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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第十二章 星月夜に流れ星
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北方事変(アイスエレメンタルゴーレム戦)4

 核はただの石になっていた。欠片がまだ卵の殻のように覆っていてカボチャぐらいの大きさがあった。

 僕は剣で殻を砕いた。

 色褪せた灰色の石が出てきた。

 ロメオ君が石に素手で触れると、触れた箇所だけ緑色の光が明滅した。

「魔力吸われた?」

 僕が尋ねると首を振った。

「石は死んでるみたい。単に魔力に反応して表面が光ったみたいだ」

 僕も試させて貰った。

「なるほどね。これ障壁だよ、きっと」

 障壁の反射光によく似ていた。

「魔力を通したときだけ、魔方陣が機能するのかな?」

「これだけでも大発見じゃない?」

「そうだね。ゴーレム作成の第一歩だよ」

 ロメオ君が満面の笑みを浮かべた。

 魔力吸収を封印する術式を施した容器に納めると『楽園』に放り込んだ。容器はロメオ君がアガタに作らせ、自分で術式を施した物だ。

 取り敢えず第一目標はこれでクリアーである。これでいつでも引き上げられる。

 残り五体を探すことにする。

 いつの間にか周囲の靄は晴れていた。

 靄はゴーレムの仕業だったのか? たまたま天候回復がこのタイミングだったのか?

 僕たちは神秘的な雪景色に見惚れた。

「ほんとに何にもないな」

「それがいいんじゃない?」

 そうは言っても逃げた連中が気がかりだ。戻って来やしないかと周囲を探知した。

 こんな何もなさそうな環境にも生きてる奴らはいた。

「狐かな?」

「雪ウサギ見つけた!」

「ナーナ」

 ヘモジも望遠鏡を覗く。

 幸い人はいなかった。でも人の形をした奴はいた。

「見つけた! ゴーレム!」

 二体目をオクタヴィアが発見した。

 僕とロメオ君は万能薬を舐めながらボードに足を掛けた。

 うわっ、冷たッ!

 オクタヴィアが僕の肩からロメオ君の肩に移動したとき、尻尾が頬に当たった。

 外に飛び出したときに付いた霜が溶けて濡れたのか?

 換わりにヘモジが僕の肩にダイブしてきた。

 ここからは殲滅戦になるので、前に出るヘモジと、後方で索敵支援するオクタヴィアとが気を利かせて場所を変えたのである。


「ナーナ」

「はいよ。張り切っていこう」

 山から西に外れた場所にゴーレムを発見した。やはり周囲が靄っていた。と言うより視界はほぼ霧に近く、飛んでいるのも危険なレベルになっていた。

 ロメオ君も僕も魔力探知の能力があるので見えてはいるのだが。

 どうやら真っ白い霧の原因はゴーレムが発する冷気にあるらしい。サンドゴーレムの砂嵐のようなものだろう。対策を講じないと、この冷気に当てられれば生物は生きていられないわけだから、一種の障壁の役目を果たしているのだろう。そう考えるとサンドゴーレムもエレメンタルゴーレムの一種なのかも知れない。

