下に吊される感じで、着地するときは構造体の内側に収まる感じで」

「遊びはどうやって?」

「ワイヤーとかロープが一番簡単だけど」

 僕は円筒を二つ用意してその上に布を被せた。布の両端が円筒である。そして二つの円筒の真ん中の布の上にもう一つ円筒を置いた。そして角材を円筒と直角に交わるように横に渡した。

「この棒に巻き取り機能を付けて、二つの筒の距離を調節してやれば」

「真ん中の筒が上下する!」

「ほおぅ…… 飛んでるときにはこの布を緩めて重心を下げて、地上にあるときは張って伸ばして船底を揃えてやるのか。面白いことを考えるな」

「更に引っ張って気嚢を居住区の下にすれば、フロート代わりにして双胴船にもなるかも」

「こんな複雑なことしたら、メンテナンスが大変だろうけどね」

「居住区を上にするのは大風呂敷過ぎるかもしれんが、それ以外は、気球と居住区に遊びさえ持たせてやれば、重力が勝手にやってくれることだろうから。問題ないぞ」

「居住区を錘代わりに、樽でも乗っけて、気嚢の周りに居住区を作るって手もあるよね」

「そりゃ、もっと巨大な船ならいろいろ考えられるが、気嚢の大きさは変わらんのだぞ」

「じゃ、僕の案は三つ目の案の応用ということで、適当に」

「この国の軍の旗艦になるんじゃぞ」

「いずれもっとでかいのが欲しくなりますよ」

「うちの工房の大きさにも限界があるぞ!」

「もうドラゴンに手綱でも付けときゃいいんじゃないか?」

「生きたドラゴンの面倒なんか、わしゃ見んぞ」

「なんでだろ、それでもお鉢が回ってきそうな気がするよ」

 ロメオ君が苦笑いした。


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