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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第十二章 星月夜に流れ星
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北方事変(新天地へ)22

 ようやくおやつの時間が来た。

 もう日が沈みかけていたが、子供たちは夕飯前でもおやつを所望した。

 子供たちは目の前に置かれたリオナのマドレーヌをお菓子の形をした黄金でも見るような好奇な目で見つめた。甘い匂いに鼻をひくつかせ、関係ないのに足をばたつかせた。

 全身で喜びを表すとこんな感じになるのかも知れない。

 全員の視線がリオナの顔をじーっと追い掛ける。

「もう食べていい?」と全身で聞いてくる。

 全員にお茶が行き渡るとリオナが「召し上がれなのです」と号令を掛けた。

 歓喜に酔いしれる子供たち。マドレーヌとお茶の甘さに驚き、目を見開く。

 きゃっきゃと大いに喜ばれると、作ったリオナもご機嫌に尻尾を振るしかない。

「お代わりを上げるのです。一人一個なのです」

 夕飯どうすんだよ。

 追加のマドレーヌを美味しそうに頬張りながら、子供たちはお茶のおかわりを繰り返した。

 すっかりお腹をお茶で満たしてしまって、まどろみ始める子供たち。

「夕飯どうしよ?」

「少しだけ遅らせましょうか?」

 心配する僕にロザリアが言った。

「えー?」

 今度はピノたちが不平を言った。夕飯を計算に入れてセーブしていたピノたちは「待ちきれない」と主張した。

「しょうがないな。時間通りに甲板で」

「やったーっ!」

 ピノだけでなく、寝ぼけていたはずの子供たちも諸手を挙げた。

 こうなると思ってました。

 窓の外はそろそろ太陽が沈む頃合いだ。

「ようし、全員甲板に出て、夕飯の準備だ」

 ロメオ君にテトと操縦を替わって貰って、テトを呼んだ。

 精々絶景を味わってくれたまえ。

 肉の匂いに負ける前に。


 子供たちはテトの思惑にピタリと嵌まった。

 嘘のように静かになって全員手摺りに掴まり沈む太陽に見入っていた。

 僕たちは彼らの気を散らさないように静かに食事の準備を始めた。

 日は刻々と沈んでいき、景色は二転三転していった。急に母親が恋しくなってしまった子もいたが、その辺は面倒見のいいヘモジたちがうまく対処した。

 すっかり日が水平線に消えると夜空に大きな月が出た。

 しんみりとした、心地よい一時だ。

 僕は鉄板に脂を引き、ウルスラグナの肉を焼き始めた。

 月夜を堪能していた子供たちが一斉に光る目でこちらを見た。

 こわっ!

「お肉!」

「お肉だ!」

「今日もお肉食べていいの?」

 一斉に鉄板を囲い込んで、匂いを堪能する。

 いつも見ている景色である。


 食事を堪能していると、突然、子供たちが食べるのをやめて固まった。

「ナーナー、ナーナ」

 鼻歌を交えながら鉄板でミズチを焼いてるヘモジがいた。

「ナーナ」

 美味しい予感?

 ほんとか?

 誰も食わなさそうだったから、半分じゃなく、一匹分だけ貰って格納庫に冷凍して放り込んでおいたのだった。その内の切り分けた一つを持ってきて、薄くスライスしたようだ。

「ナーナ」

 スルメ?

 焼いたら確かに縮んだけど。

「違うから」

 イカのように縮んだミズチの肉を口のなかに放り込んだ。

「……」

 何も言わず、スライスしてある残りの四、五枚をまとめて焼き始めた。

「ナーナ」

 塩をパラパラと振った。

「ナー!」

 完成?

