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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第十二章 星月夜に流れ星
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エルーダ迷宮征服中(レイス討伐編・報告その二)23

 更に数日後、別働隊から報告が上がってきた。

『銀花の紋章団』関係ではなく、ヴァレンティーナ様の知り合いのパーティーからの報告だったのだが、どうやら別のストーリーが見つかったらしい。

 リオナが僕に耳打ちするには、先の商人が派遣したパーティーからだったらしいのだが、結果は散々だったようだ。

 彼らは商人の「一ルプリでも多く回収する」という要請に忠実に従った。結果、どちらの側にもネックレスを渡さないという選択肢を選んだ。

 するとアレッタ側と領主側、双方から追われる結果となった。

 しかしその選択ははずれ、否、当たりと言うべきか? アレッタ・レイスと対峙しないという結果をもたらした。

 アレッタと老婆はパーティーを巧みに誘導して、事情を知っているパーティーは「ああ、やってるな」という冷ややかな視線を向けていたらしいが、とにかく未到達エリアの裏道に誘い込んできたそうだ。そしてそこでふたりの襲撃を受けた。

 しかし、四十階層に到達する冒険者と対峙するにはふたりは弱すぎた。アレッタはアサシン系の能力を持っていたが、初心者に毛が生えた程度でしかなく、老婆は僕たちが館の中庭で観戦していたときのような凄みはなく、レイスを一体ずつしか召喚できなかったという。

 そしてパーティーが一方を倒し掛けたところで、勝手に恨み節を残してふたりは消えたらしい。

 地下四十二階層ではやはり領主館で戦闘になったそうだ。

 領主お抱えの兵隊とのバトルだったらしい。なぜか銀の矢を射てきたと言うからお笑い種である。

 結果、領主は逃走。足の速いことに、あっという間に別荘に逃げ込んだそうだ。

 パーティーは館の鍵を入手できず、屋敷内のお宝を物色する機会も与えられなかった。

 別荘まで追い掛けた先で再び戦闘が行なわれ、ようやく領主を倒すことに成功したパーティーだったが、得られた物は別荘の鍵だけだった。

 別荘に残されていた物は僕たちが漁った物と同等の物であった。だが、当然、敗走中だったので荷馬車に宝の山はなかったそうだ。

 戦闘を回避できた点では最良の結果であったが、成果という点では最悪の結果となった。

「どうやら、お前たちが選んだシナリオが一番のバッドエンドだったらしいな」

 ヴァレンティーナ様に嫌みを言われた。

「報酬だけ見れば、ハッピーエンドですけどね」

「運がいいのか、悪いのか……」

 上前を撥ねてるだけのヴァレンティーナ様が一番の勝ち組ですけどね。


 更に後日談。

 商人たちは懲りずに僕たちの選んだルートにS級冒険者を投入した。

 依頼料だけで目が飛び出しそうだが、彼らは難なく攻略に成功した。

 だが、成果はと言えば、余り芳しくなかったらしい。

 館に入って調度品を回収する際、それは顕在化した。

 それは十人弱の人の力で、しかも短時間に、どこまで持ち出せるかという極めて常識的な問題であった。

 抱えられないほど大きな石の彫刻をどうやって運び出すのか?

 本のぎっしり詰まった本棚をどうやって移動するのか?

 運ぶ度にゲートを横付けし、傷つくのも構わず、横倒しにするのか?

 十人いようが、一つの物に十人であたることはまずできないし、物がとにかく重すぎた。そして何より時間がなかった。

 結果的に館で回収できた物は抱えられる程度の大きさまでで、大きな物は何一つ回収できなかったらしい。二つの荷台の方は時間を掛けてすべて回収したそうだが、その間、二度レイスと野犬の団体を相手にしなければならなかったらしい。

 儲けはそれなりに出たが、依頼料と必要経費を差し引いて、商人同士で分配すると報酬はわずかなものにしかならなかったそうだ。S級冒険者には「二度とこんなクエストをやらせるな」と釘を刺されたと言うし。