 今度は核目掛けて『魔弾』をと言いたいところだが、跡形もなくなってしまうと報告できなくなるので、形を残さなければならない。

 空の上からわざと照準をずらして放った。

 よし、仕留めた。

 見る見る崩壊が始まった。

 巨体が積もった雪を空高く巻き上げながら倒れた。

 石になっていた。迷宮以外でゴーレムと戦うのは初めてだから、亡骸がどうなるか、興味があったが、これは砂岩だ。

「石のなかか、取り出しづらいな」

「この石、建築素材に使えそう。均一だし」

「開けた穴は?」

「下だね」

「腹の下か!」

「うわっ、面倒臭いな」

 死んでしまったら核の位置はわからない。開いた穴の位置から探るのが簡単なんだが。こんな重そうな石の塊ひっくり返せやしない。

「輪切りにしてヘモジに頼むか」

「ナーナ」

 僕は大体の位置を『無刃剣』で切り裂くと、塊を巨大化したヘモジにひっくり返して貰った。

「ナーナ」

 寒い? 元の姿に戻ったヘモジは脱いだ防寒具を着直した。

「普段着やミョルニルは一緒に巨大化するのに不便だな」

「召喚獣の装備品は、装備してれば一緒におっきくなる。けど魔力いっぱい使う。それに魔力通す物じゃないと駄目」

 オクタヴィアが言った。

「それって魔力付与が可能な物ってことか?」

 小っこい頭が頷いた。

「じゃあ、付与効果のあるアクセサリーなんかいけるんじゃないのか?」

「ナ?」

 こっちに聞き返すなよ。こっちが聞いてるんだから。

「前にナガレが話してた」とオクタヴィアが言った。

「ナ?」

「だから盾は大丈夫だったのか」

「ちょっとヘモジ、これ持って大きくなってみな」

 僕の剣を持たせた。

「おおっ!」

 巨大化したヘモジが巨大化した『ライモンドの黒剣』を握りしめていた。

「ナーナ」

 ゴーレムの亡骸を魚を下ろすような手さばきであっさり切り裂いた。

「うわっ」

 簡単に切断しやがった。本人も仰天している。

「ナーナ!」

「あ、こら。振り回すな」

 霧を払うが如く、縦に横にと素振りを繰り返した。

「ナーァアアアア、ナァア!」

 一振りした風圧が霧を切り裂いた。

「ナーナ」

 気に入った? やらんぞ。

「でかくなったついでだ。核を取り出してくれ」

 豆腐を切るみたいに硬いゴーレムの亡骸を切り裂きながら開口部を広げていって、亀裂の入った丸い核に到達した。

 ヘモジは周囲を更に小さな塊に切り分けて断面を露出させた。

「ドラゴンの首も一撃で刎ねそうだね。イチゴのあの宝冠も魔力付与状態にすれば大きくなるのかな?」

「面白いかも。おもちゃの家でも付けておいて、大きくして移動基地にする手もあるよ」

「その発想はなかった」

 ロメオ君に笑われた。

 ヘモジが勝手にご帰還なさって、着替え始めた。

「ん? どうした?」

「ナーナ」

「魔力使い過ぎたって」

 オクタヴィアが通訳した。

「ああ、なるほど」

 僕は万能薬を舐めた。

 さすがに美味しいことばかりではないようだ。

「次のゴーレムが近付いてくる」

 地響きがかすかに伝わってくる。

 壊れた核を急いで回収した。壊れた物だからきれいにする必要もないので、そのまま回収袋に放り込んだ。

「次はこれを使わせて貰おうかな」

 僕はトレントの杖を取りだした。

「危ないかも知れないから少し下がってて」

 以前より余り形状の変わっていない杖を握ると、ボードでゴーレムに接近した。

 そして、『一撃必殺』を使って狙いを定めると、ふと考えた。核じゃなくて、その周囲を破壊したらどうなるか。

「試してみよう」

 杖を構えて、核を残して破壊するように念じる。

 杖の先の三つの輪が、一枚の円盤のようになると、光りながら回り始めた。

 そして閃光。ジュエルゴーレムのときより大分長く光っている。もはや光の照射だ。

 急激な魔力回収が行なわれる前に念のため、僕は地上に滑り降りた。

 半分程残っていた万能薬の小瓶も飲み干して、満タン状態を維持した。

 光がようやく消えた。

 霧の先でザザーという波のような音がし始めた。

 僕は風を起こし霧を払った。

 砂山が決壊したかのように突然ゴーレムが崩れ始めた。

 ロメオ君たちもやって来た。

「あらら」

「砂場になった」

「ナーナ」

 便利なのか、便利でないのか。魔力消費が大きくなければ……

「おや?」

 以前の急激な消費が来ない。その代わり少しずつ吸われていくのが分かった。段々、吸われる量が多くなっていくが卒倒する感じではない。どうやら、アイドリングとリミッターを掛けることを覚えたらしい。これなら突然卒倒することはあるまい。それにあれだけ長い照射だったにもかかわらず、消費が以前より抑えられている感じだった。

「見つけた」

 ヘモジとオクタヴィアが核を見つけた。

「疲れるけど、固い亡骸から回収することを考えるとこっちの方が楽かも」

「でも魔力消費、大変だね」

「万能薬、一回で半分飲み干した」

「核を破壊するだけならもう少し楽なんじゃ?」

「多分ね。てことで、お持ち帰り一個追加」

 さて、次のゴーレムはどの辺かな。

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