「ナナーナ」

「『食べろ』だって」

 通訳してくれたオクタヴィアの皿にヘモジが一枚肉を置いた。

 オクタヴィアはすぐパクリと食い付くが、噛み切れなかった。

「無理」

 かじるのを諦めた。

 ナイフでヘモジが小さく切り分けてやる。

 するとチョビとイチゴもやって来て、口に放り込んだ。

 会話をしているようだが僕には聞こえない。

「ナーナ」

 追加でまだ焼くようなので、不味くはなかったらしい。

 オクタヴィアも口にしたが、オクタヴィアはいらないらしい。

「ホタテには敵わない」

 そう言って肉で口直しである。

 僕も食べたが、刺身とはまた違った趣で美味だった。でもスルメでもいいかな。


 海上を行く船と何度もすれ違った。

 夜通し飛んで、最初の船とすれ違ってから、ポツポツとすれ違うようになり、いよいよドワーフの船に追い付いた。

「でけー」

 ピノたちが驚いた。上から見るとその桁違いの大きさに目を奪われる。

 キャビンの床の上で雑魚寝していた子供たちも起き出して船を見下ろした。格納庫は寝るには寒すぎた。

 先頭集団のはずだが、置いて行かれたか?

 ジグロに様子を聞きに行くと、領主の船団に場所だけ指定されて、補給物資も与えられずに置いて行かれたそうだ。

 幸い、ドワーフの方は救助活動中にある程度の補充ができたらしく、最初の避難民よりは恵まれていたらしい。

 それに今回救助できた人たちの構成は人族の方が多かった。

 残念ながら島の陸地は僕たちがゴーレム狩りで訪れたあの辺りしか残らないと教えられた。これで残してきたキャンプの存在は遠のいたことになる。

「ミズチ食べたことある?」

「ありゃ、珍味だ。酒を飲みながら食うとうまいんだが、肝心の酒がねえ」

 僕の船で飲むのはアイシャさんぐらいだから酒樽は積んでこなかったんだよな。

 ドワーフたちも身の振り方を決めたらしい。

 結局、我が姉を頼ることにしたらしく、客を降ろしたら、『銀花の紋章団』の島、シルバーアイランドに一時避難することに決めたようだ。

 なんとか補給を受けて、ゴリアテに渡りを付けたいらしい。

 さすがに干上がったままでは旅は続けられない。


 僕たちは更に先行し、先頭集団を追い抜いた。

 子供たちが喜んだ。

 そして島に着いたとき、そこには第三王子の飛空艇があった。

「売るのが惜しくなったんですか?」

「自治区と言えど、鎖は付けておかないわけにいかないからな。こちらの出先機関を置こうと思って、領主の到着を待ってるんだが」

「あと半日は来ませんよ」

「六時間?」

「いえ、十二時間」

 ガウディーノ殿下がうなだれた。

 子供たちを降ろすのは親の船が着いてからだし、更に数日後になる。プレハブの資材も降ろさないといけないが、配るのは材料調達に協力してくれた人たちからにしたい。そのための名簿もギルドから預かっている。

 

 結局、子供とプレハブを降ろせたのは更に二日が経ってからだった。

 既に地上では抽選会が行なわれ、土地の割り振りが始まっていた。地図は既にあるので、本当に振り分けだけである。

 さすがに人族と獣人をごちゃ混ぜにするのは、双方にとってよくないと、棲み分けがなされることになった。理想ではなく現実を優先させたようである。

 幸い島には村を二つ作るだけの広さがあった。中央に行政府を置き、島の東西に村を作ることは可能である。考えてそうなったのかは兎も角、排他的な者は島の端に住み、協調的な者はより中央に集まることになる。とは言え、くじ引きでそれが可能になることはない。年月が必要だろう。

 取り敢えず僕の預かった子供たちは獣人たちの村のある東側の浜に降ろし、両親と対面させた。

 その後、キャンプ地さながらに住処を建てるのだが、今回僕たちは手を出さず、各自に委ねることにした。

 くじ引きで割り振られた場所に次々、プレハブが建っていく。

 女子供だけの家族も、周囲の者たちが協力し合い、仮住まいを建てていった。

 獣人たちの方の物資を下ろし終わると、今度は名簿に載っている人族たちの方に向かう。

 作業に従事した人族は余り多くないのですぐに積み下ろしは終わった。

 余分に作った資材を売りに出そうと思ったが、早速転売目的の者が現れたので、売るのを辞めた。

 結局、貧しい者のために消費して、儲けは出なかった。完全にボランティアになってしまった。


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