 それを聞いて僕たちは大いに笑った。

 食卓で貧乏くじを引いた先達たちに哀れみを込めて乾杯した。


 数日後、商人側とヴァレンティーナ様との間で話し合いが持たれた。

 結果、未到達エリアとクエスト内容をすべて冒険者ギルド側に開示することが決定した。

 攻略の難しさ、それに対する対価のアンバランスな状況から、特殊なスキルを持たない限り、これでボロ儲けすることはできないと結論づけられたのだ。

 ヴァレンティーナ様としてはクエストの分岐に伴う詳細という、更なる付加価値を加えた情報をギルド側に提供できるわけで、ギルド側からもたらされる報酬は結構な額になると予想された。

 残念ながら、付加価値の部分では僕たちは協力していないので貰える物はないが、情報提供者の一角として、ギルドポイントが加算されることになった。

「そういや、しばらくポイント稼いでいなかったな」と言ったら、マリアさんに怒られた。



「雪の国?」

「うん、飛空艇は出せないかなと思って」

 僕はヴァレンティーナ様の執務室でファーレーン国に行く算段を話し合っていた。

「無理ね。あそこはどちらかというとうちとは敵対関係の国だから。入国すら難しいでしょうね。こちらとしても飛空艇の最新情報をあちら側にやりたくないし。西方に兵力を集中させている今、北で問題を起こされたくはないわね」

「じゃあ、やはり通常のルートを冒険者として入るしかないんですね?」

「馬車で行くのはおよしなさい。現地では馬は役に立たないから。港についたら、早々に長髭牛でも買うことになるわよ。でも、長髭牛の足の遅さは天下一品だから。まあ、雪に足を埋めながらの移動だからしょうがないのだけれど」

 積雪によって隔絶された世界だから町と町を繋ぐ街道などは存在しないらしい。砂漠と同じで誰かが作った轍が道になるのだ。

 凍死したくなければ移動の基本はポータルらしい。その分基本料金は安く抑えられているから、却って便利だとヴァレンティーナ様は言った。

「どうしても外を徘徊したいなら現地でソリでも借りるのね」

 飛空艇を断られることまでは想定していたが、そこまで移動が困難な国だとは思わなかった。

「小型飛空艇を持って行くのはありかな?」

「今言ったでしょ? 情報はやれないと。そんな物、見せびらかしたら最後、軍隊を差し向けられて奪われるのが落ちよ。お願いだからよして頂戴ね。義姉としてではなく、王族のひとりとしてのお願いよ」

「じゃあ、魔法で作るしかないか」

「魔法で?」

「以前、船を氷で造ったことがあるので。その要領でソリでも作って、底に『浮遊魔法陣』を貼って、帆でも張れば魔法で移動するソリが簡単にできるでしょ? 外を移動するのはたぶん最北端の町に着いてからだから、見咎められることもないと思うし」

「精々凍らないことね。渡航許可証は冒険者ギルド経由で発行して貰いなさい。それと『銀花の紋章団』の名前はくれぐれも出さないように」

「なんで? プライベートギルドは国境には縛られない――」

「暴れた人がいるのよ」

 姉さんか……

「了解しました」

「防寒対策はしっかりね。ファーレーン関係の資料をあげるから、一度、目を通しておきなさい。レジーナが帰り次第、届けさせるから」

「お手数おかけします」

「……今更ながら、レジーナの気苦労が分かるわね」

「は?」

「こっちのことよ。定時連絡はアンジェラ宛に出すように。検閲される可能性を常に考慮すること。何度も言うけど、休戦状態とは言え、ファーレンはこの国と敵対関係にある国だということを忘れずに。用が済んだら長居は無用、すぐ帰るのよ。地元民と関係を少しでも円滑に進めたいなら火の魔石がお薦めだけど、余り見せびらかして賊に襲わないようにね。あ、それと襲われたら問答無用があの国のルールだから、そのときは遠慮は無用よ。それと――」

 ドアがノックされた。

 資料を読まずとも、情報通になれそうな程話が延々と続きそうであったが、ピタリとやんだ。

「もうこんな時間!」

 時計を見てヴァレンティーナ様が慌てて立ち上がった。

 ハンニバルが入ってきたので、僕は退散することにした。

 どうやら、どこかの貴族が観光がてら、やって来て館に泊まり込んでいるらしい。


 それにしてもゴーレムの核一個で、大変なことになりそうである。


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